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『ラノベの主人公への変化? 』
冬月 晶aa1770)&アウローラaa1770hero001

 これは、何だ。
 冬月 晶(aa1770)の目には、可愛らしくラッピングされた箱が映っている。
 その箱は冷蔵庫に割と普通に置かれていて、特に隠れている様子もない。
 手を伸ばし、取ってみると───やっぱり、バレンタインデーのチョコレートであると判る。
(……え、これは……?)
 悲しい事実を言うのも何だが、晶は今年、誰からも貰ってない。
 つまり、晶のチョコレートでないことは確かだ。
 ……ということは、必然的に一緒に暮らしているアウローラ(aa1770hero001)のチョコレートである。
 近くに住む姉の助けは借りているが、晶はアウローラと2人暮らし、彼女以外の同居人はいない───アウローラが、バレンタインのチョコを買った?
(どう考えても、本命用だ……)
 晶はしげしげと眺め、チョコレートがそれなりの価値を持っていることに気づく。
 ラノベの主人公のようにはいかないと主張する晶は恋愛遍歴が真っ白だった訳ではなく、過去学生時代には恋人の存在があった。
 当然、バレンタインデーにはチョコレートを貰ったこともあり、女性程詳しくはないが、本命かそうでないかの違い程度は判るのだ。
 だから、アウローラが誰かに贈る為に購入して、ここに置いているのを今知り、動揺してしまっている。
(……誰に、渡すつもりなんだ。そんな相手いたのか?)
 晶は昼寝しているアウローラを見、チョコレートがある冷蔵庫を見る。
 ……晶にとって、アウローラとは誓約を交わした英雄だ。オーロラの観測地で出会った彼女は、自身を元ドラゴンと仰る。俄かに信じ難い話であったが、英雄は元の世界の姿とこの世界の姿が種族さえも超えて変わる者もいるそうだから、その主張を冗談と笑い飛ばすことは出来ない。
 誓約を交わして『拾った』ような形のアウローラは、自己申告通りドラゴン(晶が推測するに知性がある類ではない)であった為、人の世界の常識などなかった。『非常識』ではなく、『無常識』とでも言おうか、野生児というに他なく、姉の助けがあっても元気いっぱい力いっぱい暴走する為、手綱を握ってこの世界を適応させるのは並大抵のことではなかった。
(最近、お洒落にも目覚め始めていたから、か?)
 晶の中で、アウローラは娘や妹に近い……言わば保護者的感情がある。
 好物は顔を輝かせて食べ、嫌いな物は判り易い位のしょんぼり顔で食べるアウローラは、晶が何でも知っていると懐いてくれていると思う。
 けれど、晶はアウローラのそういう相手を知らない、思いつかないことに動揺している。
(落ち着こう)
 悶々とした頭を振り払うように晶は冷蔵庫のドアを開け、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。
 さっきも、このペットボトルを取り出そうとして冷蔵庫を開けたのに、動揺して、本来の用件を忘れていたのだ。
(それとも俺が既に知り合っている相手だから、俺が気づかないのか?)
 晶は任務で知り合った男性エージェントだけでなく、H.O.P.E.の男性職員、2つの職場の男性同僚、果ては生活範囲で顔を合わせる男性にまで範囲を拡大して考えてみるが、アウローラの態度に特別違う相手がいない。
 ……その候補の中に自分の名前がないのだが、晶は自身が保護者のような立ち位置、感情を持っているだけでなく、チョコレートを見た動揺で気づくことは出来なかった。

「ふあああ……」

 アウローラがむくりと起き上がった。
 その時には空腹を訴えるように腹の音が響いている。
 元々がドラゴンであった為、アウローラはお腹いっぱい食べて、ぐっすり眠ることが大好き。満足するのだ。
「アキラさん、おはようございます! お腹が空きました!」
「もう夕方だ」
「起きたらおはようございますでいいじゃないですか! ……あれ、アキラさん、何かありました? 元気ないみたいですけど」
「いや、何でもない」
 アウローラ本人に問われ、晶は咄嗟に何でもないと答えてしまった。
 本命に贈るのではないかというチョコレートのことを聞けば良かったと思うよりも前に、アウローラはぽん、と手を打つ。
「アキラさんもお腹が空いているんですね! お腹が空くと悲しくなってしまう気持ち、分かりますよ!! だから、ご飯にしましょう。今日はハンバーグが食べたいです」
「分かった。チーズも、だったな。星の形でいいのか?」
「はい、お願いします!」
 晶が話題を変える意味でも応じると、アウローラは嬉しそうに笑った。
 準備を開始すると、アウローラはわくわくとした顔で晶の料理する姿を見始める。
 素直で愛嬌たっぷりとご近所のご老人の皆さんに可愛がられていても見た目はうら若き女性、その自覚のなさで困ったことがない訳ではなく、料理をする自分をじっと見ているのもそのひとつだ。落ち着かない。
「いつも思うが、楽しいのか?」
「楽しいですよ? アキラさんの料理は美味しいですし、私の知らない食べ物を沢山知ってます。あ、食べ物以外でもアキラさんは物知りです!」
 何度も返される言葉だ。
 アウローラはそう言う時、「アキラさんは本当に凄いですよね!」と目をキラキラさせて笑う。
 今もその目は輝いていて、こっちの心中も知らないでと言いたくもなるが、違うこと言ったらそれはそれで心配である。
 つまり、晶も何だかんだでアウローラを彼なりに可愛がっている(という括りにしていいかどうかは各々の判断に委ねるとして)のだろう。
 やがて、手際良く成型したハンバーグを焼いていき、その上に乗せた星に型抜きしたチーズも程よく溶けていき、夕食の準備が整った。

