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『今日から明日へ 』
ガルー・A・Aaa0076hero001)&木霊・C・リュカaa0068)&オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&紫 征四郎aa0076

●明日も一緒なら当然
「4人だとやっぱり買う量が多くなるよね」
 木霊・C・リュカ(aa0068)がそう言い、くすりと笑う。
「肉がなかったから、な。野菜も冷蔵庫の中だけでは足りない、し」
「リュカちゃんオリヴィエちゃん食わない女子みたいなもんだしな」
「その言い回しコメディアンみたいだなぁ」
 オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)がリュカに応じると、即座にガルー・A・A(aa0076hero001)が反応する。
 リュカのオリヴィエよりも早い切り返しは、オリヴィエとは違う慣れを感じた。
「あたまをたくさん使って征四郎はおなかすいているのですよ。今から晩ごはんがたのしみなのです!」
「食い過ぎるなよ、征四郎」
 そう言う紫 征四郎(aa0076)へガルーは自分と食べる量が一緒にならないのに対抗したがる征四郎へ先に注意した。
「流石お母さん」
「誰がお母さんだ」
「だって、ガルーちゃん世話焼くの好きだし」
 リュカが微笑ましく言うと、ガルー即反論、けれどリュカは「オリヴィエもそう思うよね」とオリヴィエへ話を振る。
「何故そこで俺に話を振る、んだ」
「せーちゃんの次に世話を焼かれてるじゃない」
「頼んでは、いない」
「でも、それが普通だと思ってるよね」
 オリヴィエは最終的にリュカの言葉に沈黙した。

 本日、彼らはH.O.P.E.東京海上支部で幾つかの状況を想定した戦闘のシュミレーション及びディスカッションという形式の研修を受けていた。
 夕方に解散となったが、明日、彼らはH.O.P.E.ムンバイ支部で任務があった。
 インドにある、どこの傘下でもない弱小のヴィランズが最近勢力を拡大している……その拡大のスピード等諸々不明点も多く、愚神が1枚噛んでいる可能性があることより、摘発に動くというものだ。
 明日も一緒であるなら、征四郎とガルーがお泊りに足を運ぶのは当然の流れ──何故なら、2人はかつて居候していたから。

「今日も疲れたー!」
 リュカが玄関でばったり倒れ込む。
 が、オリヴィエは慣れたもので、「まずは冷蔵庫に入れる必要があるものは入れておく」と家の中へ消えていく。
「ガルーちゃん、オリヴィエが冷たいんだけど」
「何でそこで俺様に話振るの」
「お母さんだし」
 リュカがガルーへクレームしている間にオリヴィエは自分が持っていたスーパーのビニール袋からお肉を素早く冷蔵庫の中に入れ、更に洗濯物を取り込みに入っていた。
「あ、お風呂行く時に沸かしてるから。せーちゃんが先に入っていいよー」
「ありがとうなのですよ。出たら、すぐに晩ごはんのお手伝いをするのです!」
 家を出る前、リュカは予約機能を使って夕方に湯が張られるよう設定していたらしい。
 ちょうどお風呂にお湯も張られているからと我が家の紅一点に気を遣ったのだ。
 お礼を言った征四郎がぱたぱたと家の中に消えて行き、その背中にガルーが「肩までちゃんと浸かれ」と声を掛ける。信頼する相棒として戦場を駆けているとは言え、征四郎はランドセルひとつでそわそわする子供でもあるのだ、声を掛けずにはいられないのだろう。
「やっぱりお母さん」
 リュカが楽しく笑っている間、オリヴィエは洗濯物を取り込み、戸締りを完了していた。

