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『新春の夜明け 』
ネフィリア・レインフォードka0444)&フローレンス・レインフォードka0443)&ブリス・レインフォードka0445

 今年もあとわずかとなった頃でもクリムゾンウェストではあまり代わり映えはしなかった。
 昨今はリアルブルーからの移転者が増えて、色んなイベントが舞い込み、それに倣ってみようという話もちらほら見える。
「ただいま!」
 町で買い込んだ食料を抱えたネフィリア・レインフォード(ka0444)は飛び込むように自宅の玄関ドアを開けた。
 居間の方へと視線を向けると、姉のフローレンス・レインフォード(ka0443)と妹のブリス・レインフォード(ka0445)が暖炉の前にて仲良く座っていた。
「お帰りなさい。寒かったでしょう」
 フローレンスが笑顔で声をかけると、本を読んでいたブリスが本を閉じてネフィリアの方へ顔を向ける。
「……ネフィ姉様、お帰りなさい……」
 いつもはローブを目深く被っているブリスだが、自宅では可愛らしい素顔を見せており、笑顔で次姉を迎えた。
「ただいま。晩御飯はも少し待ってて」
 ほどなくして、台所から肉の焼ける匂いと温かいスープが出来上がる。
 ネフィリアが席についてから三人で食事を始めた。
 ぱりっと焼けたパンと肉のソースがよく合い、野菜の旨みが出ているスープは身体を温めてくれる。
 今日あったことを報告しあっていると、ネフィリアが提案をした。
「初日の出を見に行きたいんだー♪」
「初日の出?」
 ネフィリアの提案に首を傾げる姉妹に提案した当人は悪戯っ子のような笑みを浮かべて説明を始めた。
 初日の出はリアルブルーでも東の国で行われる行事の一つであり、一年の始まりの朝に見る太陽を見ることを初日の出という。
 初めての朝日を見ることによって、新たな気持ちで一年を迎えて過ごすと言われていることをネフィリアは姉妹に教えた。
「……リアルブルーでは……一年の始まりから、早起きなのね……」
 パンをもくもく噛みしめて、こくんと、飲み込んだブリスが素直な感想を述べる。
「いいわね」
 フローレンスはネフィリアの提案には賛成のようだ。
 しかし、問題なのはどこで見るか。
「リアルブルーの人達は、どこで見るの?」
「山とか、海とかで見るって聞いたんだ」
 海の地平線から昇る太陽は水面に光が反射してとても綺麗だろう。
「僕は山で見たい!」
 ネフィリアの意見にフローレンスも同意の模様だ。
 何かと体力のないブリスを心配しているフローレンスにとって、今回の初日の出はいい体力作りになると踏んだから。
 それ以上に姉妹三人で山を登り、朝日を見て新年の朝を迎えることはよい思い出にもなる。
「食事が終わったら、どこの山で見るか、地図を確認しましょ」
 フローレンスが言えば、ネフィリアは「やったぁ!」と喜び、ブリスはゆっくりと一度頷いた。
 大好きな姉様達と一緒にいる。それだけがブリスの幸せだから。


 リアルブルーでいうところの大晦日に当たる日。
 三姉妹は朝から準備に追われていた。
 装備や持っていく携帯品の確認とお弁当の仕込み。
 居間に持っていくバッグを持ってきて、必要なものを詰め込んでいく。
「地図……忘れちゃダメ」
 そっと、ブリスがフローレンスに手渡す。
「あら、ありがとう」
 フローレンスは笑顔で地図を受け取り、末妹の頭を撫でる。
 一方、ネフィリアは夕食、夜食の仕込みを行っており、細かい準備は姉に任せていた。
 何を作るか決めたネフィリアはてきぱきと作業をはじめる。
 夜食はサンドイッチと決めていた。
 燻製された干し肉とチーズ、豆類を持って行ってその場でお茶を沸かして、具材を炙ったりしてパンに挟むサンドイッチを考えている。
 夕食は朝食のメニューを流用しようとしているので、温かいスープは必須だ。
 これから向かうのは山の上。
 周辺で一番高い山を選んだので、特に、ブリスの身体を冷やさないようにしてほしいとフローレンスよりお願いがあったので、それに沿うようにしている。
 夜食は大きな蓋と鍵つきバスケットに詰め込み、夕食に出すスープの仕込みを行う。
「ネフィ。仕込みは終わりそう?」
 フローレンスが尋ねると、ネフィリアは笑顔で頷く。
「会心の出来だよ!」
 ネフィリアの笑顔にフローレンスもブリスもつられて笑顔になってしまう。
 きっと、美味しい食事なのだろうと確信する。
 荷物も纏め終わったところで、フローレンスが妹達に声をかけた。
「さぁ、山登りに備えて休みましょう」
 朝日を見るための山登りである。
 体力を回復する為にも昼寝は重要だ。


