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『―― 年末年始はリアルもネットも忙しいんです ―― 』
松本・太一8504

「……はぁ」
 松本・太一はため息をつく。
「年末年始で仕事が忙しいのに『LOST』内でもイベントが大量に発生してますね……」
 どうやら、先日松本がクリアしたクエストはチェーンクエストになっているらしく、ひとつクリアすると次から次にクエストが発生してしまったのだ。
「今日はどんなクエストがあるんでしょうね、ああ、お使いクエストですか……」
 一覧にずらりと並んだクエストに、松本は自然とため息が零れる。
「お使いの後は、採取、とあるNPCの自宅訪問、洞窟探索に調査……これ、今日だけでクリアしろというのは、少々無理があるのでは……」
 ゲームにハマって、生活時間を狂わされる、ということがネットゲームには多々あると聞くが、まさにこのような感じなんだろう――……と松本は心の中で呟く。
「とりあえず、ユニコーン孵化の触媒集めや、環境調整など……短時間で終わるものに絞って、クエストを進めていきましょうか」
 松本は小さく独り言を言った後、クエスト開始のための準備を始めたのだった。

※※※

(はぁ、明日は朝イチから会議が入ってるんですけど、寝不足で出社することになりそうですね)
 松本は苦笑しながら『LOST』のキャラクターを動かしていく。
「……この地域では、雨が続いている……雨をつかさどる宝玉に異変があるか見てきてほしい、というクエストですね。戦闘はないと書かれていますし、行ってみましょう」
 襲い掛かってくる眠気を堪えながら、松本は『雨の宝玉』が安置されている場所に向かう。

※※※

「これは……」
 松本が『雨の宝玉』が安置されている場所に行くと、そこにはひび割れた宝玉があった。
(今回のクエスト内容は調査ですし、これを報告したら次のクエストが出てくるんでしょうね)
 心の中で松本は呟き、調査を依頼した人物の元へと戻る。

※※※

それから数時間が経ち――……。
「はぁ、ようやくクエストの群れが終わりました……」
数えるのも面倒になるほどのクエスト、すべてを松本はやり終えてため息をつく。
「ゴブリンの群れ討伐、薬草採取、ほとんど雑用ばかりでしたね……もしかして、教会に居候させてもらう以上、こういった類のクエストが乱発されていくんでしょうか」
 そう考えると、少しだけ教会に居候するのが嫌になってくる。
(けど、司祭様にはお世話になってますし、ここでそのまま出ていくなんて出来ませんよね)
 明日はどんなクエストが発生するのか、と苦笑気味に松本が自分のステータスを見ると……。
「……えっ!?」
 職業欄が『聖なる僧侶』に変化していた。
「……いつのまに? え?」
 松本としては、いつ自分が転職したのかすらわからず、少し混乱していた。
(そういえばアイテム使用履歴や転職履歴が見られますよね? ちょっとそれを見てみましょう)
 ステータス欄から履歴を見てみると、確かに松本自身が転職を選んでしまっている。
(……あぁ、あの洞窟に行った時ですか)
 宝玉の確認に行った時、松本は眠気が最高潮に達していた。
 その時、松本は操作を間違って、そのまま転職してしまったのだろう。
(ある意味、集中力や判断力を欠いていたとも言えますね……)
 どちらにしても、いずれ転職するつもりだったのだから、松本は落ち込むことはなかったけど、こんなミスをした自分にショックを受けていた。
(……明日の会議、気を引き締めないとミスをしそうですね。こちらでのミスはまだなんとか大丈夫でしたけど、現実世界でミスをしたら大変ですし……)
 クエストは終わらせたことだし、松本はパソコンを切ってベッドに横になる。
(……午前4時、資料の確認とかもありますし7時過ぎには部屋を出ないと……)
 そんなことを考えながら、松本は目を閉じて、ゆっくりと夢の世界に旅立ったのだった――……。



―― 登場人物 ――

8504/松本・太一/48歳/男性/会社員・魔女

――――――――――
松本・太一 様

こんにちは、いつもご発注をありがとうございます!
今回は油断のお話でしたが、いかがだったでしょうか?
上手く『油断』を描写出来れいれば良いのですが……!

それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました。
また機会がありましたら、宜しくお願い致します。

2016/1/13
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