●馴染みある夕食の支度
 征四郎とガルーが泊まる為、まず食事の話題になった。
 オリヴィエは基本食事睡眠を取らず(外で必要があれば食べることもあるが許容量は少ない)、リュカも凄まじく食べるという類ではない。冷蔵庫に野菜があると言っても鮮度の観点から征四郎とガルーをカバー出来る量はない。
 この為、帰りに買い物は必須だった。
 ガルーからすき焼きの提案がされ、オリヴィエの肉がないという証言に基づき、本日お肉の日に便乗して食べる量を買ってきたのだ。
「オリヴィエ、ここはやるから、後はお願い」
「解った」
 リュカへ洗濯物を畳むのを任せたオリヴィエは、台所に入る。
 先に台所へ入り、割烹着を着用したガルーは早速考え出していた。
「麩があった。となると、関西風も可能……関東風にするべきか関西風にするべきか」
 すき焼きには関東風と関西風の2種類がある。
 割り下で煮込む関東風、肉を焼く関西風……オリヴィエは基本食べないので、その位しか知識がない。
「関東風でいいだろう。スーパーではそういう話だった」
 オリヴィエがそう言うのには理由がある。
 関西風のすき焼きは焼く過程がある分、ガルーの拘りによる作業停止が発生し易い。
 肉の絶妙な焼き加減の為に肉1枚1枚の大きさと厚さ、重さを測り出しかねない。
 ということで、材料も確認、オリヴィエが材料を切り始める。
 その間にガルーは割り下を作る準備を始め出す。
「俺様の天秤、どこしまった?」
 居候していた間の私物は多く残されたまま──つまり、ガルー愛用の天秤も残されている。
「食器棚の上の奥」
 オリヴィエはあからさまに取り難い場所に置いた記憶からの情報を伝える。
 ガルーの天秤計測に付き合ってたら、いつまで経っても夕飯とならない。
「お前さんら、料理は正確にだな……」
 長身のガルーでも取り難い場所である為、ガルーが踏み台を探しに行っている間、オリヴィエは遠慮なく割り下を『適量』で作ってやった。
 戻ってきたガルーが抗議していると、ほかほかの征四郎が戻ってきて、「オリヴィエはわるくないのですよ」とオリヴィエ支持に回る。
「ガルーはそもそもこまかすぎるのですよ」
 伊達巻作るのにだって、卵黄と卵白、それぞれの重さを測り、比率がどうとか言い出すと征四郎は主張。
 とは言え、ガルーがここで最も料理が出来るのは変わりない。
 征四郎が踏み台を持ち出し、葱をトントン切り出すと、オリヴィエも春菊に続き、椎茸を切り始める。
「こういう時だけ本当に息合うよなぁ」
 ガルーはそう言いながらも、牛肉を手際よく切り、すき焼き鍋で煮る準備を始める。
 切り終わる頃には、ちょうどいい時間だろう。
「いい匂いがしてきたね。2人だとすき焼きってしないから、家ですき焼き食べるなんて久し振り」
「そういえば、家でお鍋ってあまりしないのです」
 洗濯物を畳み終わったリュカが食器を運んできた征四郎とのんびり会話を交わす。
 オリヴィエが溶いた生卵や〆のうどんを運び、ガルーがすき焼き鍋を運んでくれば、準備完了。
 4人で楽しくすき焼き食べよう。

●楽しい夕飯
「おにく! たくさんあるのですよ!」
「今日お肉の日で本当に良かったよね」
 征四郎が牛肉を溶き卵に潜らせ、美味しい美味しいと食べると、リュカは微笑ましそうに笑う。
 ちなみに、割り下は木霊家レシピ、酒呑みを考慮した配分だそうだ。
(材料もちゃんと危なげなく切れるようになったみたいだしね)
 少し安心したかのようなオリヴィエの様子を見ていれば、征四郎の包丁捌きに成長があることは判った。
 そのオリヴィエもこの世界に来てから家事を覚えているらしく、成長の跡が見られる。
 ……誓約を交わす前も祖父が残してくれたここで独り暮らししていたから、家事は一通り問題なく出来るのだが、ありがたいことに気がついたらオリヴィエがやってくれていることが多い。夜寝ない彼は読書をすることも珍しくはないから、本できちんと学んで実践してくれているのだろう。
「肉もちゃんと食べなきゃダメだって。征四郎を見習え」
 ガルーがオリヴィエへ肉をせっせとよそっている。
 世話焼きお母さんといった具合だが、最近、口まで直接運ぶ光景はあまり見なくなっている。
 リュカも征四郎もその理由は判らないが、ガルーはほんの少しだけ、子供扱いを控えているようだ。
 その理由説明をするに際し、恋人繋ぎというからかわれる要素に触れねばならず、その恋人繋ぎの大元は自分達が贈ったガトーショコラがあるなんて当然気づかない。
「征四郎がくいしんぼみたいに言わないでほしいのですよ。ちゃんとお野菜も食べてるのです!」
「バランスいい食生活が大事だからな。お前さんは食べなさ過ぎ」
 征四郎に答えたガルーはオリヴィエをそうやって見るが、オリヴィエは「英雄は食べなくても問題ない」と呆れ顔。
 リュカの家に居候していた間、こうした食卓は日常茶飯事であったし、彼らが泊まりに来ればこのようにいつもの食卓は当然のように顔を出す。
「リュカ、おにくおいしいのですよ?」
「ありがとう、せーちゃん」
 鍋をすると、征四郎がリュカの小皿に具を取ってくれるのもいつものこと。
 リュカに出会って、甘えることを知った征四郎は、リュカの為に沢山のことをしたい。
 心から甘えられる数少ないこの人は、こんな自分に気づいていて、それを受け入れてくれる人。優しくて大好き。
「そろそろ〆のうどんかな」
「割り下を少し足した方が良くないか。その場合の配合は」
「入れるぞ」
「あっ」
「ガルーは気にしすぎなのです」
 リュカと会話をしているガルーの目の前でオリヴィエが〆のうどんを容赦なく投入、思わず声を上げたガルーへ征四郎が援護射撃。
 〆のうどんを食べ、ガルーの主張により用意されたバニラアイスとイチゴの盛り合わせを冷えてて美味しいと仲良く食べてご馳走様。
 食後にお喋りしたら疲れもあり、すぐに眠くなった征四郎の為、オリヴィエが布団を敷きに腰を上げる。
「せーちゃんの買い置きの歯ブラシと歯磨き粉はいつもの場所にあるよ」
「ありがとうなのですー……」
 リュカに言われた征四郎はのろのろと立ち上がり、洗面所へ歩いていく。
 私物を残しているとは言え、歯ブラシのような日々のものついては清潔面を考慮し、買い置きを残す形だったのだ。
 征四郎が歯磨きを終える頃にはオリヴィエによって布団が敷かれ、征四郎は持参のシャチのオルカを抱えておやすみなさい。