 冬ともあり、日の沈みはやはり早く感じてしまう。
 先にパッチリ目を覚ましたのはネフィリアだ。
 姉妹を起こさないように竈に火をつけてスープを温める。
 窓を見やれば、西の空が朱に焼けて日の沈みを教えており、東の空を見上げると、夜の色へ染まっていた。
 薄ぼんやりと月や星が空に浮かび上がっている。
 木々を見やれば、今夜は風は強くない。
 絶好の登山になるとネフィリアは確信する。
「……んゅ……ネフィ姉……?」
 いつも眠たそうなブリスが目を擦りつつ台所の入り口に立っていた。まだ夢見心地なのか、ぼーっとしている。
「おはよ! よく眠れた?」
 ネフィリアが振り向いて妹の方へと向かうと、ブリスはゆっくりと頷く。
「もう少しでご飯が出来上がるから、顔を洗ってくるんだよ」
 こくりと頷いたブリスは姉の言われるままに顔を洗いに行くと、入れ違いにフローレンスが台所に現れた。
「おはよ、もうそろそろ焼けるよ」
 竃よりバターの香りが漂ってきており、もう少しで出来上がりを告げている。
「いい匂い。楽しみだわ」
「棚から木の大皿を出して」
 何か手伝うことはないかと尋ねるフローレンスにネフィリアは遠慮なくお願いをすると、棚から出した木の大皿はテーブルの中央に置かれる。
 竃の扉を開けると野菜と肉がたっぷりなキッシュがキツネ色に焼けており、パイ生地に練りこまれているバターが蒸発してはジュワジュワと音を鳴らして焼きごろ、食べごろを伝えていた。
 ネフィリアが慎重にキッシュを取り出して大皿に載せると、温まったスープを三人分の器に注ぐ。
 顔を洗ったブリスが席に着くと、夕飯を三人で頂く。
 塩気が効いた野菜や肉と濃い目のソースがたっぷりのキッシュはまだ湯気が上がるほどであった。
「火傷しないようにね」
 フローレンスがブリスに注意を促すと、ブリスは素直に頷く。
「いっぱい食べて。力をつけないと」
「出る前からおべんとつけてるわ」
 一番食べているネフィリアの様子を見たフローレンスが自身の指でネフィリアのおべんとうを教えると、三人で笑ってしまう。


