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『琳と千颯の水族館の思い出 』
呉 琳aa3404)&虎噛 千颯aa0123


「おおお! ここがホープマリン水族館か…!!!」
 呉 琳は、目をきらきら輝かせながら感激する。

 ――とある休日の朝。
 琳と虎噛 千颯は仲良く一緒にお出かけしていた。
 天気は晴れ。
 目的地は青い海の近く。
 朝早くだというのに、既に観光客でとても賑わっている。

「ちはや! 早く行こう…!!」
 そして琳は付き添いで同行する千颯に振り返りつつ、ギザ歯を覗かせた満面の笑顔を浮かべた。
 英雄から貰った小遣いもばっちり持ってきているし、いつでも入場する準備は万端だ。
「よっしゃ、行くぜ〜」
 千颯は可愛いな〜と思いながら、琳の青髪をくしゃっと撫でる。
 すると琳は撫でられると嬉しくて表情が緩んだ。その様子は、まるで仲のいい兄弟のようだっただろう。
「ホープマリン水族館…どんな所だろうなぁ! すっごく楽しみだ!!」
 高鳴る気持ちを抑える事は難しく、早く早くと促す琳。そうして千颯の手を取って、楽しそうに引っ張っていったのだった。

 そんな彼らを歓迎したのは――、



「さ、サメだああ…!!!!!!!!」

 琳は白目をむいて素早く千颯の後ろに隠れた。

「ん? どうした琳ちゃん鮫怖い?」

 千颯が首を傾げつつ背中に隠れた琳に訊ねると、コクコクコクと激しく頷く。
 琳はサメのワイルドブラッドだ。しかし、だからといってサメが怖くない訳ではない、むしろ怖い。

 巨大アクリルパネルの大水槽越しに見える景観はまるで海の中のようであるだろう。だからこそ迫力は満点だった。
 そんな中、怖がっている琳の気持ちをよそに、サメが接近――
「う、うわあ…!!!!」
 千颯の背へ掴まっている手には力が籠り、頭まですっぽりと隠れる。
 そしてこのままぶつかるのではないか――という寸前の所までサメは接近したが、そうなる前にくるりと方向転換。そんな自由気儘に泳ぐサメの姿を鑑賞していた人々は、間近で楽しむ事が出来て大喜びの様子である。
「うお。でっけぇなー…!」
 千颯も関心を抱きながら瞬きを忘れて眺めていた。……が。
 後ろを振り返るとアハハ、と笑う。
「よしよし、次行こうなー。」
 琳は隠れても尚ちゃっかり覗いていたようで、サメ接近に驚愕し、口を大きく開け乍ら冷や汗を掻いていた。
 よほど怖かったようだ。
 今度は千颯が琳の手首を引っ張りながら、次のコーナーへと進んでいく――。




「魚うまそう…ちはや! あれ食えるかな!」
 それが泳ぐマグロたちを鑑賞した琳の感想だった。
「魚美味しそうだね! 夜は寿司でも行く?」
「行く!!!」
 ――まさか自分達を見つめながらそんな会話が交わされているとは、マグロ達は知らない。
 
 ホープマリン水族館は様々な魚や海の生き物と出逢える水族館で、その種類は千を超える程だった。
 綺麗な柄の小魚達や、ふわふわと優雅に浮かぶクラゲ、深海の珍しい魚や、アザラシやシロクマといった動物達まで。

 そんな海の生き物達との出逢いに感激し、楽しそうな琳の様子を見て、千颯は目を細めながら見守っていた。
 琳にとって水族館は未知なる冒険そのもの。
 新鮮なものだらけの世界を無邪気に探検して、あっちもこっちもと進む。
(琳ちゃんには甘くなってしまうなぁ)
 元気な姿や純粋な感じが可愛くて、琳を弟みたいだと思う千颯。
 一方の琳にとっても、千颯は優しくて傍に居ても安心の存在だった。
 いつも分からない事は優しく教えてくれる、頼れる兄貴分だ。