 さて、征四郎が眠った後はというと──
「やっぱ飲まないと一日が終わらないよね、乾杯ー!」
「リュカちゃん、乾杯10回目だけど」
 リュカの乾杯に付き合いつつ、ガルーがツッコミした。
 しかも、呑んでるのビールじゃなくて日本酒だし(リュカが言うには赴きある日本の平屋建ての我が家では日本酒がいいらしい)
「お前さん本当酒強いね」
 リュカのペースで呑んだら危険ということは居候時代に学習済みのガルーはちびちびと付き合う形。
 そこまで弱くないが、潰されてもなぁという所である。
 ガルーの場合、呑むとテンション高くなるが、危険水域に到達すると泣き上戸というオプションが追加される。ここまで来ると本人の記憶にないらしく、回避したいらしい。
「そう? でも、楽しく呑めるお酒って最高じゃない」
 笑いながら呑むリュカを、ガルーは強いと思う。
 年齢的な意味でも親友のような家族のようなこの男は、自分にとっての当たり前が当たり前ではない。だから、優しいのだろうとも思う。この男の優しさの根源は、自分ではどうすることも出来ないものがあり、その無力感に幾度となく打ちのめされたからだろう、とも。
 だから、精神的に強く、征四郎に手を差し伸べ、征四郎が心から甘えられる数少ない人間になれている。
 ガルーは朧ろでも自身の記憶にある多くの事柄があるからこそ、リュカのそれに尊敬を覚える所があるのかもしれない。
「そろそろ日付が変わるぞ」
「あ、もうそんな時間か」
「寝るか」
 時計を見たオリヴィエに声を掛けられ、リュカとガルーも就寝することにした。

●不器用に優しい『兄』
 真夜中、征四郎は目を覚ました。
 トイレ、トイレに行きたい。
 けれど、リュカもガルーも寝てる筈だ。
(う、うぅ……)
 征四郎、布団の中でもぞもぞ。
 夜中風が出てきているらしく、時折、ガタガタという音がしている。
 廊下に出て、トイレに向かうにしても距離はあるし、ちょっと大丈夫かな。
(日本家屋は音が響くのですよー)
 ガマンは良くないのです。それに、この寝巻きはリュカの家に置いたままですが、リュカが買ってくれたパジャマで、桜色に桜の刺繍とお気に入りなのです。
 でも、トイレまで音が……ゆ、幽霊が怖いわけではないのです。
 征四郎は普段は息が合うけど起きてこないガルーに謎の言い訳をし、やがて、本当に我慢出来なくなり、シャチのオルカ抱えつつ、襖をそっと開けた。
 真っ暗な廊下は時折、心細い灯りはついているが、予測出来ないタイミングでガタガタと音が響くので、落ち着かない。
(ろ、廊下を曲がれば……)
 征四郎が廊下を曲がった途端、オリヴィエがいた。
「ひゃあっ!?」
 征四郎はぴっと飛び上がった。
 オリヴィエも予想していなかったらしく、珍しく驚いている。
「オリヴィエ、驚かさないでほしいのです。怪我はないです?」
「ない。征四郎は、トイレか?」
「そうなのです。オリヴィエは……読書です?」
 寝ないオリヴィエは読書したり、屋根の上で星や雪を見ると征四郎は知っている。
 出てきたのは、この住居の続きにある古本屋部分。
 手にしている本を察するに売り物の本を読んでいた訳ではないが、静かに読める場所でもある為、そちらで読書をしていたらしい。
 ちなみに、読んでいたのは自動小銃のカタログである。AGWではないものだが、素直に興味がある部分なのだろう。……征四郎にはちょっと難しくてよく解らないが。
「征四郎、何してる」
 オリヴィエに声を掛けられ、征四郎は我に返る。
 トイレに行く廊下を少し行った所にオリヴィエがいて、言わずとも付き合ってくれるのだというのは判る。
 実兄よりも兄らしいオリヴィエは多くを語らないが、リュカとは違うやり方で征四郎に優しいと最近思うようになった。
(こういうの、不器用というのです)
 うん、と納得した征四郎はオリヴィエと共にトイレへ。