 後片付けを終えて、少し休む。
 頃合を見ていたフローレンスは窓の外を伺っている。
「さぁ、でかけましょうか」
 月が予定の時間の高さに上がっている事を確認してフローレンスが妹達に準備を促す。 
 支度を終えて家を出ると、夜の帳が空に広がり、眩いばかりの星達が輝いていた。
「よーし、出発なのだー!」
 拳を突き出して突き進むネフィリアを先頭にブリスtpフローレンスが続く。
 目的の山まではリアルブルーの時間感覚でいうところの二時間ほど。
 夜で、風もない周囲はとても静かであり、家の中で過ごすとは少し違う三人だけの世界のように思える。
 ブリスはフローレンスとネフィリアがやっぱり自分のものであることを再認識してしまう。
「……素敵な夜……」
「そうね、これからいい朝を迎えるのよ」
 ぽつりと呟くブリスにフローレンスは和やかに応えるも、彼女は末妹が何を考えているのかは把握できていなかった。
 空の月の傾きが天辺に来た頃に目的の山の麓に到着していた。
 見上げるのは中々に高い山である。
 山につくまでは平坦な道のりであり、ブリスも平気な様子で姉達に付いてきている。
「休憩しなくて大丈夫?」
 フローレンスの問いかけにブリスは冷気で肌が冷えて赤い頬になりつつも「平気」と返す。
「よーっしいこう!」 
 ブリスが大丈夫なのを確認し、わくわくを隠せないネフィリアが先を急ごうとする。
「ネフィリア、急ぎすぎると後で疲れるわ」
「大丈夫!」
 姉の注意もそこそこにネフィリアは楽しそうに先を歩いていく。
 山の中は人が入っている形跡が見受けられており、道筋を見ながら登っていった。
 流石に敵の姿はないと思うも、警戒だけは怠らないのはフローレンスとブリス。
 フローレンスは長姉としての責任と大事な妹達を守りたいという想いからの警戒であるが、ブリスの方は大好きな姉様達の貞操は自身が守ると決めた為。
 敵よりもブリスの方が危険であるのだが、そこは美しい姉妹愛なのでおいておく。
 幸い、敵や獣の姿は見受けられなく、ある程度登った時点でブリスのペースが落ちた。
「ブリス、大丈夫?」
 フローレンスの声に「……平気……」と答えるブリスだが、結構キツそうな様子を見せる。
「休憩にしよう。ボクは敵がいないか偵察に行くよ」
「ネフィリア!?」
 提案したネフィリアはフローレンスの制止が聞こえなかったのか、周辺を偵察しに走っていった。
「ネフィ姉様、もう見えなくなった……」
「仕方ないわね」
 ネフィリアが走っていった方向を見つめながら長女と三女がため息をつきつつも、顔を見合わせて微笑む。
「今年一年、楽しかったわね」
 フローレンスが言えば、ブリスは素直に頷く。
「……フロー姉様とネフィ姉様がいるから……いつでも、楽しい一年なの……」
 素直な本音を呟いたブリスは冷気をシャットダウンするために防寒具の上から口元まで隠れるくらいマフラーをぐるぐる巻いている。
「ふふ。ありがとう、ブリス」
 嬉しそうにフローレンスがブリスに感謝しているところ、偵察とばかりに走り回っているネフィリアは、特に何もない事を確信して姉妹の元へと戻る。
「大丈夫だったよ。何もいない」
 ブリスはフローレンスの手を借りつつ立ち上がる。
「背負うわよ?」
 フローレンスの優しさにブリスは首を振り、頑張りたいと言葉を続けた。
 その言葉にフローレンスは嬉しそうな笑顔となり、「分ったわ」と言葉を返す。
「よし、行くのだ!」
 ネフィリアが再び先頭を取って歩き出すと、フローレンスが「三人で行きましょ」と声をかけて手を差し伸べた。
「うん!」
 元気一杯に頷いたネフィリアが差し伸べられた手を握り締める。
「もう少しだよ!」
 ネフィリアが叫んだ向こうは目標である頂上だ。
 しかし、到着してもまだ暗かった。
 月は沈んでいる為、そろそろ朝焼けが起こるだろう。
 敷物を広げて、ブリスを座らせた後、ネフィリアが持って来た簡易式のコンロ台を組み立て、その辺の枯木を拾い集めて火を熾す。
 水を入れたポットを乗せてお湯を沸かし始めたのだ。
「あれ、ブリス寝ちゃったんだ」
「疲れたから」
 湯が沸くころになると、ブリスはフローレンスの膝で眠ってしまった。
 ネフィリアがお茶を淹れてコップをフローレンスに渡して、お茶で身体を温める。
「まだかなー。まだかなー♪」
 フローレンスに身を寄せつつ、ネフィリアが楽しそうに空を見つめている。
 お茶が飲み終える頃には、東の空が薄くなっていった。

 朝焼けが見えてくる頃、ブリスも起き出してゆっくりとあがる朝日を見つめる。
 地平線より溢れんばかりの太陽の光に三人は釘付けとなってしまう。
 フローレンスは今年も姉妹仲良く暮らせるようにと思いを馳せ、ネフィリアもまた、三姉妹仲良く楽しく過ごせるようにと思いを言葉にする。
 ただ、ブリスは……今年は姉達ともっともっと仲良く……そう、色んな意味で仲良くしたいと静かに誓う。

「さぁ、朝ごはんにしようなのだ♪」
 ネフィリアが持って来たお弁当を広げて、各自が好きに具を選べるサンドイッチを三人で食べ、新しい年を祝い、仲良くしたいと言葉にしていった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka0444/ ネフィリア・レインフォード / 女性 / エルフ / 霊闘士】
【 ka0443/ フローレンス・レインフォード / 女性 / エルフ / 聖導士】
【 ka0445/ ブリス・レインフォード / 女性 / エルフ / 魔術師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になります。
鷹羽柊架です。
素敵な三姉妹の発注文章にほっこり和みました。
この度は御発注ありがとうございました。
初日の出パーティノベル -
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ファナティックブラッド
2016年02月04日

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