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『『桜日和』 』
神代 誠一ka2086)&椿姫・T・ノーチェka1225

 頬を撫でる風に陽射しの温もりが宿り始めた頃。リアルブルー日本で言うところの卒業式シーズン。
 散歩に行きませんか――とどちらからともなく誘い合って神代と椿姫は街中へと繰り出した。
 「負けんなよー」「俺は―に二口!!」通りがかった広場に飛び交う声。一角にちょっとした人だかりができている。
 初詣だ、お祭りだ、と賑やかなことが好きな人たちが、また何かやっているのだろう、とほんの少しの好奇心でその輪を覗き込んだ。
 人だかりの向こう、暗幕の前に置かれた台、その上に二台の携帯ゲーム機。
「さあさ、飛び入りはいないかー! 我こそはと思う猛者は……」
 どうやらゲーム大会が行われるらしい。主催者の雑貨屋店主がゲーム機の電源を入れた。すると背後の暗幕にスタート画面が浮かび上がる。
 観衆から起こるどよめき。リアルブルー出身の機導師が大画面でゲームをという執念から作り上げた装置とのことだ。
「お……」
 神代の声が弾む。映し出されたのはよく遊んでいる落ちもの系パズルゲーム。
 アナログからデジタルまでパズルゲームをこよなく愛する神代の好奇心と興味が疼く。しかし、と自身を制した。
 自分たちは初めての街へのおでかけの最中なのだ。恋人同士になってからの。流石に「参加しませんか」というのは野暮だと分かる。
「椿姫さん、そろそろ行きましょうか?」
 惹かれる後ろ髪を断ち切るために隣の彼女をみれば、こちらの声が届いていない様子。
 何をそんなに熱心に見つめているのだろう。視線を辿って、なるほどと神代は納得する。優勝賞品のうさぎのぬいぐるみ。
「どうです、一緒に参加してみませんか?」
 じっとうさぎのぬいぐるみを見つめる椿姫の耳元で囁いた。

 突如として耳に滑り込んでくる神代の声に椿姫は背筋を震わせる。
 じとりと下から睨みつけるが、神代は涼しい顔。だが滲む笑みが隠しきれていない。
 椿姫はもう一度うさぎのぬいぐるみを見た。どこかで会ったような……。
「私が時々お借りして練習してるゲームですよね。腕試ししてみましょう」
「うさぎ、連れて帰れるといいですね」
 気づかれていた、と視線を逸らす椿姫の肩に軽く手が乗せられる。
「パズルゲーでは負ける気しません……」
 穏やかな笑みの下、パキパキと指を鳴らす神代。
「あ、の……。止めませんけど……。 あんまり相手に可哀そうなことしないでくださいね?」
 参加します、と進み出た神代の上着を引っ張る。
「俺にできることをするのみ、ですよ」
 軽く片目を瞑る神代。その満面の笑みが却って安心できない。

 大会はまず4グループに分かれてのリーグ戦。そして勝ち残った4人によるトーナメント。
 神代と椿姫は別のグループとなった。
 神代の初戦は10歳くらいの少年。「俺の必殺技をみせてやる」とやる気満々なところも微笑ましい。
 少年が三連鎖を決めた直後、沈黙していた神代が動く。1、2、3、4……カウントアップする連鎖。
 大人げない、椿姫が蟀谷に手をやった。いや少年が仕掛けるまで待ったし、子供だと手を抜かず対等に戦ったとも言える。少年も悔しがりはしたが「どうやったの!?」と楽しそうだし。これはこれであり、なの……と鬩ぎ合う椿姫の内心。
 神代に聞けば、恋人が視線を送ったぬいぐるみ、それを彼女に贈るために下手を打つことはできない、と言うだろう。
 ともかく椿姫、神代ともに一勝した。