 尚、同時刻。
「せーちゃんの声は家の音と違うからね」
 悲鳴で少し目が覚めたリュカが久し振りの風物詩にくすりと笑い、オリヴィエに任せるようにして眠りに落ちた。

●そして、今日がやってくる
 夜明けと共にガルーが目を覚ました時には、炊飯器のご飯は炊き上がっていた。
 洗濯機が動いている音がするので、オリヴィエが洗濯してくれているようだ。
「えーと、俺様は糠漬けの準備、と」
 糠床をかき混ぜる必要があることより、泊まり確定時点で幻想蝶に糠床を持ち込み、木霊家到着でかつての定位置に置いていた糠床を出し、ガルーは漬けてあるキュウリやニンジンを取り出しに掛かる。
 そうしていると、外の掃き掃除を終えたオリヴィエが戻ってきた。
「手際がいいなー」
「リュカは朝が弱いからな」
「あー」
 ガルー、納得の声。
 ギリギリまで寝かせるとして、とガルーはオリヴィエと共に朝食の支度を開始。
 おにぎりと味噌汁担当のオリヴィエと卵焼きと漬物担当のガルーといった所だ。
「料理は大雑把だよな。やっぱ食わねぇから」
 オリヴィエの料理の手並みをガルーはそう評したが、玉子焼きに拘りまくるガルーは全員の好みに合わせた調味料配分で作ろうとしているので、真ん中がいいというのは征四郎の話である。
 暫くして、その征四郎が起きてきた。
「リュカはまだ起きていないのです?」
「そろそろ朝食だから、オリヴィエと起こして来い」
 ガルーは玉子焼きに夢中でそう言ったが、出来上がった食卓に誰も戻ってこない為理解する。
 抱き込まれたか。
「ったく、何やってんだか」
 フライパンとお玉を持ち、ガルーはリュカの部屋へ。
 直後、予想通り、布団をぽふぽふしていた征四郎と呆れるオリヴィエを強制的に抱え(征四郎は抵抗したがオリヴィエは最初から諦めてる様子である)、まだ起きない低血圧リュカはフライパンをガンガン鳴らされ、最終的に布団を引っぺがされた。
「シェフがひどい」
 リュカが顔を覆うが、勿論嘘泣きである。

 朝食も終われば、出発の時間だ。

「今日も誰かの明日を守る為に! なのです!」
「ん、行こう」
 リュカの家にあったリュカの見立ての紫苑色のワンピースを着た征四郎が元気良く靴を履いて宣言すると、靴を履いたオリヴィエが立ち上がる。
「今日も重々、死なねぇようにな」
 ガルーも靴を履き終わり、最後にリュカが靴を履き終わって立ち上がった。
「ふふ、さ、今日も行こうか。新しい物語が待ってるよ」
 その物語が、忘れられないものとなるように。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【紫 征四郎(aa0076)  / 女 / 7 / 能力者】
【ガルー・A・A(aa0076hero001)  / 男 / 30 / バトルメディック】
【木霊・C・リュカ(aa0068)  / 男 / 28 / 能力者】
【オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)  / 男 / 10 / ジャックポット】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木です。
この度は発注ありがとうございます。
「想い思うひと時 」「その間柄に浪漫はなく」の後日談的に執筆させていただきました。
4人にとってはありふれた光景であるよう、今回は特別なイベントという色合いを消しています。
その空気が少しでも出せるよう心掛けさせていただきました。

尚、紫苑には追憶という意味があります。
リュカさんの物語が忘れられないものであるように征四郎さんも願っているという意味を込めさせていただきました。
浪漫パーティノベル -
真名木風由 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年03月22日

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