▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『【リン舵】小太がコクリでコクリが小太?! 』
弓月・小太ka4679

「遠いところをよく来なすったのぅ」
「ちょうど午後のティータイム。ぜひ一緒に紅茶を召し上がれ」
 クリムゾンウェストのとある田舎村で、村人たちが来客を歓迎していた。
「は、はい……せっかくですし、いただきます」
 来訪者は小さな少年だった。
 名は、弓月・小太(ka4679)。清々しい青袴姿で恐縮している。
「それにしても珍しい服を着ておるの」
「名は何という」
 矢継ぎ早の質問攻め。とにかく自分の名前と東方由来の舞を嗜んでいることを伝えた。
「ほう。それでショータは何しにこの村へ?」
「ええとぉ……珍しい祭や催しでもあればと……」
 小太、そういった賑わいを好むようだ。ハンター仕事の合間に珍しいカーニバルを見つけては、気になるあの娘を連れ出しトラブルに巻き込ま……もとい、変わった体験まで楽しんでいる。なぜだかたいていひどい目に遭っているが、きっと楽しんでいる。
「おお、それならちょうどアンズ祭が……」
 その時だった。
「巨大スズメバチじゃ〜っ!」
 アンズの果樹園から悲鳴が上がり難を逃れようとこちらに逃げて来た。その顔は恐怖に引き歪み目を皿のように見開いている。
 直後!
 ――ぶうぅん……。
 不気味な羽音が響く。
 その唸るような、空気を震わす振動が……異様なほど大きくなるッ!
「な、なんちゅうでかい音じゃ」
「ま、まだ大きくなるんかい」
 ――ぶぶぶ、ぶうぅん!
「で、でかい!」
 あまりの不気味さに逃げる足も思わず止まっていた村人は、見た。
 こちらに逃げてくる村人を追ってきたのはスズメバチ。ただ、大きさが違う。大人の顔以上はあろうか。明らかに通常見られる昆虫の類ではないッ!
 数は二匹だが存在感が圧倒的。精悍な顔でがちん、がちんと音が出るほど顎を咬み合わせている。
「ふぇ!? こ、こんな所に歪虚ですかぁ!? 此処は僕が抑えますので皆さんは退避を……」
 小太、ライフル「メルヴイルM38」を手に躍り出る。こういった戦闘は今まで何度も経験して慣れっこだ。
「まずは時間稼ぎですよぅ……」
 トリガーに掛けた指。片目を瞑って定める狙い。
 いつもと一緒。戦法は最初の弾丸にレイターコールドショットを掛け敵を固めて遅らせる。その隙に次の獲物を狙うのだ。接近されると辛い射撃メインの自分のためにも、逃げる村人のためにも。
 ――タァン!
 狙いを定めた一撃。ぴしりと敵に命中する。
「おお、やった!」
 会心の音に思わず振り返る村人たち。向かってきていた大スズメバチはのけぞった。
 しかし!
 ――ぶぶぶ、ぶぅん。
「うわあ、立ち直ったっ!」
 一瞬止まった巨大スズメバチだが、まったく効いてないかのように向かってくるではないか!
「って、当たってるはずなのに効果がありませんかぁ??」
 小太は愕然としている。
 それもそのはず。物理的な威力はおろかマテリアルを込めた冷凍足止めスキルの効果すらなかったのだから。
 その時だった。
『それは瘴気の塊……アヤカシ。仙骨を持つ開拓者にしか倒せないよ』
「わきゅ? 何か声が聞こえたのですよぉ?」
 もう一発放った小太、やはり効かなかったことに焦りつつもどこかからの声に気付いた。
『ボクとひとまず約束して。後でしっかりボクの話を聞いてくれる、って』
「そ、それであの敵が倒せるなら……」
『ありがとう。じゃ、いくよ!』
 きょろきょろしていた小太、突然自分の周りが日陰になったことに気付き何が起きてるか理解する。
 慌てて見上げると!