 目の前のアウローラは気持ちいい位美味しそうに食べている。
 料理の作り甲斐がある相手であり、だからこそ、アウローラにちゃんとした料理を作ってやるのだ。
(どう見ても色気より食い気。餌付けに弱い。贈る相手はこいつの胃袋をちゃんと掴んでるか?)
 飯が美味い奴にバキュームされる。
 いつぞやの評価通りだ。
(あの時は精神削れた……)
 その時を思い出し、晶は遠い目。
 恋人すっ飛ばして子作りにまで話を飛ばしたアウローラの言動で晶の精神は容赦なく削れた。
(……が、今でもとても仲のいい人は大好き、大好きは恋人って図式が現在進行形だな)
 諸々経た盛大な勘違い、中々正すことが出来ない。
 だから、アウローラはでかい声で「私とアキラさんは恋人同士ですから!!」と言い切り、その度に晶の精神が削られていく。
(だが、チョコレートを渡す相手がいるなら、それは言ってはダメだと教える必要が───)
「ご馳走様でした! やっぱりアキラさんの料理は美味しいです!」
 晶の思考はアウローラの声で遮られた。
 満足といった様子のアウローラは「デザート食べていいですか?」とご機嫌に聞いてくる。
「冷蔵庫の中にデザートなんてあったか?」
「ありますよ! 買って来ました!」
 晶が首を傾げていると、アウローラは冷蔵庫の中から晶の悩みの原因を取り出した。
「チョコレートです! バレンタインデーという日のお陰でお店に沢山チョコレートがあったので、悩んじゃいましたが、美味しそうなのをひとつ、買ったんですよ!」
 アウローラはご機嫌な様子でチョコレートの包みをあけ、中から姿を見せた美味しそうなチョコレートに目を輝かせる。
「よく判りませんが、バレンタインデーという日はチョコレートを食べられる日のようですので、とてもいい日ですね!」
「あ、ああ」
 意味知っているのかと聞くまでもない。
 晶は、アウローラが単純に自分が食べるものとしてチョコレートを買ってきたことに気づいた。
 よくよく考えれば、恋人から嫁、しかも子作りにまで話を飛ばすようなアウローラは恋人の基準も子作りによるものが大きく、精神的なものへ及んでいない。元々を考えれば、恋愛するという精神的な感覚がまだ備わっていないのかもしれない。納得したが、このオチには脱力した。
「晶さんもひとつだけならあげますよ?」
「……貰っておく」
 アウローラが差し出すチョコレートを晶は受け取り、口の中へ入れる。
「美味しいですよね!」
「ああ。そうだな」
「美味しいものはお裾分けですよ。私とアキラさんは恋人同士ですからね!」
 アウローラはうんうん頷きながら、チョコレートをもぐもぐ。
 バレンタインデーの意味も恋人の意味も解ってないだろう。
 ちょっとほっとして───晶はほっとしたことに気づく。
 何故ほっとしたのだろう?
 晶は自分でもよく判らない。
「アキラさーん、眠くなってきました……」
 だが、詳しく考える前にアウローラが目を擦り出したので、晶は考えるのを止めて寝る支度を整えてやった。

「……寝たか」
 すやすやと眠るアウローラを見、晶は呟く。
 美味しいチョコレートにご満悦といったアウローラはお腹いっぱいになったので、素直に寝てしまった。
 その寝顔を見れば、今日も楽しく過ごせたのだと判る。
「振り回されたのは、俺だけか」
 思案する晶の溜息は、アウローラの夢の世界には届かないだろう。
 けれど、悩みは解消されたので、よしとするか。

 さて、彼は、否定したラノベの主人公になってしまったのだろうか?
 それは、今後の彼らの日々のあり方で判断させていただこう。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【冬月 晶(aa1770) / 男 / 30 / 能力者】
【アウローラ(aa1770hero001) / 女 / 20 / ドレッドノート】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木です。
発注ありがとうございます。
チョコレートを見たことに端を発する個人的な騒動、ちょっとしたラブコメですね。
振り回したことに気づかないアウローラさん、こっそり脱力した晶さん今後も仲良くどうぞ。
浪漫パーティノベル -
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2016年03月07日

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