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『共鳴ライダー・プロローグ 』
防人 正護aa2336)&セレティアaa1695)&バルトロメイaa1695hero001)&一ノ瀬 春翔aa3715)&アリス・レッドクイーンaa3715hero001)&“皮肉屋” マーシィaa4049

全編  過去の因縁

 グロリア社霊力研究所、霊力という新エネルギーを解析、研究、発展させるための研究を行う施設である。
出資は名前の頭についているようにグロリア社、所在地は日本某所。
 管轄はグロリア社日本支部である。
 その監督を任されているのは『西大寺 彼方(NPC)』グロリア社日本支部のトップ、総裁と呼ばれる男の一人息子であり、彼自身腕の立つ技術者であった。
 そんな彼は定期的に行われる視察会のため、その日研究所に足を延ばすことになる。
 その研究所は人目から隠れるようにひっそりと山奥に位置し、一見すると病院のような簡素な外見である。
 白塗りの壁、青い屋根。ただ、その内部には世界最先端の機器が詰め込まれた、研究員にとっては楽園のような施設だった。
「久しぶりだな、元気にしていたか?」
 そんな彼方が到着すると、出迎えてくれたのはこの研究所の所長。
 所長は彼方を見つけると大げさなほどに声を上げて久しぶりの再会を祝った。
「彼方! ああ、変わらずです、研究もはかどっていますよ、あなたのおかげだ」
 所長の表情は明るく、上下関係など感じさせない。それもそのはず、二人は大学の同期であり同じ研究テーマを四苦八苦しながら突き詰めた仲であるのだから。
「研究も順調そうだときいた」
「詳しくはあとで説明しますが、優秀なスタッフに恵まれて開発は急ピッチで進んでいます」
「いや、君の手腕あってのことだ、それに息子も研究チームに参加しているのだろう? まったく素晴らしいことじゃないか」
「息子が優秀すぎて、すぐに抜かれてしまいそうですよ」
「私の娘もそれくらい研究に興味を持ってくれるといいのだが」
 そう彼方は自分の背に隠れた少女を見やる。彼女は『西大寺 遙華 (az0026)』彼の一人娘だった。
「女の子ですよ? もっと華やかな物に興味を持つべきですよ」
「君の妻のようになってほしいと願っている」
「それはそれは」
 その時だった。遙華が緊張した様子で彼方の服の袖を引く
「お父さん、なんで私連れてこられたのかしら……」
「たまには仕事を見せようと思って」
 その返答にあからさまに不服そうな遙華。反抗期である。
「飽きてしまったようですね、息子に食堂に連れて行かせましょう、施設を見て回るよりは楽しいはずだ」
 そう所長が呼びつけると一人の少年が遙華の手を引いた。その少年は無愛想だが面倒見がいいようで、遙華の相手も嫌がることなく引き受けた。
「そちらの方々も暇であれば食堂で過ごしていてもらっても大丈夫ですよ」
 そう所長は彼方の後ろをついてきた一向に声をかける。
「ああ、この人たちは違うんだ…」
 そう彼方はあわてて三人を所長に紹介した。
『“皮肉屋” マーシィ(aa4049) 』そして 『一ノ瀬 春翔 (aa3715)』『アリス・レッドクイーン(aa3715hero001)』だ。
「俺たちも一応、ここ見に来たんだけど?」
 春翔がそうつまらなさそうに言った。
「こら、春翔。無礼はやめるようにと……。すまない、どうにもこの子は礼儀を知らなくて」
 彼方が言う。
「いや、年相応というところでしょう。きにはしていませんよ」
 その後ろでアリスに蹴られている春翔。
「せっかくの好意なんだから、無駄にしちゃダメじゃない」
「おれは社長が付いて来いっていうからついてきただけで……」
「まぁ、社会科見学だと思え、ついてきただけよしだ」
