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『番外編 黄泉繋の巫女 鈴音編 』
御門 鈴音aa0175)&輝夜aa0175hero001

プロローグ
 その昔、母の膝の上で遊んでいると教えてくれた。
「この世に迷いや未練を残してしまった人たちはね、悲しい存在だけど、決して悪いことはしないものよ」
「みれん? なにそれ?」
「果たせなかった思いや、約束や、心配事や。この世界にまだいたいなって思いのことよ」
「そうなの?」
 時は春、庭先の桜が青空をバックに映え。命の息吹が鈴音の頬をくすぐる。
 この季節は好きだ。
 母が心底楽しそうな顔を浮かべるから。
「でもね。怖いものは怖いよ。この前だって、からだが……」
「でも、鈴音に何か悪いことをしたことはないでしょう?」
「うん、でも、でもぉ」
 したったらずな声で鈴音は抗議する。
 鈴音は幼心ながらに思っていたのだ。あれは怖がるなという方が無理で、ただでさえ子供にはショッキングな見た目の者も多いのに、それを怖がるなというのはとても難しいことで……
 それを察してか、母はクスリと笑った。
「彼等は自分達が見える鈴音に話を聞いて欲しいだけなの。彼等を怖がらないで」
「うん、でもね、おかーさんとなら平気だよ」
 そう鈴音は桜の樹の袂に現れる幽霊を見た。痩せた少女で毎年この時期になると、あの木の後ろから二人をうらやましそうに見つめるのだ。
「あの子悲しそう、可哀そう」
「そうよ、だから何も怖いことなんてないの、死者にも優しくしてあげて、きっとあなたにならできるわ」

(確かに……)

 突如暗転、鈴音はまるで本の中から帰ってきたかのように、急に自分を取り戻していた。
 あのころは見えていた。
 鈴音は思い返す。異形の者達、この世にいてはならない者達の姿。
 弱いものなら白い靄程度にしか見えない、死んだ瞬間のショックをはっきり残し、繰り返し死に続けている者も中にはいる。
 それが見えるのは鈴音の血に宿る霊視の能力故。それは、鈴音のお家である黄泉繋の巫女家系が代々受け継ぐ力だった。
 だがそれも今はない、鈴音には幽霊が見えない。
 それはいつからだろう、そう鈴音は逡巡する。
 いったい、いつから……
 鈴音はそう暗闇の奥を見た、もうすでに淡く消えつつある幼き日の記憶。
 母が一緒なら、怖くなった、母が隣にいれば全て受け入れられた。
 けれど今の自分はそんな怖い思いをすること自体が稀になっている。
 ならば。見えなくなってしまったのは、母がいなくなってしまった頃ぐらいからだと、鈴音は推察する。
「もし、この力が私にまだあれば……」
 鈴音は誰にでもなくつぶやいた。
「私にお母さんが見えていたのかな?」
 
