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『こいのぼりの季節 』
弓月・小太ka4679


「フラさん、近くでお祭りやってるみたいですし行きませんかぁ?」
 弓月・小太(ka4679)がそう言ったのは、チョコレート専門店「チョコレート・ハウス」のテラス席の外だった。同じテーブルにはフラ・キャンディ(kz0121)と保護者のジル。一緒にジュースを飲んでいた。
「え? お祭り?」
 柵越しに声を掛けると、フラは挨拶そっちのけでがたと席から立ちあがった。
「リアルブルーの、こどもの日の祭りだそうですよぅ」
 小太の手にするチラシには、、「端午の節句の衣装で撮影。ちまきの屋台もあるよ」の文字。
「へえっ、面白そう。ジルさん、行ってくるね!」
 言うなり駆け出すフラ。テラスの手すりをひらりとジャンプする。
 ひらめく短いスカートに折りたたんだ足。太腿の裏の白さが目にまぶしい。
「え、ええと……」
「よ、っと。……あれ、小太さんどうしたの?」
 小太、この時ばかりは目を逸らすこともできず真っ赤に固まっていた。フラは自分が何を見せたかも気付かずに小太の手を取る。もっとも、下着まで見えるような状態ではなかったが。
「フラ、最近変質者が徘徊してるそうじゃから気を付けるんじゃぞ! 小太さんや、頼んだぞ」
「うん、分かったよ。ジルさん」
「は、はい……」
 元気に手を振るフラに、頼まれて背筋をしゃんとする小太。
「行こ、小太さん」
「フラさん、そっちじゃなくてこっちですよぅ」
 そんなこんなで、自然につないだ手はどちらからともなく改めてしっかりと握り直されて。見詰め合い、くすっと笑い合ってから同じ方向へと駆けて行った。

「見て、小太さん。柏餅だって〜」
「あ、あんこが入ってるらしいですねぇ」
 会場では早速屋台を見て回り。
「何食べる?」
「い、一度ある程度見てから決めましょう」
「そうだね、ほかにも美味しそうなのいっぱいあるかもだしねっ」
 言い終わるまでに移動するフラ。もちろん手をつないだままなので「はうっ!」と予期せぬ方向に引っ張られる小太。甘酒とかちまきとかもあるようだ。
 その先で。
「見て見て、鯉のぼりだって」
「男の子の出世を願い屋根より高く掲げる風習がある、ですかぁ……」
 青い空を見上げ、今度は目の前の屋台に気付く。
「これは?」
「五月人形……というみたいですねぇ」
 勇ましい兜と鎧の武者を二人でのぞき込む。
「よろしかったら試着してみませんか?」
 女性係員からそう声を掛けられた。
「うーん……」
「鎧兜は好みじゃなさそうですね。でも女性はこんな感じの浴衣です」
 係員、長いたもとを指でつまんでくるりと回って見せる。とても軽やかで涼しそう。
「うん、着る!」
「そちらの恋人さんもどうぞ。鎧兜以外の正装もありますよ」
「そ、そうですかぁ。じゃあ……」
 喜ぶフラの様子に見惚れていた小太。
 しかし!
 この時、まさかあのような展開になろうとは思いもしなかった。



