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『 夜空にも虹は輝く 』
イリス・レイバルドaa0124)&アイリスaa0124hero001

プロローグ
「イリス起きなさい」
 そうゆすられて『イリス・レイバルド(aa0124)』は目が覚めた。
「あらあら、夜更かしするからよ。トーストがあるけど食べる?」
 イリスは目をこすり、にっこり笑う母親を見る。
 ダイニングから姉が声をかけてきた。
「今日はお買い物に行くんでしょ? 早く用意しないと置いてっちゃうよ」
「ふぁ。うん、待っててすぐに行くから」
 そうイリスは布団から這い出てパジャマのボタンに手をかける。
「ハニートーストにしましょうね、準備して待ってるわ」
「うん、お母さん。あ、ちょっとまって」
「何かしら」
 母が扉の陰から顔をだし、イリスに言った。
「今日、寒くない?」
「気のせいよ」
「そうかな」
 イリスは笑って、母を見送る。
「まっててね、すぐに行くから」
 すぐに、そうすぐに。自分もそっちへ行くから。
 
 そこで、イリスの目が覚めた。 

第一章 ここは森の中

 イリスが目覚めると、そこにはあるべきものが何もなかった。
 壁もなく天井もない。温かい布団もなければ、家族の談笑の声も。ない。
 ここは森の中だ。
 イリスはここに逃げ込んだ。
 すべての物をなくして、イリスは寒空の下に一人、ただただ息をするだけの存在となって。ここにいた。
「お母さん、お姉ちゃん……」
 森にフクロウの鳴き声が響く。
 ここはどこだろう。
 だがイリスはすぐに思い直す、どこであろうと変わらない、この世界にもう一人ぼっちである事実は変わらない。 
「なんで、なんで……ボクが、こんなめに」
 原因はわかる、愚神が来たから、その一言。
 しかし、それを自分がああしていれば、こうしていれば、どうにかなったのではないか。そんなことをずっと考えていた。
 湧き上がるのは理不尽な現実に対する怒り。か弱い自分に対する怒り。
 そして怒り疲れると沸いてくるのが。
 かつての幸せはもう戻ってこないんだという悲しみ。
 イリスは寝返りを打つ。
 空には木々の切れ間に月が見えた。そう言えばと、イリスは思い出す。謎の少女が明日は満月になると言っていた。
 イリスは視線を隣にうつす。ぼろぼろの旅装束をまとっていても金色の輝きを帯びる美しい少女が安らかな寝息を立てていた。
 イリスはこの少女のことをほとんど知らない、だが彼女はこの世界の住人ではないといった。
 イリスははそんな少女を見ると涙がでた。姉もこんな綺麗な髪をしていたから。
「お姉ちゃん」
 そう誰にでもなくイリスはつぶやく。
 身を小さくし、目を閉じる。
 すると頭に手が触れた、確かなぬくもりがイリスの頭をなでる。
 イリスが目をあけると少女がさっきより近くにいた。
 少女は優しくイリスを抱き寄せて、抱きしめてくれた。
 イリスの実の姉より小さな。しかし温もりは同じようで、安心しイリスは眠りの中に落ちていった。

二章 悪夢の続き

 イリスが愚神に襲われてから数日経過していた。あれから二人は愚神の追っ手を警戒し森の中で生活していたのだが。
 敵の追手がどう来るか分からない以上ここにいた方が安全だと少女が言ったので森で生活を続けていた。
 最初のうちイリスは人に助けを求めた方がいいのでは? と思っていた。 
 しかし少女は初めての森なのにもかかわらず。食べれるものをすぐみつけ、寝床に適した場所を発見し。飲める湧水を汲んできてと、かって知りたる自分の家のように振る舞って見せた。
 そこまで適応できる場所なのであれば姿を隠すこともできるのだろうと納得しイリスはここにしばらく隠れることに了承した。
「なんで、森の中がこんなにわかるの?」
「よくわからないが、教えてくれる気がするんだよ」
「誰が?」
「しいて言うなら自然かな」
 彼女は他にもいろいろなことをイリスに教えてくれた。水がない時には朝露を集めるとよいこと。食べられる草の種類。動物の縄張りの見分け方。
 少女が何かを教えるために振り返ると、そのたびにイリスは距離をとった。
 しかしアイリスが移動を開始すると、ぴったりと寄り添える距離まで近寄る。
「この森には熊がいるみたいだ。いいかい、彼等をみつけても刺激してはだめだ。目を見たままゆっくり後ずさり、私を呼ぶんだ」
「なんでボクを守ってくれるの?」
 その時アイリスが息をひそめた。
「え。なに?」
「しずかに、まだ気が付かれていないうちに、ここを離れよう」
 そう言う少女の陰からイリスは顔をだし、それを見た。
 従魔がいた。
 禍々しい姿をしていた、まるで巨大なミミズ、だが体の表面は岩石のようで、餓えた口から鋭い牙が見え、涎をまき散らしている。
「あの愚神と同じ力を感じる……追っ手かもしれないね」
「まって、あれ……。あれって!」

