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『―― 彼の戦う理由 ―― 』
ジョージ・ユニクスka0442

 その日はいつもと変わらない日のはずだった。
 貴族の嫡男であるジョージ・ユニクス(ka03442)は、日課となっている勉強を終え、執事と共に屋敷に戻る途中だった。
「今日はぼっちゃまの誕生日ですからね、父君も母君もお帰りを待ってらっしゃるでしょう」
 そう、この日はジョージの誕生日だった。貴族の嫡男の誕生日、それは家族でささやかな祝いをするのではなく、来賓を呼び、盛大にする。
「夕方からは来賓の皆様もいらっしゃるので、ぼっちゃまも挨拶をしないと
いけませんよ?」
 まだ七歳ではあるが、貴族として振る舞うことを強いられ、ジョージは頷いて答える。

※※※

 異変を感じたのは、屋敷の門をくぐった時だ。
 普段なら煌びやかな明かりが灯されているはずなのに、なぜか真っ暗。
 中も暗く、屋敷が大きい分、その不気味さは倍増している。
「……何かあったのかな? 父様と母様、僕を驚かせようとしているのかも」
「あぁ、それはあるかもしれませんね。ぼっちゃま、怖くはありませんか?」
「僕は男の子だから大丈夫だよ」
 そう言いながらも、ジョージの手はしっかりと執事の手を握りしめている。
 本当は怖いけれど、当主の息子という立場が彼を怖がらせてくれないのだろう。
「父様、母様!」
 勢いよくドアを開け、ジョージが両親を呼ぶ。
「……」
 けれど、ドアを開けた先には血の海、その中央に倒れているのはジョージの母だった。
「お、奥様!?」
「母様! かっ、母様、なんで……!」
 ジョージは慌てて駆け寄るが、母親の意識はなく、ジョージの悲痛な声に何の反応も示してはくれなかった。
「……父様は、父様!」
「旦那様! どこにいらっしゃるのですか、旦那様!」
 執事と共に父親を探し始め、その数秒後、父親はジョージの前に姿を見せた。
「父様! 母様が、血が……!」
「……」
 母親の死に泣きながらジョージは父親に縋りつくため、駆け始める。
「……」
「……っ! いけません、ぼっちゃま!」
 けれど、そんなジョージを出迎えたのは父親の逞しい腕ではなく、闇の中で鈍く光る刃。
「ど、どうして、父様……」
 がたがたと震えながらも、ジョージは足が動かず、父親が持つ剣が振り下ろされるのをただ見つめることしか出来ない。
「ぼっちゃま!」
 突然重い何かが覆いかぶさり、それと同時に何かを斬る音が響く。
「……っ、な、なんで」
 執事は身を挺してジョージを庇い、父親の狂剣を受けたのだ。
「ぼっちゃま、逃げてください……」
 背中を斬られ、苦しそうにうめく執事にジョージは首を振って否定する。
「旦那様、なぜあなたが……」
 ふたりを見つめる視線は冷たく、まるで歪虚のようだった。
「まさか、あなたが……堕落者に……? そんな、あの強い旦那様が、なぜ……!」
 聞き慣れない言葉の数々に、ジョージは泣いて怯えるばかり。
「ぐぁっ!」
 父親と戦っていた執事が倒れ、血が滴る剣を携え、ゆっくりとジョージに近づく。
(僕も、殺される……! 父様に、殺されるんだ……)
 子供が受け止められる恐怖を超えたのか、ジョージはそのまま意識を失った。
「俺が憎いのなら、殺しに来い」
 意識を失う直前で聞こえたのは、大好きだった父の声――……。

※※※

 それからジョージが目を覚ましたのは、数日後のことだった。
 死んだと思っていた母親は重症で、意識を取り戻したジョージを優しく抱きしめてくれた。
 意識を取り戻した後、ジョージが知ったのは、執事が敗北して、母が重症、そして父が逃走したということだけ。
(……父様、僕はいつか貴方に復讐する)
 これがジョージの戦う理由。
 恐らくこの世界ではありふれた出来事であり、身内の歪虚化、それはジョージの心に大きな傷を残した。
(……強くなろう、もう自分の無力で泣かないですむように)
 まだ幼かったジョージは心の中で決意し、執事に剣術を教えてくれるように頼みこむ。
 きっかけは七歳、そして三年後、ジョージはハンターとして生きることを選ぶのだった。

―― 登場人物 ――

ka0442/ジョージ・ユニクス/男性/11歳/人間(クリムゾンウェスト)/闘狩人(エンフォーサー)

――――――――――

ジョージ・ユニクス 様

初めまして、今回はWTシングルノベルのご発注を頂き、
ありがとうございました!
切なさなどを上手く表現できていれば良いのですが……
気に入って頂ける内容になっていることを祈ります!

今回は書かせて頂き、ありがとうございました。
また機会がありましたら、宜しくお願い致します。

2016/3/1
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水貴透子 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2016年03月02日

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