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『「ああ、気持ちいい……ずっとこうしていたいわ……」 』
アリスjc2226

 深呼吸をすれば、微かに磯の香が漂ってきた。
 偶には、こうしてビーチで休暇を満喫するのも良い。
 海岸には私の他にも、水着の美女がたくさん集まっていた。

「けれど、やっぱり私が一番ナイスバディね」

 私は得意げに、120センチのバストを押し込めた三角ビキニの胸を張った。
 砂をかんだマイクロビキニパンツの隙間に指を差し入れると、90センチと大きいながらも形の良い尻から布地が浮き上がり、さらさらと浜の残滓が落ちてゆく。
 ――その、次の瞬間だった。

「キャアアアーーーッ!!」

 楽しい海水浴場の空気を、女性の悲鳴が切り裂いたのは。

「な、なに……?!」

 どの女性も困惑し、周囲を見渡す。
 声のした方向を振り返れば、砂浜を埋め尽くしていたのは巨大な……そう、体長2メートルに及ぶ"ヒル"で。
 それが砂浜を埋め尽くすほど、大量に湧いていた。

「何よ、あれ……ああっ?! 女の人が……」

 ヒルの近くに居た女性が、悲鳴を聞いて慌てて逃げ出したが、大きく膨らんだ腹部の為にすぐに転んでしまう。

「大変、ヒルが女性に圧し掛かって……でも、あの管みたいな口で、どうやって襲うの?」

 ――助けなきゃ。そう思いつつも、余りの衝撃でその光景から目が離せない。
 ヒルはその嘴を、女性の下腹部に突き刺した。そして……

 ずぞぞぞぞ!

 ……ストローで中身を吸い取られた様に、女性は下腹部に近い部位から見る間にミイラ化する。
 我が目を疑ったが、何度瞬きしてもそれは現実。
 よく見れば、その女の背後――大量のヒル達は、それぞれに萎んだ死体に口器を突き立てていた。
 同時に、ビーチに居た全ての女性達が一斉に喚き声をあげ、散り散りに逃げ惑いはじめる。

「あ、あっ! いやあっ!」

 浅瀬に居た私も、必死で足を動かした。
 でも、身体が思うように言う事を聞かない。それは水の抵抗のせいだけではない――

「どうして……?! 私まで、お腹が大きくなってる……っ?! 胸も……」

 大きな胸に隠れていて、気が付かなかった。
 細くくびれて60センチ程だった腹囲は、いつの間にか膨張して移動を妨げるまでになっていた。
 妊娠30週目の妊婦に近しいそのウエスト周りは、軽く90センチを超えているだろう。

「うっ、く……胸も、子育ての準備ができてるみたいに、すごく張ってる……」

 元々両手で抱くほどあった胸囲はいまや30センチは膨らみ、ぽっこりお腹の上で直径70センチほどの肉玉ふたつが、達磨の様に押し合いへし合いしている。
 これだけでもとても動きづらいのに、それらは内部から捻り上げる様な強烈な痛みで私の動きを完封した。
 周囲の女性たちも同じ症状に襲われているようで、逃げ遂せた者は殆どいない。けれど、私を含めた女達の表情は、苦痛一色ではなかった。

「ああっ……? い、痛いのに……でも、疼くのぉ……ッなにこれぇ……!」

 ずくん、ずくん、と鈍痛が脳髄を突き上げる度、全身を稲妻が駆け上がる様な感覚が襲い掛かって来た。
 とても立っていられず、私はその場に崩れ落ちる。海水が水着の奥までを湿らせ、その得も言われぬ感覚に一瞬頭が真っ白になる。

 ズルル……ズルルル……

 ……無力な女達に、ヒルが少しずつ近づいている。
 彼らがもぞもぞとうねると、その体内から共生しているであろう羽虫が放たれた。
 実は、ヒルは同時に――女性らが海岸に訪れる前から――無色透明、無味無臭の霧を周囲に散布している。
 霧の正体はヒルの生殖用繭の子種となる菌であり、感染した女性は無意識に海岸へ誘われ、その"美"を凝縮する事で肉体を改造されてゆくのだが……私には、それを知る由も無い。