「…………あんたの顔立てて大人しくはしとくけどさぁ」
「そちらの方は?」
 そう所長はマーシィを見やる。
「父の筋の監査員だ。私だけでは心配らしい」
 そう紹介されるとマーシィは頭を下げた。
「あえて光栄だ、所長」
 挨拶もそこそこに一行は早速研究室に通されることになる。
 中央の主研究室。その部屋は大きく。天井がとても高かった、それもそのはず。
 中央にある巨大なフラスコのような機器。これを運び入れるためにこの研究所は作られたのだから
「これはいったい?」
 マーシィが問いかけるも所長はそれを笑みだけで返してしまう。
「機材もだいぶ増えたね」
 この研究室の壁四方は、二メートル程度ある機材棚が所狭しと並べられていて。その棚全体に、よくわからない機材が陳列してあった。
 おそらく、この機材の説明を全部されるとなったら、時間がいくらあっても足りないんだろうな、そんなことを春翔は考えた
「なぁ、社長、これは?」
 そこで春翔はようやく興味を引かれるものに出会えた。
 メタリックな外観。フロント部分には小さな危機が取り付けられており、ここに何かを読み込ませるのだろうか、差込口がある。
「これは?」
「大幅に能力者の力を高める装置です、便宜上ベルトと呼んでいます」
 そう所長が補足説明を入れると、彼方は、ふむと顎に手を当てる。
「これによって《シンフォニス》計画にどのような効果が?」
「それについてはゆっくりと。それより一般向けの話を妻からさせましょう、まずはAGWのコアとなる制御装置の開発に成功した件から」
 そう社長と所長は自分たちの世界に没頭していく。
「やっぱつまんねぇな」
「まぁ、そればっかりは仕方ないわよね」
 春翔は自分がなぜこんな場違いなところにいるのだろうと考える。
 バイト先がグロリア社系列のショップであったのは、まぁよくある話だが。そこでよく接客していたお客さんが彼方だと知った時はひやひやしたものだった。
 そこから気に入られ、本社での配達係や雑務などのバイトに切り替えるうちに仲良くなり。
 今回ひょんなことから社会科見学としてここに連れてこられてしまったのだ。
 正直彼が春翔に何を求めているかはわからない。
 それ故にこの社会科見学に意味を見いだせずに、飽きが来てしまっていた。
「ベルトね、俺がつけて実験でもしてみるか?」
「ちょっと春翔! 勝手に触っちゃまずいってば」
 それに気が付いたアリスが駆け寄るも春翔はベルトを手にとってしまう。
 それをしげしげと眺めつつ、自分の腰に巻こうとした瞬間。その手を少年が握って抑えた。
「な!」
 その腕はがっちりつかまれててびくともしない。
「大事なものだから……」
 少年は淡々と言った。
「お前、さっきの……」
 春翔は名前も知らない少年を睨む。彼は先ほど遙華を連れて食堂に行ったはずだ。
「そう言えば遙華ちゃんどうしたんだよ?」
「あの子は……」
 その時唐突に、けたたましく警報が鳴り響いた、甲高いサイレン音そして、あわただしく駆け回る研究員たち。。
「一体なにが?」
 その瞬間、一斉に研究所の電源が落ちた。
 研究所内は闇に包まれる、一瞬遅れて非常電源が稼働したのか代わりに非常灯がつき、コンピューターへの電力供給だけが再開される。
 だが、それだけではなかった、光源はまだある。 
 フラスコ内から、じんわりとあふれるような光。
 紫色の光が研究所内を満たす、中央に設置されていたガラスの球体、その中に何かが生成されていく。
「なぜだ! そもそもこの研究はドロップゾーンが生成されるようなものではないはず。私はそう聞いたぞ所長!」
 そう彼方は所長に掴みかかる、彼は本当にあのフラスコ内の何かを知らなかったようだ。
「く、まさか、そんな、理論すら完成していないはずです! なのになぜ!」
 職員の混乱をよそに所長は茫然とそれを凝視していった。