三章 それが英雄

 なにかに反応し飛び出していこうとするイリス。それをアイリスは制した。
「どうしたんだ、いったい」
「友達が!」
 あの従魔に狙われているのはイリスの友人のカラスと白ネコだった。
 怯えきった白猫をカラスが懸命に守ろうと威嚇を繰り返している。
 しかしそれも長くはもたないだろう、従魔は彼らがおびえるのを見て楽しんでいるだけだからだ。
「やだ、行かないと! 助けないと!」
 少女はイリスを抱き留めて口をふさぐ。
「だめだ危険すぎる」
「でも、行かないと、友達が、友達が!」
 イリスは思っていた、全て失ったと思っていた、昨日までの日常は戻ってこないと思っていた。
 けど違う、まだいた、友達が残っていた。
 懸命に翼をはためかせ、毛を逆立たせて懸命に生きようともがく、小さな友達。
 彼らがまだイリスには残っていた。
 けれどその小さな命は今消えようとしている。
「もういやだ、目の前で大切な人が死ぬのはもう嫌だ!」
 イリスの中であの光景がよみがえる、鮮血と、姉の悲痛な声。自分が壊してしまった日常。
 今度こそ、今度こそ守らないといけない、同じ思いをもう一度することがあればイリスの心は砕けてしまうだろう。
「なら、一緒に行こう」
「え?」
 イリスは言葉を失った。
「私が一緒に行く、君と一緒にいる。だから大丈夫だ」
「いいの?」
「いいよ、何も心配はいらないから、私の手は離してはだめだよ」
 そう少女は手を差し出す、それをイリスは凝視した。
「どうしたんだい。さぁ」
 イリスはその手を恐る恐るとる。
 温かい。少女の温もりがイリスへと移ってくる。
「しっかりつかまっているんだよ」
 直後、少女はイリスを抱きかかえ大地を蹴った。
 がさっと木々をかき分ける音が鳴り、それに反応して視線を向ける従魔。
 しかしその反応は、遅い。
 少女はその小さな体を生かして、幹を蹴って木々の間を跳躍。
 まるでパチンコ玉のように跳ねまわりながら少女は従魔を観察する。
「おや。霊力の残滓が感じられるね」
 見れば従魔の腹部にAGWと思われる剣が一本突き刺さっていた。
 それを利用する。少女は頭の中で戦略を組み立てた。
 そして次の瞬間、少女は地上に降り立ち木の葉を巻き上げた。
 視界を遮り、また跳躍、三角とびの要領で背後にまわり、そして。ワームの腹部まで潜り込んだ。
「さぁ、友達を……」
 そしてアイリスはイリスを地面に下ろして、空になった手で掌底を叩き込む。
 それはワームにではなく、腹部のAGWにだ。
 従魔の悲鳴が、こだまする。
 その隙にイリスは動いた。
「こっちにおいで!」
 イリスがそう二匹に向けて手を広げると、二匹はあわててその胸の中に飛び込んだ。
「よかったね」
 そう優しく微笑みかける少女、そして少女はまたイリスの体を抱えそして、再び気の幹を蹴り離脱する。
 その後ろ姿を追えない従魔の、苛立ちに満ちた叫びが木々を揺らす。

四章 あなたに捧げる最初の宝物

 夜の闇の中を金色の妖精が飛び回る。
 彼女が駆けるだけで、森が神秘的な雰囲気を纏うのはとても不思議なことだった。
 やがて少女は、安全な場所をみつけ、イリスを下ろす。
 すると、緊張を解いたイリスが涙を浮かべながら二匹を下ろした
「よかった。よかったよぉ」
 そうイリスは二匹を強く抱きしめた。涙を流しながら再会を喜ぶ一人と二匹。
「この子たちはどうやら君を探しに来ていたようだね」
 少女は言った。
「わかるの?」
「目を見ればなんとなく」
 白ネコがそうだよと言わんばかりに一声ないた。
「いつも遊んでいる友達が、今日に限ってこなかったら家まで行くのは普通だろう? そう言うことだよ」
「ごめんね、危ない目にあわせて」
 もう一度イリスは二匹を抱きしめた。
 これでイリスはすべてを失わずに済んだのだ。
「ありがとう、えっと……」
 そうイリスは少女にありがとうを伝えようと、口を開いた。
 しかし口ごもってしまう。イリスは気が付いた、自分は彼女の名前をまだ聞いていないこと、そして自分がまだ名乗っていないこと。
「えっと……お名前は?」
 そうイリスが言うと、少女は困ったように笑みを浮かべた。
「私は名前がないんだよ」
「そうなの? 不便だね……」
 そうイリスは目を伏せる、深く考え込み口に手を当てた。
(名前……)
 イリスは少女は見やる、その美しい金糸は旅装束と共に風にはためき、星と月の輝きを受けて煌いて見える。
 少女はその髪を抑えイリスをまっすぐ見据える。
 その言葉を待っているようだった。
「ボクの名前はイリス……君の名前は」

「アイリス」

 これはイリスの名前の元となった虹の神その別称だ。
「アイリスだよ……お姉ちゃん」
 その言葉に『アイリス(aa0124hero001) 』は普段の笑みとは少し違う、笑みを作って見せた。
 

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『イリス・レイバルド(aa0124)』
『アイリス(aa0124hero001) 』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 二度目の注文ありがとうございます、鳴海です。
 そして前回の納品物も気に入っていただけたようでよかったです。
 
 今回はビギニングノベルの、後編的な位置付けですかね。
 前回のようなエグイことにならずに胸をなでおろしております。
 今回は、全てを失ってしまったイリスさんに少しでも幸せになれることがあるといいな、という思いで描きました。
 そしてアイリスさんの魅力を引き出せるようにも頑張ってみました。
 ここからお二人がどんな物語を紡いでいくのかは。リンクブレイブ本編へ続くと言ったところなのでしょうね。
 本編と言えば、アドバンスドリベンジの参加ありがとうございます。
 そちらでもまた、輝き失わないお二人に会えることを楽しみにしております。

 それではありがとうございました。鳴海でした。
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リンクブレイブ
2016年05月09日

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