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『 無言の内に流れる信頼 』
流 雲aa1555

「これ、作ったから……」

 今年の2月14日は白い雪がちらつくとても寒い日だった。
 その寒さのせいか、偶然かいつもなら少なからず見かける親子も犬の散歩をしている近くの住人の姿は見えなかった。

「これ……」

 杵本 秋愛梨(aa0388hero001)の声に前を歩く流 雲(aa1555)は足を止め振り返る。
 そこにあったのはピンク色の可愛らしい箱と頬を染めマフラーで口元を隠す秋愛梨の姿。

「え?あ、ありがとう」

 とっさに口から出たのはお礼の言葉だけだった。こういうシチュエーションに慣れている男性なら笑顔の一つも浮かべて感想を言ったりするのかもしれないが、流はそうではない。
 だからと言って、2月14日に女性から男性に渡されるプレゼントの意味が分からない程鈍感な男でもない。
 彼女の絆創膏だらけの手から、綺麗にラッピングされた箱を優しく受け取る。少しだけ触れた指に顔がますます赤くなる。
 視線を少しあげれば秋愛梨の表情はいつもよりほんの少しだけ柔らかい気がする。

「大切にた……」
「食べないの?」

 義理だとは思うが大切に食べよう。そう思って発した心からの声は不思議そうな声にかき消された。
 ここで?と尋ねる視線に縦に動く首。


 じゃあ。と近くのベンチにこしかけると丁寧包装紙を剥がし箱を開く。
 箱の中には手作り感溢れるチョコレートが行儀よく並んでいた。

「美味しそうだね。ありがとう」

 隣に座る秋愛梨にもう一度感謝を伝えてからチョコを1つ口に運ぶ。

「……」

 チョコを食べ進めている間、流は笑顔だったが何も言わなかった。

「……すごく美味しかった。ありがとう」
「……よかった。……?」

 チョコの美味しさを反芻しているのかいつもの歯切れの良さが鈍っているように秋愛梨は感じた。
 それよりも気になるのは、顔の青さだった。先程まで赤く見えた頬も白い。心なしか呼吸数も少ないような気がする。
 冷えた?と心配する彼女に笑顔を浮かべて答えた

「……どうかな。でも、お互いに風邪をひくのは困るし……今日は帰ろうか」
「……ん。……またね」
「今日は本当にありがとう」

 1つに束ねられた黒い長髪が見えなくなるまで見送ってから流はふらつきながらも家路を急いだ。
ーパタンー
 静かに家の扉が閉まった直後、何かが倒れた大きな音と、もがくような物音が玄関でしたとかしないとか。

  ***

 荒い息遣い。
 刀の動きが大きくなってきている。
 流石に消耗しているか。秋愛梨を見ながら流は少しだけ眉を寄せた。
 昼前に始まった愚神討伐は日が落ちた今も終わらない。
 決して強いわけではないが、状態異常付与や倒しても倒しても湧いてくる従魔の群れに参加者の顔には疲労が色濃く見える。

「?!」

 死角からの攻撃に秋愛梨の反応が遅れた。間一髪流の双剣が間に入る。
 死角をなくすように背中合わせになる2人。真っ直ぐ敵へと進む彼女の刀と鋭敏な感覚とそれを的確に処理する彼の高速思考は相性がい
い。

「次やったら飯作ってもらうぞ。美味いやつ出来るまで作り直しな」
「……以後気をつける」
「……先に突っ込め。後ろはカバーしてやる」
「……ん」

 秋愛梨の足が地面を蹴るのと同時に流の背に疲労から消えていた白と黒の翼が現れた。

  ***

 程なくして愚神は流と秋愛梨の刃に沈み依頼は無事に完了した。
 そして、今2人の前には秋愛梨の作った料理が置いてある。お世辞にも美味しいとは言えないのだが食べられるだけ救いがあるのかもしれない。

「……料理位……出来なくても……死なないし」
「僕でよかったら教えてあげるよ」
「……難しく……説明しないでね……」
「もちろん。でも、上手く出来なくても拗ねないでくれるかな」

 拗ねたような口調の彼女に苦笑しながら提案すると秋愛梨は少し考えてから頷いた。

「うん。ありがとう」

 心からお礼は真っ直ぐで素直な彼女の心根にか、人見知りの激しい彼女が申し出を受けてくれる程度には信頼を寄せてくれていることへの感謝か。もしかしたらその両方なのかもしれない。

「じゃあ、これ食べたら一緒に作ろうか」

 食べられるものを作れるということは筋は悪くない。色々な加減が分からないだけなんだろうと流は少し青ざめた顔で料理を食べながら感じていた。

「秋愛梨も食べてみる?」
「…………美味しくない」

 流の皿の料理をつまんだ彼女の目が一瞬驚いたように開かれたかと思うと眉間にシワが寄る。

「でも、これにこれをこうして。どうかな?」

 応急処置ではないが、調味料で味を整える。

「……さっきより美味しい……」

 しぶしぶ口に運んだ彼女の口から呟きにも似た言葉が零れた。
 その反応を見て途中で味見をしてないんだろう。と推察した。味覚自体は敏感なようだから覚えればとびきり美味しい料理が作れるようになるんじゃないかなと心の中で思う。
 流による主婦力養成講座が始まろうとしていた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa1555 / 流 雲 / 男性 / 19歳(外見) / その笑顔は優しさの表れ 】

【aa0388hero001 / 杵本 秋愛梨 / 女性 / 16歳(外見) / その絆創膏は真心の表れ 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 流 雲様、杵元 秋愛梨様、初めまして。今回はご依頼ありがとうございました。

 秋愛梨様の不器用ながらの素直なところや流様の男らしくも気配りが出来るところ等お二人の素敵なところが表現できていれば幸いです。

 お気に召しましたら幸いですが、ここはこうしてほしい。直してほしい等ありましたら何なりとお申し付け下さい。

 今回は素敵なご縁をありがとうございました。
 またお会いできることを心よりお待ちしております

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2016年06月16日

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