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『About me ーfile. ka3703ー 』
彩華・水色ka3703


 僕のことが知りたい?
 これはまた、奇特な人がいたものだね。

 良いよ、教えてあげる。
 ああ、君の自己紹介は別にいいよ、知りたいとは思わないから。
 君が誰で、どんな名前で、どんなカタチをしたヒトか、そんなことに興味はない。
 僕にとって重要なのは、器じゃないからね。

 でも、君にとってはまず、器のほうが気にかかるのかな?
 そうだね、ここは真っ暗で何も見えない。
 少し明かりを入れようか。

 ほら……どう、見える?
 これが僕だよ。
 祖父から受け継いだ骨董品に囲まれて、半ば埋もれるように生きている。
 多分、生きてるよ。
 もっとも、この古びた道具たちのほうが、僕よりずっと真っ当に生きてるかもしれないけどね。
 ああ、触らないで……売り物だし、うっかり尻尾が出てしまうかもしれないから。

 ――本気にした?

 冗談だよ、セールストークってやつね。
 さて、そろそろ本題に入ろうか。

 名前は彩華・水色 (ka3703)、イロハ・ミズイロだ。
 見ての通り、まだ青年と言っていいだろうね。
 もっとも半分はエルフだから、見た目通りの齢じゃないかもしれない。
 本当は幾つなのか、そんなことは忘れたよ。覚えていても意味はないから。
 背は高いほうかな、髪は紫、瞳は水色……名前の通りだね。
 この名前は父親が付けたと聞いているよ。なんでも、母親が好きだった色らしい。
 もちろん僕は覚えていないけど、初めて僕が目を開けた時はさぞかし喜んだだろうね。
 清らかで透明な、どこまでも澄んだ色。
 そこに映るものも全て、清らかで穢れのないものであるように祈ったんだろう。
 でも現実は――

 君も知ってるよね?
 どこかで噂を聞いて、その真偽を確かめに来たんだろう?

 わかった。
 僕が何故そうなったのか、そこから話を始めよう。


 ・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥


 僕はお腹が空いてたんだよ。
 君だって、お腹が空けば何かを口にするよね?
 だから、僕にとってそれは、ごく自然な行為だったんだ。
 そこまで追い詰められた、状況そのものは不自然極まりないし、理不尽だと思うけどね。

 僕は飢えていた。
 記憶の中では、僕は人買いに浚われたことになってる。
 でも、本当にそうだったのか……
 商品は例えそれがモノだろうとヒトだろうと、大切に扱うものだろう?
 ここの道具達だって、毎日のように埃を払われて、丹念に磨かれて……だって僕は、この子達を預かってるだけなんだから。いつか現れるお客様のためにね。
 でも僕を保管していた奴の考えは違っていた。
 僕のことなんか最初から商品とは思ってなかったのかもしれない。

 まあ、どうでもいいや。
 とにかく、そこの待遇は酷いものだった。
 育ち盛りの子供に一日一食、握り拳ほどの硬いパンと汚れた水が少し……生かさず殺さずどころか、確実に殺そうとしてるよね。
 実際、僕はもう少しで死ぬところだった。
 目の前に、生きた餌が差し出されなければ、ね。

 久しぶりの温かい食事は、少し鉄錆の匂いがして……とても甘かった。
 乾いた喉を潤し、手足の隅々にまで満ちて、脳天まで突き抜けるような生命の奔流。
 僕は生まれて初めて生の喜びを感じた。
 いや、性の悦びと言い換えたほうが良いかな……もちろん、それはずっと後になって知った感覚で、その時になって初めて「ああ、あの時と同じだ」って気が付いたんだけどね。

 その時から、僕にとってヒトは特別なものになった。
 罪悪感なんて、欠片もなかった。
 だって僕は、そういうものとして造られたんだから。
 そう、奴等が僕を造ったんだよ。
 僕はそのお礼に、全てを吸い尽くしてあげた。
 それほど美味いとは思わなかったけど、それが礼儀だと思ったからね。

 そこにあったものを全て片付けて、僕は外に出た。
 太陽の光が眩しかったな……このまま全身を焼かれて死ぬんじゃないかと思った。
 今も昼間はちょっと苦手かな、普通にヒトと混じって生活するために我慢してるけど。