 神代の二戦目。
(やりこんでいる)
 開始して間もなく、相手の力量に警戒を強める。
 多分同じ日本出身。年代も同じ。相当な修羅場を潜り抜けてきたのだろう。
 相手が四連鎖したところで神代はその意図に気付いた。最初の一連鎖、続く二連鎖、そして三連鎖の後の四連鎖……これは――。
 上げる視線。にやりと上がる相手の口角。
(こいつ……)
 神代の中で火が着く(パズル)ゲーマー魂。
 そっちがそうくるのならば……。
 最初は赤、次は青……向こうが数ならこちらは色で。相手も神代のやろうとしていることを察したようだ。
 勝負は素人目によくわからない次元に突入した。大会での一番の長丁場。制したのは神代。
 試合終了後、熱い握手を交わしたのは言うまでもない。

 椿姫の二戦目。
 神代と弟分が遊んでいるのを見ていたし、最近は神代から携帯ゲーム機を借りて練習もしている。
 元々頭の回転も速い方なのでコツもすぐに掴むこともできた。だが――
「あぁっ!!」
 いかんせん、ゲーム機に慣れてない。うっかりボタンを押し過ぎて思わぬところにブロックを落としてしまったり。
「ヘッタクソ……」
 対戦者の男が吐き捨てる。確かに未熟なのは認めるが……ゲームは皆で楽しく遊ぶものじゃないか、と椿姫も態勢を立て直す。
 しかし序盤の操作ミスが大きく響き逆転することができなかった。
「まともに操作できないのにでてくるなよ。ヘタレ相手にすると萎えるわ〜」
 挨拶もなくさっさと戻っていく対戦者。折角皆が楽しんでいる大会だ、椿姫はぐっと言葉を飲み込んだ。

 リーグを勝ち抜いた神代は準決勝も危なげなく勝ち、迎える決勝。相手は椿姫を二戦目で破った男。
「頑張ってくださいね」
 行ってきます、と対戦台に向かう神代の背からゆらりと立ち上がる殺気が見えたような気がした。
「師匠がんばれー!」
 一戦目の少年の声援。二人で話し込んでいると思ったら師弟関係になったらしい。

 相手は椿姫に暴言を吐いた男だ。年齢的に教え子くらいか。だが手加減はしない。情け? 容赦? ――必要があろうか(反語)。
「どうも。宜しくお願いしますね」
 副音声は『全力で潰す』。
 握手は本気で握り返した。あくまでも穏やかな笑顔で。骨が軋む音? ――聞こえません。
 相手のクレームは常の態度が悪いため流されている。
 普段の行いがものを言うことを覚えておきなさい、とくいっと上げる眼鏡。
「レディーゴー!!」
 ゲームスタート。
 迷いなくブロックを素早く積み上げる。相手が邪魔する隙なんて与えない。
(来た……)
 狙っていたブロックを落とす。瞬く間に消えるブロックたち。
 威勢よく必殺技を叫ぶキャラクター。
 その可愛らしい声とは裏腹に雨霰と容赦なく相手に降り注ぐ灰色のブロック。
 開始一分、対戦者の画面は一面灰色に覆われ、なにもできないまま終えた。
 完全なオーバーキルだ。相手は自分のブロックを消すことすらできなかったのだから。
 大会最速記録。
 崩れ落ちる男を横目に歓声に応える。

 椿姫は苦笑とも溜息ともつかない微妙な息を吐く。
(射的で人を笑っていたけれど貴方の方が……)
 夏祭りの射的。景品のぬいぐるみを取ろうとむきになった自分を笑っていた神代だが……。
 と、思い出した。夏祭り、射的にあった景品のうさぎ。あの子だ!
「はい、椿姫さん。約束のうさぎです」
 あのうさぎ本人かそれとも兄弟か。射的屋店主の奥さん手作りだと言っていたからもう手に入らないと思っていた。
 すっかり忘れていたうさぎとの再会に、先程思ったことは心にしまって
「ありがとうございます」
 ぎゅっと抱きしめた。

