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『想い思うひと時 』
紫 征四郎aa0076)&木霊・C・リュカaa0068)&オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&ガルー・A・Aaa0076hero001

●時を思って
「平日だけあってそこまで混雑してねぇな」
「時間帯もあるかもしれないね」
 ガルー・A・A(aa0076hero001) に木霊・C・リュカ(aa0068) がそう言うと、ガルーは納得した。
 時刻は午後1時半過ぎ。
 何事もない平日である為、普通は学校で勉強や仕事の時間だろう。
 H.O.P.E.東京海上支部での研修は午前中で終わっており、昼食は他のエージェント共一緒に済ませてあるが、このショッピングモールへやってきたのは『用事』があってのことだ。
「どこもバレンタイン特集をやってるみたいなのですよ。いろんな国のチョコレートが売ってるところもあるみたいなのです」
「バレンタイン前だものね。義理チョコの習慣は今どうなんだろう。友チョコや自分チョコもあるって話だし」
 リュカの手を引く紫 征四郎(aa0076) が周囲の賑わいを彼女なりの言葉で伝えると、リュカは首を傾げる。
 彼の世界にクリアに届かないそれを征四郎が一生懸命伝えるのは、ガルーと共に実家を出た征四郎が縁あってリュカの家へ居候した時期もあり、彼が沢山の優しさをくれたからだろう。誰かの『明日』を守る歩みを止めないでいられるのは、その優しさも大きい。
 だから、征四郎は彼に少しでも世界を伝えたい。
 自分なりに考えた、リュカへの『ありがとう』
「その習慣は、製菓会社の販売戦略だろう」
「オリヴィエは可愛くないのです!」
「征四郎の言う通りだなー。そこはボクもチョコほしー、だろ?」
「誰が言うか」
 オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001) が自身の言葉に反論してきた征四郎と、それに同調したガルーへ呆れた顔を向ける。
 彼らはこういう時まで息の合う相棒である必要あるのだろうか。
「まずは、せーちゃんのランドセル予約しないと。大事だものね」
 今日の目的は買い物、とリュカが笑う。
 そのひとつに、征四郎のランドセルの予約があった。
(せーちゃんがランドセル背負って小学校に通うって言うのも、何だか感慨深いけどね)
 リュカは心の中で呟き、自身の手を引く征四郎を見た。

 ランドセルの予約をするべく向かったのは、ショッピングモール内にある鞄屋だ。
「たくさんあるのですよ!」
「色も凄いあるんだな」
「今はそうなのかな。ちょっと前だと女の子は赤、男の子は黒っていうのが定番だったんだけど」
「ピンクが人気のようだな」
 征四郎とガルーの感想にリュカが少し前の定番を教える。
 すると、オリヴィエが鞄屋にある男女別の人気カラーランキングに目を留めて、口にした。
「でも、6年使うものだし、せーちゃんがいいと思ったものを選ばないとね」
 リュカが店内にある腰掛けを指し示し、「見ているからじっくり選ぶといいよ」と微笑むと、征四郎は頷いて、ランドセルの特集コーナーへと向かう。
 リュカが腰を下ろす隣には、征四郎の洋服やランドセルの支払いを行うガルーが腰を下ろす。
「本当にあっという間だよね」
「……そうだな」
 リュカの言葉に応じるガルーの目は征四郎に注がれている。
 ガルーは対等の相棒である征四郎を子供扱いはしないが、慈しむ気持ちがない訳ではなく、それ故に現状への葛藤もある。
 征四郎は家庭事情もあり、男の名を持ち、服も兄達のお下がりが多かった為、その反動で可愛い洋服を好む───そうした年相応の表情があるからこそだろう。
 オリヴィエは側で2人の会話を聞き、それから征四郎を見た。
(俺は行ったこともないし知らないが……)
 赤やラベンダーのランドセルを見る征四郎は、まだ知らぬ小学校への期待に輝いている。
 その期待が裏切られないよう、征四郎にとって良い場所であれば良いと思う。
「背負うランドセルはひとつだけだろうが」
 ガルーがすっと動き、選ぶのを手伝いに行く。
 リュカがオリヴィエを手招きして、「入学祝買いたいから、少し時間稼いで」と耳打ちしてきた。
「1人で大丈夫なのか?」
「オーダーメイドを店員さんに頼むからね」
 店員を呼んで口頭で注文するということか。
 リュカはランドセルに合わせた手提げ鞄を頼むらしく、それなら、変なことにはならないだろう。
「解った」
 オリヴィエは短く応じ、リュカの側を離れた。