「ちはや! 午後からペンギンとイルカのショーがあるらしい!」
「おっ。それは是非見てみたいな」
「うん! 見たい!!」
「じゃあ決まり!」

 でもその前に先ずは腹ごしらえだ。
 時刻はあっという間に昼過ぎで、二人は一旦水族館から外へ出た。
 ゆっくりと寛げる広場のような飲食可能スペースに腰を下ろすと、お弁当を広げる。

「これ、嫁が作ってきてくれたお弁当なー。一緒に食べようぜ〜。」
「おおお…愛妻弁当ってやつだな!!」

 朝早くから頑張って作ってくれた自慢の嫁の弁当を一緒に食べる千颯と琳。
 
「美味い!」
「うんうん、そうだろ?」

 琳が頬張りながら美味しいと食べているのを見て、千颯はご機嫌な様子で頷く。
 ――密かに嬉しく、密かに惚けているようだった。

 そうして二人が弁当を食べ終わった後は――、



「おぉぉ……!」
 ホープマリン水族館名物イベント・ペンギン&イルカショーが開催され、司会進行役のトレーナーのお姉さんがイルカの背に跨って登場すると、琳は前のめりになった。
 千颯も息子愛で培ったお父さん力を発揮してカメラを構え――優雅にすいすいと泳ぐイルカの躍動感、涼やかな水飛沫、愛嬌のある笑顔。逃す事無く、ばっちりと写真の中に収めていく。
「ちはや! 撮れたか!」
「おう! バッチリなー」
 そしてお姉さんを乗せたイルカがステージ台の近くへと到着。
 イルカから降りたお姉さんは台へと昇って、『ありがとー♪』とイルカにご褒美の魚をあげつつ、観客席の皆に手を振った。
『みなさーん、こんにちはー!』
 こんにちはー!
 お客さんから元気な挨拶が返ってきたお姉さんは、嬉しそうににっこり。
『元気な挨拶をありがとー♪ 皆が元気に挨拶してくれたから、イルカさん達もとっても嬉しいみたいねっ』
 その言葉通り、イルカ達ははしゃぐように、水面を飛び上がり、綺麗な弧を描いて跳ねまわる。
「……!」
 琳は心からわくわくして、食い入るように見つめながらキラキラしていた。
 ――そんな表情が窺えると、千颯は微笑みを浮かべる。

 そしてイルカ達は、フラフープを鼻先でくるくると回したり、高いところにぶらさげたボールに届くハイジャンプを披露したり、水面から顔を出して愛嬌のある笑顔でひれを振ってみせたりと――実に多彩なパフォーマンスで観客を魅せていた。

「イルカって芸達者なんだな!」
「だな〜。それに可愛いね」
「可愛い!」

 そんなイルカの次に登場したのは――。

「ペンギンだー!」

 ペンギン達がステージ上をお腹ですーっと滑りながらやって来ると、観客達は沸いた。
「ちはや! あいつらも可愛いな! 写真、写真!」
「OK、ちょっと待って!」

 ペンギン達は到着すると、てちてちとお姉さんの元に集まる。そんな姿がとても愛らしい。
 ペンギン達も芸達者なようで、羽をぱたぱたと動かしたり、飛び台からプールへジャンプしたりと観客を楽しませてくれていた。
 
『うん? なになに? 今度は観客の皆さんとも一緒に遊びたい? ――ペンギンさん達、みんなと遊びたいんだって! 遊んでくれる人、挙手をお願いしますっ!』

「……!」
 琳が思わず手を挙げた。
(遊びたい!)
 ――するとトレーナーのお姉さんと目が合って……。
『手を挙げてくれてる青髪のお兄さん、一緒に遊んで貰えますか?♪』
「!!!」
「琳ちゃん良かったね! 楽しんどいで!」
『良かったらお隣のお兄さんもどうぞ〜!』
「えっ、俺ちゃんも!?」
 お姉さんに指名された琳と千颯は立ち上がると、拍手に包まれる中、スタッフの人にステージ上へと案内された。