 外に出てからも、僕は躊躇いなく「食事」をした。
 だって僕にとってはそれが自然だし、悪いことだとは誰も教えてくれなかったんだから。

 でも、ある日。
 餌ではないヒトに会ったんだ。
 それはトモダチというものだと、後になって知った。
 僕はその子が好きだった。
 大好きだった。
 だからきっと、すごく美味しいだろうと思った。

 美味しかったよ。
 本当に、初めての時と同じくらい……いや、それよりもっと、美味しかった。

 次の日も、僕はその子に会いに行った。
 また一緒に遊ぼうと思ってね。
 でも、その子はいつもの場所に来なかった。
 棺の中に横たわって、揺すっても起きなかった。
 カラカラに干からびて、骨と皮だけになって……暗い穴のような眼窩の奥から、光を失った目が僕を見ていた。

 その時、初めて知ったんだ。
 僕が食事と称していたその行為が、本当は何であったのか。

 幸いそれが、僕の仕業と知られることはなかった。
 僕はそこから逃げ出して、あちこちを彷徨い歩いて……

 でも、止められないんだ。
 止めようと思えば思うほど、喉の渇きが抑えきれなくなる。
 僕は夜の闇に紛れてヒトを襲うようになった。
 いなくなっても誰も気に留めないような、いなくなった事さえ誰も気付かないような、そんなヒトを狙って。
 繰り返すうちに次第に罪悪感は薄れ、行為そのものにも慣れ、食事の後始末も手際が良くなっていった。
 それでも噂は広まる。
 吸血鬼が出るという噂が……いや、噂じゃなく、紛れもない事実なんだけどね。

 やがて狩りが始まった。
 人買いに浚われた時の恐怖と飢えが甦って、僕は夢中で逃げたよ。
 昼も夜もじっと身を隠して、食事もせずにひたすら嵐が過ぎるのを待っていた。
 でも、襲って来る空腹に耐えかねて……今思えば罠だったんだろうね。
 隠れ家を出たところで、僕は網にかかった。

 ロープでぐるぐる巻きにされて、教会に引きずって行かれたよ。
 天井の梁に吊るして石を投げるのが、僕を捕まえたそいつらのやり方だった。
 石を投げながら「バケモノ」と罵声を浴びせる奴等の目は血走って、顔は醜く歪んでいた。
 どっちがバケモノだって思ったよね。

 幸い途中でロープが切れて、僕は命からがら逃げ出した。
 そして学んだよ。
 皆と違うことは悪だってね。
 いや、僕は自分が悪だなんて思ってない。
 僕はただ、他人と違う性癖を持ってるだけだ……しかも、それは他人の手で開発されたもので、僕が望んで手に入れたものじゃない。
 でもヒトはそうは思わない。
 ヒトと違うってことは、それだけで目の仇にされるんだ。
 種族なんて関係ない。

 だから僕は、全てを旨く隠して生きることにした。
 いや、そうするしかなかったんだ。
 異端ゆえに常識人であれ、それが僕の座右の銘だよ。
 そうそう、自分の闇を優しい微笑で隠すことも大事だね。

 とは言え、世の中にはそれを隠さずに生きていけるヒトも多い。
 中には僕よりも酷い性癖を持ってるヒトだっているのにね。

 いや、ここにそんな場所があるからこそ、そんなヒト達が集まったのかな。
 僕も好きだよ、あの場所も……皆のこともね。

「私はうらやましいのですよ、自分自身を素直に表現できる彼らがね」

 自分自身を、その性癖を、包み隠さず生きられることが。


 ・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥


 僕の話はこれでオシマイ。
 わかってくれたかな、それともますますわからなくなった?

 どっちにしても、君に話すことはもうないね。
 それより――明かりを落とすよ。


「さあ、食事をはじめましょう」

 君のことを、教えて――?


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3703/彩華・水色/男性/外見年齢27歳/吸血症(ヴァンバリズム)、及び血液愛好(ヘマトフィリア)】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ファナティックブラッド
2016年02月25日

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