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『古城の蜜宴 』
アルテミシア3869)&アリサ・シルヴァンティエ(3826)

 夜、闇が全てを隠す黒の時間。
 家の中で最も安らぐ場所、それが寝所である。睡眠は人を無防備にする。その為か人々は自分の寝所を心許さない者に見られたり入られたりすることを拒んできた。アルテミシア(3869)が所有する古城。そこでもそれは変わらないだろう。ただし、そこが隠されている理由が人々と変わらず己が無防備な眠りにつくからなのかは定かではないが。
「アリサ」
 扉を開けたアルテミシアが落ち着いた声で名を呼ぶのは彼女に奉仕ことで悦びを得る堕落した娼婦にして忠誠と命、いやその己の存在全てを彼女に捧げた従順な使徒、アリサ・シルヴァンティエ(3826)。
「お待ちしておりました。アルテミシア様」
 1人には、いや、2人で横になるにしても大きすぎるベッドに腰掛け恭しくあげられたその表情に堕落する前の凛とした魔法医師の気高さも、聖女としての処女性も欠片も感じられない。妖しい月明かりに照らされそこにいるのは艶やかで蠱惑的な熟練した娼婦だけだ。彼女が男性との交わりを知らないと言って誰が信じるだろうか。と言っても、後ろ姿だけを見れば信じる者もいるかも知れない。その姿は黒紫の薔薇をモチーフにした王族の着ているだろうドレスであったし、髪に乱れはない。だが、その声が、表情が全てを物語る。
『この女は娼婦、いや淫魔に近い』
 と。黒薔薇のドレスでアリサの傍らに腰掛けたアルテミシアの手を取り騎士が姫にするように口つける。そのまま唇を指先に滑らせると水音を立てながら咥えてしまう。王族の女がこんなことを進んでするとは思えない。指先を咥え舐めながらももう片方のアルテミシアの手を取り、自らの胸に押し当てる。服の上から弄らせ、小さく声を上げながら瞳をじっと見つめる。冷ややかなその金の瞳に見つめられることで高ぶっているのだ。
「アルテミシア様……あぁこの指が、手が私に触れているだなんて。それだけで達してしまいそうです」
 抱きしめるように近づき2人の唇が触れるのを濡れた指だけが邪魔をする。そんなに間近で一方的に愛おしい名を呼び愛を囁く。耳を水音が吐息が肌を高ぶらせ、狂気に満ちた月が脳を麻痺させていく。
「いけない娼婦ね。奉仕しながら自分だけ感じるなんて。そんな風に誘うなんてどこで覚えたの?今私に見せるような淫らな顔で男達も誘惑しているのかしら」
「いいえ。男なんて、人間なんてただの石ころの様なもの。私はアルテミシア様の視線で言葉で吐息で感じ娼婦になるのです。私はアルテミシア様だけの娼婦です」
 耳元で囁かれた声に震えながらアリサはそう言って唇をねだる。その吐息はもう上がり、甘い香りを肌が発する。言葉は盛りの付いた猫の声のように誘惑する為だけに紡がれ、彼女の身体全てが淫らな行為の為に存在するかのようだった。
 アルテミシアの唇が近づけば離したくないとばかりにその唇を吸い、味わうように舌を絡めていく。それと同時に、肌に触れ、吐息の交換を求める。それは慣れた娼婦でもなかなか出来るものではなく、薬などに堕ちずにその技を磨き昇華した熟練の娼婦だけが出来る事なのだろう。
「そうね。男なんかにはアリサはもったいないわ。私だけの淫らな娼婦ですもの」
 その答えに、奉仕に満足したのか、アルテミシアは口角を上げそっと首筋に口付けた。すると、そこには黒水晶のチョーカーが現れる。耳朶に口づければ耳飾りが、髪にキスを落とせば髪飾りが生まれる。
「娼婦なら対価が必要でしょう」
 妖艶に微笑むアルテミシア。その喉奥で笑う声にアリサの身体は新しい疼きを覚えるのだ。

 ベッドの傍らにドレスが乱雑に置かれ、ベッドテーブルには先程の宝飾品が置かれている。月はますます狂気を孕み、庭の黒薔薇がそれを煽る様に脳がしびれるような甘い香りを放ち続ける。

 ベッドの中極上のシーツの上、そっとアルテミシアがアリサを抱きしめる。衣擦れの音がし、庭の黒薔薇と同じ甘い香りが鼻の奥を刺激する。
「アリサ、私の可愛い花嫁」
 先程とは打って変わって優しいキスが唇に落とされる。そこに宝飾品は生まれない。生まれるのは小さなアリサの声と溜息にも似た熱い吐息。それに気が付かない様に、アルテミシアは花嫁の頬や額に唇を落としてく。それは、結ばれた夜の様な甘い蜜を食む行為に似ていた。少しづつ深くなる口づけに戸惑いも躊躇いもなく甘い声をあげるアリサ。その表情は先程の娼婦のそれではなく、愛された満足感と快楽に身を委ねる女の表情だ。
衣擦れの音がして2人の距離がさらに近くなる。2人を覆う毛布で見えない様になっているが、腕や足を絡め、密着しているのだろう。アリサを堕落と背徳の愛に溺れされるように、それはアリジゴクの様にもう逃げ出すことはできない。もっともアリサがこの快楽から『逃げる』という考えを持てばという前提があるが、それももう無理なのだろう。アルテミシアの愛が甘いと知ってしまった。愛に飢えた者は甘い愛を手放すことはできない。それがいつか身を滅ぼす毒であると知ったとしても。

 快楽の夜は第2幕へ。
 古城に秘められ隠された寝所はこの甘美な背徳と堕落を隠すために。無粋な者が、2人の蜜宴を壊さぬように存在する。
 眠りも朝も訪れない古城の退廃的で排他的で淫猥な夜はまだ終わらない。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3869/アルテミシア/女性性/27歳(外見)/死に至る愛を注ぐ者】

【3826/アリサ・シルヴァンティエ/女性性/24歳(外見)/愛の毒を飲む者】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございます。またお会いできてうれしく思います。

今回は寝所のお話とのことで少し後半は初夜っぽい雰囲気に仕上げております。前半と後半の切り替えをお楽しみいただけるようになっていれば幸いです。

お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

今回もご縁を頂き本当にありがとうございました。
お二人が望むエンディングが迎えられますように。

PCシチュエーションノベル(ツイン) -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2016年04月08日

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