一章 いざゆかん恐怖の館へ。
 目覚めると、鈴音は温かい布団にくるまっていた。
 目の前には輝夜。彼女は、驚いたような、おもしろがっているような不思議な表情で鈴音を見つめていた。
 その小さな手が鈴音の頬をこする。
 涙をぬぐうような感触があった。
「大丈夫か? 鈴音」
「夢を見たのよ。お母さんの夢だった」
 けれど夢の内容はまるで覚えていない、夢の中で閃いたことも全て、あの闇の中に置き去りにしてしまった。
「なんだったのかしら」
 そう一人ご地につぶやいて、鈴音は体を起こす。
 鈴音はいつもより少し早い時間に目覚めてしまったことに少しもったいなさを覚えつつ、仕方ないから朝ごはんを豪勢にして調整しようと自分を納得させた。
 そしてパジャマにエプロン姿で台所に立つ。
「鈴音お主、まだ見えんのか?」
 テレビのリモコンをいじりながら輝夜がきいた。
「何が?」
「幽霊じゃ」
「普通の人は見えないのよ」
 輝夜はその言葉をセセラ笑った。
「な、なによ」
 輝夜はいいはしないが、鈴音に何らかの強力な力が宿っていることは見抜いていた。
 それでなければ死しているとはいえ百鬼の王に君臨する輝夜をそうやすやすとよびよせられるはずがない。
 鈴音には無意識のうちに、霊的なものを引き寄せる力があるのだ。
 それと対話する力も。
 ただ、その力はなぜか失われ……。いや、封印されてしまっている。
 輝夜はその一連の察していることは面白いから黙っておくことにしていた。
 それを話すとつられて、話さなければいけないことも出てくる。
 それは輝夜に新しくできたお友達にとっても避けたいことだったのだ。
「で、どうしたの? 唐突にお化けの話なんてして。この前のお化け屋敷何か気になることでもあった?」
「いや、あれはもうどうでもいいのじゃが。鈴音がだんだんお化けに慣れてきたようじゃからのう……」
 大変つまらないことに、そう輝夜は胸の内で注釈を加える。
「また、お化け屋敷の依頼を入れておいた」
「また!?」
「しかも今回は一人じゃ」
「一人!?」
 今までその手の依頼を何度も受けているが、一つもいい思い出をしたことがない。最早涙でふやけ顔の鈴音である。
 この反応が見たかった、そう輝夜は笑う。
 一方鈴音は、この鬼社会に適合し始めてる。そんな危機感を感じた。
 いつの間に自分一人で依頼申請など出せるようになったのだろうか。最近では鈴音のゲームに手を付けるようにもなってきたし。
 そのうち一人で電車やバスにも乗れるようになるかもしれない。
 そうなれば一大事である。この鬼に機動力を与えてはいけない。
 そう鈴音の本能が警鐘を鳴らした。
「では、準備はわらわがしておくからの、学校から帰ってきたらすぐじゃ」
「気が早い!」
「逃げることは許さんぞ」
 そう不敵に笑う輝夜。
 そして残念なことに、まだ恐怖体験に慣れていない鈴音は授業中も震え、ノートもまともに取れなかったそうな。

二章 呼び声

 そこは一家惨殺事件の起きた家だったそうな。
 幸せな団らん、両親と娘、その日は彼女の誕生日だった。
 しかし、気の狂った男が包丁片手に現れて、次々と両親の首をはねていった。
 その後男は自殺。よって家の中には三人の死体が残されていた。
 そう三人の死体。娘の死体は出てこなかった。
 彼女がどこかで生きているのか、それとも死んでいてどこかに隠されているのか、それは全く分からない。だが。そのせいでこの家は怪現象が起きるのだと、信じられているのは確かだった。
 だが現在鈴音の目の前にあるおうちは、そんな陰惨な事件があった後とは思えないほど綺麗だった。
 それもそのはず、あの後新しく売り出す際に改装工事を何度か行っているからだ。
 だがその家は何度売りに出しても戻ってきてしまう。
 何やら夜中に音がする。子供の声が聞こえる、などの不可思議な理由で。
「まぁ、ざっと報告書を読み上げたわけじゃが」
「うわ、雰囲気が……もう怖い」
「さっきまでは普通のお家ね、と言って負ったではないか」
 鈴音は愛用の大剣につかまりながらガタガタ震えている。
「しかたがないのう。と言っても今回も鈴音ふぉーむとやらで行くつもりじゃが」
「え! 輝夜がやってくれるんじゃないの?」
「それではいつまでたっても慣れることなんてできないじゃろうが!」
 そんないつものやり取りを繰り広げながら共鳴し、二人は探索を開始する。
 探索と言っても、その事件があってからこの家は片付けられているのであまり見るものもないのだが。
 だから二人は何か起きないかなぁと、リビングで待つだけだった。
「よかった、もう帰りましょうよ輝夜」
「いや、お化けと言えば夜。夜にならんと出てこんとみた」
「えー」
 その時だった。鈴音は何かに気が付きふと耳をそばだたせた。
――どうしたのじゃ、鈴音
「聞こえない? 鈴音、上から……なにか」
 鈴音はその何かに引きつけられるように先へ進んでいく。その足は迷うことなく二階へ、そして先ほどは見つけられなかった屋根裏部屋の入り口を発見したのだった。
 上がってみればそこには何もなかった。
 ただただ埃っぽく、暗い。
「けど、ここに何か」
――いかん、これは霊力の残証、鈴音後ろじゃ!
 そう振り返ると二人は信じられない者を見た。
 そこにいたのは大型の蜘蛛の従魔。だが、まぁそれはいい。
 その後ろに、従魔でもない、英雄でもない。得体のしれない少女が立っていた。
 その少女は鈴音に必死な視線を向けてくる。
「お! おばけぇぇぇぇぇ」
 そしてぷしゅうううと音を立てて鈴音の脳みそが停止した。
 意識を完全に失ってしまう。
「だあああああ! こんな時にしようのない奴じゃ」
 そして鈴音を黒い霧が纏う、そこに立っていたのは輝夜。
 夜のような漆黒の髪を振り乱し従魔と相対する。
 その瞬間一度だけ、輝夜は従魔を見た。
「……。お主つらかったな。いま、解放してやろう。」
 そしてひと思いに輝夜は大剣を一振り、その君の従魔を屋根ごと吹きとばし外へ。
 道路に叩きつけられ悶える従魔へと輝夜はとびかかり。地面ごと一刀両断する。
「この程度では、相手にもならんわ」
 そして周囲に敵がいないことを確認し、輝夜はH.O.P.E.へと連絡を入れた。