「ゲートが開く」

 その瞬間衝撃波が襲う。次いで割れて砕けたガラスの破片が周囲へ散らばる。
 その衝撃波で壁に叩きつけられた春翔は、ガラスで切った額の血をぬぐい。
 ぼやけた視界の向こうにそれを見た。
 まるで餓えた獣のように咆哮する生命体。
 黒い体表、引力でもあるのか周囲の物体をひきつけ、ガラスや機材が奴の周囲を漂っている。
 その背には翼。
 しかし安定していないのか、その姿は影のように一つの形を保っていなかった。
「愚神か!」
 春翔は隣で伏せっていたアリスに歩み寄る、その小さな体を抱き起し。
 揺らして、その目を覚まさせた。
「戦うぞ、アリス準備しろ」
「だめよ……」
 目を覚ますなりその光景に驚いた彼女は静かに目を瞑って首を振った。
「あれは戦えない」
「なんでだ、愚神を倒すのが俺たち、リンカーの務めだろうが」
「違う、あれは。あれは違うのよ」
「俺が倒して見せる、だから……」
 そのアリスは青ざめた。目を見開き、春翔の襟を引いて視線を合わせた。
「……なんだよ」
「春翔はあの愚神がなんだかわかってないの?」
 アリスは春翔の顔を真正面から見つめ、低い声で言った。
「よく聞いて、あれはもう、私たちがどうにかできる存在じゃないわ。トリブヌス。いえ。レガトゥス級の実力すらある。逃げないと……」
 そうアリスに手を引かれる春翔。
「でもあいつは戦おうとしてるぞ!」
 そう春樹が指さした、少年はベルトに手をかける、周囲の霊力が集まり、少年の体を包んでいく。しかし。
 何かが砕け散る音と共に少年は弾かれ、資材の棚に激突してしまう。
――逃げるのよ! 早く
「おいていけねぇよ」
――彼方!
 たまらずアリスは助けを求める、西大寺 彼方と言う保護者に。
「やれやれ、私は保護者失格だね」
 アリスが叫ぶと、彼方が現た、流れるような動作で首をチョップ、意識を失う春翔。
「私も娘がいるからね、君の気持はわかるつもりだよ」
 そう彼方は春翔を抱えて脱出経路をひた走る。

   *   * 

「は、化物を打倒したがるのは、人間の性かね、バカバカしい話だ」
 そう燃え盛る研究所の機材の上に座りマーシィは笑っていた。
 たばこの煙を燻らせながら、人があわただしく逃げていくのを見ている。
 そして哀れなことにレガトゥス級に立ち向かおうとする少年の姿も。
 その少年はベルトの力を借りて、戦いを挑もうとするもベルトに拒絶され、壁に叩きつけられていた。
 そこにレガトゥス級の腕が伸びる。だが、その前に立ちはだかる所長と研究員の女。
「まぁそうなったか……」
 たばこの火をけし、携帯灰皿へ。振り返り少年を一瞥して壁のカードリーダーに鍵を差し入れた。
「仕事も終わった、引くとしよう」

「一箇所に固まって騒ぐなんて、精々派手に囮になってくれれば良い」

 そう笑うマーシィの足音だけが研究所内に響いた。


後編 変身、その名はライダー

 目覚めると、真っ先に見えたのは白い天上だった。
 ここはどこだろう、そう思うも瞼を動かすことすら億劫だ。
 真っ先に聞こえたのは心電図の音。リズミカルにピッと響く音をぼんやりと聞いているだけでどれだけの時間が経っただろう
 『セレティア(aa1695)』はしばらく微睡み、そして目を開いた。
 そして両腕を見る、点滴の管に心電図に繋がるコード。そして隣には、岩石のような男が体格に不釣り合いな丸椅子に座ってこちらを見つめている。
「やっと目覚めたのか、ティア……」
「ここは?」
 セレティアは体を起こした。
「ここは、病院だ。心配した、一週間も目を覚まさなかったからな」
 そう男は水を汲みコップを差し出す。心底安心したような笑みを浮かべる男。
 その動作は少しあわただしく、ろくに寝ていないのだろうか、疲れが見て取れた。
 だが、それにセレティアは警戒の反応しか見せない。なぜか。
「あの、ごめんなさい」
「どうした?」
 男の所作がぴたりと停止する。
「あの、すみません。あなたは誰ですか?」
 その言葉で『バルトロメイ(aa1695hero001) 』は、コップを取り落した。
 その後は戸惑いを隠しきれないバルトロメイが淡々と状況を説明するのを。セレティアがきいている、という時間が長く続くことになる。
 ある事件に巻き込まれ重体になったこと、一週間目を覚まさなかったこと。自分たちは誓約をかわしたこと。そして英雄のこと。世界のこと。
 だんだんと過去にさかのぼり、わからないところがあれば丁寧に話をしてくれているがセレティアには何も心当たりがなく、何も思い出せなかった。
 その事件で何が起こったのか、この男と結んだ誓約とはなんだったのか。
 それすらも……、全然、全く。
「ごめんなさい」
 そうセレティアは謝ることしかできず、バルトロメイは項垂れることしかできなかった。
「わかってる、医者がそう言う可能性もあると言っていたから覚悟はしていた」
 ひどい事件だった、彼女の両親は死に、心に傷を負いかねない事件だった。
 その出来事から自分の心を守るために、記憶を閉ざすことは、防衛本能としてありうることで、それをせめてはいけないとも釘を刺されていた。
「だがな。仕方がないで片付かない問題もあるんだ」
 そう、だから記憶がなくなってしまったことは受け入れよう。
 問題は多々ある、生活のこと、お互いの距離感、信頼関係、積み上げてきたものがリセットされるつらさは相当なものだ。
 だが、そんな悲しみをゆっくり処理している時間は二人にはない。
「働くぞ」
「え?」
 セレティアは目を丸くして彼の口にした言葉の続きを待った。
「入院費と、生活費の問題だ。貯金がつきそうでな、働くぞ、セレティア」

