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『激戦のご褒美は甘いお菓子?それとも…… 』
流 雲aa1555

 学生が大型の休みを手に入れるために乗り越えなければいけない試練。それがテストである。それはエージェントにも平等に訪れる。
 エージェントとその英雄のために門戸を開く『GloriaOfHope学園』に在籍する生徒達は目の前に迫ったテストに頭を抱えていた。

「テスト……苦手です」

「しかし、追試や補習になれば夏休みはなくなってしまいますね」

「あれ、真琴。夏休みにどこか行くって言ってなかった?」

「そうなのです!コミケに行くという重大任務があるのです!」

「でしたら試験に受からなくてはいけませんね」

 ぐにゃりと意気消沈していた今宮 真琴(aa0573)が拳を握りしめ立ち上がる。何を求めて行くのか知らないエリカ(aa1590hero001)がおお、となっている隣で鈴音(aa1588hero001)が至極真っ当なことを言うと、今宮が塩をかけられたナメクジの様に再びぐにゃりとなってしまった。

「ちゃんと勉強すれば大丈夫だよ」

「ほら、今宮君は数学だよ」

 苦笑しながら準備をする流 雲(aa1555)と今宮の頭を自作のプリントでポンと叩く草薙 義人(aa1588)
 女性陣もはーい。と勉強会の準備を始める
。今日は男性陣お手製のプリントとの戦いだ。
 流に現国を教えてもらいながら、目を輝かせるエリカと、草薙の言葉に死んだ魚のような目になって行く今宮。そして配られたプリントを淡々と解き進める鈴音。
 なんというか、学生あるあるネタにでもつかわれそうな光景である。

「終わりました」

 一番早くプリントを完全制覇したのは鈴音だった。
 答え合わせをしている草薙の前で頭から煙を出しながら唸っている今宮にそっと近づく鈴音。見れば問1である。

「どこがわからないんですか?」

「えっと……あの……」

「どこがわからないか、わからないんですね」

 鈴音の問いに今宮はしどろもどろになりながら頷いた。案外見落とされがちな事実だがだが、本当に出来ない場合、どこがわからないかもわからないということは多い。

「この確率の問題なら……」

 鈴音の言葉に瞳に光が戻っていく今宮。さっきまでとは別人の様だ。

「それは萌えるシチュエーションですね!」

「今宮君はどうしたのかな?」

 丸だらけのプリントを鈴音に渡しながら草薙が耳打ちする。さっきまでまるでやるきが見えなかった彼女がイキイキしながら問題と格闘している。

「今宮さんの好きな事に置き換えただけです」

「これは、太郎君が後ろの方が……でも長期戦でお兄ちゃんが折れて後ろになるのも……悩ましいです」

「まさか……でもまあ、それで解けるようになるならいいのかな……」

 目を輝かせながら問題を見つめる今宮の姿に草薙は苦笑しか出ない。
 鈴音が一体どんな置き換えをしたのか察しはつくが、詳しく訊くのは、何か開いてはいけない新しい扉をノックしてしまう気がして出来なかった。

  ***

 草薙が腐のパワーを思い知っている頃、エリカと流は学食にいた。
 片手にボウル。片手に泡立て器を持ち、楽しそうに何やら作っている。
 流に教えてもらいながらマイペースに問題を解き進めたエリカは事前に彼と相談していた通りに勉強会後のティータイム用にお菓子を作っているのだ。

「雲さん、今日はいつもよりいっぱい作らないとですね」

「そうだね。頭を使うと甘いものが欲しくなるからね。今日はみんな頑張ってるし、いっぱい作ろう」

「テスト上手くいくといいんですけどね」

「真琴の事かな?」

 思い当たる相手が1人しかいないせいか、流からすぐに答えが返ってくる。

「コミケに行きたいってずっと言ってるのでいけたらいいなぁと思っているんです」

「……それは大丈夫じゃないかな。真琴も頑張るだろうし、もしダメでも行けるように日程を組むようにするよ」

「雲さんは優しいですね」

「半年に1回のお祭りだからね……」

「何のお祭りなんですか?」

 淀みなかった会話がそこで途絶えた。流は真剣に考える。あれは何のお祭りというのだろうかと。
 アニメや漫画だけの二次創作本ではなくオリジナルの本もあるし、コスプレイヤーもいる。グッズも売っているし、最近は企業の出展もある。何の祭りかと言われると返答に困る祭りである。そもそも世間的にあれを祭りというのかも怪しい。

