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『紅葉色の休日 〜キノコにご用心! 』
綺咲・桜狐(ib3118)

 頬を撫でる涼やかな風。空は高く澄んでいて、とても心地良い。
 目に入るは天を覆うような鮮やかな紅。
 空の青に、紅葉の色が良く映えて、綺咲・桜狐(ib3118)の顔も自然と緩む。
「いいお天気になって良かったですね」
「本当ねー。紅葉も綺麗だし、空気も美味しいし。いい時に来られて良かったじゃない。ね、イゥラ?」
「ん? 別に私はどっちでも良かったんだけど」
 浅葱 恋華(ib3116)に問われて、ぷいと横を向くイゥラ・ヴナ=ハルム(ib3138)。
 そういうイゥラの目は紅葉に釘付けだし、彼女のしなやかな猫尻尾も、機嫌が良さそうにゆらゆらと揺れていて……桜狐と恋華は顔を見合わせてくすくすと笑う。
 3人は休みを利用して山に紅葉狩りにやってきていた。
 ここのところ難しい依頼が続き、疲労を感じていた彼女達。
 ちょっと息抜きしたいわね……なんて話していたところに、桜狐が『こんな素敵なところがある』と話を持ってきた。
 ――その山は紅葉の大樹が多く、天儀でも紅葉の名所として有名で、秋になると山全体が紅葉の赤に染まるのだそうだ。
 そして、秋の味覚も沢山収穫できるとか……。
 その話を聞いた恋華が乗り気になり、イゥラを巻き込んで……そして、この状況がある。
「それにしても、紅葉を見ることを『紅葉狩り』って言うじゃないですか。見るだけなのに、どうして『狩る』なんていうんでしょうね」
「そう言われてみればそうね。恋華、何でか知ってる?」
「あーら。桜狐もイゥラも知らないの? 『狩る』っていう言葉には、『ケモノや動物を捕まえる』という意味の他に、『求めてとったり、鑑賞したりすること』っていう意味があるのよ」
「へー。さすが恋華、物知りですね!」
「まあね! 子供の頃、家で勉強させられたりしたしねー。世間知らずな桜狐はともかく、イゥラは知ってるかと思ったのに」
「戦うのに必要ない知識だから覚えなかっただけよ」
 世間知らずと言われてガビーン! となる桜狐。でも事実らしく反論できないらしい。そして淡々と受け答えるイゥラに、恋華がにまりと笑う。
 きゃっきゃうふふと盛り上がりながら紅葉を眺める3人。
 ふと立ち止まったイゥラに気付いて、桜狐が首を傾げる。
「イゥラ、どうしたんです?」
「2人共あれ見て」
「……んん? あれってキノコ……?」
 イゥラの指差す先を見つめる桜狐と恋華。
 木の根元に、立派なキノコがいくつも生えていて……。
 見渡すと、色々な種類のキノコがあちこちから顔を出している。
「わあ……! いっぱい生えてますね!」
「秋の味覚が沢山収穫できるって聞いてたけど、キノコのことだったのかしら」
「これは圧巻ねえ……。どれも美味しそうだし!」
 思わぬ発見に盛り上がる桜狐とイゥラ、恋華。
 次の瞬間、誰ともなくぐーーーーー……という音が聞こえて来て……。
「……すみません。キノコ見てたらお腹空きました……」
「私も……」
「もー。2人共しょうがないわねー! って、私もお腹空いたけど……」
「あは。良く考えたらもうすぐお昼ですものね」
「そういわれてみればそうね。折角だし、キノコ採ってお昼にしましょうよ」
「いいわね! 焼いてもよし、鍋にしてもよし……! よし、こうなったら誰が一番キノコを採れるか競争よ!」
 言うや否や駆け出す恋華。その後を、慌てて桜狐とイゥラが追って……。
 うら若き、かしまし三人娘。麗しいその容姿とは裏腹に、どうやら花より団子のようです。


