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『重なる時間 』
柳京香aa0342hero001)&笹山平介aa0342)&賢木 守凪aa2548)&カミユaa2548hero001

●天気良くその日は始まる
「晴れて良かったですね!」
 笹山平介 (aa0342)が、その方向へ笑顔を向けた。
 柳京香(aa0342hero001)も顔を向けると、賢木 守凪(aa2548)は照れたようにそっぽを向いた・
「晴れた位で大袈裟な。平介と一緒に出かけるからと言って俺は浮ついたりは」
「昨日スマホで何見てたっけぇ」
「弁当紹介サイトに決まっているだろう。本は……って貴様ァァァ」
 カミユ(aa2548hero001)が眠い目を擦りつつ横からぽそりと問うと、守凪は誘導に引っ掛かった。
 前日同じ任務であり帰還が遅くなることを理由にH.O.P.E.東京海上支部での泊まりを選んだ守凪は食堂の厨房を借り、平介とお弁当を作ったのだ。
 サンドイッチにおにぎり、玉子焼き、からあげ……彩りも考えた構成はほぼ平介の料理といって良かったが、頑張ってお弁当箱に詰めた。
 平介が隣で優しく教えてくれたが、上手く詰められただろうか。サイトを見て勉強したのだが──というのを、カミユは具体的に見ていなかったが、引っ掛けたのである。
(どうなるか知っているくせにねぇ)
 そもそも宿泊出来たのは、父親が母親を連れ、商談で日本を離れていることが大きい。
 香港における古龍幇の動きが父親の組織に少なからず影響が出ていることが予想され、こちらは意外な副産物といった所か。
 そうでなければ、平介の誘いに応じることも無理であっただろうが、父親の帰国は今夜であり、家に揃えば何が起こるかは言うまでもない。いや、行く場所が場所だけに更に苛烈となる可能性すらある。
 カミユは唐突に誘ってきた平介をちらりと見るが、サングラスの下の笑みは変わらない。
「そろそろ電車来るわよ」
 京香に声を掛けられ、カミユは電車が前の駅を出たという電光掲示板の点滅に気づく。
 が、まだ構内アナウンス前であり、電車は到着していない。
 見ていることに気づいて、声を掛けたのだろう。
 カミユはそれに気づいたが、笑みに全てを隠して礼を言っておいた。

 電車に長く揺られ、更にそこから無料送迎バスに乗り、向かった先は──首都圏から気軽に行ける観光用の牧場。
 本日、乗馬をメインにやってきたのだった。

●ぴゅあな瞳
(そもそもこの突発企画、任務移動中が多分きっかけよね……)
 京香は昨日の移動を振り返る。
 昨日は輸送機で長距離の移動があった。
 勿論他の交通手段よりも段違いに速いが、移動時間が全く掛からないということでもなく、輸送機の操縦員が気を利かせてくれ、機内でTVを見ることになったのだ。
 で、その操縦員が異世界の英雄だけでなく、日本に馴染みが薄いエージェントもいるだろうからと時代劇を流したのである。
 海岸を白馬に跨った主人公が颯爽と駆ける。
 京香はその堂々たる手綱捌きに釘付けだ。
 ストーリー自体は世の趨勢を握る将軍という主人公が市井に紛れて世の中を見たり、悪を懲らしめるという判り易いものであったが、殺陣の見事さと乗馬は素晴らしいものである。殺陣は魅せること重視であるし、本業の自分達に及ぶものではないが、乗馬が!
 そうしたら、平介が明日は休暇でのんびりしたいと言い出したのだ。
 牧場に行きたいと思っていたと主張する平介は、守凪を誘い、守凪もツンデレ的に誘いに応じたのである。
(だから、平介なのよね)
 そういう時、平介は京香が行きたそうだからなんて言わないのだ。
 自分が行きたいと言う──それに偽りはない。何故なら、乗馬を楽しむ姿を見たいから、行きたいことに何も変わりはないから。
「長時間のレッスンでなければ、予約なしでも問題ないみたいですね。よろしくお願いします♪」
「ああ。手本を見せてやる」
 平介へ守凪はそう応じているが、内心はちょっと違う。
 実は、守凪に乗馬経験はない。
 平介はいつも品の良い服を着用しているから、守凪が乗馬の達人と思っているようで、それが誘いのきっかけだったからだ。
(平介のこの瞳を曇らせることなど……!)
 守凪、サングラス越しのぴゅあな瞳に勝てなかった模様。
 もっとも、平介は守凪が乗馬出来ずともその瞳を曇らせたりしないのだが、守凪がそれだけ平介に心を許しているということだろう。
「今まで見たことないけどぉ」
「黙れ」
 カミユが申し込みする平介がだいぶ離れたのを見てぽそりと呟くと、守凪が地獄の底から響くような声で制する。
 京香も乗馬用のブーツを借りに行っているのでこの場にはなく、それを聞いたのは会話をしている本人達だけだ。
 やがて、ブーツを持った京香と手続きを終えた平介が戻ってくる。
「今の話するなよ」
 守凪がカミユに言い置き、先に歩いていく。
 だから、ついてくるカミユが目を擦る手を止め、守凪の向こうの平介を見たことは気づかなかった。

