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『密室の全力戦闘 』
カミユaa2548hero001

●全てはここから始まった
 超忍者兄弟。
 ブラックコンピューター(以下ブラコン)のソフトであり、謎の鬼難易度を誇るゲームである。
 理不尽の嵐の末に見られるのは、3秒エンディング。
 かつて賢木 守凪(aa2548)とカミユ(aa2548hero001)が従魔討伐任務後の休日を潰したという代物だ。
 この超忍者兄弟、その後ブラック94(以下94)というハードで、超忍者宴という派生ゲームがあったりする。
 派生ゲームであるが、皆で楽しめるパーティーゲームであり、理不尽なシステムはなく、超忍者兄弟とは別物として考えていいらしい。制作会社が違うから、名義も別……キャラと世界観が同じというレベルらしいが。

 で、何故こういう話をするかというと──

「やるしかあるまい」
 守凪のその手には94と超忍者宴。
 派生ゲームがあると突き止めた守凪、英雄の娯楽名目でネットオークションで執念の競り落としをしたのである。
(まぁ、こうなるよねぇ)
 見事大義名分にされたカミユは袖で口元を隠しながら、笹山平介(aa0342)と柳京香(aa0342hero001)を見る。
「私、ゲームは嗜む程度しか出来ないんですよねぇ♪」
「あまり上手くないと思うけど、楽しめればいいと思ってるわ」
「俺もこのゲームは初めて触る。平等だ」
 平介と京香の笑みに、守凪はそう言うも「だから最初から真剣勝負だ」と笑っている。
 カミユは隠した口から「くふふ」と小さく笑い声を漏らす。
(まぁ、手加減は出来ないよねぇ)
 手加減しないことこそ友情と思う守凪への評価なのか、それとも自分のスタイルなのか──その言葉の真意を知る者は、カミユ以外にはいない。

●忍を選べ
「俺は真威蔵を選ぶ」
「無難だねぇ」
 迷うことなく主役の真威蔵を選んだ守凪へカミユがくふふと笑う。
「カミユ、それなら貴様は何を選ぶつもりだ」
「ボクぅ? 善蔵だよぉ」
 善蔵とは、主人公真威蔵と双子の弟流理蔵に協力する巨大な蜥蜴で、ゲームのマスコットキャラのことだ。
「私は桃姫にするわね」
 京香は自分もそうだという理由で、紅一点の桃姫を選択した。
 桃姫は真威蔵、流理蔵の一族を召抱える貴野湖城のお姫様だ。
 超忍者兄弟ではプレイヤーキャラクターはなかったが、超忍者宴ではプレイヤーキャラクターに昇格したらしい。
 さて、残るは──
「今日は、私が守凪さんの弟ですね♪」
 平介は真威蔵の弟、流理蔵を選んでいた。
 ややパワー比重だがバランス型のオールラウンダー真威蔵に対し、流理蔵は跳躍力やスピード、テクニック方面にやや向けられたバランス型のオールラウンダー……だそうだ。
「平介が弟だと? 弟でも負ける訳にはいかないからな!」
「はい、お兄ちゃん♪」
 守凪が兄弟にそわっとするのを隠し、びしっとするが、平介が楽しそうに笑ってそう言うので、結局守凪はツンになれない。
「確か、ボードゲームなのよね、これ」
「ボードゲームとぉミニゲームでぇ対戦してぇ、それで順位を競い合うんだねぇ」
 京香がプレイヤーキャラクター選択も終わり、画面はボードマップ選択画面だ。
 が、京香が想像していたすごろく画面とはちょっと違ったらしい。
「難易度は最初だし、簡単なものの方がいいだろう」
「難易度が低いものですと、この、虹の貴野湖城でしょうか。虹を城と城下町に描くって何だか素敵ですね♪」
「あら、画面も綺麗ね」
「じゃあ、これにしようかぁ」
 そんなこんなで、ボードマップも決定。
 ボードストーリーを選んだ為、ターン数はオートで決定。
 賽を投げ、順番を決めれば、ゲームスタート。
「負けるつもりはないからな。特にカミユ、貴様だ!」
「ボクも負けるつもりはないよぉ」
 守凪とカミユを見遣り、平介はコントローラーを握る手を強くする。
(最下位になれば皆ビリじゃなくなる……)
(ちょっと手加減して、花を持たせるのもいいわね)
 京香も画面を見てふとそう思う。
 ここに、仁義なき最下位狙い争いが始まった……のだが、守凪とカミユは勿論、平介と京香さえもそのことを知らなかった。