 征四郎がうんうん唸っている所へ、オリヴィエが遠慮なく足を運ぶ。
「長く使うなら、こういう色合いのものの方がいいだろう」
 オリヴィエが指し示したのは、柔らかなキャメルカラー。
 重過ぎない軽やかな印象のそのランドセルは革製でシンプルなデザインだが、それが逆に大人っぽいデザインだ。低学年だと少々大人っぽい印象はあるが、高学年になればその大人っぽい印象が良く感じられるかもしれない。
「俺様もこれがいいと思うぜ?」
「ランドセルだけ赤やラベンダーより服に合わせ易い方がいいと思うが」
 ガルーも同調し、オリヴィエも更に言葉を重ねる。
 征四郎も赤、ラベンダーの色とデザイン、それからキャメルカラーのランドセルを見比べ、可愛いものと落ち着いたものとで悩む
 やがて───
「この色にするのですよ!」
 勧められたキャメルカラーに決定した。
 ちょっとだけ背伸びをして、大人っぽく。
 心の中で呟いて、リュカの為に予約するランドセルをスマートフォンで撮影。
 後で、リュカにも見て貰えるように。

 けれど、リュカの入学祝こと手提げ鞄は予約したランドセルと一緒に届くまで、征四郎は気づいてなかった。
 『ありがとう』を贈りたい人は、こんなにも優しい。

●装いを思って
 ランドセルの予約も終わり、4人は洋服を買うことにした。
「先に皆のお洋服を買うのですよ!」
 同じ店に希望通りの服は全て揃わないということもあり、征四郎はまず3人の服をと切り出す。
 皆とお買い物が楽しくて仕方がない征四郎、自分はランドセルで先に時間を貰ったのだから、彼らを優先したいとのことだ。
「服かぁ、陽の光に当たらないよう露出しないもので、あと、人に不快感を与えなければいいとは思うけど」
「リュカちゃん、拘らなさ過ぎだろー」
「今日はリュカのお洋服もしっかり選ぶのです!」
 リュカへガルーと征四郎がそれぞれ言うと、リュカは「せーちゃんのセンスに期待するね」と笑う。
 どういうものであろうと、征四郎が自分の為にと選んでくれたものを否定したりはしないだろう。
 オリヴィエは気合を入れる征四郎と、それから、サングラス越しでも判るリュカの優しい眼差しを見る。
「オリヴィエちゃーん、今子猫みたいな顔ー」
「……誰が子猫だ」
 その余裕は面白くない。
 ……オリヴィエがそう思うから、ガルーはからかうのに。

 到着した店は、メンズファッションの店だ。
 幅広い年代層を取り扱っており、男性陣はここで揃えられるだろう。
「冬物のジャケット、何がいいと思う?」
「あれにでもしろ」
 オリヴィエがガルーへ指し示したのは、藍色の少しごつさを感じるジャケットだ。裏地は黒だが刺繍がされており、地味に派手である。
「やだ可愛い、こういうの好きなの?」
「着るのは俺じゃない」
 オリヴィエは素っ気無く返し、リュカと征四郎へ歩いていく。
 その後姿を見て、喉を鳴らしたガルーは店員へ展示品でもある藍色のジャケットの購入を伝えた。

 リュカの手を引きつつ、征四郎がリュカの服をコーディネート真っ最中。
「リュカはこういう色も似合うと思うのです」
 征四郎が色々当てて見せているのは、柔らかな色合いのもの。
 外観がよく判らないリュカはデザインより肌触りや素材を重視するというのは知っている為、優先順位としてはそちらが上だが、色だって拘りたい。
「そうかな。自分じゃよく解らないけど……」
「征四郎の言う通りだと思うが」
 リュカへオリヴィエが声を掛ける。
「似合うのだし、たまには明るい色のものを選んでもいいだろう。……どうかしたか?」
「何でもないよ。それなら、2人にしっかり選んで貰わないとね」
 リュカは最近服を選んで貰った際に似合っていると言われて驚いたことを思い出したのだが、そうとは言わず、改めて服選びを依頼した。
 空の青さを表現したかのようなグラデーションのボーダーニット、白のスキニーパンツ。
 選んで貰ったその服は、普段着る色合いよりも明るく、優しい。