「平介は、乗らないのか?」
「実は最近太ってしまったんですよ……!」
 守凪がブーツを履きながら問うと、平介は恥ずかしいですけどと笑う。
「元々背も低くないので体重もある方だったのですが、ダイエットが必要な身で乗馬したら、お馬さんがぺしゃんこになってしまいます……。そんな可哀想なことなんて……」
 わっと泣き真似する平介。
 京香は何が何でも乗る気がないのだろうと察し、「平介がダイエットに成功したら、また誘うといいわ」と助け舟を出す。
 実際、海岸を白馬で疾走していた俳優も、そのモデルとなった実際の将軍も平介と身長そこまで変わらないのに体重は平介よりもあるのだが、あえて触れるまい。彼はそもそも見る方優先だろうし。
「その代わり、私に教えてくれると助かるわ。ダイエットに成功した平介が乗る時、私が下手だったらちょっと嫌よね」
「よし、手本を見せ──」
 直後、守凪は馬に頭を巡らされる。
「今日は調子が悪いだけだからな!」
「お兄ちゃん、馬にバレてるよ」
 スタッフのおじさんが弁明する守凪へ笑いを噛み殺して指摘する。
 馬は感受性が強い動物である為、実は乗馬初体験の守凪の隠していた緊張を見抜いたらしい。その為、少し驚かせてしまったとか。
「大丈夫だって気づかせてやれば大丈夫、まずはリラックスが大事そうだけどね」
 あと、触ってごらん。
 予約不要のレッスンではあるが、そこは考慮してくれたらしい。
 平介はスタッフがそう言ってくれたこともあり、皆が撫でやすいように手を伸ばした。
「大人しい方なんですね」
「馬は穏やかで大人しいからね。臆病だし、人を見る所があるけれど」
 それを聞きながら、守凪も恐る恐る手を伸ばす。
 動物は触ったことがなく、好き嫌いすら判らないだけに緊張しているのだ。
 が、平介のお陰か馬は大人しく撫でられてくれ、守凪はほっとする。
 その変化を平介は見ており、またその光景をカミユが見ていたが、素直に嬉しかった為、守凪はそれに気づかない。
「驚かせない方がいいのね」
 一方、京香は他のスタッフに促され、自分が乗る馬を撫でてみる。
 撫でられる馬は大人しく、穏やかな目をこちらに向けていて、「少しの間よろしく」と声を掛けた。
 海岸を疾走するのは後々の楽しみだろうが、今日は普通に楽しもう。
 馬上の人となった京香は平介とスタッフの力を経て同じく馬上の人となった守凪を見る。
「結構高いな」
「普段と違う目線よね」
「そうだな。短い時間だが、楽しめそうだ」
 守凪と京香はスタッフの指導を受け、乗馬を楽しむ。
 こうなると少しやることがない平介はカミユと共にその光景を見守った。
「……どうかしました?」
「んーん、なぁんにもないよぉ」
 平介がカミユの視線に気づいて問うが、カミユは欠伸を噛み殺しながら、守凪へ視線を戻す。
 見守るようでいて、何か別の感情があるような気もしたが、それはまだ真紅の瞳から推し量れない。
「そんなに見つめられちゃうと穴が開いちゃいます♪」
「穴が開いたら困るなぁ」
 カミユはくふふと笑い、その後はレッスンが終わるまで平介を1度も見なかった。