「えっと、サブカルチャー系のお祭り……かな。様子をニュースでやる時もあるし、真琴に訊くのが早いと思うよ」

 考えた結果、その答えが一番無難だという結論に至る。

「そうですか。じゃあ、真琴に写真も撮ってきてもらって感想をききましょう」

 写真は無理じゃないかな。と思いながらそうだね。と答える。今宮がどんな風にエリカに説明するのか少し楽しみな気もする。是非テストは頑張ってもらいたいなと手を止めずに流は思う。

「そういえば、雲さん。和菓子なんてどうするんです?」

 用意されていくお菓子のラインナップに羊羹や苺大福がある事をエリカはずっと疑問に思っていた。それで新しいお菓子を作る様子もない。

「あ、うん。今日の紅茶には合うと思って用意したんだよ」

 そう言いながら流はスコーンの準備を進める。オーブンを覗き、スコーンのふくらみ具合を確認しながら甘いストロベリージャムから酸味のきいたレモンのジャムまで、色とりどりのジャムを盛り付けた器を人数分用意する。

「そういえば盛り付けは1人づつ別々がいいと思う?全員でつまむような形がいいと思う
?」

「そうですね。それなら両方がいいと思いますよ」

「そうか。1人分がちゃんとあれば、真ん中から取る時に遠慮しなくていいね。じゃあそうしようか」

 2人は大皿と個別の皿を用意し綺麗に盛り付けていく。羊羹や苺大福は和風の四角い皿に。それに合わせるようにアップルパイやスコーンも同じ風合いの丸皿へ。
 まるで本当の喫茶店で出されるかのように綺麗に並べられたお菓子の横でヤカンが音を立てる。

「少し様子を見てきてくれる?こっちで紅茶の用意をしておくから」

 これまた風合いを合わせたティーポットとカップにお湯を注ぎ、温めながら流がお願いすると、エリカは頷いて皆が勉強している部屋へと歩いて行った。

「みんな喜ぶといいな」

 最近手に入った紅茶葉の缶とお菓子の器、ティーセットを見ながら流は1人呟いた。

  ***

 エリカが見に行くと今宮の前に草薙、横に鈴音が座り3人でプリントとのにらめっこをしていた。

「ここをXと仮定してこっちを……式はこうだから連立方程式にしてから……」

 分かり易いと評判の草薙の説明にも今宮の眉間の皺が濃くなるばかりでペンは一向に動き出さない。すると鈴音がそっとペンを走らせプリントに何やら書き込む。
 そうすると皺はそのままに今宮のペンがゆっくり動き始める。エリカが覗き込むと

『10の位と1の位を足すと11になり、入れ替えると元の数より27多くなります。元の数を求めなさい。』

 という問題の色々なところに線が引かれ問題が書き換えられていた。

『10の位が攻めのまま合わさると11になり、10の位が受けに回ると攻めの時より27多くなります。それぞれ元の数を求めなさい』

 エリカは首を傾げるしかなかった。攻めとは、受けとは何だろう?スポーツの話だろうか。では、その下にある

 ○×△→11
 △×○=27
 11=5+6(同僚、同級生?)7+4、(先輩×後輩?)8+3(幼馴染のお兄さん、教師×生徒)、9+2(兄弟、叔父さんも良いかも)

 と書かれたのは何だろう?エリカは数学に同僚や兄弟が出てくるのを見たことがない。いや、エリカだけでなく、見たことある人は限りなく少ないだろう。
 ちらりと今宮の方を見ると楽しそうにどれが一番良いかな。等と呟いている。ますます分からない。わからないが楽しそうに問題を解いているのは分かるので、そっとしておこうと心の中で思った。

「終わり……ました……」

 プリントとの悪戦苦闘(後半は殆ど薔薇の園での戦いだったのだろうが)から帰還を果たした今宮は大きく伸びをしてそのまま机に突っ伏した。

「お疲れ様。これでテストが解けるようになったなら良いけどね」

「大丈夫です。ここに書いてあるものは全て変換が終わっています!」

 答え合わせを終えたプリントを渡しながら言う草薙に、今宮が目を輝かせながら答える。
 その場の全員が、何が大丈夫なんだろう。と小さく首を傾げる中、ティータイムの準備を終えた流がタイミングよくみんな呼びに来た。