 神代宅の庭、今が盛りの桜は風が吹くとはらりはらりと花弁を散らす。
「優しい色ですね」
 神代が庭に長椅子を準備していると椿姫が盆を手に室内から出てきた。
 盆には皿に盛りつけられた三色の団子。
「お花見にはお団子って聞きまして」
 団子の隣の銚子に花見酒か、と期待の目を向ける神代に椿姫が微笑んだ。
「甘酒です」
「それは『酒』と名にありますが……」
 酒じゃないんです、と神代が語る前に
「飲みすぎ注意なので体に良いお酒にしました」
 有無を言わさぬ笑顔に「お気遣いありがとうございます」と返すしかなかった。

 雪の欠片のような花弁が舞い、椿の簪が揺れる椿姫の髪に落ちる。
 艶やかな黒髪に桜の花弁はとても映えた。
 触れたいな、と思った時には神代の手は彼女の髪をまとめる簪に手が伸びている。
 抵抗なく抜ける簪。
「神代さん……?」
 戸惑うような椿姫の声。
 広がる黒髪に少し遅れて薫るのは鈴虫草の香り。自分が贈った思い出の花の香水だ。瑞々しい香りが時間が経つにつれ彼女の体温に馴染み少し甘さが勝るようになる。
 それがまるで自分たちが歩んできた時間のようで――。
 黒髪に指を通した。指先に感じるしっとりとした重み――はとても心地よい。
「神代さん?」
 もう一度名を呼ばれて「花弁が髪に絡んでました」と花弁のせいに。彼女の髪に絡む花弁にさえ妬けてしまう自分に苦笑を零しながら。
「今日はありがとうございました」
「……?」
 不思議そうに首を傾げる神代に椿姫は傍らに置いたうさぎのぬいぐるみを膝に乗せた。
「この子とまた会うことができて……」
「これくらいお安い御用です。 俺も楽しめましたし」
 神代の言葉に嘘はない。確かにうさぎのぬいぐるみを欲しがった彼女のために気合を入れたというのもあるが、実際パズルゲームを楽しんだ。それはもう大いに。
 それに彼女のためというより、自分が喜ぶ彼女がみたいがために参加したのだ。
「椿姫さんの前で格好つけることができて俺は満足ですよ」
 甘えるのが、我儘を言うのが苦手な彼女に冗談めかしてウィンクを送る。椿姫が重ねて礼を述べる前に。
 恋人同士となったのに彼女はいまだに自身よりも神代を優先し立ててくれる。それは遠慮のようにも思えて少しだけ寂しい。
 「子供相手に格好つけても格好悪いですよ」
 体の大きさが全然違うのに、あの子と同じ年ごろに見えました、と椿姫が肩を震わせた。一戦目の少年の事だろう。
 きっともっと我儘を言って欲しい、と素直に言えば椿姫は一歩引いてしまう。だからそれは心の奥にしまって。

『飢えているなら注ぎますから』

 椿姫への言葉を心の中で繰り返す。今は傷つき乾いた彼女の心を癒し満たす時だ。
「男には常に心の中に少年がいるんです。知りませんでした?」
 顔に近い髪を一房手に掬う真似をして頬に触れた。

 神代の手にある椿の簪。彼からの贈り物だ。自分の名と同じ紅い椿。赤い石の首飾りとともに常に身に着けていた。
 彼と共にいないときも、彼が見守ってくれているように思えて。
 彼の言いたいことはわかる。
 多分……。自分に甘えて欲しい、と。
(でも……)
 瞳を僅かに伏せる。自分の中の醜さが椿姫は好きではない。

