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『過去と未来を繋ぐもの 』
Nikolaus Wirenaa0302hero001)&レティシア ブランシェaa0626hero001

●朧な記憶の共通点
 乾燥した風が頬から髪を撫でていく。
 視線の先にあった枯葉が紅に染まる空へくるくると舞い上がっていった。
「買い出し、時間が掛かっちゃったわね」
 Nikolaus Wiren(aa0302hero001) が振り返った先には、レティシア ブランシェ(aa0626hero001) の姿がある。
 レティシアも同じように空へ舞い上がった枯葉を見ていたが、声を掛けられ、顔を彼へ向けた。
「全くだ」
 レティシアが、軽く肩を竦める。
 正直な所、彼らの間柄は友人というものではない。
 彼らと誓約を交わした能力者は友人であるが、だからと言って、彼らも友人同士となる訳ではない。能力者を通した知人……彼らの間柄はそういうものだろう。
「この辺、あまり降らない場所なのかしらね?」
「そうみたいだな」
 Nikolausの言葉に応じるレティシア。
 彼らは、能力者に頼まれて買い出しに出掛けていた。
 明日に控えているのは、泊りがけの訓練だ。
 訓練を行う場所が、現在降雪しているらしく、着脱可能な靴の滑り止めだけでなく、携帯食等の必要になる品々もあり、彼らだけで買いに行っていたのだ。
 彼らと誓約を交わした能力者達は昨日購入したという本に夢中であった為、お願いは予想の範囲内であったが。
「そうそう、実は1個余分に買ったのよ」
 Nikolausが取り出したのは、ひとつの缶詰だ。
 この中身はパンで、災害で被災した場合、その初期において調理不要な保存食品として活躍の場もあるという。
 被災初期で活躍することもある、というだけあり、この缶詰に缶切りは不要だ。
 余分に買ったのはパンの缶詰というものがどういうものか気になったのだろう、とレティシアは思う。何故なら自分も気になってはいたから。
 恐らく、かつていた世界にもないものだろうと思っていると、Nikolausがお裾分けにパンを半分に千切ってくれた。
 受け取ったパンを口の中に放り込んでみると、バターの風味が口の中に広がる。思ったよりも柔らかい食感で、コンパクトではない外見はこの食感の為に頑丈な缶詰にしているのが分かった。
「思ったより本格的だな」
「もっと味気ないものを想像してたわ」
「昔食った奴はおが屑みたいでまずかった」
「私も似たの食べたことあるわ、味気ない奴!」
 と、そこで両者は気づく。
 似たような食べ物を知っているということは、案外食文化が近い世界かもしれない。
 いや、それよりは、レティシアの例えですぐに過ぎったものがあるならば。
「案外、同じ世界から来たかもね」
「かもな」
 同じ世界であっても同じ時代なのか、同じ土地なのか、それは不明である。
 が、そう思い、共通を見出すのは悪いことではない。
 その時だ。
「こんな時間に色男達が何しているのかしら?」
 気がつくと、周囲にはガラの悪い男を率いた女が立っていた。

●それは鮮明かつ鮮烈に蘇って
「眼帯が左右対称で素敵ね。売り物としては十分だわ」
 その言葉と同時に男達が間合いを詰めてくる。
 一般人なのかヴィランなのか、判断する術はない、が。
「少なくとも、好意あるお声掛けではなさそうよね」
「好意ある奴は売り物呼ばわりしないだろうな」
「そうねぇ」
 その言葉と同時に、両者、掴み掛かってきた男達へ踏み込んだ。
 Nikolausはバトルメディック、レティシアはジャックポット、どちらも肉弾戦専門かと言われると、ドレッドノートやブレイブナイトとは一緒にならないという結論になるだろうが、全く出来ないという話ではなく、身を守る術は心得ている。
 男達の獲物はナイフやスタンガン……攻撃の仕方も専門とは言い難く、ヴィランではないだろうことが推察された。
 Nikolausが足を軽く払った直後にレティシアの蹴りが吸い込まれて吹っ飛ばされれば、頭部を打ったらしい男が気絶する。
「集団でやりなさい。少し出来たとしても、こっちは大勢いるのよ」
 リーダーの女が命令を下す。
 内容からして、こちらが英雄とは気づいていないようだ。
 眼帯はしていても、見た目如何にも英雄といった外見ではないだろう。
 ……レティシアの場合、それで少々困ることもあるようだが、今はその心配もない。
「無粋なエスコートにはお応えしかねるわね。素敵なエスコートならぐらついたかもしれないけれど?」
 Nikolausの、状況にそぐわぬ艶っぽい笑みと共に繰り出されるのは投げ技。
 その一方で、レティシアが体重移動をしっかりさせた蹴りをお見舞いして、別の男を昏倒させている。
 両者の攻撃にはまるで無駄がなく、攻撃を食らうことなく、男達を倒していく。
 残るはリーダーだけ……レティシアは女へ視線をやった。
「逃げ込む幻想蝶もないから、警察の世話になるのはそっちにして欲しいんだがな」
「何、英雄、なの……」
 レティシアの言葉に感づいた女が驚愕の表情を浮かべている。
 これを見る限り、ヴィランには掠りもしていないだろう。
 ヴィランでなくとも、犯罪組織は成立する。それは事実だ。
「そうなの。エスコートにお応え出来なくて、ごめんなさいね?」
 Nikolausがそう微笑んだ、その時だ。
「社長……英雄かどうか、まだ試してませんよ」
 ゆらり、と立ち上がったのは、最初に昏倒させた男。
 意識が回復していたのか、と振り返るより早く、男のナイフはNikolaus目掛けて繰り出された。
 やけに鮮明な世界の中、そのナイフはゆっくりと……

