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『とあるエンコーの活動記録 』
オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&ガルー・A・Aaa0076hero001)&シキaa0890hero001


「……解せぬ」

 その約束が、いつ、どこで交わされたのか、オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は知らない。
 自分のあずかり知らぬところでいつの間にやら成立し、気が付けばしっかりと計画の中に組み込まれていたのだ。
 言い出しっぺが誰だったのか、誰も黙して語らない。
 爽やかな笑顔で自分を送り出した相棒も、今目の前を歩いているガルー・A・A(aa0076hero001)も、シキ(aa0890hero001)も。
 シキに可愛い服を買ってやるのはいい。
 その買い物に付き合うのも特に問題はない。
 相棒がこのミッションに不向きであることもわかる。
 だがしかし。
「……シキとお揃いの服を買ってもらえ……って何で、俺が。……お揃い、とか。意味わからん……」
 ショッピングモールの広い通路を、オリヴィエはぶつくさ文句を言いながら歩く。
 両側には可愛らしい子供服を扱う店が軒を連ねていた。
 百歩譲って自分がまだ子供であることは認めよう。
 身長135cmの外見年齢10歳は確かに大人のサイズではない。
 S、M、Lのサイズ表記よりも、140cm〜などと身長で表される世界だ。
 しかし。
「どっちを見ても……女物、だよな」
 フリルにレース、リボンにキラキラスパンコール、水玉模様にピンクの花柄――
 シキの趣味には合いそうだけれど、合いそうだから余計に怖い。
「……まさか、俺にこんなの着ろ、とか……」
 言わないよな。
 言ったらグレるぞ。


「ああ、こいつはうちのどチビにも似合いそうだな」
 一軒の店先で足を止めたガルーは、あっという間に何着かの服を選び出していた。
 いつも相棒の服を選んでいるだけあって、流石に目が肥えている。
「シキ、こんなのはどうだ、ちょっと着てみ――」
「よいてんきだね」
 はい?
「ソフトクリームがたべたいよ」
 いきなり脱線か!
「……、シキ……服選びはどうした。……いらないなら、帰るぞ」
 ぶーたれたまま文句を言うオリヴィエを振り返り、シキは鷹揚に言った。
「わたしはいま、ソフトクリームのきぶんなのだよ」
 乙女心は移ろいやすいのだ、オトメかオノコか、よくわからないけれど。
「ま、シキの気まぐれは今に始まったことじゃねぇしな」
 手にした服を戻し、ガルーはそのリクエストに応えるべく店を探し始める。
「さすがイヤラシイおとなだが、ほうようりょくはあるな。オリヴィエもみならいたまえよ」
 ひらひらと手を振ったシキは、くるりと背を向けると後ろで両手を組み、ふんぞり気味にガルーの後を付いて行く。
「おやおや、相変わらず偉そうなこって」
 振り向いたガルーがくすりと笑うと、シキはますますふんぞり返る。
「わたしはえらいのだよ、あたりまえのことを、いわないでくれたまえ」
 その根拠がどこにあるのか全くもって不明だが、何を言っても嫌味に聞こえないのは年端も行かぬ子供の言うことだからか。
 それとも持って生まれた人徳の故か。
「わたしがかわいいから、ただそれだけだよ。ぎもんのよちはない」

 やがてソフトクリームのスタンドを見付け、ガルーは注文を聞く。
「どれが良いんだ、シキの嬢ちゃん?」
「おじょうちゃんでも、ぼっちゃんでもないよ」
「気にするな、言葉の綾だ。で、何が良い?」
「おなかがすいたね、チョコバナナクレープはあるかい?」
 ってもう気が変わったのか。
 だがシキの行動の読み難さとマイペースぶり、それに秋の空よりも移ろいやすい気分には慣れていた、と言うより慣らされていた。
「はいよ、チョコバナナクレープな?」
 再び気が変わらないうちに、ガルーは若様ご所望のブツを手配する。
「オリヴィエは何にするよ、ケンカしねぇように同じモンで良い……って、おーいどこ行ったー?」
 いた、遙か後方に、じっと立ち止まったまま動かずに。
「おいおい、足の裏に根っこが生えちまったんならそう言いな、植木鉢にでも植えてやっから」
 そう言いながら近付いてみると、オリヴィエの視線はある一点に釘付けになっていた。
 それを辿った先には――
「ああ、こりゃ仕方ねぇな」
 ショーケースの中に、可愛らしく首を傾げた猫のぬいぐるみが鎮座している。
「欲しいのかぃ?」
「……、…………、………………」
 わかってる、素直に「うん」と言わないことは。
 これで結構長い付き合いだからな。
「ちょい、お姉さん」
 ガルーは店員に声をかけ、ショーケースを開けてもらう。
「……っ!」
 手渡されたぬいぐるみは、予想通りにふわふわで柔らかくて、めっちゃ可愛かった。
「じゃ、これ貰ってくわ。ああ、包まなくていい、たいそう気に入ったみてぇだからな、あのまま持ち歩くってよ」
 そんな会話を遠くに聞きながら、オリヴィエは暫しぬいぐるみと見つめ合う。
 らぶらぶだ。
 気が付いた時には、それはもう「自分のもの」になっていた。
「……。……ありが、と」
「オリヴィエも、いがいにかわいいいものがスキなのだね」
 いつの間にかそこにいたシキが、オリヴィエの顔を下から覗き込む。
「はたして、このオリヴィエが、かわいくなるものかとおもったが……」
 これは存外にイケルかもしれない。
「ふくをえらびにいくよ、かわいいものが、よいね」