「天気が良いからテラスでお茶にしよう」

  ***


「今日はたくさんあるんだね」

「和菓子……今日は日本茶ですか?」

「早く食べるのです」

 梅雨の合間の晴れ間は湿度もそう高くなく過ごし易い風が木漏れ日を揺らしていた。テーブルクロスのひかれたテーブルの上に並ぶお菓子にめいめい反応する草薙と鈴音。今宮などもう席に着いて今か今かと待っている。

「ううん。紅茶だよ」

 流がカップに鮮やかな赤さの紅茶を注ぎながら穏やかに微笑む。風に乗って辺りに紅茶特有の香りがほんのり漂う。

「さあ、召し上がれ」

 味と香りを楽しむようにカップに口をつけた草薙がほぅと息を吐く。
 隣では、鈴音が羊羹と紅茶を味わっている。

「茶葉が違うのかな……いつもよりマイルドな気が……」

「あんこを食べた後にあるパサつきというか重い感じを紅茶がうまく消してくれます。羊羹が甘いので紅茶に砂糖を入れない位が丁度いいです。おかわりを下さい」


 味わいながら感想を述べていたはずの彼女の手元には空っぽのカップと綺麗にお菓子の消えた皿があった。

「真琴は……良かった。気に入ってくれたみたいだね」

 おかわりを注ぎながら、流は今宮の方を見る。そこには幸せそうに味わう彼女の姿があった。
 アニメや漫画なら一口毎に光がパァーと出ているところだろう。その位幸せそうな彼女を見て流は微笑んだ。

「喜んでくれて良かった」

「こんな美味しいお菓子を喜ばない人なんていないのです」

 中央のお皿から空になった自分の皿にお菓子を取りながら今宮が言い切る。

「ありがとう」

 嬉しそうに笑みを深める流に鈴音もお菓子を取りながら言った。

「アップルパイやスコーンもとても合います。紅茶は砂糖たっぷりが好きですが、今日はこのまま飲んだ方が美味しいです」

「そうだね。鈴音、僕のお菓子も食べるか
い?」

「いいえ。それはあなたが食べるものです。貰って食べなくても真ん中に鈴音の食べる分はあります」

「そうですよ。早く食べないとボクと鈴音君が食べてしまうのです」

「慌てなくてもお菓子は逃げないよ」

 感想を言いながら食べる鈴音と幸せな顔で味わいながら食べているはずの今宮の驚異的なスピードに微笑む男性陣。そんな光景を見守りながらエリカは思う。

 ーずっと、こんな穏やかな日が続けば良いのにー

 大きな戦いが続くこの世界に『平常の主』であるエリカは少なからず心を痛めていた。

 ーまたこうやって笑いあえるように頑張りましょうー

 穏やかで和気藹々とした空気の中新たな決意を紅茶と一緒に飲み干した。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa1555 / 流 雲 / 男性 / 19歳(外見) / 学園長は甘い香り 】

【 aa1588 / 草薙 義人 / 男性 / 18歳 / 腐界の扉までもう少し? 】

【 aa0573 / 今宮 真琴 / 女性 / 15歳 / 薔薇とスイーツ限定狩人 】

【 aa1590hero001 / エリカ / 女性 / 16歳 / 平穏を願う神 】

【 aa1588hero001 / 鈴音 / 女性 / 15歳 / 薔薇変換の達人 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 草薙義人様、エリカ様、今宮真琴様、鈴音様はじめまして。
 流雲様はまたお会いできて嬉しく思っております。

 今回は時期柄、中間テストや期末テストに向けての勉強が忙しくなる頃かと思いまして、テスト勉強会の一幕を書かせて頂きました。

 お気に召しましたら幸いですが、もし直して欲しい。ここはそうではない。等ありましたらお気軽にリテイク申請していただければと思います。

 今回は素敵なご縁をいただきありがとうございました。
 またお会いできることを心より楽しみにしております。
■イベントシチュエーションノベル■ -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年06月23日

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