   *    *

詳しく聞けば、セレティアは身寄りがないらしい、親族はこの時には誰ひとり見つからず。天蓋孤独。
 そうなれば入院日と生活日を稼ぎ出すために自分たちが働かなければならなかった。
 幸いにも彼らはH.O.P.E.所属のエージェント、万年人手不足のH.O.P.E.では、仕事はピンからキリまである。
 今回は簡単な従魔退治。今回は少数での任務ということもあり、少ない相談期間で一行は出発することになった。
 メンバーは春翔、マーシィそして『レゾナンス(NPC)』と呼ばれる新人が一人。
 多少の顔見知りもいたが、あまり話したことがなく、その場には仕事で集められた人間独特の空気があった。
 ちなみに今回の依頼内容は、高速道路に現れたイノシシ従魔を倒すというものだ。
 ミッションのために車で運ばれていくことになるが。集合時間になってもセレティアが来ない。
「あいつ、逃げたな……」
 そうバルトロメイはH.O.P.E.の正門で待機していると、周囲をきょろきょろと見回しながら、挙動不審な少女が現れた、セレティアである。
 バルトロメイは彼女の思考パターンを完全に熟知しており、先回りなんてお手のものである。
 そんな彼女は人ごみの中にその巨体を見つけると青ざめた。
「おい……」
 涙目のセレティア。
「なんでわかったんですか……」
 のしのしと歩み寄るバルトロメイ、反射的に後ろへ下がるセレティア。
「記憶がなくなる前の、一番最初の出撃の時も同じように逃げようとしたからな……」
 そう表情に曇りを見せたバルトロメイ、そんな彼にセレティアは申し訳なさを感じて、動きを止める。茫然とその顔を見つめるセレティア
 そんなセレティアを今がチャンスとばかりに小脇に抱え、無理やり車両に乗り込むバルトロメイ。
「いや!」
「大人しくしろ、他のメンバーに迷惑だろうが!」
「だったら離してください!」
 そう車両に乗り込んでみたが、意外と他のメンバーはバルトロメイを気にしていない、それどころか空気が先ほどより重たくなっている。
 春翔がマーシィに剣呑とした視線を向けている。
「おい、あんた。研究所にいたよな」
 春翔が問いかける。しかしその問いかけの意味はバルトロメイには理解できない。
「いた……」
 マーシィが短く答える。
「どうやって脱出した」
「裏口から素直に……」
「所長は見なかったのか?」
「何が言いたい?」
「あんた、リンカーなら所長を助けられたんじゃねぇのかよ」
「ちょっと、春翔……」
「あまり任務に関係ない話はよそう」
 そんな春翔のぎらつく視線を、一つ笑ってかわしマーシィはバルトロメイに視線を向けた。
「これから向かう任務の話でもした方が有意義だあとで好きなだけ話してやる」
 それから車内ではだれもしゃべらなかった。いつも以上に長く感じられた30分が過ぎ去ると車は停車し、扉が開く。
 ここが問題の高速道路である。
 コンクリートはところどころ陥没していて、回収できなかった車が黒焦げになって転がっている。
 その向こうに体長二メートルほどの大きなイノシシが見えた。
「あ、何なのと戦うんですか」
 セレティアが本日一番の悲痛な声を上げて見せた。
「逃げるな! 戦え、でないと生きていけないんだぞ、わかってるのか」
「いやだ! 離して」
「おい、嫌がってるじゃねぇか」
 春翔が間に割って入る。
「関係ない奴は黙ってろ、これは俺とこの子の問題だ」
「にしても……」
「だったら、お前がこの子を守るのか? この子を養うのか?」
「う……」
「これは、一本取られたわね」
 アリスが苦笑いを浮かべる。
 そして春翔がひるんでいるすきに、バルトロメイは幻想蝶を手に取り、そして共鳴。
 戦闘開始だ。
 事前の打ち合わせでは。
 バルトロメイが敵に食いついていく前衛。