「折角だし、オリヴィエのも選ばないとね」
「俺はいい」
 リュカへ話を向けられると、オリヴィエはそれこそいいと首を横に振る。
 これに待ったを掛けたのは言うまでもなく征四郎だ。
「駄目なのですよ! それでは勝ち逃げなのです!」
「勝負する要素なかっただろうが」
 征四郎にとってオリヴィエは実の兄より兄らしい兄のような存在だが、同時にライバルで、張り合う存在。
 対抗もコミュニケーションとは言え、今の流れに勝負はなかったとオリヴィエは困ったように視線を泳がせる。
 すると、背後からガルーがオリヴィエをホールド。
「勝ち逃げはダメだな。俺様も同意」
「……動き難いのと、撃つのに邪魔な服は着ない」
 勝ち目はないと悟ったオリヴィエは、要望を伝える。
 その結果、オリヴィエはシンプルなプルシアンブルーのVネックニットとリュカと同じ白のスキニーパンツを購入することとなった。

 それらが終われば、今度は征四郎の服だ。
「この店どうだ?」
 ガルーがその店を推したのは、大人びたと言っても可愛らしさが失われている訳ではなく、シックなお嬢様風のデザインが多めとディスプレイで気づいた為である。
「俺もいいと思うが」
 普段着ているシックなワンピースタイプが似合うという思いもあって、オリヴィエもガルーの意見を推した。
「征四郎もこのお店がいいのですよ」
 ガルーの推薦、オリヴィエの同意もあったからだろう、征四郎も気になっていたらしい目を輝かせた。
 相棒であると同時に父親のような存在でもあるガルーが自分のことを解ってくれていると思うから、推薦してくれたことが嬉しい。それにオリヴィエが否定しなかったことが嬉しい。
「せーちゃん、いい洋服沢山見つかるといいね。手伝えないのが申し訳ないけど」
「そんなことないのですよ! リュカには肌触りの意見がほしいのです!」
 征四郎が繋ぐ手の先にいるリュカへ笑うと、リュカは「それなら、張り切って選ぶね」と口元を綻ばせた。

 征四郎の服は案外あっさり決まった。
 無駄な買い物を嫌う性質のガルーであるが、征四郎の心中も知っている為、迷うなら買っていいと言ってくれたからである。
 征四郎が選んだのはワンピース。
 緩やかなフリルの襟元、レースリボンが胸元を彩り、アイスブルーのワンピースはその中央にスリットが入り、そこから白のフリルスカートが姿を見せる。そのフリルレースには雪の結晶が刺繍され、バックウエストのリボンにも同じ刺繍がされ、上品な中にも可愛らしさがあった。
 この他にリュカが選んでくれたシンプルなオフホワイトのセーターとそれに合わせる形でとガルーがラベンダーカラーのスカートを選び、選べと言われたオリヴィエがランドセルの迷いも頭に過ぎらせて赤いスカートを選んだ。
 店を出る頃にはホクホク顔の征四郎、ふと、雑貨屋に目を留めた。
「あそこも見ていいですか?」
「征四郎の身体は1つだけだろうが」
「たまにはいいじゃない。ねぇ、オリヴィエ?」
「……そうだな」
 征四郎へガルーが反対するもリュカが征四郎を支持し、反対する気もないオリヴィエがさらっと同意したので、ガルーは押し切られた。

(雑貨ったって、マフラーも手袋ももうあっただろうが)
 ガルーは店内を見回し、軽く溜息。
 無駄な買い物を嫌いその性質が、油断を生んだ。
 征四郎は足早にマフラーコーナーへ行くと、素早く物色した。
「征四郎は赤なのです。リュカとオリヴィエは?」
「……青。そんなに明るくないのがいい」
「紫かな。バイオレットの方がいいかな」
 征四郎の問いに答えるオリヴィエもリュカもその思惑に気づいている。
 その答えを聞くと、征四郎はチェックのマフラーを景気良く籠の中へと入れた。
 尚、可愛い赤、落ち着いた青、シックな紫、そして、キュートなピンク基調と色違いである。
「オリヴィエあとはまかせたのです!」
(ガルーがピンクなのか)
 オリヴィエはそう思ったが、ガルーの余裕が崩れるのは楽しいので特に反論せず籠を受け取る。
「これは重要な任務だからね?」
(楽しそうだな)
 ガルーの色を聞いたリュカが凄いいい笑顔で財布を取り出し、オリヴィエへ差し出した。
 受け取ったオリヴィエはさっさとレジへ行って容赦なく会計を済ませると、ガルーがようやく何か購入したことに気づく。
 購入者がオリヴィエとあり、何かを察したガルーが征四郎とリュカを見る。
 2人は凄くいい笑顔だ。
「お前さんら何でこういう時だけ息ぴったりなの?」
 こうして、ピンクのチェックのマフラーはガルーのものとなった。
 購入した藍色のジャケットと是非合わせて欲しいものである。

