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『殻の外には 』
イリス・レイバルドaa0124)&アイリスaa0124hero001

 幼いころは、自分が世界に愛されているのだと信じて疑わない。
 優しい両親と、優しい兄姉、太陽は輝き、風は心地いい。
 世界は新しい命を祝福し、人々は笑顔を振りまいてくれる。
 そんな時期が誰しもある。
 だが……
 『イリス・レイバルド(aa0124)』は見つめていた、幼き日の自分。泣くことを知らず、怖いものを知らず。
 今日と同じ明日がずっと続いていく。そう信じて疑わなかったときの自分。
「お父さん、お母さん」
 だが、世界はそんな風には続かない、世界は一転二転くらい、平気で……する。
 殻を破って出た先が、楽園だとは限らないのだ。
 イリスは闇の中にいた。しかし目の前に窓があり、その先には草原が広がっている。
 その先には自分が駆けており、小さな白猫とカラスの友人と一緒に遊んでいる。
「もう何度見たか分かりませんね……」
 その光景は繰り返し繰り返し、決して忘れるなと誰かから言われているかのように何度も見る光景。
 その日イリスは世界には害意があるんだと知った、その日の記憶。
 そう、これから語るのはイリスの幼き時の話、英雄である『アイリス(aa0124hero001) 』と共に戦うきっかけとなった話である。。
   
   *    *

 イリスはその金糸の髪を揺らして草原をかけていた。
 小さな友人たちを追いかけながら、途中で転んでもまたすぐに立ち上がりかけていく。
「まってよ二人とも」
 からからと笑い転げ、後ろを振り返りながら先へ行く二匹を追った。
 ここは自宅近くの草原で、季節ごとの花が咲き乱れるイリスのお気に入りのスポットだった。
 姉からちょうど花が咲いていたことをきいて、いてもたってもいられなくなりここまで来たのだ。
「うわぁ、すごいね」
 一面に咲く白い花たち。そしてイリスが座ると近寄ってくる二匹の友達。
 イリスは親愛の証として花冠を二匹に送った、最近うまく作れるようになったのは兄にうまいやり方を教えてもらったからだった。
「たのしいね」
 その時だった、はたっと猫の友人の動きが止まった。耳をそばだてるようにぴんと伸ばし、そしてどこか遠くを見つめている。
 なんだろう。そうイリスも同じ方向をみつめた。
 するとその先からぼろぼろの旅装束をまとった男が歩いてきていた。
「こんなところに人なんてめずらしいね」
 そうイリスは友人に問いかける、しかし二匹の友人は腰を上げるとそれぞれ別の方向にかけていてしまう。
「どうしたのかな? 用事でも思い出したのかな」
「やぁ、お嬢ちゃん。いい天気だね」
「こんにちわ」
 イリスは突如話しかけてきた青年に挨拶をした。
「元気だね、ちょっと確認したいんだけどさ」
 そう青年はイリスに微笑みかけた、見た感じやせっぽっちで話し方も穏やかな、ちょっと頼りなさ気な青年だった。
「レイバルドさんち知らないかな?」
「ボクがイリス・レイバルドだよ」
「そうか、君が……。じゃあ君のお父さんに用事があるんだ、連れて行ってもらえないかな」
「うん、いいよ」
 イリスは帰路をひた走る。走ってきては行きすぎ、戻ると青年の手を引いて、遅いよなんて言ってはまた走る、それを青年は微笑みを浮かべ見つめていた。
