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『聖を汚すは魔ではなく 』
アルテミシア3869)&アリサ・シルヴァンティエ(3826)

「ええ。お二人も末永く」
 神聖な教会に祝福の鐘が鳴り響く。人々の喝采と拍手。結婚を司る女神像とそれに帰依する聖女の前で誓いの口づけを交わし、永久の愛を誓った花嫁と花婿は幸せそうな微笑みを浮かべ帰って行った。
「……」
 無言のままアリサ・シルヴァンティエ(3826)だった、結婚・生命・豊穣の女神に使えている聖女であるはずの女は笑顔でカップルを見送りチャペルの扉を閉めた。
 この日の為に用意された花、楽譜、言葉、この結婚式に関する全てはもう用済みとなりゴミ屑の様に捨てられ忘れられていく。それらを手に取り片付けながらアリサの仮面を脱ぎ捨て女は式を振り返る。
 新婦が嬉しそうに頬を赤らめながら述べた誓いの言葉、それを祝福する言葉、あれがアルテミシア(3869)への誓いとそれを許し祝福する言葉だと誰が気付いたのだろう。言い回しを、例えば接続詞一つ変えるだけで言葉はその意味を変える。人も樹木と同じ。落ちた葉を養分として木が育つ様に、発した言葉は体幹へ心根へ浸み込み言葉のままに人を変えていく。あの新婦も自らの言葉に導かれ遠からず堕落し背徳の愛に目覚めるだろう。他の女たちの様に。
 アリサの口元に妖艶な笑みが浮かぶ。人とはなんと愚かで薄く浅はかな生き物だろう。心からそう思えた。アリサがアルテミシアに帰依してから、彼女の導きにより何人もの女が堕落した。しかし、周囲の人間どもはその変貌ぶりを嘆きこそするが何故そうなったのか考えようもともしない。
「あぁ。アルテミシア様」
 片付けを終え、うっとりとした声でそう声が漏れた。
 アルテミシアこそが絶対。そんな確信とそれに気づかない下等で愚かな人間への愉悦が心を支配する。
 胸の前で手を組み、瞳を閉じ心に主を思い浮かべる。その姿、声だけではなく、吐息も肌の質感も、舌の温かさも、唇の柔らかさも全て思い浮かべる事が出来る。それほどまでにアリサの心にはアルテミシアが染みつき占領している。もうアルテミシアが目の前になくても、心に思い浮かべるだけで体は火照り、表情は緩み、浅い呼吸と嬌声にも似た甘い声が艶やかな唇から零れ落ちる。
 そこにいるのは聖女などではなく淫猥な娼婦そのものだった。

「いらっしゃい。私の可愛い花嫁」
 声に導かれそっと顔を上げると祭壇の前にアルテミシアの姿があった。その長く細い指からパチンと音が生まれ、アリサの司祭服が黒紫色のドレスへと姿を変えた。この服こそがアルテミシアから贈られた彼女の正装。
 自らの前までやってきたアリサをそっと祭壇に横たえさせるアルテミシア。自らも腰かけ、宵闇のような髪をときながらアリサの視線の先をちらりと見やる。そこには清らかな女神像があった。アルテミシアは嗜虐的な笑みを浮かべ囁く様に問いかける。
「女神様の目の前で聖女が私の妃としてこれからすることは良い事なのかしら?聖堂でそんな淫らな顔をして信者に失礼だと思わないの?」
 そして、誰か見ているかもしれないわよ。と付け加えるように言葉を続ける。そんな事は決してないのだけれど。アリサが扉を閉めれば聖堂には誰も近づけない。ここでどんな大きな音を立てようと誰も気が付かない。人も神も異界の者も何人たりとも邪魔は出来ない。もうここはアルテミシアとアリサだけの淫らで背徳に満ちた空間なのだから。
「祀られるだけで満足している女神など私にいりません。膝を折り祈るだけで救われると思っている愚かな彼女の信者は皆、私たちの糧となり死ぬことも生きることも出来ぬまま苦しめばいいのです。アルテミシア様以外に価値のある者など存在しないのですから」
 少し前なら考えもつかなかっただろう侮蔑の言葉が浪々と生まれてくる。そしてその言葉が口をつく度、何とも言えぬ悦びがアリサの体を火照らせ熱くしていく。
「私はアルテミシア様だけに忠誠を誓う使徒。アルテミシア様の愛に溺れ奉仕することを至上とする娼婦なのです」
 そこまで聞いて満足したのか、アルテミシアがアリサに深く口付けた。
 恋人同士が寝所で秘め事の様にする淫らな音が聖堂に響く。アリサも我慢できなくなったように唇を求め、舌を絡める。深い口づけだけでは足りなくなったのか体が密着し、胸に指が触れ、それが甘い声を誘う。荒い呼吸と嬌声の合間に互いを呼ぶ声は脳をしびれさせるようにただただ甘くその声に誘われ、惑わされ求める行為は激しさを増していく。
 刻み付けるように攻め落とすように聖堂に響く艶やかな声と淫質な水音は聖なる場所を汚し、むせ返る様に甘い香りは女神の脳すら焼くだろう。

「アルテミシア様。貴女だけの淫らな娼婦に、どうか愛を」

 アリサは堕落の闇へ堕ちていく。その闇はいつか彼女を加護する生命と豊穣、結婚の女神すら淫猥と堕落、背徳の女神へ、アルテミシアの使徒へ墜とすかも知れない。
 聖なるものを汚し、貶めるのは魔ではない。いつだって人なのだから。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3869/アルテミシア/女性性/27歳(外見)/真なる魔】

【3826/アリサ・シルヴァンティエ/女性性/24歳(外見)/偽りの聖】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございます。何度もお会いできて光栄です。

今回は台詞以外の部分での表現を多めにしてみましたがいかがだったでしょうか?私自身がいつもお二人の雰囲気に惹きこまれているのですが、魅了し、惑わし惹きこむお二人の魅力が表現できていれば幸いです。

お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。


今回もご縁を頂き本当にありがとうございました。
終わりを迎えるまでにまたご縁があることを心よりお待ちしております。
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2016年03月28日

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