 春翔が相手の動きをつぶし、バルトロメイをフォローしていく前衛。
 マーシィが二人の攻撃の切れ目や、体制の立て直しをフォローするスナイパー
 そしてメディックであるレゾナンスが全体を視野に入れ、遠隔から回復や攻撃を行う司令官役という配置だった。
 よって、まず敵にぶつかったのは春翔である。イノシシの突進を道路を砕くことによって勢いをそぎ、側面からの体当たりで停止させる。
 そこに大剣を振りかぶったバルトロメイが突貫。その大剣を牙で受け止めたイノシシだが、道路に黒い跡をつけてじりじりと後退。
 踏ん張りがきかなくなったところで半歩下がり、マーシィが射撃。
 同タイミングで、春翔のジェミニストライク、バルトロメイのストレートブロウが決まる。
「楽勝だな!」
 むしろ楽勝でないと困る、安全な任務でないとバルトロメイは受けるつもりはなかったのだから。
「畳み掛けるぞ!」
 やや後退したイノシシに向けて、杖と銃による遠隔攻撃が決まる。
 爆炎で視界をふさがれたイノシシの側面から春翔は接近すくい上げるようにその腹を切り上げ。
 中に浮いて足がつかなくなっているイノシシにバルトロメイは、疾風怒濤の一撃をうち放った。
 悲鳴を上げて吹き飛ぶイノシシ。従魔は廃車の山に突っ込んで動かなくなる。
「誰も、怪我はしていないようですね」
 そうレゾナンスが告げる。負傷者ゼロの完全勝利がそこにあった。
 歯ごたえがない。そう笑って武器を幻想蝶に戻す春翔、しかし……
 四人の背後から聞こえる風切音、振り返る間もなく何かが飛来してきて、それがイノシシ従魔に突き刺さった。
 すると。従魔は甲高い悲鳴を上げて、そして。
「なんだ、何が起こってる!」
 その従魔の姿かたちが変わり始めた。フォルムが絞られ、二足歩行に。カラーリングはそのままに両手に武器を持ち、まるで魔人と言った風貌に替わっていく。
「おいおい、これ、どういうことだよ」
 レゾナンスが笑う。
「あれが完成していたとはな……」
 その言葉に反応したのはマーシィだけ、彼は苦い笑みを浮かべると、その魔人へと向き直った。
 次の瞬間。
 魔人が動く、両手にはイノシシの牙から削り取られたような武骨な剣を握るが、その双剣がなぜか帯電している。
 そしてその剣を振るうと、地面を雷撃が走り、バルトロメイと春跳に命中した。
 一撃で意識がもっていかれそうになるほどの激痛。
 そしてダメージに身を震わせている二人の隣を通過し。魔人は駆ける。
 マーシィ―に蹴りを放ち、彼を護送車両に叩きつけ。
 レゾナンスに剣を叩きつける。それ剣で受けたレゾナンスだったか、すぐに体制を変えた魔人に蹴り飛ばされて、高速道路のガードレールに叩きつけられていた。
「くそ!」
 やっとダメージから立ち直ったバルトロメイと春翔。
 だがそれを見ると魔人はすぐさま剣を振るって、あの雷撃を放つ。
 それをもろに受ける春翔、そして大剣を盾に耐えるバルトロメイ。
「くそ」
 バルトロメイは歯噛みする、あの攻撃に大剣が何度耐えられるかはわからない、ただ、絶えられなくなった時が、死の瞬間だ。
――春翔逃げないと
「また! また逃げるのかよ! あの時みたいに」
 うごかない体に鞭打って春翔ははって自身の武器を迎えに行く。
 しかしその腕にはもう、武器を振るう体力は残されていなかった。
「くそ!」
 その時だった、魔人の両手から放たれる雷鳴の合間に、何かが聞こえることに気が付く。断続的になる甲高いエンジン音。
 これはバイクの音だ。
 春翔は前を見据える、陰炎の向こうからやってくるのは一台のバイク。
 そして、その上に跨るのは。リンカー?
「おい、あのベルト」
 その人物は全身をスーツで覆っており、春翔にはそれがだれか分からない。
 だが、その腰に巻きついているベルトには見覚えがあった。
「お前、まさか……」