 やがて小高い丘の上に一軒家が見える。大きなおうち、イリス自慢の自宅、レイバルド邸である。
「ただいま! お母さん」
「あら、イリス今日は早かったのね、普段は晩御飯まで帰ってこないのに」
 奥からそれはそれは美しい女性が現れる。エプロンで手を拭いて視線を青年にうつす。
「こちらの方は?」
「あのね、そこであったの。うちを探していたみたいだからね。連れてきてあげたの。あ! それでね」
 そうイリスはポシェットの中身を探る
「お母さん、お母さんのために花の冠を作ったんだよ」
 その時だった、シュッという風切り音が聞こえ、そしてイリスの頬に何か生暖かいものが触れた。
 適度に固く、それでいて粘りを帯びたそれはゆっくりとイリスの頬を伝う。
 そしてイリスが顔を上げた先にみたのは。
 ひしゃげてつぶれた母の顔。
「え?」
 蝶の標本のように、長いものでうちつけれられた母。
 背後の白い壁がおびただしいほどに血で濡れている。
「なん……で?」
 その光景を見て、なぜかイリス母との料理の光景を思い出していた。
 熟したトマトを落してしまい、母に怒られた記憶。
 その時にそっくりだなと、現実味がないふわふわとした感覚の中思った。不意に首根っこを掴まれて揺らされた。
「……、目をそらしてんじゃねぇよ」
 ぎょっとイリスは青年を振り返る。
 そこには、先ほどの穏やかな表情など想像させないほどに、口を目を歪めた青年がいた。
「ねぇ、今の何の音? え……お母さん!」
 姉の声がリビングから聞こえる。
 けど体が動かない。どうしていいか分からない、どうしようもない。
「教えてやるよ、あれが死だ」
 青年はイリスの服を掴み持ち上げると自分の視線に合わせた。
「わかりやすいように言ってやる、もうお前の母上は、お前と話すこともないし、笑いかけることもないし。頭を撫でてくれることもない。ずっと会えない。永遠に会えない」
 その言葉でイリスに突如現実感が戻ってきた、同時に香る血なまぐささ。
 思わずイリスは吐気を催した。
「きたねぇ」
 そう冷徹に言い放つと青年はリビングに侵入。イリスをソファーの側面に叩きつける。
 イリスは痛みでうずくまった。
「お前は、いったいなんだ!」
 兄と父が勇敢にも彼に向かおうとするのが見えた。だが、それはだめだ。
 イリスは直感的に感じていたのだ。それは人間じゃない。
「お父さん、お兄ちゃん。だめ」
 次の瞬間、父の足が、兄の足が吹き飛ばされた。青年の腕がしなる鞭のように孤を描き、そして、父の首を弾き飛ばした。
「きゃあああああああ!」
 姉の悲鳴、呻く兄。
 父へ縋り付くイリス。
「お父さん、なんで、ねぇお父さん、起きて、起きてよ。お父さん! お父さん!」
 撫でてほしかった、安心させてほしかった、イリスはその両腕が大好きだった、温かくて自分に一番甘くて。いろんなことを教えてくれる父が好きだった。
「死んじゃったの?」
 イリスは茫然とつぶやいた。そして青年の言葉を思い出した。
 これが、死。
「イリスちゃん、ゲームをしようぜ」
 青年が言う。震えるイリスの背に向かって言う。
「簡単なゲームだ。クリアできればもう何もしない、約束する」
 イリスは振り返る。もうこれ以上誰も傷つかないで済むなら、何でもいい、そう思った。
 だが、青年が次に口にしたのは、幼いイリスにもわかる単純で残酷な言葉。