●時には結託する全員ライバル
 賽を振り、止まったマスによって小判が増減したり、イベントが進む。マスによってはミニゲームが発生する。また、全員一通り賽を振った後にミニゲームが発生する。
 ミニゲームに勝利すると、ボードゲームが有利になる小判と星が得られるので、ボードゲームを制するには、必要不可欠だろう。
 このミニゲームも、プレイヤー全員で争うだけのものではない。全員で協力し合うものもある。2対2であったり、1対3の対戦形式というのもある。それは各プレイヤーがどのマスに停止したかによって決まるらしい。
 また、マスに停まってプレイヤー毎に行うミニゲームは1人用やボスとの対戦形式のミニゲームだ。マスに鉢合わせした場合は決闘形式である。
 ミニゲームはゲーム説明もあるので、混乱することはない。
「……別物、別名義という評価は本当だな」
「そうなの?」
「前やったのはぁ、『頑張れ。以上』としかなかったんだよねぇ」
 守凪がミニゲームの説明をする貴野湖城の使用人、日緒を見る。
 超忍者兄弟未プレイの京香はよく判らず首を傾げるが、カミユが「くふふ」と守凪の説明を補足した。
「ゲーム自体はどうだったの?」
「……」
 京香の問いに何故か守凪とカミユは沈黙した。正確に言えば、沈黙した守凪にカミユは付き合っただけなので、くふふと楽しそうに黙秘しただけだが。
 彼らの頭に過ぎった理不尽の数々は、京香の脳に転移してくれない。
「でも、皆さんで楽しめるゲームなら、私はどんなゲームもいいと思いますよ♪」
 平介はゲームのルールをよく読み、楽しもうと微笑を向ける。
 今回は穴掘り競争で、4人が競い合うもの。ボタン連打で穴を掘って大判小判の財宝を1番最初に見つけたものが勝利するのだ。
(な、中々調整が難しそう……)
 どこに財宝が隠れているかなど判らない為、ボタン連打は運だ。
 平介と京香は同じことを思っているが、表面化してないので気づかない。
「中々見つからないな、これ」
「今回はぁ運のゲームかなぁ」
「ランダムって言ってたから、移動操作とボタン連打が重要なんでしょうけど……」
「あ」
 熱を入れる守凪……を楽しそうに見ながらも平然と全力プレイのカミユ、負けまいと効率のいい穴掘りを画面見つつ弾き出していた京香だったが、平介が思わず漏らした声で大判小判財宝が掘り当てられたことを知る。
(意外に加減が難しいですね……)
 平介は小声を出して呟く。
 と、守凪が顔を向けてきた。
「何か言ったか?」
「いえ、何も」
 平介は、狙って最下位の難しさを隠してふわりと微笑んだ。

 けれど、これは激闘の始まりでしかなかった……!

「あ、落ちちゃいました」
「カミユ、貴様……!」
「ゲームの中の話だよぉ」
「ごめんなさい……つい」
 現在、2対2の激流下り競争ミニゲーム中。
 木の小舟で激流を下ってゴールを目指すというミニゲームだ。
 対戦形式である為、妨害は勿論アリというもの、今回は真威蔵・流理蔵兄弟こと守凪・平介対善蔵・桃姫ことカミユ・京香の対戦カードだ。
 勝負事とちょっと熱くなった京香とガチである上相手に合わせるのは得意というカミユが即興の作戦で巧みに妨害を開始し、小舟操作の真威蔵と真威蔵守る流理蔵へ牙を剥いた。
 結論を書けば──ボタン操作に優れるが、平介との協力プレイにわくわくしていた守凪のちょっとした操作ミスを見逃さず、小舟をより急流のコースに流れるよう京香が操作し、その間にカミユが小舟を難易度低いコースへ進めたのだ。
 で、平介操作の流理蔵が急流の中にダイブ、タイムロスが発生している。
 ゲーム外妨害はしないが、ゲーム内はその限りではない。容赦? 手加減? 聞いたことがない名前だね。
「私の所為ですみません」
「平介は悪くないだろう。元はと言えば、俺の操作ミスからだ」
「なら、お互い様ですね♪ 次一緒の時は絶対勝ちましょう♪ 大丈夫♪ 」
 平介と守凪は別のミニゲームで組むことがあったら今度は勝利しようと誓い合う。
 組むことがあったら、というのは、マスによってミニゲームのジャンルが変わる上、停止したマスの色で組み合わせが決められる為、次も絶対一緒だと言い切れないからだ。
「対戦する時は正々堂々だからな!」
「はい♪」
 守凪へ平介が微笑みを深める。
 カミユはちらとその様子を見たが、京香が見ていることを知っていたので、その笑みを変えることはしなかった。