「やっぱり私が一番だったわねー♪」
「何言ってるの。私でしょ」
「まあまあ、2人共。どちらも沢山採れてますよー」
 キノコ採り競争の勝敗を巡って、バチバチと火花を散らす恋華とイゥラをまあまあと宥める桜狐。
 3人はめまぐるしい勢いでそれこそ手当たり次第にキノコにアタックをしかけ、色々なきのこを両手いっぱいになるまで採取して、ようやく満足した。
 ここまでしたからには、やることはただ一つ!
 いそいそと宿まで戻り、厨を借して欲しいと女将に頼むと、快く応じてくれた。
 その上、調理器具や調味料も好きに使って良いとの申し出に、乙女達は大喜び。ご機嫌で調理を開始する。
「女将さんがいい人でよかったわねー!」
「ええ。心づけ弾まなきゃいけないわね」
「そうですね。でも、女将さん……毒キノコが生えてることあるから気をつけてって言ってたけど大丈夫でしょうか」
「大丈夫よ! どれも美味しそうじゃない!」
「桜狐は相変わらず心配性ねえ」
 気にする様子のない恋華とイゥラに不安そうな目を向ける桜狐。
 手際よく鍋の中によく洗ったきのこを投入すると、何とも言えないいい香りがしてくる。
 網の上でそのまま焼いたキノコにもしょうゆを垂らし、とても香ばしい匂いが鼻をくすぐって、いよいよ3人の空腹はピークに達していた。
「美味しそうな匂いー! 鍋、もう煮えたかしら」
「素焼きもいい感じに焼けてるわよ! お吸い物もいい感じ!」
「ううう。何かちょっと心配は心配ですけど、美味しそうです……!」
 出来上がった料理を器に盛って、配膳して机についた乙女達。
 いただきまーす! の掛け声と同時に、料理を口にして……彼女達に衝撃が走った。
「……! 何これ! すっごい美味しい!!」
「こんな美味しいキノコ食べたの初めてかも……」
「ああ……幸せです……。こんな美味しいのが毒キノコな訳ないですよね」
 幸せそうなため息をつく3人。その後は猛然と箸を動かし黙々と食べ続けて……用意した料理を、全てぺろりと平らげた。
 ――これが、悲劇……いや、喜劇の始まりとも知らずに。


 食事が終わり、部屋に戻ってきた乙女達。
 部屋の窓からも紅葉が見えてとても綺麗だし、美味しいものもいっぱい食べたし。
 何とも言えない充足感に包まれつつ、身体を伸ばす。
「うーん。美味しかったですねー!」
「さすがにお腹いっぱい! ちょっと食休みしましょ」
「…………」
「イゥラ、恋華。お茶いかがですか?」
「ええ、戴くわ」
「…………」
 問いかけに何も答えない恋華。それを不審に思ったのか、桜狐が覗き込む。
「……恋華? どうかしましたか?」
「あ、あのね……身体が熱くて……変なの……」
「え? 大丈夫ですか? 熱でも出ました?」
 頬を染めて、ぶるぶると震えている恋華の額に手を当てる桜狐。
 彼女の額は燃えるように熱くて、桜狐は目を見開く。
「すごい熱……! 休んだ方がいいですよ。早くこちらに……」
 導こうと動き出した桜狐の手を目にも止まらぬ速さで掴む恋華。
 そのまま、その細い手を撫で回し始めて……。
「はぁあ……。桜狐の手、すべすべで気持ちいい……。指も細くて綺麗……」
「ちょっと恋華? 今はそんなことしてる場合じゃないですよ。ちゃんと休みましょう、ね?」
「真っ白な肌……。ねえ、もうちょっと見せて……?」
「ちょっ。ちょっと恋華……! すみません、イゥラ! ちょっと恋華を寝かすのを手伝……」
 振り返り、そのまま固まる桜狐。
 無理もない。目線の先のイゥラもまた、頬を染めて、ぶるぶると震えていたので……。
「……えっと。あの。イゥラ……? イゥラももしかして身体熱いですか……?」
 恐る恐る尋ねる桜狐にこくこくと頷く彼女。
 こうしている間も恋華の手は収まるどころかどんどん伸びて来ているし。
 イゥラも目をうるうるさせながら近づいてくるし。
 これはマズい。色々とマズい。
 でも、どうして急に……?
 恋華は頻繁にこういう悪戯をしてくることはあるけれど、イゥラは……いや。全くない訳じゃないですけど……とにかく、こういうことは滅多にして来ないのに……。
 ――もしかして。さっき食べたキノコに変な成分が……?
 そんな事を考えていた桜狐。突然、身体の奥から熱が襲ってきてビクリと身体が跳ねる。
 ……何だっけ。キノコがどうしたんだっけ……? 熱い。頭の芯がぼんやりする。
 顔を上げると、恋華とイゥラがキラキラして見える。
 ああ、二人とも本当美人ですよねー。髪の毛サラサラだし、まつげ長いし。
 恋華の犬耳は垂れてて可愛いですし、イゥラの猫耳はピーンとしててとっても綺麗ですし。
 ……ところで、何で二人とも上着を脱ぎ始めているんでしょう?
「あー。熱い。熱くていられないわー」
「桜狐も脱いじゃいなさいよ。涼しくなるわよ……?」
「えっ……。あの……」
 桜狐の服に手をかける恋華とイゥラ。抵抗しなきゃ……と思うも、身体が上手く動かない。
「……ひゃっ!?」
 突然の刺激に悲鳴を上げる桜狐。恋華もイゥラもただ服を脱がせるにしてはこう……寄り道が多い気がする。
 首筋、鎖骨、腕……と順番に撫でられてぷるぷると震えている桜狐を見て、2人はやたら艶っぽい笑みを浮かべる。
「んふ。桜狐ったら可愛いわねぇ……」
「初めてじゃないのに、相変わらず恥ずかしがるのねえ……?」
「あ……あの。恋華、イゥラ……何してるんですか……? あうっ!?」
「も・ち・ろ・ん、イイことに決まってるじゃなーい」
「身体も熱くなって服も邪魔だし、ついでにいいかなーって」
「あの……こういうことはついでにするようなことじゃ……!」
「んー? 何か言ったー?」
「おしゃべりな口は塞いじゃおうかしら……」
 くすくすと笑いながら、しなだれかかってくる二人。
 恋華とイゥラの張りがあって形の良いたわわな胸が腕の上にぽよん、と乗っている。
 それは柔らかくて暖かくて……何だか頭がクラクラして、余計なことまで口走る
「……恋華もイゥラも胸が大きくて羨ましいです。半分でもいいから私にも胸があったらいいのに……」
「あら。胸は大きさじゃないわ! 形よ!」
「そうよ! 大きい胸って垂れて来るから維持が大変なのよ? その点桜狐はいいわよねえ……」
「ううう。二人は胸が大きいからそんなこと言えるんですよ! 小さすぎてブラジャーも要らないかなってくらいなんですよ! 胸が大きく開いた服とかすっごい貧相になるの分かってるから着られないですし!! 私は!! もっと! 胸が! ほしいんです!!」
「桜狐がそんなこと言うなんて珍しいわね〜。ねえ、イゥラ。この子の胸、大きくするの手伝ってあげましょうよ〜」
「あらー。恋華。それいい考えねぇー」
 殊更艶っぽい笑みを浮かべる巨乳達。藪をつついて蛇を出す、というのはまさにこういうことを言うのだろう。
 桜狐が頬を染めて、ふかふかの狐耳をぺたーんとさせているのも、二人にとっては誘っているようにしか見えないらしい。
 しゅるしゅると聞こえる絹ずれの音。
 桜狐の華奢な身体に伸びる腕。あらわになった肌をそっと(閲覧削除)。
「イーゥーラ♪」
「んっ。ちょっと恋華……。今は桜狐の身体を開h……いやいや、胸を大きくするのを手伝うんでしょ?」
「んー。イゥラの胸も大きくしてあげよっかなーって」
「こらこら。これ以上大きくしてどうするのよ……!」
 ついでに、イゥラの胸にも手を伸ばす恋華。柔らかな胸が形を(閲覧削除)。
 だんだんと荒くなる桜狐の息遣い。恋華とイゥラの目もとろんとして、そのまま(閲覧削除)。