 彼に打ち明けた――

『愛に飢えている』

 誰にも言うつもりもなかった自分の心の声。なんて醜い想いだろうと思う。誰かに愛されたい、愛されたくてたまらない――ふとした時考えてしまう。誰かのためにと自身の力を使う時もそれはこの想いの裏返しではないだろうか、と。
 ひょっとして自分は見返りを期待してるのではないだろうか、とそんな想いに胸の奥が焼かれるほどに苦しくなる。
 神代は心の内を打ち明けてなお、自分を受け入れ、そして手を伸ばしてくれる。
 椿姫が甘えてもきっと彼は受け止めてくれるだろう。
 でも自身の嫌悪感が酷い。これが何の解決にならないことも知っている。でも覗き込みたくなくて蓋をしてしまいこんでしまう。
 相手を気遣い立てるほうが気持ちが楽だ、と。
 それでも隠し切れずに時々零れてしまうのだけど……。
 彼の指が頬に触れる。出会ったころに比べて彼の指はだいぶ固くなったのではないだろうか。日本にいた頃は高校教諭をやっていた、というのだから当然と言えば当然か。
 触れ合っているとそこから彼の心が流れ込んできそうだ、という錯覚。
「誠一さん……」
 とても大切な人、とても愛しい人。でも甘えることも、我儘も苦手――したくはない。
 これも我儘だろうか……。
 だからその音にされなかった言葉はなかったことにして、蓋をして心の外に。
 首を少しだけ傾けて指に頬を押し当てた。
 自分の抱く愛しさが少しでも伝わるように、と。それだけでは足りない気がして、手を握る。
 どうしたのか、と自分へと向く彼に背筋を伸ばして唇を重ねた。
「椿姫さ……んっ?!」
 少し裏返った声、桜に椿姫に団子に視線が泳ぎ、椿の簪をぐるぐると回す。
 普段は下らない悪戯をしかけては驚いたりする自分を笑ったりするのにこういう不意打ちには弱い。そういうところも愛しいと思う。
「大好きです、とても――」
 柔らかい笑みを含んだ声で告げれば少しの間のあと、「俺もですよ」と告げられる。
「……あ、甘酒も美味しい、ですね。 体が温まります」
「生姜を入れても良いと聞きましたよ」
 流れる空気に居た堪れなくなり、暫く二人桜を見上げた。
 日本でみかけたソメイヨシノとは違い、素朴で生命力に溢れた花。一輪、一輪が春を喜んでいるように。
「来年もこうしてお花見しましょう」
「来年こそは花見酒はいかがです?」
「だから飲み過ぎは……あっ、神代さん!!」
 いつの間にか膝の上から奪われていたうさぎのぬいぐるみ。長い耳がくるんと結ばれていた。
「なんてことを!!」
 慌てて取り返して耳を解く。
「こんなに耳が長いと思わず縛りたくもなるじゃないですか……」
「神代さん……」
 名前を呼んだ時の甘さの欠片もない声音。
「こんな酷い事をするなんて……」
 考えられないとうさぎの耳をやさしく撫でてまっすぐに戻してやる。その間神代には視線もくれなかった。
「そんなに拗ねなくても……」
「ぬいぐるみにも命があるんです」
 拗ねてるのではなく怒っているんです、ときっぱり。
 ぬいぐるみにも心があると椿姫は思っている。彼らは自分が寂しい時や悲しい時そっと寄り添ってくれるし、嬉しい時は一緒に喜んでくれたりする。
「その……俺が悪かったです」
「この子に謝ってください」
「……ごめんなさい」
 肩を縮こませて謝っている姿はまるで子供のようだ。なんだかその様子が可愛らしくて口元が綻んだ。
「許してくれるそうですよ」
 ウサギの前足でむにと彼の頬を押す。仲直りのしるしです、と。
「椿姫さんは?」
「え……?」
 意図が理解できないでいると神代がうさぎに押された頬を指さした。
「誠一さんからもらった大切なうさぎです。可愛がってあげてくださいね」
 頬にそっと唇を寄せる。
 お返しとばかりに腰を引き寄せられ二度目のキスを。

 うさぎのぬいぐるみを挟んだ二人に桜の花弁が降り積もる――……。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名       / 性別 / 外見年齢 / 職業】
【ka2086  / 神代 誠一     / 男  / 32   / 疾影士】
【ka1225  / 椿姫・T・ノーチェ / 女  / 28   / 疾影士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はご依頼ありがとうございます。桐崎です。

お付き合いしてから初めての街へのお出かけをお任せいただきありがとうございました。
きっと「どっちもどっちだろ」と弟分さんに思われているのではなかろうかと思います。
イメージ、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクを申し付け下さい。

それでは失礼させて頂きます(礼)。
浪漫パーティノベル -
桐崎ふみお クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2016年04月12日

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