 銃声が、響いている。
 銃声が絶え間なく響いている。
 ここは……戦場。

 目が、熱い。

 目の前に、誰かがいる。
 ナイフを濡らす血は、それは私のもの。
 そう……そのナイフが私を捉えたの。
 左目はもう見えないのかしら。
 でも、そうね……あの人は、母に戻ってくれるかしら。
 もう、私にそれを向けないかしら……? 

 動かないNikolausにレティシアが目を見開く。
 何かが鮮烈に脳裏に突き刺さった。

 悲鳴が聞こえる。
 誰のものだ。
 その先には、左目から血を流し跪く軍人が見える。
 俺達が雇われている国と戦争している国の軍服……敵だ。
 そう、この男は俺の仲間を殺した。
 憎しみがない訳ではないが、ここは戦場……あるのは生死だけ。
 たまたま敵と味方であっただけ。
 根本的な問題は、敵兵ではなく、戦争を決めた国の上層部にある。
 理解は、している。
 雇い主がこの男の国であった可能性だって、ゼロではなかったのだから。
 血濡れのナイフを持つ仲間……あの血はこの男のものだろう。
 そう、敵国の軍人であるNikolausのもの。

 目が、合った。

 せめてもの慈悲にと俺は銃を向け──

 違う、ここは、あの戦場ではない。

 レティシアは咄嗟に近くに落ちていたパンの缶詰を拾って、ナイフを繰り出そうとした男の顔面に投げた。
 正確に決まった一撃を受けて男が再度崩れ落ちる。
「くっ……!」
「部下を見捨てて逃げるのは良くないな、社長」
 部下を見捨てるようなボスなど、と言わんばかりのレティシアが逃げようとした女も拘束。
 その後、買い出しの品物のひとつであったガムテープとビニールロープで頑丈に拘束し、警察へ連絡を入れる。
「……助かったわ」
 Nikolausが、ぽつりと呟く。
 先程のような響きはなく、彼が自分を見る目の色を少し変えているような気がする。
(向こうも同じだろうな)
 レティシアは、心の中で呟く。
 だから、Nikolausが助かった意味合いを図りかねている。

 けれど、ここはもう、あの戦場ではない。
 敵対していたあの頃でもない。
 それが、両者、口に出さない共通の考え。

「助けて貰ったし、ご馳走するわよ。お勧めのお店があるのよ。とっても美味しいの」
「パン貰ったし、俺は……」
「命の恩人にパン半分なんて失礼よね」
 表情を変えたNikolausが、レティシアを強引に連れて行く。
「それにAGWでもないナイフ……聞いてるのか?」
「聞いてないわね」
 後には拘束されて動けない男女が残るが、一応通報の際に事情説明はしたし、余罪はあるだろうから、警察も緊急逮捕してくれるだろう。

●全てはまだ始まったばかり
 レティシアは、ちょっと辟易していた。
 目の前に鎮座しているのは、柴犬モチーフの特大パフェ。
「これ、1人用なのか?」
「そうよ? ほら、ここ。柴犬の尻尾のくるんが見事に再現されてるのよ。お顔もちゃんとしてて、可愛いでしょう? 食べるのが勿体無いけど、でも、美味しいのよ」
 Nikolausが嬉しそうにパフェを語る。
(そうか、こういう奴だったのか)
 レティシアは、小さく笑んだ。
 戦場でしか知らなかった縁は、今ここにある。
「さ、早く食べましょう? 帰った時あの2人が違う本を読み出していたら、家に帰るのが大変になるわ」
「それは言えているな」
 Nikolausに促され、レティシアはパフェを見、その向こうにいる男を見た。
 その男は、自分とは異なる位置の眼帯を纏い、今は幸せそうにパフェを食べている。

 あの時の縁は、今はここに。
 そして、始まっていく。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【Nikolaus Wiren(aa0302hero001)  / 男 / 23歳 / 英雄(バトルメディック)】
【レティシア ブランシェ(aa0626hero001)  / 男 / 27歳 / 英雄(ジャックポット)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木です。
この度はご発注いただき、ありがとうございます。
お2人がこれから始まるよう、その始まりを彩る縁を感じられるよう描写させていただきました。
今後良き盟友として、互いの能力者も交え、道を進まれることを願っております。
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2015年12月15日

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