 琳はステージに上がるとペンギン達が間近にいる状況――という珍しい体験にドキドキしつつ、千颯と共に傍へと寄った。

『それじゃあお兄さん達、片手を下の方へ伸ばして貰えますか?』

「こうかな?」
 千颯が片手を下の方へと伸ばしたのを見ながら、琳も同じように手を伸ばす。
 ――すると。
 ペンギンの片方の羽が二人にぺち、と触れた。
『はい、握手〜♪』
「「!!」」
 すげえ! と、感激すると同時に観客席からも拍手が喝采。
「ちはや、ちはや! こいつらが可愛すぎてたいへんだ……!」
「な。可愛すぎる……っ。」

 そうして琳と千颯はペンギン達と触れあい、イルカ&ペンギンショーを目一杯楽しんでいたのだった。



「楽しかったなー、ちはや!」
「うん! まさか俺ちゃんまで呼ばれるとは思わなかったけどなー」
 ショーのステージに立ってペンギンと戯れた時の高揚感が抜けきれない琳と千颯。
 二人はお土産コーナーへと立ち寄ると、二人はお土産を選ぶことに。千颯はというと、息子の為のお土産を考えていた。
「どれにしよっかなー」
 息子が喜びそうなものを、と考えつつ、様々な商品を見比べている。

(――俺も、どうしよう)
 琳は周りを見回しながらお土産を見ていると――。
 ふわもこなペンギンの人形を見付けた。
「!!」
 じぃぃ、と暫く見つめる事数秒。
 沈黙の後、ペンギンの人形を手に取る。
「琳ちゃんペンギンの人形にしたのか。誰へのお土産?」
 千颯に問われて、琳は視線を人形に落とした。
 この人形は普段は口喧嘩ばかりだけど凄く良い奴――そんな英雄の為のお土産。



 ――すっかりと暗くなってしまった夜空の下。
 千颯は、琳を背負いながら歩いていた。
 そしてすやすやと気持ちよさそうに眠っている琳の様子を見て、くすりと微笑む。
「今日いっぱい遊んだもんなぁ……」

 目一杯遊んで、目一杯楽しんで。
 なにもかも新鮮だった琳は、全力ではしゃぐあまり疲れて寝てしまったのだ。

「ちはやー……」
「! おお、起こしちゃったか? 悪いな、寝てていいんだぜ。」

 千颯が優しい声で紡ぐ。
 すると、琳は安心したように凭れきりながら――

「ありがとな、ちはや……。ちはやは、優しい……。」

 ぽつりと零す言葉は続いて、

「――いつも分からない事は優しく教えてくれるし、何かと頼ってばっかだけど……。いつかは、“恩返し”したいんだ。」

「琳ちゃん……」

 しかし、琳はまた静かな寝息を立て始めていた。
 今度はぐっすり眠ったようで、暫く起きる気配は無い。

「はは。寝ぼけてたのかな。」

 なんて。
 千颯は微笑んだ。
 心はぽかぽか温かい気持ちになりながら――。

「恩返し、かぁ」

 そしてキラキラ輝く星空を見上げながら、目を細める。

「また一緒に、どこか行こうね。」

 すると琳は、「ん…」と、むにゃむにゃと寝言を零したかと思えば、嬉しそうに、口元が緩んでいたのだった。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa3404/呉 琳/男性/16/かわいい弟】
【aa0123/虎噛 千颯/男性/23/頼りになるお兄ちゃん】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、瑞木雫です。
 本当に長らくお待たせしてしまい、申し訳御座いませんでした……!
 完成をお待ちくださって本当にありがとうございます。
 そしてお二人のノベルを執筆する事が出来て光栄な気持ちでいっぱいで、とても楽しかったです。

 琳さんも千颯さんもお互いの事が大好きなんだなぁ、と伝わってくる間柄――ほのぼのしていて、温かくて、尊い…とトキめきつつ。
 だからこそ、私が書いたノベルが、お二人にとって楽しい水族館の思い出の物語となれているかどうか、とてもドキドキしております。
 もしも不適切な点など御座いましたら、遠慮なくおっしゃって頂けると、助かります……!

 御発注ありがとうございました!
 
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2016年06月03日

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