 更に激闘は続く。
「中々当たらないねぇ」
 カミユがぼやきながらボタン操作すると、画面の善蔵は矢を屋根の上を走る真威蔵に射る。
 が、守凪は巧みな操作で善蔵の矢を回避させた後、真威蔵を先へと進めさせていく。
「もう少しでお城にゴールしちゃうわね。何とか落とさないと……」
「このままゴールする……!」
「今です! あ、避けられてしまいました……」
 京香操作の桃姫の矢も避けた守凪、勝利に向かって突き進むその瞬間を狙って平介が操作し、流理蔵に矢を射させるが、守凪は見事な操作で矢を回避して、ゴール。
 城へ密書を届けるという任務を果たしたという形で、1対3のゲームを単独勝利で制した。
「ま、こんなもんだな」
 どやっとする守凪は真威蔵が、流理蔵、善蔵、桃姫から小判を支払われているのを見る。
 3人が勝つと逆に真威蔵が3人に支払われるので、実は負担半端ない事態になった為、守凪としても負けられない戦いだった。
「流石守凪さんですね。お見事でした」
「 ふん、俺の実力なら楽勝だな」
 平介に褒められた守凪、口調とは裏腹に表情は嬉しそうである。

 そして、この次のミニゲームは、4人協力形式だ。
 連携して密書を届けるというもので、互いの動きを見てパスしたり、迫る敵を妨害しなければ密書は奪われてしまう。
「木の付近は絶対いるわよ、忍者」
「じゃあ、木に手裏剣投げておきますね」
 京香の言葉を受けて平介が操作し、流理蔵が手裏剣を投げて忍者を落としている間に、真威蔵と桃姫が短いパスで繋いでゴールを目指している。
「ちょっとカミナぁ、今操作ミスしたでしょぉ」
「黙れ、カミユ。この位俺にとってハンデにもならん」
「まぁったくぅ」
 善蔵操作のカミユは守凪が凡ミス操作で増援を出してしまった忍者の進路妨害をし、彼らが敵に襲われないようにすると、無事にゴール、全員任務クリアで平等に小判が得られた。
「今回は全員平等に得られるゲームなんですね」
「唯一のものらしいけどねぇ」
 良かったと満足そうに笑う平介へカミユがくふふと笑う。
「後は大体対戦形式やバトルロイヤルみたいね。かなりの数があるみたいだけど……」
「調べたら数が豊富であるが故に熱が入りすぎて腱鞘炎になるプレイヤーもいるそうだな」
「あら、そうなの? でも、判る気がするわ。これ、楽しくて、忘れちゃいそうだもの」
 守凪へ京香が微笑む。
 彼はそれを時間や我と受け取り、「そういうこともあるのか」と意外そうな顔をしたが、実際京香が忘れちゃいそうになったのは、ちょこっと手加減し、彼らを立てて喜んで貰おうと思っていた初心である。
 尚、現時点、カミユが1位、守凪が2位、同率で平介と京香が争っている状況である為、全員、意図した最下位の座に収まる熾烈な戦いに気づいていない。