三章 後日譚
 
 あの後鈴音は目覚めると病院だった。念のためと検査をすると、待合室でたいきしていたカグヤにさんざんバカにされた。
「え、でもあれって夢よね、もしくは従魔が見せた夢とか」
「いや、あそこにはいたぞ、女の子が」
「え?」
 それを検証するために鈴音はふたたびあの屋敷に連行された。
 二度目の探索、今回は霊力的なものは何も感じられなかったので、輝夜と鈴音は共鳴せずに家の中を探索した。
 当然屋根裏も。だが結局何も見つからなかったし、幽霊に遭遇することもなかった。
「よかった〜」
 鈴音は何もないとわかると満面の笑みを浮かべた。
「惨殺時件で見つかってない子なんてやっぱ噂だったのね。そもそも惨殺事件なんてあったかどうかも」
 その時、鈴音は屋根裏部屋のガラクタの隙間に、白い何かが挟まっているのを見駆けた。
「おい、鈴音、あれ」
 そう鈴音に示そうとした瞬間。二人の耳元で声が聞こえた。
「ありがとう」
 その瞬間風が吹き抜け空へ、スカートを抑えた鈴音はぱちくり目を瞬かせると。直後。
「きゃああああああああああああ」
 悲鳴を上げて家を一目散に脱出した。
 その鈴音をけらけら笑いながら追いかける輝夜。 
 鈴音がお化けを克服できる日は遠い。


エピローグ
 輝夜はよく、鈴音が寝静まった後アパートの屋根に上り月の光を浴びていることがある。
 カステラを食べながらここにいる時もあれば、ただ単にボーっとしていることもある。
 いわば輝夜の一番リラックスできる時間帯が今なのだ。
 だから今の輝夜は機嫌がいい
 そしてその隣には半透明の女性が座っている。
 巫女服を着こみ、黒髪は長く表情は優しい。明らかに幽霊である。ただ彼女は鈴音には見えていない。
 鈴音の周りに常にいるのに、鈴音には一度も見えたことがなかった。
 輝夜はというとだいぶ前からその存在に気づいており、最近ではこうしてお話をする機会も増えた。
 鈴音には言えないことを相談できる、いい友達と言ったところだった。
「にしても鈴音のあの臆病具合はどうにかならんのかのう……」
「臆病は優しさのうらがえしですよ」
 そう女性はふふふとお上品に笑った。
 そしてカグヤに言う。
「物の怪でありながら人を守らんとする心優しき鬼よ。これからも私の娘を頼みますね」
「う……むぅ。まぁ血とかすてぃらを献上している間は、こき使ってやろうかの」
 そう女性は輝夜の頭をなで、とても穏やかな表情で微笑んだ。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『御門 鈴音 (aa0175) 』
『輝夜(aa0175hero001)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております、鳴海です!
 またまたノベルのご依頼ありがとうございます。今回は幽霊回ですが、お母様初登場ということで、親子のつながりを少し意識してみました。
 鈴音さんはしっかりしているので、ご両親もきっと良い方々だったんだろうなぁと想像しながら書いてみました。
 ちなみに今回の回でも鈴音さんはお化けを克服できなかったご様子。いつか死せるもの達とも仲良くできる日が来ると信じながら、鳴海は待たせていただきます。
 この前のerisuの依頼にはご参加ありがとうございました。きっと彼女とは今後会う機会があると思うので、その時は怖がらずに仲良くしてあげてください、彼女もきっと喜びます。
 さて、そろそろリンクブレイブ本編もあわただしくなってきましたので。おそらくお世話になる機会が増えると思います。
 その時はなにとぞよろしくお願いします。
 今回もありがとうございました。鳴海でした。ありがとうございました。
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鳴海 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年05月12日

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