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『●タイタン・オブ・ハロウィン 』
小野坂源太郎(gb6063)
 バグアとの戦いが決着し、赤い星。バグア本星が太陽系より遠く離れて暫しの時が過ぎた──
 地上に残されたバグアの殆どは、使い捨てのキメラか最下層の雑兵であった。
 多くはエネルギーの供給を絶たれ崩壊するか、コールドスリープの中で永久の眠りについた。
 だが如何なるものにも例外が存在するように、
 人類に対して破壊と殺戮を繰り返す残党も存在していた。
 バグア残党に対応する為、元の生活に戻らず人々の生活を守る為、
 能力者として今も戦っている者達がいた──。


 ***


 とあるゴーストタウンで行われるハロウィンイベントに巨大なキメラが出現したという情報を受け、
 源太郎をはじめとする数人の能力者たちが派遣されてきた──
「ずいぶん派手にやられたな──」
 ナイト・フォーゲルの中から街を見下ろした傭兵が、ふと漏らす。

 放置された街である以上、ある程度の建物の崩壊があって然るべきではあるが、
 傭兵達が目にしたゴーストタウンは、イベント会場しての役割を果たすには危険すぎる程、建物が破壊されていた。
 ハロウィンを楽しむ者達が大勢いる状況であったなら、多くのけが人を出していただろう。

 傭兵達は、地面に残された足跡を辿りながら捜索を始めた。
 だがナイト・フォーゲルのレーダーレンジを操作しても外部カメラを操作して捜索したが、
 周辺には街を壊した犯人たる巨大キメラの姿が、見当たらない。
 敵はステルス能力を持ったキメラなのであろうか──?
 能力者達は更に細かく捜索する為、一部のものを残して地上に降り立った。


 ***


「しかし……バグアじゃなく幽霊が出そうだな」
 夜ならば本物の幽霊が出てきてもおかしくないと思える程、荒れている。
 廃屋をしらみつぶしに傭兵たちであったが、幾ら探してもやはり痕跡が見当たらない。
 誤報なのか罠なのか──それとも悪戯なのか。
 何れにしろ通報があった以上、誰かがいるのは確かである。
 傭兵達は、通報が発信されたという場所に向かう事にした──

 
 ***


 発信元の家は比較的荒れておらず、つい先程まで人がいた痕跡を残していた。
 家の裏を捜索していた傭兵が、ベンチに座る人影を発見した。
「おい、爺さん。この辺でキメラを見なかったか?」
「キメラ?」
「ああ、巨大な奴だ」
「巨大ねえ……キメラは知らんが、

  そいつは、


     こんな、        奴か?」

 傭兵の前でメリメリと音を立て老人の体が、膨れ上がった。
 着ていたジャケットとが弾け、あれよ。あれよという間に巨大化した。
 巨人化した老人の振った腕がブンと唸りを上げ、振り下ろした拳がズ、ズーーーン! と大きな音を立てて地面を抉る。

 やはり罠なのか?──
 傭兵達は、今は珍しくなったバグア人の、限界突破かと色めき立つが──
 巨人は、にやりと笑ってこういった。

「安心しろ。わしは、小野坂源太郎(gb6063)。ちゃんとしたUPCの能力者だ」
 そして今回の一件のネタばらしをした。

 バグアとの戦いが一区切り付いた今、良い機会なので源太郎は傭兵達と真剣バトルがしたいと依頼を出し、
 暇を持て余す能力者の能力低下を心配していたUPC側もよい機会だとこれを受領した為発生した「偽の依頼」だと説明した。

「ここは、UPCが持っている訓練施設の一つだそうだ。本物の依頼と違って暴れすぎて建物を壊しすぎても損害賠償がこない」
 日頃の鬱憤晴らしには、中々悪くないと思うが? と源太郎がにやりと笑う。
「わしは強いからな。雑魚しか相手をして事がない奴は、止めておいたほうが良いぞ」
「戦いに来たのに、それが嘘。挙句に馬鹿にされたままで帰れるか!」
「こんな辺鄙なところで足を棒にしただけというのは、いささか詰まらないですわ」
 源太郎の孫位の歳の傭兵らが、口々に文句を言う。
「話は、決まったようだな。では、本気で行くぞ!」