「お兄ちゃんとお姉ちゃん、どっちを殺していい? 指さすから、YESかNOで答えろよ」

「え?」
 イリスは交互に姉と兄を見た。
 兄は燃えるような憤怒の目で青年をみつめ。姉は心配そうにイリスをみつめている。
 このどちらかから選べと言うのだ。
 それはいったいどういうことだろう。
「なんで……」
 茫然とつぶやくイリス。
「YESかNOで答えろっていったろ!」
 次の瞬間、兄の足を青年の腕が串刺しにした、鋭い悲鳴が家の中にこだまする。 イリスは息をのむ。
 質問も言い訳もできず、ただどちらを殺すか選ぶ。そうイリスが選ばないといけないのだ。大好きな家族のどちらを殺すか。
「シンキングタイムがなげぇ」
 続いて青年は姉の背を鞭で打った。衝撃で姉が転がり、イリスの近くまで来る。
 本当はイリスは姉に声をかけたかった。けれどそれすら許されない。
 イリスの頭はいっぱいいっぱいだった。
 どうしようどうしよう。早くしないと、でもどっちを選べば。
 そんな言葉ばかりグルグル回り、しかしそれとは別に思い出される光景。兄にいじわるされて怒ったこと。姉とお洋服を買いに行ったこと。
 そんなことばかり思い出して。
 イリスの目から涙があふれた。
「えらべないよ……」
 次の瞬間。強大な重量が兄の頭に叩きつけられた。
 血の花が床に咲く。
「ルール違反。あーあ、お前のせいでお兄ちゃん死んじゃった」
 青年の言葉は理不尽でしかない。だが幼いイリスはそう言って青年の言葉を突っぱねることはできない。
 兄が死んだ、それは、自分のせいだ。
 それどころか、母も父も。
 それは、自分がこの青年を連れてきたせいなんだ。
 そう思った。
「やめて! もう誰もころさないで!」
 叫びがつんざくように響く、しかしその声を聴き青年は心底気持ちよさそうに笑った。
 口を大きくゆがめて、目を見開いて。
「やぁだよぉぉぉ、あははは」
 そしてその腕をイリスに叩きつけようとした。
 その瞬間である。姉が、イリスに覆いかぶさった。
 直後鞭を打つ音が轟き、姉がうめいた。
「そこをどけ」
「嫌です!」
「どけ」
 そう言いながら、なんども、何度も何度も。姉の背を青年は鞭で打つ。
 だが姉は逃げない。ただ強くイリスをだきしめて、その涙をぬぐった。
「どうか、この子だけは、この子だけは」
「お姉ちゃん……」
「お願いします、お願いします、許してください。お願いします。この子だけは、この子だけは」
 姉の口から血が滴った。
「お姉ちゃん、ごめんなさい。ボクが……」
「いいのよ、イリス、あなたは何も悪くないわ」
 その時だった。青年は姉の横腹を蹴り飛ばし。無理やりどかせた。
「思いのほか、反応がつまらねぇな。ころすか?」
 そう笑いながら青年がイリスを見据えた、その時。
 不意に、血なまぐさい部屋に風が吹いた。
 春風のような青臭さ、そして甘い花の香り。
「おまえ……。なんだ」
 警戒心をあらわにする青年。
 その視線を追い振り返ると、そこには金糸の髪を持つ少女がテーブルの上に立っていた。金色の翼を震わせて、開かれたその目は雄大な空を思わせるブルー。
 まるで妖精のように可憐な少女だった。
「いや、それが私にもわからないのだよ」
 少女はふと我に返ると、テーブルの上から降りて青年をみつめる。
「愚神だね、それはなぜかわかるよ、そして醜悪だ」
 少女は周囲を一瞥する、赤、赤、赤。そして横たわるイリス。苦しそうに息をするイリスの姉。
 少女はすべてを悟った。
 次の瞬間、青年の両手が鞭のようにしなり少女へ伸びる。
 それを少女は回避。滑るように追随し青年の腹部を両手で強打。弾き飛ばされた青年は盛大な音を立てて壁にぶつかる。
「行くぞ、小さな女の子」
 その隙に少女はイリスを抱える。その力は信じられないほどに強くイリスは振りほどけない。
「だめだよ! だってお姉ちゃんがまだ」
 そうイリスは姉に視線を向ける。
 だがイリスは、その表情を見て何も言えなくなってしまった。
 姉は、微笑んでいた、涙を一粒こぼし。そして言った。
「イリス、強く生きてね。幸せになってね」
「なんで、そんなことを……。お姉ちゃん!」
 次の瞬間、信じられない脚力で少女は窓を割り外へ。南側に広がる森の中へ突入する。
「させねぇ」
 次の瞬間放たれる無数の触手、それが少女を上回る速さで空を走る。
「これでは追いつかれるか」
 背中で圧迫感を感じ取った少女は瞬時に対策を講じる。
「すまない……」
 そう少女は樹に掌底を放つ、その樹から木の葉が舞い落ちそして少女の姿を隠す。
 触手はその動きを全く追えず、大人しく引き下がっていった。
「熱感知の機能があれば危なかったな」
 それを確認後少女は地面に大量に積もった葉や木の残骸から出てきた。
 大人では無理だが小柄な少女二人を隠すためには十分だったのだ。
「大丈夫か君。怪我はしていないか?」
 そう伸ばされた腕をイリスは払う。
「来ないで!」
 金切り声にも似た叫び、そのイリスの目には怒りと、そして悲しみの涙が宿っていた。
「大丈夫か?」
 少女は優しい声でイリスに語りかける、しかし、イリスは後ずさりそして。
 よみがえってきた恐怖に耐えかねて膝を折った。
「来ないで、来ないでください、おねがい、お願いします」
 よみがえるのは、姉の命乞い。
「お願いします、お願いします」
「安心してくれ、私は君を傷つけない」
「嘘だ! そうやってあいつもボクたちを……」
 そして蘇る記憶、母と、父と、兄の死にざま。
「そうだ、そうだお姉ちゃん、お姉ちゃんを助けに行かないと、生きてた、まだいきてたよね?」
 そうふらふらと立ち上がるイリスの肩に手を置き、少女は首を振った。
「なんで!」
 イリスは涙をぼろぼろ流しながら地団太を踏んだ。
「なんで助けられないの? なんで助けてくれなかったの? なんでお姉ちゃんを連れてきてくれなかったの。なんでなんで!」
「すまない、私にもっと力があれば……」
「ききたくない、そんなこと聞きたくないよぉ」
 