 再び戻って来た女児服の売り場で、ガルーは先ほど選んだ服を再び取り出して来る。
 飾り気のないシンプルなワンピースにレース編みのショールを重ねた少し大人っぽいもの。
 五段重ねのフリルがふわふわ可愛いミニスカート。
 定番のエプロンドレスに、刺繍をあしらったフリルのブラウス。
「こういう甘いふわふわミニスカートにゃ、案外かっちりしたブレザーなんかが似合うんだぜ?」
 一般的に、甘いボトムスには甘いトップスを合わせることが多いだろう。
 だが敢えて正反対のテイストを組み合わせ、バランスを崩してみるのがお洒落の上級者だ。
「ならばわたしは、これをためしてみることにするよ」
 白とピンクを交互に重ねたオーガンジーのフリルミニスカに紺色のジャケット、インナーはシンプルな白ブラウス、首元のピンクのリボンがアクセントになっている。
「おお、似合うじゃねぇか」
 試着室から出て来たシキの姿を見て、ガルーは自分の見立てが良かったのだと悦に入る。
「いっぱい試してみるといい。気に入ったモン全部ってわけにゃいかねぇが、まあそれなりに軍資金はあるからな」
 そのお言葉に甘えて――いや、言われなくてもそうするだろうが、シキはガルーが選んだ服を取っかえ引っかえ、ひとりファッションショー。
 改まった席にも着て行けそうなシックなドレス、大胆な花柄のワンピース、普段使いのシャツやカーディガンもお洒落に品良く可愛らしく。
 ついでにタイツやニーハイ、靴や帽子、その他小物もコーディネートして。
「オリヴィエはどうだ、何か気に入ったモンはねぇのか、ん?」
「……、……この店、女物しか置いてないだろ」
「知ってる」
 仏頂面を返したオリヴィエに、ガルーはニコリと良い笑顔を返す。
 お揃いが良い、などという冗談を真に受けたわけではないが――
(「いや、冗談だよな?」)
 ちょっと自信がなくなって来たけれど、冗談だということにしておいて。
(「面白そうだし、一着くらいは見繕ってやるかね」)
 あまり露骨に可愛いものは流石に可哀想だから、少し辛口デザインのユニセックス風味にしてあげるのが、せめてもの武士の情けか。
 しかし、その気遣いをシキが容赦なく打ち砕いた。
「これならきっと、オリヴィエもかわいくなるのだね」
 そう言って試着室から顔を出したシキが身に着けているのは、ハイウェストのひらひらドレス。
 フリルとリボンがこれでもかという程にあしらわれ、背中には小さな天使の羽根が付いた超甘々なデザインだ。
「あたまには、リボンもついているよ」
 その言葉通り、シキの髪には大層なボリュームがあるレースのリボンが揺れている。
「えんりょはいらないよ、ためしてみたまえ。おおきいサイズもあるのだろう?」
「……遠慮じゃない、し」
 スカートだけは断固拒否、ドレスは燃やす。
 それ以外なら、まあ……妥協してやらないこともない。
 別にガルーにぬいぐるみを買ってもらったから、というわけではないし、本人もそれを恩に着せたりはしないけれど。
 それでも恩に着るのはオリヴィエの勝手だし、だから少しくらいなら遊ばれてやってもいい、うん。
 だがスカート、お前はダメだ。
「ならばこれはどうだい、さきほどよりもしきいはひくいとおもうのだがね」
 今度は前に大きな白いリボンの付いたピンクのフレアスカートにサスペンダー、中のシャツは無地で、上にはフード付きの白いロングベスト。
「このフードは、ただのフードじゃあ、ないよ」
 なんと、猫耳が吐いているのだ!
 だがオリヴィエは動じない。
「……言ったろ、スカートだけは断固拒否、だ」
「スカートではない、これはキュロットというものだよ。もうすこしべんきょうしたまえよ、ちびすけ」
 それなら問題はあるまい、例え見た目が完全にスカートだったとしても。
「……う」
 退路は断たれた、後は前進あるのみだ……どこに向かっているのかは、あまり考えたくないけれど。