 ――ひら……。
 真っ白にひらめくミニスカートに、温もりある肌色の太ももがくるりと回転。
「って、上からぁ!? わきゅぅ!?」
 むぎゅり、と柔らかい丸みを受け止めたまま尻もちをつく小太。痛かったが重みはすぐになくなった。
「ボクはコクリ・コクル。よくわからないけど、気付いたら君がアヤカシに襲われているのが見えたんだ」
 元気のいい声が響き、大地を蹴る音とともに遠ざかる。
 尻もちをついたまま声の主を目で追うと、真っ白な衣装にショートソードを振り抜く背中が。
「よ……っと、もう一丁! よし、これで全滅。……大丈夫? ええと……」
 敵を斬り落とし振り向いた姿は、ショートカットのボーイシュな少女だった。白いセーラー服ががひらめき、屈託のない笑顔。
 開拓者のコクリ・コクル(iz0150)である。
「ゆ、弓月・小太ですよぉ。……大丈夫、このくらい。あ、また来てますよぅ!」
「今度は大サソリだね、任せて!」
「あ……でもっ」
 小太、止めたが間に合わない。
 コクリは大地を這い向かってくる猫くらいの大サソリに斬りつけるが……。
「あれ? 手応えはあるのに効かない……わっ!」
「それはマテリアルを纏ってますよ……歪虚っていいますから僕に任せてください」
 とっさに銃を構えて撃ち抜く小太。
 ぴしりと命中。ハサミが吹っ飛ぶ。
「あっ、コクリさん!」
 間髪入れずにもう一発。尻尾でコクリをふっ飛ばした敵を後方にふっ飛ばし止めを刺した。
「わ、すごい……小さな銃なのに威力が高いね」
 尻もちをついたコクリが振り向き大きな瞳を見開いている。
「そ、そんなことないですけど……コクリさんにひどいことしたから思いっきり撃ち込みましたよぅ」
 小太、近寄ってコクリに手を差し出す。心からの言葉が素直に出たことにちょっと自分でもびっくりした。それだけ未知の敵に遭遇してから緊迫していたのだ。
 そしてそれが、普段周りから可愛らしいと言われがちな面差しを男らしく変えた。
 が、それは一瞬。
 コクリの手を取るとすぐにいつものやや気弱そうな顔に戻った。
「ホント?」
 そう言うコクリの瞳を目の当たりにして怯んだのだ。
 少女の、キラキラする輝きを思わず独り占めした時の動揺。
 ただ、それはコクリが先ほど感じたものに近い。
 少年の、全てを懸けて戦った時の煌めきを思わず独占したのだ。
 もっとも、それがときめきだとは二人とも気付かない。どちらもどんな顔をして、どんな瞳をしたかは自覚がないであろう。少年と少女の、しかもその中でも特定の、ごく限られた期間にしか見られない瞬間が重なった。奇跡のような巡り合わせだった。
 それなのに!
「も、もちろ……わふぅっ!」
 よいしょ、とコクリの手を引いて起き上がらせた瞬間、青い袴の結び目が解けたのだ!
「あ、ダメだよ。こんなところで!」
 不幸なことにコクリの反射神経は優れている。
 ずり落ちる袴を見て、迷わず全力で止めに入ったのだ。
 何が起きたかというと……。
「こ、コクリさん……」
「う……小太さんって、細く見えて逞しいんだね」
 思いっきり小太の腰に抱きつき腕を回し、膝裏まで落ちた袴を掴んだままピッタリ密着。小太の体に付けた頬を刷り上げたコクリの顔は真っ赤に染まっている。小太を無理にでも見上げているのは、下を少しでも向くと何かが当たるからというのは内緒だ。
「ふぇ……そんなことは……」
 動揺した小太の様子に、コクリは普段の自分を取り戻した。
「あは。小太さん、面白いね。あんな表情したかと思ったら今は寝起きみたいにきょとんってして。もしかして朝はお寝坊さん?」
「夜の稽古が続けばそういう日もあるかもです……」
 そんな会話をしつつ袴を整える。
 その時だった。
 ――どさり……。
 果樹園から、何やら不気味な音が響いた。
「な、何でしょう?」
「またサソリ? だけど……なに、これ」
 振り向く小太と改めて立ち上がったコクリの声。
 ――かさかさ、ぶうぅん。
 何と、今度の大サソリには大スズメバチの羽がついていた。宙に浮いて威嚇するようにホバリングすると、一気に向かって来る!