●初めての──
「あら、初めてとは思えないわよ?」
「俺に掛かれば造作もないからな」
 守凪は京香から初めてのお弁当を褒められ、テレツンモードである。
 から揚げをお箸で必死につまんで詰めようとしたことなど、自分から言わないのだ。
 平介もそれを暴く性格ではないので、「共同作品です♪」と楽しそうに笑って少しいびつなおにぎりを食べている。
「玉子焼きが絶妙だねぇ」
「作っている平介の手が凄かった」
「つい張り切っちゃいました♪」
 カミユが食べているのは実は玉子焼きではなく、だし巻卵であったりするが、料理の現場に馴染みがない守凪はそれの訂正ではなく、素直に平介の手並みを褒めた。
 笑う平介は喜んでくれることが大事なので、料理名そのものの拘りはない。
「ふっくら柔らかいのよね。食べるとだしが溢れてくるし」
「食べ過ぎるなよ。俺の分がなくなる」
 京香も食べると、守凪も気に入っていたらしく、から揚げを食べる手を止めて注意。
 このから揚げも冷めてもおいしく食べられるよう平介が工夫を凝らしており、守凪はしっかり味わっている。
 自分がしたことはおにぎりにぎったり、サンドイッチに具を挟んだり、出来上がりをお弁当に体裁よく詰めただけだが、それでも青空の下自分が手伝ったお弁当は普段より……父親などと一緒に食べる料亭の料理などよりもずっと美味しく感じられた。
 食べ終わりに近づいた所で、平介が牧場のソフトクリームを購入し、持って来る。
「何だ、これは美味いぞ……!」
「新鮮な牛乳を使ってるからかしら」
「こういう所で楽しく美味しく食べるのはいいですよね♪」
 黙って食べるカミユとは違い、守凪が素直に感動していると、やはり初めて食べたらしい京香が感心している。
 そんな2人を見るのが楽しい平介も溶けない内にとソフトクリームを食べた。
「平介は1番好きな物は?」
「好きな物……ですか……?」
「……物だぞ、物だからな! 物で答えないと駄目だぞ!」
 どうやら平介の言葉を聞いて、思い至った質問であるようだ。
 平介は顎に手を添え、「そうですね」と思案する。
「指輪とか、好きですね 」
「だから幻想蝶もそうなのか?」
「そうかもしれないです♪」
 守凪の問いに平介はにっこり笑う。
 平介は料理や入浴などの場合を除いて日常的に手袋を着用している為、身に着けても落とさないというのが理由であるが、京香と共鳴する際指切りをする為と受け取ったのだろう。
(ふぅん)
 カミユは平介と守凪のやり取りを見ていたが、京香の視線を感じ、目を擦る。
 既に眠気は去っていたが、ここではそうしておいた方がいいからだ。
 初めてのお弁当も食べ終わり、午後はふれあい広場へと行こう。

●何を見る?
「そうそう、そういう感じでお願いします」
「思ったより大人しいな……」
 スタッフに指導されてうさぎを抱っこする守凪は馬を撫でる経験も経ていたが、まだおっかなびっくりだ。
 が、抱っこしたうさぎが大人しくしていると、それだけで感動らしく、驚かせないように声は上げないが、表情がそれを物語っている。
(……懐かしい)
 平介は心の中で小さく呟く。
 胸に沸き起こるのは喪失の記憶。
 毎年、花が咲く季節は施設皆でここへ遊びに来ていた。……『あの子達』もいた。
(そういえば、あの子はそういうのも知らないみたいだった)
 1度だけ会ったことがあるその子はくじらが海で遊ぶ絵本でさえ初めてのようであったし。
 あの日しか会ったことがないあの子は大きく成長しただろうか。
 そう思っていたら──
「平介! これはダイエットに関係ないぞ!」
 うさぎを指し示す守凪にそう言われたら遠慮も出来ず、平介はうさぎを抱っこした。
 デジカメをスタッフに渡して、仲良く記念撮影。
「乗馬の時もそうだけど、何かあったらすぐ撮ってるわね」
 京香の呟きにカミユはその理由を察したが、それは語ることでもない。
 そう思っていたら、「カミユさん」と京香に声を掛けられた。
「カミユさんの好きな動物や遊びって何?」
「んんー……人かなぁ。1番見ていて飽きないよねぇ。遊びは面白いのなら何でも好きだよぉ」
 モルモットを抱っこしている自分には目もくれず、カミユは守凪を見ているようで、平介を見ている。
 京香は少し気になっていたことを尋ねた。
「平介に何か言った?」
 皆で遊園地に行ってから、平介は少し変化があったように見える。
 京香は平介が聞いて答えるとは思っていない為、最後に単独で接したカミユに理由があるのではないかと考えたのだ。
「何か、聞かれたらまずいことでも?」
「ないわ。それとも、私に知られたらまずいことでも?」
 カミユが問いに対して問いで答えたので、京香もまた問いで返した。
 交わった視線は、一瞬だけ。
 「冗談だよぉ」と笑うカミユの視線は平介へ向けられる。
「ちょっと視線が気になったからねぇ。でも、それを気にするあなたと笹山さんとはぁ、どういう関係ぃ?」
「友達で大事な仲間……そんな所かしら」
 京香はあくまで自分の思う関係を言うに留めた。
 平介がそうではないことは誰よりも知っている。
 が、京香は自分と平介のみがそれを知っていれば良いこととそれについては口にしない。
「あんたはどうなの? 仲良し?」
「仲良しってぇ?」
「あんたは、守凪と仲良しなのかという意味だけど?」
「仲悪いように見えるのかなぁ」
 京香へカミユは笑みを向ける。
 その笑みには自分の本心は少しも含まれていない。
「そう」
 京香は食い下がるつもりはないのか、それだけ答えて平介と守凪を見る。
「あなたは、笹山さんに何を見てるのかな?」
 口調が変わったことに気づき、京香はカミユへ視線を戻す。
 初めて見るカミユの顔がそこにある。
(へぇ……そういう顔もするのね)
 驚きはそこで留め、京香は静かに笑う。
「『それ』を知ったら、あんたのこと……私が見張ることになるけど?」
 その表情の変化、本人はどこまで自覚しているだろうか。
 本心を見せぬよう笑みに隠すからこそ乗馬だけでなくここでも見守るスタイルであったカミユの隠さぬ『笑み』……今は自分の胸に収めておくか。
「冗談よ」
 京香はさらりと笑ってやる。
 けれど、両者、冗談が冗談ではないことに気づいている。