 源太郎は、生えている大木を引き抜くと棍棒代わりに両手に持って振り回した。
「エミタのサポ無しで戦う気かよ」
「舐めるなよ!」
「小僧共には、これで十分よ!」
 重さを感じさせぬスピードでビュンビュンと大木を振り回し、
 わははっ! と豪快に源太郎が笑う。
「悔しかったらわしに『参った』と言わせてみるんだな」


 ***


 大木の棍棒を躱し、右から左、左から前へ。
 即席チームにも関わらず複雑なコンビネーションで傭兵達は、源太郎に攻撃をかけてきた。

 大木や建物の柱を使って源太郎は傭兵達の実力を測っていたが、依頼に参加した能力者達は猛者達が集まっていた。
 能力者の力は、上限知らずである。
 超がつくベテランともなれば生身でも(飛行できないという点を除けば)ヘルメットワームと互角以上に戦える。
 逆に連携も取れない新人であればナイトフォーゲルに乗った集団であってもヘルメットワームに撃墜。
 下手をすれば死亡する。
 目の前の傭兵達は、源太郎が思いっきり戦う相手に十分な相手である。
(──そうこなくては、な)
 傭兵達の攻撃でバラバラになった大木を投げ捨て、次の得物を探す源太郎。
 その隙を突き、距離を取っていた傭兵達が一斉攻撃をかけてきた。
 じわりじわりとだが、源太郎を追い詰めていく。
 激しい攻防を繰り返す中、
「むっ?!」
 激しい痛みを感じた源太郎が見ると己の腿に矢が刺さっていた。
 がくりと膝をつく源太郎だったが、
(そうこなくてはな)
 その顔からは、不敵な笑みが消えることはない。
 大きく息を吐き、
「まだまだぁ!!! お楽しみは、これからだ!」
 そう叫ぶと更に身体を巨大化させる源太郎。

 自在に体のサイズを変化させることが出来る源太郎の覚醒は、身体を大きくすればするだけ、
 そのサイズに比例して強さもパワーアップする。
「小僧っこども、これで終りか? 2回戦目、行くぞ!!!」
 バシン! と打ち鳴らす拳と掌が起こす風がビリビリと鼓膜に響く。
「げっ。ドンだけ力余ってんだよ」
「っていうか、あのサイズ反則じゃないの?」
「激しく同意……(お腹すいた)……」
「弾、足りるかな?」
「……キメラの方が、マシだった気がする」
「ねえ、予備の刀1本貸して。あたしの刃こぼれしっちゃたのよ」
 ブーブーと文句を言いながら、それぞれ武器を構えなおす傭兵達。
 2ラウンド目、開始である。


 ***


「──参った!!!」
 ぜいぜいと息を荒げた源太郎が、大きな声で降参を宣言した。
 その声にギリギリの状態で戦ってきた傭兵達も腰を着いた。
「若いのに中々やるの!」
 ガハハと豪快に笑う傷だらけの源太郎が、疲れたと地面に大の字に寝転がった。
「ああ、楽しかった! また小僧共、戦おうな!」
「もういい……(お腹すいた)……暫く戦うの……」
「うるせぇ! 勝手にやってろ!」
「砂と埃で髪の毛、ボサボサ。お風呂入りたいよ〜」
「俺は、結構楽しかったぜ」
 源太郎への答えはそれぞれであったが、思いっきり戦った傭兵達もまた一様にすっきりした笑顔であった──





<了>






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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【gb6063 / 小野坂源太郎 / 男 / 外見年齢 73歳 / ファイター】
ゴーストタウンのノベル -
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2016年01月04日

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