「お姉ちゃんはまだ、死んでなかったんだよぉ。お兄ちゃんをお父さんをお母さんを返して、かえしてよ」

 イリスは少女に縋り付いて泣いた。会いたかった、無性に、父に母に、兄に姉に。
 けれどもう、あの声は帰ってこない、あの手のぬくもりは。みんなで手をつないで帰った。あの喜びはもう二度と。かえってこない。
 帰ってこないのだ。
「ひどいよぉ、なんで、なんでボクこんなめに……」
 そう強く少女の衣服に手をかけると、舞い散る光のつぶ、気が付けば少女の体が半分透けていた。
「ああ、申し訳ない、もう時間切れみたいだ」
「そんな……、勝手に出てきて、勝手にいなくなるの?」
「すまない、君は、何一つ悪くないんだ。悪くないんだよ」
 その少女の瞳がイリスの瞳を捉えた。
 その瞬間、少女はイリスを抱きしめた。
「ああ、君が悪いことなんてあるもんか。だからその怒りも悲しみも当然のことだ。つらかったね」
「消えちゃうの? 妖精さん」
「ははは、妖精か。言われて嫌な気分はしないね」
 そう言うと少女は体を話、ほとんど見えなくなったその手を差し出す。
「せめて君だけでも助けられてよかった」
 消える、消えてしまう。
 この少女も、家族と同じで消えてしまう。
 この少女が消えたら、自分はこのくらい森にただ一人ぼっちになってしまう。
 そうなったら、一体自分はどこに、どこに行けばいいんだろう。
 どうすれば、いいんだろう。
「い……いかないで」
 少女は微笑んだ。イリスの涙をぬぐって、無言で続きを促した。
「一人に、しないで」

「ああ、君が願うのなら、私は君を一人にしないよ」

 その瞬間、祝福の鐘が響き。光の梯子がかかる、少女の姿がはっきりと見え、そして二人の間に見えない何かが結ばれた。
「これからよろしく、ああ、それと私はほとんどの記憶を失っていてね。名前すらないんだ。まずはそこからどうするか決めないとね」

   *   *

 これがアイリスとイリスの出会いの物語。
 殻を破って出た外には残酷な光景ばかりが広がっていた。
 今でも時々そのことをイリスは夢に見るようで、眠りながら涙を浮かべていることがある。
 そんなときはアイリスは歌を歌うのだ。夜の空に凛と伸びる、魂を鎮めるための歌を。
 そしてアイリスはイリスの頬を撫でる。
「私はここにいるよ」
 そうするとイリスは普段の寝顔に戻るのだ。
 そしてアイリスもあの日に思いをはせることがある。あの愚神はどうなったのか、そしてイリスの姉の最後の言葉。
『できれば、私たちが幸せにしてあげたかったな』
 その言葉をかみしめてまた、眠りにつく。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『イリス・レイバルド (aa0124) 』
『アイリス(aa0124hero001)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。鳴海です。
 今回はOMCご依頼いただいてありがとうございます。
 私としても、イリスさん、アイリスさんとはかなり長い付き合いなので。その始まりの物語を任せてもらえるとなり。かなり気合を入れてしまいました。
 その結果ノベルが長めになってしまったのですが。ご容赦いただければと思います。
 普段可愛いお二人を見ることが多いですが、今回はシリアス全開ということで、普段のシナリオ以上にへヴィーな雰囲気で描かせていただきました。
 最後に、一つ確認させていただきたいのですが。
 イリスさんの口調が昔なので、デスマスではないということでしたが。
 一人称はボク、でよかったでしょうか。もし私など別の一人称だった場合。
 もしくは他に修正点があった場合。
 お手数ですがリテイクの依頼を出していただければと思います。
 始まりの物語となると特に重要になると思うので、納得がいくまで突き詰めていければと思います。
 それでは、長くなってしまって申し訳ありません。今後ともお二人の物語にかかわらせていただければ幸いです。
 鳴海でした。ありがとうございました。
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2016年04月25日

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