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『想いを形へ 』
エミリオ・ブラックウェルka3840)&アルカ・ブラックウェルka0790)&ラティナ・スランザールka3839
 リアルブルーより齎された文化はクリムゾンウェストの人々に好ましく受け取られている模様。
 この時期の文化はとても喜ばれる文化の一つ。
 その名はバレンタインデー。
 エミリオ・ブラックウェル(ka3840)は街で買い物を終えて満足顔で広間を横切っていると、露天の商人達が大声で宣伝している。
「この時期はリアルブルーによると、バレンタインデーの日だよ!」
 ひときわ大きな声の商人が手を広げてアピールをしはじめた。
「バレンタインデーというのは、好きな人に贈り物をする日、ここで好きな人に告白をしよう!」
 ぴたりと、エミリオの足が止まってしまう。
 そう、エミリオには意中の人物がいる。
 幼い頃から愛しく見守っており、その想いはまだ秘められたまま。
 いつかはこの想いはきちんと伝える事を決してはいるのだが……。
 広間の話を聞いたエミリオは贈り物はしようと心に決めた。
 何を贈ろうかと顔を上げると、そこには幼馴染にして恋敵のラティナがエミリオに気づいていた。
「……今の話、聞いていた?」
「ああ……」
 お前もかとばかりにラティナもうなだれる。

 日を改めて、エミリオとラティナは肩を並べて歩いている。
 現在、歩いているのは辺境は要塞都市【ノアーラ・クンタウ】の街中だ。
 店が連ねる通りはとても活気がある。
 ラティナは依頼に応じる時の服装よりはラフな格好をしているが、エミリオは故郷の民族衣装の女物を着ていた。
 一見すると、二人がカップルのように見えてしまうのだが、主にエミリオから発せられる険悪なオーラで何か違うと思わされてしまう。
「……じゃぁ、終わったらここで」
「わかった」
 エミリオとラティナが別れて行動となる。
 一人となったラティナはそっとため息をついて目的の店へと向かう。
 ラティナが渡そうとしているのは蒼い石を研磨し、チョーカーにしようとしている。
 鉱石が多く取れる辺境ならばきっと、いいものがあるだろうと思ったから。予想通り、良い石が並んでおり、色や大きさや質を吟味していく。
「青い色をお探しかい?」
 店屋の親父が言えば、ラティナは頷いた。
 元々、その色で贈る予定だったのは彼女の瞳の色が青色だったからかもしれない。
 ラティナの中に印象付けられているのはその青よりも篝火に照らされたあの横顔だ。十年経過した今でもあの幼い横顔はラティナの脳裏で鮮明に甦る。
 鮮やかな蒼色の原石を見つけたラティナはそれを買った。
 次はチョーカーにするための皮を探しに店を移る。

 一方、エミリオは気分を取り直して店を歩いていた。
 今回の目的は蜂蜜である。
 店を見てまわったが、あたりはずれが多いという印象がある。
「ちゃんと吟味しないといけないわね」
 味見をさせてくれる店を中心に蜂蜜を吟味していき、とある店で「これは」と思う蜂蜜を見つけた。
 産地も目的の場所のものだ。
「気に入ったかい?」
要塞都市の中なのだが、どこの国の者なのか全くわからない服を着ている主人に声をかけられる。
「ええ」
 お世辞ではなく、素直にエミリオは頷く。
「その服の系統だと、同盟の人かい?」
 今日のエミリオの服装はいつもの動きやすい服ではなく、黒と赤を基調とした民族衣装である。
 広がった袖のブラウスの上に黒のチュニックを合わせており、赤地に小花を散らした刺繍の帯でウェストマークをつけている。
 ツインテールはそのままであり、結び部分には草花の飾りがつけられていた。
「わざわざ辺境にくるとは、嬉しいねぇ。この蜂蜜をソースにして使ってくれる店があるよ」
「そうなの?」
 興味を示したエミリオはその店の名前を教えてもらった。
 辺境の郷土料理ではなく、帝国から来た店だという。
 買い物を終えたら、昼食にしようと考えているので、味見がてらそこでランチにしようとエミリオは考えた。
「肉料理が美味い店だから、可愛い子ちゃんのアンタにはきついかもな」
「あら、平気よ☆」
 ウインクするエミリオは店名を聞いた。