●ゲームを制したのは
 ゲームは虹を届ける為の星を着実に集めて終盤に近づいていく。
「星は集まってもゴールが遠い……!」
「カミナ、出目悪すぎぃ」
 守凪へカミユがくふふと笑う。
 このゲームの暫定順位は、大判小判と星の数で決められる。
 規定の星がなければゴールしたという判定がされず、また、各所の関所マス通過や星購入の為に大判小判は必要というシステムの為、単純にゴール付近にいる者が1位であるとは限らないのだ。
 ……で、途中ミニゲームでカミユから1位をダッシュした守凪はゴール条件は唯一クリアしているが、賽の目が大変悪く、ゴールからは1番遠い。
 ちなみに、条件クリアはしていないが、カミユが最もゴールに近く、守凪ともそこまで差がついている訳ではないので、総合的に見れば優勝に近いのはカミユの方だったりする。
「賽の目だけはどうしようもないですからね……」
 平介は守凪を慰めるようにアイスレモンティーを出す。
 それだけでなく、お手製のマーブルケーキとクッキーもそこにあったのだが、それらの姿は既にない。
 白熱している間に飲み物食べ物消えるあるある。
 そうこうしている内に、2対2のミニゲームで、守凪・平介組対カミユ・京香組の組み合わせ再発生。
「あら、久し振りの組み合わせね」
 京香が負けないと微笑を浮かべる。
 今まで4人形式であったり、1対3形式であったり、2対2でも組み合わせ違いだったが、やっと、である。
「二人三脚ねぇ……」
「タイミングが重要そうね」
 カミユと京香は顔を見合わせ、
「頑張りましょう、守凪さん♪」
「ああ。今度は勝たなければな」
 平介と守凪は気合十分だ。
 このゲームは同時にボタンを押すことでタイミングよく前へ踏み出すというゲームであり、タイミングが合わないと転倒して起き上がるのに時間が掛かるというペナルティがある。
「守凪さん、声を掛け合いながらボタンを押しましょう!」
「…! へ、平介がと言うなら、仕方ない」
 平介の提案にツンツンしながらも、やっぱり表情は嬉しそうな守凪。
 彼は個人プレイは得意だったが、協力プレイは滅茶苦茶初心者で、しかも実はその協力プレイがわくわくしていた為にいつもはミスしないような箇所でも操作ミスをしていた。激流下りもそのことを気にしていただけに、平介がそう言ってくれたのは控えめに言っても嬉しい。
 という訳で、
「イチ、ニッ、イチ、ニッ」
 掛け声上げてボタンを押す、平介と守凪。
 その横で、京香が肩を震わせてしまい、カミユも面白がってしまった為、スタートのタイミングが合わなくなり、それが勝負の決め手となって、平介と守凪勝利!
「守凪さん!」
「平介!」
 勝利のハイタッチ!
 尚、ここで小判を得た守凪、運良く(?)出目が悪かった為に万屋に停まった。
 ここでは、小判をアイテムに引き換えることが出来るのだ!
「転移星買うぞ!」
 守凪、ここで勝負に出て転移星購入。
 10マス以内の好きなマスに転移出来るとあり、当然、ゴールに転移した。
 星は十分溜まっており、城と城下町に虹が描かれ、マップが虹色に輝く。
「あら、グラフィック綺麗ね」
「ハードがそれだけ進化してるってことだよねぇ」
 京香の感心にカミユがくふふと笑う。
 ブラコンのグラフィックを知るカミユは、94のグラフィックは比べ物にならないが、この94さえも最新のハードではないことを知っており、そのグラフィックはこれ以上であることを知っている。
 が、それよりも、
「ま、俺ならば当然だ」
「流石です。守凪さん♪」
「へ、平介との二人三脚がなかったらこの結果はなかったからな」
 守凪と平介はゲームの勝利を喜んでいた。
 尚、2位がカミユ、3位が京香、最下位は平介。
 平介はある種争いを制していたが、やっぱり誰も……本人達さえもそれに気づいてなかった。

●宴の終わり
「遊んでみればあっという間だったな」
 守凪は幻想蝶の中に94と超忍者宴を仕舞った。
 ここならば父親の手は及ばないと守凪は知っている。
 どのような言葉を並べたとしても、父親は自分の思い通り以外の行動を認める訳がない。
(懲りないよねぇ)
 カミユは未来を知っていて尚そうし続ける守凪を見る。
 その理由たる御伽噺の中にいるであろう平介と会話をする守凪は彼の前ではより素直だ。
(そうじゃなきゃつまんないけどぉ)
 カミユはその言葉を口にはせず、くふふと笑う。
 自分に京香が目を向けているのを感じながら──

「平介、わざと負けなかった?」
「難しかったよ?」
 京香は2人きりになってから、平介に尋ねた。
 けれど、平介はそうとしか言わない。
 ゲームが難しくて負けたという意味なのか、意図的に負けるのが難しかったという意味なのか。
 どちらにも取れる意味だが、平介はそれ以上を言わないだろうと京香は察した。
「難しいのには同意するわ」
 京香がアイスレモンティーの口をつけた。
 彼は自分の密書を守り抜く術は超忍者兄弟以上だと思いながら。

 宴は終わった。
 次の宴はいつか判らず、誰が勝者になるかも判らないが──楽しみであるのは確か。
 その日が来たら、また楽しもう。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【カミユ(aa2548hero001)/男性/17/嗤って笑わぬ愉快犯】
【賢木 守凪(aa2548)/男性/18/在りし日は未だ蒼穹の彼方】
【笹山平介(aa0342)/男/24/Pars maior lacrimas ridet et intus habet.】
【柳京香(aa0342hero001)/女/23/Non mihi, non tibi, sed nobis.】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
真名木です。
この度はご指名ありがとうございます。
楽しく書かせていただきました。
彼らの日々の彩りとなれますように。
■イベントシチュエーションノベル■ -
真名木風由 クリエイターズルームへ
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2016年06月13日

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