●本当に見たかったのは
 その後もアヒルの行進にこぶた達のレース、羊の毛刈りショーと楽しみ、イチゴ狩りを初体験、更にフレッシュチーズを作って食べ、ゆっくりラベンダー園を巡れば、そろそろ帰らなければいけない時間だ。
「それなら、ここで記念撮影しないか?」
「あらいいわね。平介も入らないと駄目よ?」
 守凪の申し出にカミユとのやり取りを微塵も見せない京香が平介へ笑みを向け、自分が撮影するという退路を封じた。
 デジカメの扱い方を教えた平介は今日は守凪と交替で撮影していたが、最後全員ならば平介もいなければ意味がない。
「では、お願いして撮影してもらいましょう♪」
 平介が通りすがりの若いお父さんに依頼すると、快く引き受けてくれ、4人で記念撮影。
 デジカメの画像を見た守凪が顔を綻ばせている。
「今日は楽しかったですか?」
 平介は守凪へ尋ねてみた。
 守凪が、顔を上げる。
「あぁ、楽しかった。……また、来たいな」
 素直にそう答えた守凪は、この日1番の笑顔であることに気づいているだろうか。
 平介は、そこで自分の答えを得た。
(守凪さんは、場所ではなく、『誰とどうやって過ごせた』か大事なのだろうな)
 彼にとって恐らく今日触れたもの全てが新鮮なものだが、きっとそれは自分達と一緒だからだろう。
 そうでなければ、楽しいと感じたかどうか判らない。
 直感だが、きっと、他のことに集中しなければならないから。
 その集中をする必要がない程、信じてくれている。
 笑顔になる場所を探ろうとした自分に対する、破格の評価だ。
(また来れるだろうか)
 守凪は心の片隅でそう思っている。
 父親はこのような場所で過ごすことなど絶対に許さない。
 家に帰れば地獄が始まる。
 それでも、平介が笑って誘ってくれたから、行きたかった。今日はずっとわくわくしてた。
 また来たいと思う願いは、叶うだろうか。
「また来ましょうね。その前にダイエットに成功する必要がありますけど、守凪さんに乗馬レッスン受けたいですし♪」
「ふん、俺の教えはそう簡単に受けられないぞ。ま、まぁ、平介なら、教えてやるけどな!」
 平介に笑われ、守凪はついついそう言ってしまうけど、平介はそれでも笑っていて。
 だから、守凪は願いを叶える為に『その日』を求めて動くだろう。

 バスに乗ると、牧場が遠ざかっていく。
 また、いつか、ここで時を重ねよう。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【笹山平介(aa0342)  / 男 / 24 / 能力者】
【柳京香(aa0342hero001) / 女 / 23 / ドレッドノート】
【賢木 守凪(aa2548)/ 男性 / 18 / 能力者】
【カミユ(aa2548hero001)/ 男性 / 17 / ドレッドノート】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木です。
この度はご発注ありがとうございます。
色々経験していただき、楽しいと思う1日であったら幸いです。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
真名木風由 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年05月09日

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