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『【リン舵】魔法少女☆千佳・キャンディ、着替え中にゃ♪ 』
猫宮・千佳(ib0045)


 ここは剣と魔導とマテリアルの世界、クリムゾンウエスト。
 どこかの街の、天気の良い日。
「さてと、今日もあの子たち、元気かな?」
 そんな声とともに石造りの建物からエルフの少女が出てきました。名は、フラ・キャンディ(kz0121)。干し肉の欠片を乗せた皿を手にどこかに行こうとしています。
 小さな体にふわりとした金髪が弾み、石段も軽やかに。
「フラ、どこに行くんじゃ?」
「路地裏でネコさんたち、見つけたんだ。お世話してくるね」
 後見人の老人から聞かれ、元気いっぱいにこたえます。
「フラちゃん、お友達ができたなら連れてきてもいいのよ」
「ありがとう。でもネコさん、たくさんいるから」
 踊り子としてフラをプロモートするオカマの興行師にも声を掛けられました。笑顔を振りまいて急ぎます。
 きょうも街は事もなく。
 道行く人をかき分けて、ちょっとだけ屋台から届いてくる良いにおいに後ろ髪引かれたり。
 そして、目指す路地裏付近に来た時でした。
「あれ? いつもよりネコさんたちが騒がしい?」
 何処かから聞こえるにゃあにゃあと切迫した鳴き声に気付き足を止めます。
 すると、どんどん騒ぎが大きくなってくるではありませんか!
「どうしたんだろ……わっ!」
 突然、目の前の路地からネコの大群が出てきたのです。その数は異常なほどで、まるでネコの津波です。フラ、思わず干し肉の欠片をバラ撒きます。逃げる中には干し肉をくわえてネコババするちゃっかり……素早い猫もいます。
 その時でした!
「あっ! 何? 白い布切れが宙に浮いて……か、顔がある?!」
 凶悪な顔をした白い布切れがネコの出てきた路地から現れたではありませんか。
 どうやらネコたちはこの不気味な物体に追い立てられていたようです。
「こんな街中に歪虚が出るなんて……ここで食い止めるよ」
 テニスウエアに身を包んだフラ、背負った打撃専用ラケットを構えるのです。



 ここは剣と魔法と開拓者の天空世界、天儀。
 どこかの国の、どこかの町で。
「にゃふんふんふ?ん♪」
 賑やかな大通りにごきげんな声が響きます。
 揺れる黄色い猫耳頭巾に、ふわふわ揺れるオレンジのエプロンドレス。
「きょうもとっても良い天気にゃ?」
 リズミカルに踊る猫尻尾も楽しそう、「抱きつき猫」こと猫宮・千佳(ib0045)がお散歩中です。
「何か楽しいことがありそうにゃね?」
 何かあればいつものように親友のところに行って誘い出して……とか思い巡らせています。にゅふふ、と含み笑いというか猫笑いしたのは、背中に何か背負ってるから。
「着替えはちゃんと持って来たにゃし、きょうはさらに秘密兵器も持ってきたのにゃ☆」
 いたずらそうに背中のリュックを見た時でした。
「うにゅ?」
 千佳、ぴぴんと猫ひげを立てるような仕草をして立ち止まります。もちろん猫ひげはありませんが。
 そのまま小さな顎を上げてキョロキョロ。何か異変を感じ取ったようです。
「何か騒がしいにゃ?」
 家屋の壁に立てかけられた戸板の裏を覗いたり樽の中を確認してみたり。
 でも、周りの人は千佳の感じた異変に気付きません。
 千佳のぱたぱた駆け回る姿を見ては首をひねるばかりです。
 うにに、と樽の中に手を伸ばす後ろ姿はお尻を突き出し猫尻尾と長いスカートのフリルが揺れて。
 んしょんしょと中から戻ると跳ね回るように別の場所を探したり。
 そんな可愛らしくも元気のいい姿に目尻を下げる人もいます。
 やがて千佳、大きく目を見張ります。
「路地裏の方からにゃ?!」
 だだっと駆け出す姿に、思わず後をつける人たち。
 そこで目の当たりにするのです。
「騒動の原因はお前かにゃ?」
 お仕置きするのにゃと千佳がマジカルワンドを振りかぶり、何やら宙に浮く白く細長い布に襲いかかっている姿を!
 周りでは野良猫たちがにゃあにゃあ逃げ惑っています。
「あれは……一反木綿。アヤカシか?」
 裏路地を覗く人たちは千佳がアヤカシに一撃をぶち込む様子を見て、そして気付きました。
 びっくりしたアヤカシの逃げる先に白い濃霧が立ち込めていることを。
 そしてなんと、敵がその中に消えてしまったのです。
「あっ、待つにゃ」
 千佳、もちろんこれを追って霧の中に入ろうとします。少しだけためらいもしましたが……
『……ここで食い止めるよ!』
 霧の奥からかすかにそんな声が聞こえるのです。
『えいっ、どうだ!』
 元気な女の子の声のようですね。だんだん大きくはっきり聞こえるようになりました。
 やがて。
『あれ? えええ?、ボクの攻撃が効かない?』
「なにやってるかにゃ!」
 千佳、困惑している声の主の元に駆け出すのでした。