   *   *

 それは、彼が見た悪夢の始まり。
 この世で見つけた最悪の存在。
 そして別離の時。
 少年は無力だった、力にさえ拒絶され、壁に全身を叩きつけられて呻くことしかできない。
 そんな彼の目の前に、黒い爪が伸ばされる。
 目に映る光景、光景、黒い狼のような敵が目の前に迫る。
 その前に立ちふさがったのは、所長、そして研究員の女性。二人は自分の父と母だった。
「私が時間を稼いでいる間にお前たちは逃げなさい」
 父が言った。声に恐怖を滲ませて、しかし後ろは振り返らずに、だから少年は痛む体に鞭打って起こした。
 しかし次の瞬間、父も、母も。まるで紙切れのように吹き飛ばされてしまう。
「父さん! 母さん!!」
「このベルトには肝心のものが欠けている、しかしこのベルトが奴らの手に渡れば……」
 そう父は最後の力を振り絞り、ベルトを投げてよこした。
 その口の端から血が溢れている。
「お前が人類の救いとなるんだ、そして組織に世界を渡すな!」
 その瞬間、吹きすさぶ風、黒い鋼鉄のような風が、機材を研究所を破壊していく。とっさにその風から少年はベルトを守った。
 その結果少年の体は風に舞い上がり天上へ叩きつけられることになる。そして二面に激突。
 体がバラバラになったような衝撃にまともに息ができない、肋骨が肺に刺さっているのか血の匂いが鼻を突いた。
 もう、だめか、そう思った矢先である。
 また、ゲートから光が溢れた、しかし今度はあんなに禍々しい紫色の輝きではない。
温かく体を癒すような心地よさのある光、そしてそのゲートから滑るように現れたのは。銀色の狐。
――ジーチャン
 その狐が重なり世界は光に包まれた。

  *   *

 そしてその少年は、今そこに立っていた。傷ついた体は癒え。
 逆に、敵を倒すために精進をつんだ体は鋼のようだ。
「その後俺がどんな人生を歩んだか、お前たちは知っているか?」
 バイクの前輪を上げ、魔人に突撃したライダー。
 魔人は吹き飛び、膝を立てて起き上がる。
「俺がどんな思いで」

 その後少年は、軌跡的に生きて研究所を脱出。自らの責任を上層部に自白した。
 その後、政府に身柄を拘束されそうになっているところをさる人物が助けてくれた。
 そして彼は、自分の力でシステムを完成させ、ライダーとなってここに立っている。
「お前たちのせいで!」
 ベルトが一際強く光った。両足が光を纏う、そして。
 左足で敵を蹴るとその光が、まるで魔人の体を縫いとめるように輝き、次いで高く飛翔したライダーは、空中で体をひねり。そして足を大きく振り上げる。

雷堕脚!!

 真っ直ぐ、堕ちるような蹴りは、稲妻のような轟音を響かせて、一瞬の先行と共にさく裂。
 それを受けイノシシ魔人は動きを止めた。
「お前はいったいなんだ」 
 魔人が口を開いた。 
 その問いかけにライダーは答える。
「俺の名前は『防人 正護(aa2336)』お前たち組織を滅ぼすために力を得た」

「共鳴ライダー・サキモリだ!」

 再び輝く右足、トドメの回し蹴りは疾風のごとく。魔人の霊力フィールドを打ち砕いて爆発させる。
「お前……」
 爆炎を振り払い、ライダーは佇む。
 その陰炎の向こう側の人物を、その場にいる全員が見つめていた。
「あの時の……」
 そう春翔の言葉に、ライダーは振り返り、そして……


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『防人 正護(aa2336)』
『セレティア (aa1695) 』
『バルトロメイ(aa1695hero001)』
『“皮肉屋” マーシィ(aa4049) 』
『一ノ瀬 春翔 (aa3715)』
『アリス・レッドクイーン(aa3715hero001)』
『西大寺 彼方(NPC)』
『西大寺 遙華 (az0026)』
『レゾナンス(NPC)』


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 皆さまいつもお世話になっております。鳴海です。
 今回はパーティーノベル、しかもアナザーと言うことで張り切ってやらせていただきました。
 テーマはライダーですかね?
 これを描くにあたって、いろんなライダーの一話を参考にしました。
 日曜朝の雰囲気感じられる作品になっていれば幸いです。
 また、連作のようなので、伏線を張ったり、キャラクターの相関図をわかりやすくするように努めて見ました。
 お気に召しましたら幸いです。
 もし何かご注文などあれば、お手数ですがリテイクの申請出していただければ手直しできますので。お気軽にどうぞ。
 それでは、リンブレ本編でもどうぞよろしくお願いします。
 鳴海でした。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
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リンクブレイブ
2016年06月17日

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