「?! う、ううっ……気持ち悪いっ! いやっ、あっち行って!」

 拳大の羽虫の群れに見舞われ、なす術の無い私は、夢中で手足を振り回した。ばしゃばしゃと海水が飛沫を上げるものの、取り付いてくる虫を引き剥がそうと身体に力を籠めれば――

「ひぃぃっ?! あ、うう……ッ」

 一際大きな感覚の波に呑まれ、それが許されない。

「ああっ……やめて、水着の中に潜り込んでこないでーッ!」

 無数の虫が、次から次へとビキニの中に分け入って来る。
 六本の毛の生えた脚と昆虫の翅が全身を弄る感覚は発狂に値した。しかし常人よりも理性に優れた私は、不幸にも正気を失う事ができない。
 そして、虫達は探し当てた穴という穴から――

「いやあああああああッ! き、気持ち悪い……ッ! 動いてる……ッ」

 パンパンに膨れ上がった皮膚の下、蠢動が私の中心を目指す。
 余りの恐怖に一点を凝視していた私は、水面に知らない女が映っている事に気付いた。
 そしてほぼ同時に――その女が、他でもない自分自身である事を悟り、見開かれた両目から涙が零れ落ちた。

「こ……こえが、わらし……?」

 苦しさの余り、声が出ない。
 20歳らしい美しさは全く失われ、水鏡に見る自分は、どう見ても45歳過ぎのトウの立った女であった。
 胸と腹以外の皮膚は水分を失ってだらしなく弛み、目は落ち窪んで皺が寄っている。しかし、私にこれ以上それを気にしている余裕は無い。

「あッ……は……?!」

 一際強い痛みが、私の視線を身体へ引き戻す。胎内の繭にまで到達した虫によって、胸と腹の肥大化が加速したのだ。

「あ゛っ……、ー……ッ!」

 感覚の波が、大きなストロークを以て私の芯に打ち付ける。
 その度に身体はビクリと跳ね、三つの肉塊はミチミチと大きくなる。
 虫に玩ばれた水着は剥がれ、私は公共のビーチである事も忘れて声をあげ続ける。

「〜〜〜〜?! ぉ、〜〜〜ッ!!」

 虫達と繭が脈打つ感覚が短くなり、反らせた喉から声にならない悲鳴が絞り出された。
 下腹部からどっと熱が溢れ出し、海水に混じってその色を変えてゆく。周囲のたくさんの女達も同じ状況に陥っていて、海岸は異様な臭気に満たされていた。

「……! ……、!」

 余韻に打ち震えるばかりの私の胸囲は、もう2メートルを超えている。両手を伸ばしても胸の先端に届きそうに無い。それを押し上げる腹囲ときたら、臨月の妊婦どころか、成人男性でも孕んでいるのではないかと思う程だ。
 痙攣する私達に――ヒルが、もう目の前まで迫っている。

 いま、一匹が一人の女の身体に管を付き入れた。
 そして私が最初に見た女の様に、肥大化させた女の美を啜ってゆく。
 ――嗚呼、私の許にも、一匹のヒルがやって来たわ。
 他のヒルに比べてもとても大きい……体長は3メートル、嘴だけで50センチはあるかしら。
 それを、

「ぎゃ、ッ……げっ――ぉ、ご」

 その形に添って、皮膚が寄れた。

 ずぞぞぞぞ……

 身の毛もよだつ、音と感覚。隣の女性は、ごりゅ、と頬がこけ眼窩が窪んで、ミイラ化してゆく。
 なんだか私も、のうみしょがしゅわれちゃたみゆあ――

 ……。
 ……。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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アリス(jc2226)
 性別:女
 年齢:20
 職業:トレジャーハンター

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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何時もお世話になっております。
ヒルいいですよね。カタツムリに寄生して宿主を操る虫を思い出しました。
この度は清水澄良にご縁を賜り、誠にありがとうございました。
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エリュシオン
2016年05月23日

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