 その時、クリムゾンウエストでは。
「え?」
 一反木綿と戦っていたフラ、突然どこかから聞こえた猫語尾の言葉に驚いていました。先ほどラケットで叩いた敵はまったく効いてない風だったがフラのいきの良さに少し間を入れるべく高く浮き上がっています。
 そんな、一瞬一息つくことのできる間隙の中。
『あれはアヤカシにゃ。仙骨のある開拓者にしか倒せないにゃよ?』
「ええっ。ボクじゃ倒せないの? ボク、どうすればいいの?」
 大きくなる猫語尾の声。
 それが聞こえる空に向かって問うのです。
 すると!
「あのアヤカシを倒すために……あたしと契約して魔法少女になってにゃ♪」
 顔を向けた空から、ぽんっと可愛らしい猫耳頭巾の女の子が両手を広げて飛び出してきたではありませんか。
 ――どしん、むぎゅ?、うにうに……。
 こちらの世界に来た千佳、フラに抱き着き着地。尻餅をついたフラの胸の間にうにうにと頬を擦り付けます。
「あたしは猫宮・千佳にゃ。名前も教えてほしいにゃ」
「ええっ! ……いたた……はっ! う、うん、ボク、フラ・キャンディ。契約するから急いであの敵をやっつけよっ!」
 フラ、突然もみくちゃになりましたが守らなくてはならないものは忘れません。条件はとにかく、この状態はマズイからと促します。
 ところが。
「分かったにゃ。契約したら……お着替えタイムにゃー♪」
「え、ちょっとぉ」
 千佳、満面の笑顔でフラの上着の裾を持ってばさー、と脱がしにかかります。テニスウエアの上着がめくれ、おヘソが見えるのを必死に押さえるフラです。
「ここで着替えはだめだよぅ。敵もまた降りてきてるし」
「着替えじゃないにゃ、変身にゃっ! これをこうして……ネコさんたちは時間稼ぐにゃ!」
 フラの言葉に手を止めた千佳、ちょっと考えて背負った荷物から何か出して逃げの構えを見せつつも振り返ったまま成り行きを見守っていた猫たちに指示を出すのです。
「にゃにゃっ!」
 何と猫たち、素直に千佳の言うことを聞いたではありませんか。
 路傍の樽を足場に大ジャンプして再び高度を下げてきた一反木綿に猫パンチを食らわせたりしゃーと威嚇し逃げ出したりします。もちろん、敵が一匹に狙いを定めれば別の一匹が横から跳ね飛んででバリバリ爪砥ぎしたり。
 その間に派手に何かを振り広げる千佳。後ろには先ほど千佳の立てたポールとともにフラがわけわかんないな感じで両こぶしを口元に添えて固まっています。
「それじゃも一回最初からにゃ。契約したら……お着替えタイムにゃー♪」
 ――ばさーっ。
 それらをパステルピンクの布が包みます。
 キラキラグラデーションの模様が波打つと、ピタリと長細い箱型に収まりました。
「ささ、フラちゃん、魔法少女に変身するにゃー♪」
「ふぇ……」
 どうやら持参した秘密兵器とはこれだったようですね。
 とにかく、ドリーミーな柄のフィッティングルームに二人の少女のシルエットが浮かびます。
 バンザイさせて抱きつくようにしたり、屈んだ少女を前にゆっくり足を踏み換えたり。
 特別に、ちょっと中を覗いてみましょう。
「猫さんたち、千佳さんの言うこと聞くんだね?」
「あんなの気合にゃ! これで下着はいいにゃ。次はこれを着るにゃ〜♪」
 足を踏みかえた後、上からスポンと薄絹のピチピチワンピースをフラに着せる千佳。
「綺麗な緑色だね。……あれ? 千佳さんみたいにふわふわじゃないの」
「フリルもあってペアデザインにゃけど、ふんわりとピチピチで差を出してみたにゃ」
 気合でフラにも言うことを聞かせる千佳だったりします。
「ん……。胸、キツイ……」
「にゃ! ぺったんこの娘に合わせたから……」
 肩も袖もないフリル付きのミニスカボデコン衣装で腰を引いてもじもじするフラに愕然とする千佳。天喜の世界でこれを着せようとしていた娘のボディサイズに合わせたようですね。でももう替えはありません。猫たちも外でニャーニャー騒いでいます。どうやら時間稼ぎも限界のようです。
「とにかく変身完了にゃ! いくにゃよ〜」
 ばさー、とパステルピンクのフィッティングルームから出る二人の雄姿!
「そこまでにゃ! 魔法少女、子猫☆千佳!」
 ふわっと跳ねてマジカルステッキを持つ手を、天に高く掲げます。
