▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『仮装パーティへいらっしゃい 』
ウェンディ・フローレンスka3505)&ロザーリア・アレッサンドリka0996

 ロザーリア・アレッサンドリと、ウェンディ・フローレンスの関係は、いわゆる友情関係である。
 でもどこか優雅な立ち居振る舞いとその性格の影響もあってか、お互い意識せぬうちに、しかし気づけばロザーリアがエスコートすることの方が多くなっていた。
(たまには、ロザーリアをこちらからおもてなしもしたいけれど……)
 ウェンディはそんなことを思いながら嘆息を漏らす。
 かわいらしいところのあるウェンディだが、ロザーリアをあこがれの存在として慕っている。まあ、実際のところはまったくいかがわしい関係などではないのだけれど。
 ただ女二人でつるんでばかりいると妙な勘ぐりを入れる人がいるかも知れないなぁ、位はぼんやり思わなくは無いけれど。
(ああ……そう言えば)
 ウェンディは先日家に届いた手紙を思い出す。
 それは季節柄、仮装パーティを開催する――と言うようなものだった。
 パーティ、それも普段とどこか違う雰囲気の出せる仮装パーティであれば、ウェンディもいつも以上に積極的にロザーリアを誘ったりすることもできるだろう。このウェンディ、いざというときの行動力はおっとりした見た目からは想像もつかないくらいのものなのだ。
 そうと決まればまずはロザーリアに連絡を取らなければ。
 ウェンディは知らぬうちに胸が高鳴っているのを感じていた。
 こういう楽しい時間を一緒に過ごせるなんて、それがもう楽しみで仕方ないのだから。
 
 
 
「仮装パーティ? 面白そうだね、あたしも参加していいの?」
 年下の親友の話に、ロザーリアはたちまち食いついた。
「もちろん! そのつもりでわたくし、ロザリーをお誘いしたんですもの」
「ありがたい話だね。ありがとう、参加させてもらうよ」
 ロザーリアの返事は明快きわまりなく、ほぼ二つ返事で参加が決定したのだった。
 
 
 