●楽しく想い想えば
 買い物も終わった所で、予約していたスイーツバイキングの時間にちょうど良くなった。
「予約しないと待ち時間が凄いからな」
「それに、1人だと来難いよね」
 ガルーへリュカが笑いかける。
 所謂スイーツ男子であるガルーは、現在凄くテンションが上がっている。声の弾み方が半端ない。ちょっと面白い。
「食べる分だけ皿に取れ。それから攻略法として───」
「リュカの分も征四郎が取ってくるのですよ!」
 ガルーが征四郎へ細かいアドバイスをしようとしたが、征四郎はリュカへ笑いかけ、バイキングゾーンへ一直線。
「久々だから、はしゃいでるな」
「ガルーちゃんと同じだね」
 ガルーへリュカが笑うと、ガルーは「否定しねぇ」と笑って後を追う。
「オリヴィエも取ってきた方がいいよ? 折角来たのだからね」
「俺は別に……」
「ご飯もっと食べていいし、お洒落に興味持ってもいいと思うけど?」
 そんな会話をしている内に征四郎が戻ってきた。
「バレンタイン前だからか、チョコ関係のスイーツが多かったのです」
 征四郎が持ってきたスイーツをひとつひとつ説明していき、リュカも「季節だね」とその多さに感心する。
 リュカがミニオペラケーキやミニチョコパフェといったスイーツをお裾分けして貰い、征四郎もティラミスをまずは食べることにした。
「予想通りオリヴィエちゃん取ってなーい。はい、あーん!」
 戻ってきたガルーはオリヴィエにとイチゴたっぷりのタルトを小さく切り分け、差し出した。
 オリヴィエが咀嚼すれば、甘酸っぱいイチゴと一緒にタルトに使用されているホワイトチョコの甘さが口に広がる。
「お前ほんと少食だよな?」
「……別に」
 ガルーも手慣れているが、雛鳥のように食べさせて貰うオリヴィエも日常の一部であるかのように違和感なく受け入れている。
 それを横目に征四郎はリンゴのシブースト攻略中。
「せーちゃん、美味しい?」
「おいしいのですよ! リュカこそ、みかんのミルフィーユはどうなのです?」
「美味しいよ。素材の味が生きてる」
「次はそれを食べるのです」
「食べ過ぎるなよ」
 ガルーから注意が飛ぶも、ガルーと張り合う征四郎は「大丈夫なのですよ!」と余裕の宣言。
 征四郎がその年齢では食べる部類であるとは言え、成人男性のガルーとは一緒にならないのだが。
 そして───
「おなか、いっぱいなのです……」
「だから、言ったろ」
 食べ過ぎてダウンした征四郎にガルーが呆れつつ、最終的に全てのスイーツを平らげた。
 その間にオリヴィエが征四郎に一息つかせる為の紅茶を持ってきて、征四郎の前に置く。
「食べられなかったものは、またの機会だね」
 リュカがまた来ようと笑うと、征四郎は嬉しそうに笑った。

 やがて、スイーツバイキングの時間は終わりを告げる。

 会計をするリュカとフォローに入る征四郎よりも先に荷物持ちのガルーとオリヴィエが店を出た。
「バレンタイン前にチョコ前倒しした気分だったなー」
「チョコ以外も食べてただろう」
「固執してたら制覇出来ないだろうが」
 真面目に言ったガルーを見、オリヴィエが軽く溜息を吐いた。

 だから、彼らは知らない。

「バレンタインにオリヴィエからガルーちゃんへ届けさせよう」
「これなら2人で食べるのです」
 リュカとオリヴィエがその店で彼ら用のガトーショコラをお土産に買ったこと。
 そして、2人がどうすればバレンタインに食べるか画策していたこと。

 判明するのは、バレンタインデー当日。
 楽しみは、まだまだ終わってない。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【紫 征四郎(aa0076)  / 女 / 7 / 能力者】
【ガルー・A・A(aa0076hero001)  / 男 / 30 / バトルメディック】
【木霊・C・リュカ(aa0068)  / 男 / 28 / 能力者】
【オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)  / 男 / 10 / ジャックポット】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木です。
この度は発注ありがとうございます。
楽しい冬の買い物とのことでしたので、バレンタイン前であることを絡めた上で楽しさ重視、所々に互いへの思いやりが出るよう心掛け描写しました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
浪漫パーティノベル -
真名木風由 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年02月22日

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