「え?! 下に何も着ないの?」
「昔はそうだったらしいですけど今は違いますよ?」
 隣の更衣室から、フラたちの会話が聞こえる。浴衣は着付けが必要らしい。
 小太の方は一人だ。
「鎧兜なら手助けするんですが、その衣装なら一人でお願いしますね」
 更衣室のカーテンの外から係員の声。多くの人を少人数で対応しているのだから仕方ないですよねぇ、と一人で巫女服の袴をすとんと落としたり合わせを緩めたり。
「あはっ。くすぐったい」
「じっとしててくださいね」
「だ、だめだよぅ」
 着替え中、フラの様子が気になる。
 甘い声も聞こえるので、とっても気になる。何をしてるのだろう。
「はい、できました」
「うわあっ」
 漏れ聞こえるフラの喜びの声。
「……はっ、急がなくちゃですねぇ」
 わたわたと着替えたので自分が何を着たのかいまいち気付かなかったが。
「あ、あのぅ……すーすーするんですけどぉ」
「その衣装はそういうものですよ。さ、出て来てください。写真撮影しちゃいましょう」
 ばっ、と開かれるカーテン。
 そこには、もじっ、と内腿をすり合わせる小太がいた。
 格好は、金色の「金」の文字が大きく描かれた、真っ赤で中途半端に大きな前掛け一つのみ。
「あ、鉞担いで堂々とするのがその衣装の礼儀ですよ。何せ四天王と呼ばれるまで出世した人の由緒ある衣装ですから」
「あ……はい……」
 素直に従ったのは、フラの格好に見惚れたから。思わず鉞を肩に担ぎ感心する。
「小太さん、勇ましいよっ」
 そう囃したフラの格好は、水色の浴衣姿。とても涼やかで、ふわふわの金髪にも合っていた。まん丸な瞳で自分を見つめる様子に……。
「は、はう!?」
 実は小太、「下に何も着ない」とか耳に入ったことなどもありぼんやり着替えていた。振り返ると自分のお尻が真っ白まるるんな感じで丸出しだ。一体どういう下着をどういう風に着てしまったのか。思わず、ぽんっと赤くなる小太。
「あ、あの、後ろだけは見ないでくださいねぇ!?」
「え? ちゃんと壁に下着はそのままって注意書きが……まあ、前からだけなら問題ないのですぐに記念撮影しましょう。いきますよ〜」
 係員、しまったと思うと同時に手早く済ませるいい機会とばかりに急ぐ。
 が、その時ッ!
「きゃーっ!」
「うへへへ。お嬢さん、膝上何センチかな〜?」
 近くで騒動。
「うわあ、ミニスカート丈測り隊が出た〜!」
「ひっく。今日は気分がいいから特別に股下から測っちゃおうかな〜♪」
「し、しかも酔っぱらってる!」
「あ、この甘酒、アルコール分のある甘酒だ……」
 酔っぱらった変態「ミニスカート丈測り隊」に、被害に遭いそうな女性の悲鳴や周りの男性の声が入り乱れる。
「と、取り押さえろ!」
「ひっく……白鳥の湖っ!」
 男たちが果敢にタックルに行くが、自らもミニスカート姿の変態はすね毛もじゃりな足を振り上げ回転。寄ってきた男たちを吹っ飛ばす。
「うわあ……」
 変態、下着は穿いているようだが嫌なものを見たと男たちはたじろぐ。
 そこにっ!
「んもう、小太さんが困ってる時に……それっ!」
「おっと、しっかりした衣装の可愛らしい娘さんじゃねぇか……よしよし、服装はそうでないとな」
 変態、フラの衣装にうんうん頷く。その隙にフラが滑り込んで両足を押さえた。
「小太さん、お願い」
「ま、まかせてくださいっ」
 小太、ぶうんと鉞をぶん回して……。
 ――どがっ!
「お? なかなか勇ましい衣装の少年じゃねぇか……ぐはっ!」
 小太の衣装に感心した変態の首元に鉞の柄をぶち込み、そのまま体重を預けて我が身もろとも後ろに倒した。受け身も取れずに後頭部から落ちる変態。
 そのまま動かず、ノックアウト。
「や、やりましたよぉ、フラさん……フラさん?」
 四つ這いになった小太が振り返ると……自分の可愛らしいお尻と変態の足の向こうで、フラが真っ赤になり湯気を上げて硬直している姿が目に入った!
「は、はうっっ!」
 慌てて後ろに手をやるがもう遅い!



 その後着替えて屋台を巡ったが、フラの方がぽややんとしたままで小太が必死にいろいろ話し掛けるという感じだった。
「フラさん、真っ白なお餅が二つ並んでますぅ」
「う! そ、そうだね」
 フラの動揺から、お尻を見られたことは間違いない。まあこれは仕方なし。
「その、フラさん……象さんのお面がありますよぅ」
「え? うん、かわいいよね」
 動揺してない。どうやらそっちはセーフのようだ。
 小太、ほっとしてフラをのぞき込む。え、と顎を引くフラ。
「フラさん。さっきの浴衣、とっても可愛かったですよぅ」
「ほ、ほんと?」
 嬉しそうなフラ。
 動揺するようなものを見たショックもこれで吹っ飛んだ。
「あっちには赤い浴衣とかもありましたよ。行ってみましょう」
「うんっ。行こう!」
 その後、着替え日が暮れるまで祭りを楽しみフラをジルの所へと送って行くのだった。
 もちろん、何があったかは内緒♪



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太 様

 いつもお世話様になっております。
 端午の節句のお祭りの一幕。あっちも楽しみこっちも楽しみ。
 まさか坂田金時の幼少時の衣装で来るとは思いませんでしたがっ。

 なお、記念撮影はその後取り直しではありません。だって係員さん忙しかったんですもん。変態さん撃退中の様子が記念に撮影されています(

 そんなこんなでオチがついたところで、ご発注ありがとうございました♪
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ファナティックブラッド
2016年05月02日

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