「同じく魔法少女、キャンディ☆フラ!」
 くるんと回って打撃専用ラケットを、地に杖にようにつきます。
「罪のない人をいじめるアヤカシは……魔法少女のあたし達が許さないにゃよ!」
 二人がすれ違うように左右の立ち位置を替え、びしりとそれぞれの武器を一反木綿に向けました! 背後ではこれまで時間稼ぎをしていた猫たちがお役御免とばかりそこかしこに散っていきます。
『ゴアアッ!』
 ポーズが決まって虚を突かれましたが、気を取り直した一反木綿はついに二人に襲い掛かります。
「ええと、強くなったの?」
「フラちゃんは変わってないにゃ!」
 当然ですね。着替えただけですもの。
「ええーっ! わっ!」
「にゅ?」
 敵はフラの方から襲い掛かり、千佳もろともぐるぐる巻きにしてしまいました。二人一緒にぎゅうぎゅう締め付けてきます。
「フラちゃん、両手広げて布をちょっとだけでも緩めてにゃ!」
「こ、こう?」
「後は着替えと一緒の要領にゃ〜」
 むぎゅむぎゅ密着する感触を楽しんだ後、千佳はするりと下から脱出。ホーリーアローを撃ち込みます。
「げほっ。……ボクもなんとか戦えるようにならないかな?」
 フラが片膝付きながら言った時でした。
『にゃにゃん』
『ゴゴァァァ!』
 何と、干し肉をネコババした猫の一匹は歪虚だったようです。千佳に猫キックをかまして一反木綿の方にジャンプすると光に包まれ二体のシルエットが一つになります。
『ニャゴゴゴォ…』
 やがて、光の中から羽衣を身にまとった角のある猫が誕生するのです。どうやら歪虚とアヤカシが融合合体したようです!
「それじゃ、こっちも融合にゃ! フラちゃんもあたしに何か契約するにゃ!」
 フラを振り返る千佳の瞳は真剣でした。
「ええと……」
「なんでもいいにゃよ!」
「それじゃ、友達になってボクの部屋に来て!」
 フラ、手を伸ばします。それに応じる千佳。
「分かったにゃ」
 瞬間、光に包まれる二人のシルエットは一つに!
 そして頑丈になった打撃専用マジカルワンドをぴしりと構えるのです。
「……魔法少女☆千佳・キャンディ、誕生にゃ〜っ!」
 緑色のピチピチな胴体に黄色のふわふわスカートに身を包んだ猫宮・千佳が立っています。
「にゅ……胸がぎゅうぎゅうにゃ……二人分合わさったかにゃ?」
 ちょっと、というかかなり気になるようですが、敵が迫ってきましたよ?
『ニャゴゴゥ!』
「うるさいにゃ。いまそれどころじゃないにゃ〜!」
 打撃専用マジカルワンドを掴んだ拳で下から猫アッパー。
 どかーんと敵は吹っ飛んで……それぞれ瘴気と負のマテリアルに戻り消えるのでした。



 戦い終わって、通りを走る二人の姿。
「ただいま〜。ね、友達連れてきたよ!」
 ばたんと扉を開けたフラは、しっかり手をつないでいる千佳を親しい人たちに紹介するのです。
 とても嬉しそうに。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib0045/猫宮・千佳/女/15/魔術師
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士(エルフ)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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猫宮・千佳 様

 いつもお世話様になっております。
 ファナブラと舵天照のコラボ企画に参加いただき、ありがとうございます。
 まさかの魔法少女契約! とても楽しんで書かせていただきました。リンブレとは違い二人でそれぞれ約束を出す形にして、魔法少女になる代わりに友達になっていただきました。フラちゃん、とてもうれしそうです。
 共鳴合体後は、二人分の胸を合わせた千佳さんで(

 それでは、ご発注ありがとうございました♪
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舵天照 -DTS-
2016年06月23日

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