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『「……ああ、いやだわ。どうしてこんなに暑いのかしら」 』
アリスjc2226

 探索を続けるうち、私は汗をかいていた。
 ぬめりを帯びた胸は、一歩進むたびに忙しく上下してぴたぴたと水音をさせる。
 宝玉を秘めるとされた荒野の遺跡――建材自体が淡く発光する長い廊下を、私は歩いている。

「……あら? 何かしら、あの光」

 と、私は長く暗い通路の先に、きらきらと光る光球の群体を見つけた。
 それはふよふよと宙を飛んで此方に近づいてくるようだったけれど、まだその正体を知らない私は、さしたる警戒も無くそれに歩み寄る。

「まあ……これが遺跡の罠ってやつかしら? ずいぶん子供騙しねぇ」

 光群を全身に纏い、私はふふんと鼻で笑った。
 そして上機嫌で、これに手を触れる。

「――熱ッ?!」

 その瞬間、焼けるような痛みが指先を襲った。途端に、私を覆う光球が一斉に牙を剥く。

「や、あッ?! あ、熱いッ!」

 革の焦げる不快な臭いが鼻をついた。
 慌てて見下ろせば、光球の触れている部分のスーツがどんどん破けてゆくではないか。
 振り払おうと夢中で腕で空を切ると、胸も一緒になってぶるんぶるんと揺れて汗を撒き散らす。

「あ、やぁッ……ひぃ?!」

 突如、下腹部――臍の孔を無理矢理押し広げるような異様な感覚が襲った。
 私は一瞬息ができなくなり、咄嗟にその部分に触れる。
 もはやスーツは残骸が体にこびりつくのみで、お腹回りも既に服が破けて肌が露出していた。なまじ豊満な胸を持っていたせいで、光球の接近に気が付かなかったようだ。

「な、なに……? 今の感じ、何か中に入ったみたいな……?! ああっ、わぁッ」

 それを皮切りに次々と下腹部に群がってくる光球。
 私は半狂乱になり、いまや下に着ていたビキニだけの姿で、半ば転がるように通路を走り出した。

「はあっ、はあっ……ううっ?! うううううっ!」

 けれどいくらも行かないうち、私の身体は勝手に下半身に熱を集め始める。

「い、いやぁ……どうしてこんな時に……?!」

 しかし、光球はすぐ背後まで迫っている。
 走り出せば、確実に漏らしてしまう……けど、

「あ、う、う……ううーーっ……!」

 私は泣きながら、重い体に鞭を打った。
 足を前後するたび、内腿を熱が伝う。でも、今はそんな事を気にしている場合ではない。
 いくつか角を曲がって振り返ると、光球はもう追いかけてはこなかった。

「ふ、振り切ったのね……? もう、最悪よ……汗と臭いで、身体じゅう気持ち悪いわ。
 ……ここは安全みたいだし、シャワーを浴びようかしら……」

 私はヒヒイロカネから医療用シャワーを取り出し、それを通路壁面の彫刻に括り付ける。
 ばしゃばしゃと降り注ぐ水で体を清めていると、漸く気持ちが落ち着いてきた。

「は、あ……酷い目に遭ったわ。……あら? 少し太ったかしら……? いいえ、気のせいね……
 ああ、リラックスしたら……なんだか、変な気分になってきちゃったわ……」

 心なしか、胸と臍が疼いた。
 私は濡れた身体に指を這わせ、撫で弄り始める。

「ぅ、ん……は、ぁ……」

 慰めに躍起になっていた私は、自分の声が普段より艶っぽくなっている事に気が付かない。

「ン、ぅ……んん――ッあはぁ……!!」

 最高潮を味わいながら、私は自身の異変の末端に気付いた。

「っあ、あ……疼きが収まらないわ……それに、やっぱり気のせいじゃない。お腹が張って……?」

 早く宝玉を手に入れ、この遺跡を出ねば危うい気がした。
 私はシャワーも放置して、溢れる体液もそのままに通路を歩き始める。

「ううっ……お腹がどんどん膨れていくわ。一体、どこまで大きく……んん――っ! 出すのも、止まらないぃ……っ!」

 ボタボタ……感覚の波が押し寄せるたび、床に水たまりが広がった。
 60センチと引き締まっていたウエストは、今やぽっこりと腫れて、胴囲は100センチに達しようかという勢いで。
 とっくに人間の胎児なら産まれる大きさだが、私の孕んだモノの成長はまだまだ留まるところを知らない。
 私がもっと落ち着いていれば、自分に起きている変化から、胎児が何を食らっているか気付いただろう。
 それは私の、美貌そのものを糧に巨大化している。
 私の溢れんばかりの魅力は、そのままこの遺跡の罠を肥え太らせ、私を苦しめるのだ。代わりに私の外見は30代後半にまで差し掛かる変容を見せ、ぷるぷると弾けそうだった肌は何の抵抗も見せないぶよぶよとした肉へ成り下がっている。
 しかし、熱に浮かされた頭に思い浮かぶのは、ただ先に進むことのみ。

「う、うっ……あれが……遺跡の最奥の部屋ね……!」

 宝玉の元に着く頃には、腹部は地面近くまで膨張していた。
 小部屋に入ると、高い台座の上に赤く光る宝石――求めていたビッグジュエルの輝きを認める。

「や、やったわ……! これで、宝玉は私のモノよ!」

 私は蟻の女王のように重く膨らんだ腹部をズリズリと地面に引き摺りながら、台座の上に手を伸ばした――その瞬間。

「……?! きゃあ!!」

 ゴトンと開いた台座から、無数の甲虫がわらわらと飛び出してきた。
 おぞましい嫌悪感に手を引っ込めて飛び退いた私に、スカラベの群れはなおにじり寄る。

「いやあああっ!!」

 逃げようと身を捩るが、腹は罪人を戒める鉄球のように私をその場に釘付けにした。とても走れない。さらに――

「ああっ?! な、なに……なによこれぇ?!」

 突然、それまで張り詰めるばかりだった腹部が波打ち始めた。ボコボコと肉がうねる……胎内で暴れ回られて、私は堪らず遺跡の床に倒れた。

「いいっ、苦しい……いやぁ……くるっ、何かきちゃうっ!!」

 その感覚は凄まじい焦燥感を齎し、私は脂汗を浮かべて悶絶する。
 腹を内側から叩き付けるモノが、堰を切ったように――

「ああああーーーーっ! ああっ、やぁあぁぁあっ――……!!」

 暴力的な勢いで、光球が体外に放出されてゆく。
 その感覚に動けずにいる私の全身に、地を這うスカラベの蹂躙が始まった。

「――、……ああ゛っ! ……、」

 臍に、口に、虫の足が捻じ込まれてゆく。
 "美"を貪られ、私の身体は急激にミイラ化を遂げ――

「……! ……っ、――、」

 ひらり。紐が千切れ、ビキニが弾け飛んだ。
 ――パサ。もうサイズが合わないビキニが、変わり果てた私の身体に被さる。
 残されたのは、干からびた醜い肉塊だけだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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・アリス(jc2226)
  美女トレジャーハンター。20歳。

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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何時もお世話になっております。
アリスさんの事、これまで性格傾向からクセの無い純真な女性だと想定しておりました。
が、発注文拝見してもう少し強気なのかなと思い至り、今回は高飛車な感じで描いております。
何か改善点があれば、どうぞお気兼ねなく申し付け下さい。
この度は清水澄良にご縁を賜り、誠にありがとうございました。
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エリュシオン
2016年05月27日

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