 買い物を終えたエミリオが待ち合わせの場所に戻ると、買い物を終えて待ち呆けているラティナを見つけた。
「待たせたわね」
「今ついた」
「ランチ、行きましょ。おなか空いてるでしょ」
「ああ」
 再び二人が肩を並べて向かう先は先ほど、エミリオが聞いた蜂蜜を使ったソースを出してくれる飲食店。
 入り口には「飲食店 ルクバト」とあった。
 中に入ると、活気があってとても賑やかだ。
「いらっしゃい!」
 エプロンドレスの娘が新しいお客であるエミリオとラティナに声をかける。
「二人だけど」
「こちらへどうぞ!」
 人数を確認して、店員の娘がテーブルへと案内する。
 お品書きが出てきて、三種類のランチメニューが書いてあった。
 それぞれ注文して、店員の娘が笑顔で注文を承ると、二人の間だけは沈黙となる。
 黙っているのは時間が勿体無いとばかりに口を開いたのはエミリオだ。
「まだ諦めてないのね」
「当たり前だ」
 エミリオの言葉の真意を察したラティナが毅然として返す。
 そんなラティナの返答は予想の範疇である。早々と諦めるのであれば、別の意味でエミリオは腹を立てるだろう。
「全く、昔は私の後ろについてくるだけだったのに」
「それは物心ついた四歳、五歳の頃だろっ」
 何かと一緒にいたラティナはよく懐いていたのにとエミリオはげんなりとしたため息をつく。
「ついて遊ぶのは構わないけど、私の後から好きになったんでしょうがっ」
 最後の部分の語尾を強くすると同時にじろりとアメジストの瞳がラティナを射やる。
「時間の速さは関係ないだろ、俺だって好きなんだ。譲れねぇ」
 エミリオの眼光に怯むことなく、ラティナがしっかりと言えば、エミリオは「よく言ったわね」と返した。
 可愛らしい顔が凄みを増して行く。
 この二人の想い人は同じ人物であり、子供の頃からずっと思いを秘めてきた。
 お互いに幼馴染であり、少なからず好意は持っている。
 しかし、この恋だけは譲れない。
「あの子が太陽であれば、あの子の兄は月。私は星なのよ! 星は月がなくとも太陽と共にあり続けるのっ」
 げしっと、エミリオの靴のつま先がラティナの脛に当たり、頑張ってポーカーフェイスを通しつつ、歯をしっかり食いしばる。
「月は真昼にだって現れるぞ」
「おだまりっ」
 二撃目にもしっかり耐えるラティナ。
「あの子にふさわしいのは家事万能な優雅な私なのよ」
 殺気でも出ているのかというエミリオの気迫にラティナは内心怯むも、その顔だけは絶対に出したくない。
「俺だってずっと好きだったんだ。彼女の心も身体も全部ほしいし、守るって決めたんだ。そう、やすやすと諦めたり、他のやつに渡したりなんかするもんかっ」
 ラティナはエミリオの気迫にタジタジだが、彼女を思う気持ちは負けるつもりなどはない。
「こ……」
 油を注ぐラティナの言葉に更にエミリオの気迫は炎上してしまい、三撃目を入れようとした瞬間……!
「ラティナ!」
 明るい声が奥のテーブル……ラティナとエミリオが座る席へ投げ、その声に反応したエミリオが足を止める。
 エミリオが振り向くと、そこにいたのは太陽の光の如く眩い金の髪の少女の姿。
 蒼い瞳は抜ける空のようであり、白い肌にふっくらした赤の唇のコントラストが美しい。
 まさしくは、二人の太陽の女神か天使かのアルカだ。
「アルカちゃん!」
「エミリオも一緒だったんだ」
 にこりと笑みを向けるアルカが眩しすぎてエミリオは「あぁ……っ!」と内心ときめかせている。
 なんという奇遇か、運命なのか、今日のアルカの服装はエミリオと少し似たタイプの服装であった。
 エミリオはこの出会いに対し、何に感謝していいか分からないほど。
「お取り込み中かしら」
「気にしなくてもいい」
 そう言ったのはドワーフ工房の技師であるカペラだった。
「あら、カペラちゃんに、フォニケちゃんも」 
 ようやくフォニケとカペラに気づいたエミリオが声をかけると「まぁね」とフォニケが笑う。
「フォニケ、カペラ、紹介するよ。ボクとエミリオの幼馴染のラティナだよ!」
 アルカがラティナを紹介すると、カペラは一度会ったことがあると返した。
「そうなんだ」
 ラティナとて、好き好んで惚れた女に毒パルムの件を知られたくなどはない。
「アルカちゃんのお出かけ先って、要塞都市だったのね」
「うん! フォニケとカペラに会いたくなっちゃったし、一緒にお昼を食べようかなって、ドワーフ工房に行ってたんだ」
 笑顔のアルカにエミリオは少し妬かないでもないが、二人が好きなのは知っているので、仕方ない。
 隣の席は二人がけであり、エミリオ達が座っているのは三人がけの為、アルカはエミリオ達の席に座る。
「今日、ドワーフ工房に行ったら、焼き菓子を貰ったんだよ!」
 アルカの言葉にエミリオが目を丸くする。
「バレンタインデーで、フォニケとカペラがシェダルにお願いして作ってもらってたんだよ! 日持ちするからって、イオタがボクにもくれたんだ。家に帰ったら分けようね」
 アルカから飛び出す言葉にエミリオとラティナは心臓をどきりと跳ね上げさせてしまう。
 悪いことはしてないのだが、何となく後ろめたく思えてしまう。
 その前に、何故イオタがと二人の中で疑問が浮かぶ。
「イオタがね。リアルブルーには、この時期に中のいい友達へプレゼントするのはトモチョコっていうんだって、教えてくれたんだ!」
 新たなライバルが出たのかと冷や汗をかきそうだったが、それならば仕方ない。
「ボクもイオタに贈り物しなくちゃ! 勿論、カペラやフォニケにも!」
 友達に贈り物をすることに意欲を燃やすアルカだが、エミリオとラティナは雷撃が直撃したかのようにショックと硬直で止まってしまう。
「あ、そうなの。イオタちゃんとは仲良しだから、当たり前よね」
 頷くエミリオだが、動揺でスープを掬おうとしているスプーンを持つ手が震えている。
「ああ……友達を大事にするのはいいことだ」
 同意するラティナも肉を切るナイフか肉に当たらず、皿を切っている状態。
「もっちろんだよ!」
 笑顔全開のアルカは二人の様子は気にしてない模様。
「他にもあげないのか……」
ナイスな切込みをしたのはラティナだ。
「えー。他にも……? 工房の偉い人?」
「そうじゃないのよっ!?」
 首をかしげるアルカにエミリオがツッコミを入れてしまう。
 そんなやり取りに聞き耳を立てつつもお肉にかぶりついていたフォニケだが、仕方ないとばかりにアルカの方を向く。
「カペラちゃんはお父さんにあげると聞いたけど」
「家族にも?」
「そうよ。お父さん、好きだもの」
 付け合せのポテトを食べていたカペラが頷く。
「そっかー……」
 ちらりとアルカが見やったのはエミリオとラティナ。
「二人はいる?」
 首を傾げて尋ねるアルカに二人は同じタイミングで叫んだ。