「ま、またですか……ふぇ?」
 小太、迷いなく撃つが回避された。俊敏に空中をスライドした新手の昆虫。素早い。
「瘴気を纏ってる。きっとアヤカシだよ!」
 間髪入れずコクリが詰める。フェイントを入れた一撃できっちり合わせて刃を振り抜く。
「……あれ?」
 が、切れない。
「負のマテリアルを感じますし、きっと歪虚ですよぅ」
 コクリの一撃に重ねるように撃った小太。今度はクリーンヒットした。
「ふぇ?」
 ただ、これも当たっただけで効いている様子はない。
「な、何でしょうか。歪虚とアヤカシが融合して新しい敵になったんでしょうか?」
「あっ!」
 考えを巡らせていると敵を包囲するため向こうにいるコクリが慌てた。
「コクリさん、どうし……わっ、姿が消えかけてますよぅ」
「仮の約束だとここまでみたい……小太さん、何かボクに約束して。ボクは、小太さんを毎朝起こしてあげる。お願い……ボク、元の世界に戻されちゃう!」
 必死の言葉。
 スズメバチサソリがマーキングのために振りまいた毒霧を喰らっているがそれどころではないと手を伸ばしている。
 助けを求める白い手の平。
「何か……約束、ですかぁ? ……ふぇ? 毎朝僕を、起こす?」
「早く。消えちゃう! 約束してくれたらきっと、この敵を倒す力を小太さんに分けてあげること、できるからっ!」
 消えかかりつつもぐっと伸ばされる手。
「お願い!」
 小太、走る。
 再びその手を取るために!
「なんでもいいから!」
「そ、それじゃさっきのお礼に僕もコクリさんの着替えを手伝いますよぅ!」
「えええっ!」
 今度はコクリが動揺するが、それどころではないッ!
 伸ばす手と手が接近する。
 互いの約束はそろった。
 瞬間、目指した手の平が光った。
 伸ばした小太自身の手の平も同じように光った。
「こ、これは……」
「蝶の紋章でしょうか?」
 コクリと小太、相手の手の平に浮かんだ約束の紋章蝶を確認した。二人が約束を受け入れた瞬間だ。
 そして合わさる二人の手。
 刹那、小太とコクリが一瞬光となり……。
『小太さん、間違いなくボクの力、預けたよ』
「わふぅっ! フラさんの服装と武器」
『小太さんの武器も使えるよ。顔はボクに近くなったみたいだけど……体は小太さんに近いんじゃないかな?』
 ボクの胸ちっちゃいから、と恥じ入るコクリの気配が感じられる。
 そこへ、敵。光が収まって改めて襲ってきた。
 振り回した尻尾の毒針が来る!
「き、斬れましたぁ……でもっ」
 コクリの剣でぶった切ったが、今度はハサミにつかまれねじり取られた。
『小太さん、気にしないで! チャンスだよっ』
「そ、その通りですぅ」
 両手が開いたことでライフルをがっちり構える。
 迫ってくるサソリに重厚をくっつけ夢中でトリガーを引く、引く、引く……。

「小太さん、起きた?」
 気付くと、小太は地面に横たわっていた。
「ふぇ? やられちゃいましたかぁ?」
「ううん。ちゃんとやっつけたよ。相打ちで顔に攻撃を受けそうになって小太さん、わざと倒れ込んだんじゃない」
 がば、と起きると側に座っているコクリが言った。
「夢……じゃないですよねぇ?」
「うん。これから毎朝、起こしてあげるね」
 満面の笑顔で小太にコクリ。
「じゃ、じゃあ僕はリボンを結んであげますぅ」
 小太もにっこり笑顔を見せる。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
弓月・小太 様

 いつもお世話様になっております。
 ファナブラと舵天照のコラボ企画に参加いただき、ありがとうございます。
 リンブレとできるだけ合わせようかと思いましたが、二人で一つの制約ではなく、お互いが一つずつ約束を誓う方が面白いかな、というわけで「ねえ、起きて」と着替え手伝い。
 一つになった時の姿は、今回は身体は小太さんで衣装と顔はコクリちゃんに。
 コクリちゃんて、可愛い娘好きの有閑マダムさんにモテて構われまくるので、きっと一つになった時に翔太さんはバレないため苦労することでしょう(
 もちろん、身体がコクリちゃんで顔が小太さんの時もあってもいいんではないでしょうか。
 いろいろお楽しみくださいませ。

 そんなこんなで、ご発注ありがとうございました♪
■イベントシチュエーションノベル■ -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2016年06月15日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.