 ぴんぽんぱんぽーん♪
 大変過激で(閲覧削除)な表現が続きます為、これ以降はお見せ出来ません。ご了承ください。


「「「惚れ薬の効果があるキノコ!!?」」」
「そうです。この辺に時々生えてるんですよ。何でも味はすごくいいらしいんですけどね。食べると危ないそうで……お客様大丈夫でした?」
 翌朝、収穫したキノコについて話していた乙女達は、宿屋の女将の一言に素っ頓狂な声をあげた。
 昨日キノコ料理を食べた後に身体が熱くなったり、お互いが妙にキラキラして見えたのはそういうことか……!!
 理由が思い当って頭を抱える3人。心配そうな女将に、ええまあ大丈夫……と曖昧に頷いた恋華。
 いいことを思いついたのか、ぽん、と手を打って連れを見つめる。
「ねえ! もう一度あのキノコ採りに行きましょうよ!」
「え……ええ!? 恋華、何言ってるんです!? 昨日ひどい目に遭ったばかりじゃないですか!」
「まあ、ひどい目に遭ったっていうかイイ目に遭ったって言うか……あれ採ってどうするのよ?」
「もちろん、惚れ薬として売るのよー! 私達に効くくらいだもの。他の開拓者にだって効くわよ! 1日で治るし、お腹も壊さないしいいこと尽くめじゃない!」
「えええ!? ダメ! ダメですよ! あれは食べたらダメなやつですよ! ほらイゥラ! イゥラも止めてくださいよ!」
「あー。それは確かに買う人いそうね……」
「イゥラ!!?」
「そうと決まれば善は急げよ! 早速収穫しに行きましょー!」
「ええええええええええ!!? 恋華、ちょっと待って……!」
 止めるどころかまるっと同意したイゥラに慌てる桜狐。
 静止の声も空しく、恋華にずるずると引きずられていく。


 3人の賑やかな秋の休暇は、もう少し続きそうだ。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib3118/綺咲・桜狐/女/14/唯一の良心狐
ib3116/浅葱 恋華/女/20/己に正直なお犬様
ib3138/イゥラ・ヴナ=ハルム/女/21/便乗ツンデレ猫

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。

お届けが大変遅くなり誠に申し訳ございません。
仲良し3人組の秋の1日、如何でしたでしょうか。
蔵倫の限界に挑んでください! とのことでしたが叱られないレベルに留めておかないと納品できなくなってしまいますのでこの辺りでご容赦ください。
(閲覧削除)がこんなに乱舞した納品は初めてです、とだけお伝えしておきます。
少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
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2016年03月08日

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