「いる!」

 即答する二人にアルカは「何がいい?」と尋ねてきた。
 二人は顔を見合わせてどうしようと言う状態。
「……バグラバ」
 それしか思いつかなく、アルカは「わかったよ。皆で食べよう」と返した。
 笑顔のアルカにエミリオとラティナは「ええ」「楽しみにしてる」と頷くのは表面上。
 内心は歓喜で打ち震えている。
 色々と引っかかるものはあれど、アルカからもらえるのは嬉しいのは事実。
 ランチを終えて、三人がカペラとフォニケと別れる際、フォニケは思い出したように振り向いた。
「リアルブルーの一部の地域では、ホワイトデーというお返しをする地域があるみたいね」
 もう少し頑張りなさい。と言って、二人は工房へと戻っていった。
 彼女が言ってる事を察したエミリオとラティナは複雑な心境でアルカと共に帰路に帰る。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3840 / エミリオ・ブラックウェル / 男性 / 17歳 / 機導師】
【ka0790 / アルカ・ブラックウェル / 女性 / 16歳 / 疾影士】
【ka3839 / ラティナ・スランザール / 男性 / 17歳 / 闘狩人】

ゲストNPC
カペラ(kz0064)
フォニケ

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。
鷹羽柊架です。
今回は御発注ありがとうございました。
浪漫パーティノベル -
鷹羽柊架 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2016年03月15日

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