「あらロリヴィエちゃん結構かわいい」
 試着室から出て来たオリヴィエを見て、ガルーは肩を震わせる。
 笑っちゃいけない、笑っちゃいけないけど……っ!
「くっ、くくくく……っ、ぐはッ!?」
 はい、ロリヴィエちゃんに腹パンいただきましたー。
「つぎはこれをためしてみよう」
 その後もあれやこれやと着せ替え人形の如く変身させられ――


「結局、最初のキュロットに落ち着いたわけか」
 ガルーは相変わらずクスクス笑っていた。
 キュロットの色は紺に、ベストを黒にすることで、多少は辛口になった、はずだ。
 そして決め手はインナーに選んだ猫Tシャツ。
 そこにプリントされたユルい感じの猫にじっと見つめられては、もう逃げ場はなかった。
 試着したものをそのまま着て、オリヴィエは店の外に出る。
 周囲の視線が痛い。
 皆が自分を笑っているように見える。
「まあ、確かにみんなこっちをを見てるが、それはロリヴィエちゃんが可愛いかrぐェっ!?」
 腹パン、二発目。
 でも知ってる、次から次に着替えてる間、わりと楽しそうにしてたって。
 だからスマホで動画撮って、こっそり相棒に送ってあげたからね。
 どうよ、この気遣い。
「さて、後は何か甘いモンでも食って帰……ん?」
 気が付けばシキの姿が見えない。
 後ろを振り返ると、オリヴィエと色違いのお揃いを着たシキが通路の真ん中で膝を抱えていた。
「つかれたよ、せおってくれたまえ」
 力のない声が、そう訴える。
 しかしガルーの両手は買い物の荷物で塞がり、更に胸の前にも大きな袋を抱えていた。
「……無理だ、歩け」
 オリヴィエが声をかけるが、シキは膝の間に顔を埋めたまま首を振った。
「せおってくれたまえ」
「……だから、無理だって」
「せおってくれたまえせおってくれたまえせおってくれたまえ」
 今度は床にひっくり返ってジタバタ暴れ始めた。
「……幼児か」
 ぺちこーん!
 シキの眉間にオリヴィエのデコピンが炸裂する。
「なにをするのだね、ちびすけ……!」
「……歩け」
 ぺちん、再びデコピン。
「ならばオリヴィエがせおってくれたまえよ」
「歩け」
 ぺちん。
「せおってくれたまえ」
 ぺちん。
「せおっ」
 ぺちん。
 どこまで続くの、この応酬。
「ったく、どっちも頑固だな……」
 見かねたガルーが割って入る。
「しゃーねぇ、おんぶしてやるよ。オリヴィエ、荷物半分持ちな」
 返事がない。
「なんか欲しいモン買ってやっから」
「……じゃあ、あれ」
 言われて、オリヴィエは雑貨屋の店先を指さした。
 そこには可愛い猫柄のマグカップが――

 他にももっと、遠慮なく貢いでくれていいのよ?
 猫柄タオルとか猫柄スリッパとか、肉球クッションとか。
 この際だから、持ち物全て猫柄で統一なんてどうです?
 あと猫カフェも寄ってね!

 なおシキの中ではオリヴィエの1デコピンにつき1ほっぺチューのマイルールが設定されたようです。
「ツケておいてやろう。あとで、とりたてにいかせるよ」
 合計、5ほっぺチューの貸しが出来た。
 でも行かせるって、誰を?
 自分で取り立てに行くんじゃないの?

 まさか、相棒に……?


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0068hero001/オリヴィエ・オドラン/男性/外見年齢10歳/流されて何処へ行く】
【aa0076hero001/ガルー・A・A/男性/外見年齢30歳/幼女のスタイリスト】
【aa0890hero001/シキ/?/外見年齢7歳/気まぐれ台風】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、STANZAです。
この度はご依頼ありがとうございました。

女の子の服選びって楽しいですね。
成人男性の場合だとバリエーションが少なすぎて……
というわけで、ガルーさんも何か自分のものを買っていたのかもしれませんが、残念ながらカメラの撮影範囲に収まることはありませんでした。

では、お楽しみいただければ幸いです。
何か問題がありましたら、リテイクはご遠慮なくどうぞ。
浪漫パーティノベル -
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リンクブレイブ
2016年05月09日

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