 ――そして当日。
「よく似合っていますわ、ロザリー。さあ、今日のこの宴を楽しみましょう」
 待ち合わせた二人だが、いつもよりも芝居がかった口調でウェンディはそんな風に言って見せた。
「こちらこそ、誘って下さってありがとうございます、レディ・フローレンス。その美しさ、嗚呼、まるで物語から零れ落ちてきたかのようですね」
 ロザーリアもやはりわざとらしいくらいに芝居がかった口調、そして息をするかのように流れるような仕草で綺麗に礼をしてみせる。文句なしに格好いい、というのはきっとこのようなものを言うのだろう、とウェンディはぼんやりと考える。
 パーティのまえにあらかじめ、ウェンディとロザーリアの服装はあわせるように打ち合わせもしてある。ふだんから色鮮やかな服装に身を包み、思わず道行く人が目をうばわれるというロザーリアではあるが、今日の服装はそれに比べるとずいぶんと地味な印象を受けた。しかし、それはいつものロザーリアに比べて、であって、目立つ格好なのはあまり変わりない。
 礼装用シャツに黒いマント、白い手袋。腰には模造のレイピアをさげている。しかし一番印象的なのは顔の右半分ほどを覆い隠す白塗りのハーフマスク――リアルブルーでは有名な舞台の怪人のそれを真似た服装だ。
 それに合わせるようにして、ウェンディもその舞台に出てくるヒロインである歌姫をイメージしたドレス姿。ウェンディが好むネイビーのドレスはコルセットのせいか体のラインがやや強調されたもので、それがまたどこか愛らしくも、彼女の魅力を存分に引き出している。
 その洗練された物腰といい、やっぱり綺麗だなと、ロザーリアはぼんやり考えていた。そんな彼女が友であるのも、なんとなく誇らしい。
 と、そんな彼女たちに着飾った男性が話しかけてきた。その正体はパーティの主催にしてウェンディの知己でもある道楽貴族だ。
「おや、これは麗しいお嬢さんと、それを護るナイトかい? いや、リアルブルーの物語では確かその姿の人物はこう呼ばれているのだったかー―『怪人(ファントム)』と」
 道楽貴族だけあってそういう物語などの知識と言った教養はそれなりに備えているらしい。ウェンディとロザーリアが並び立っているのをみて、その若い男はそう言い、そしてにっこりと笑った。
「まあ今日は無礼講だ。楽しんで言ってくれたまえ」
 主催者は何かと忙しいらしく、別の客人に挨拶に向かう。
「面白い方だねぇ」
「でもああいう方が催すパーティだからこそ、ロザリーを呼んでも大丈夫と思ったとも言えますわ。だって、ロザリーはふだんから目立つタイプですもの」
 ロザーリアの率直な感想に、ウェンディはそんなことを言って、それからすぐにくすっと笑う。
 たしかにふだんのロザーリアの服装はまるで物語の中から抜け出したかのような、羽付帽子にマントにモノクルと言う姿。目立つなと言う方が無理な話だ。そんな中で服装に関係なくロザーリア自身と友になりたいと言ってくれているウェンディの存在は正直、ロザーリアに取ってはとても嬉しいのだった。
「さ、少しドリンクでも飲みましょう?」
 ウェンディに言われ、スパークリングドリンクを二人してうけとり、口に含む。口の中をおおう炭酸の刺激が、なんだか楽しい気分にしてくれる。
「ウェンディ、これは美味しいね」
「同盟のほうから取り寄せた飲み物だと思いますわ。刺激的だけれど、ほんのり甘くて美味しい」
「本当だ。この主催者殿はやはり少し面白い方のようだね」
 まだ離れしていないのか少しきょろきょろと会場を見渡しながら、ロザーリアがそんなことを言ってみせると、ウェンディは一瞬目を丸くして、それからクスクスと笑い出した。
「な、なにか変なことを言ったかい?」
 ロザーリアは首をかしげているが、ウェンディはいいえ、と小さく首を横に振る。
(……そう、そんなあなただから)
 ウェンディは胸の中で思う。
(だから、わたくしは貴方が好きになったのですわ。憧れたのですわ。……ひとりの人間として)
 おっちょこちょいで、見栄っ張りで、でもどこか憎めなくて。
 ふだんのロザーリアはそんな、人間くさいところのある人だけれど。
 けれどロザーリアは文句なしに『格好いい』のだ。
 芝居がかった所作がぴたりと似合う、そんな人はなかなかいない。それをしぜんとやってのける彼女に憧れて、そして友となって。
 パーティもそろそろ終わりが近づいている。バルコニーに出た二人は、少し肌寒い風に当たりながらも微笑みあう。
「寒いんじゃないか?」
 ロザーリアはウェンディを心配してくれたのだろう、きざったらしくない自然な動きでマントを羽織らせてくれて。
 友人に惚れ直すというのもおかしな話かも知れないが、それもやむなしというようなロザーリアのさりげない一挙手一動足。
(やっぱり格好いいですわね、ロザリー)
 胸の中でぽつり、そう呟いて。そしてウェンディは微笑んだ。
「ロザリー、これからも友達でいて下さいね」
「こちらこそ、そっくりその言葉、返させて貰うよ」
 言いあって、二人は笑う。
 幸せなんて、そんなものなのだ。
 ほんの小さなきっかけが生み出すのだ。
 星空の下、二人の乙女はそれを噛みしめあいながら、握手を交わす。
 ――これからも友であれるように、祈りながら。
 
 
 
 
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ka3505 / ウェンディ・フローレンス / 女性 / 17歳 / かりそめの歌姫】
【ka0996 / ロザーリア・アレッサンドリ / 女性 / 21歳 / かりそめの怪人】



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
年明けになってしまいましたがハロウィンのお届けです。
いつも発注ありがとうございます。
普段と少し趣向を変えた服装のお二人は、想像するだけでかわいらしかろうと思いつつ執筆しました。
その魅力、うまく文章で表現できていれば良いのですが。
またご縁ありましたらよろしくお願い致します。
では今回はありがとうございました!
ゴーストタウンのノベル -
四月朔日さくら クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2016年01月04日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.