▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『雨の日のお出かけ 』
構築の魔女aa0281hero001)&辺是 落児aa0281

●本日のお天気は
 しとしと
 しとしと

「大降りという程ではないですが、生憎の雨ですね……」
 構築の魔女(aa0281hero001)は、窓の外を見やり呟いた。
 今日は、剣崎高音(az0014)と夜神十架(az0014hero001)と共に紫陽花を見に行くことになっているのだ。
「とは言え、紫陽花は雨に濡れている様の方が風情がありますよね」
 梅雨ならではの光景であるし、と構築の魔女は天気が気を利かせてくれたと考えると、今日着ていく服の候補を見る。
「さて、どれを着ていきましょうか」
 特に山歩きをするような名所ではないとは言え、雨ではある。
 散々迷ったが、動き易いデニムのパンツに生成りのシャツとシンプルな格好とした。
「雨ですし、念の為タオルなども準備しておきましょうか」
 撥水加工の手提げ袋は、今日に合わせて紫陽花模様。
 タオルは吸水性が高い機能重視のもの、雨の雫を拭うもの以外に何かの拍子に泥などが跳ねてしまった時の為に複数枚、それと……構築の魔女は準備しつつ、デジカメも忘れてはいけないと手提げ袋の中に入れた。
「後は、『意訳』を考えておかなければいけませんね」
 自室で支度をする辺是 落児(aa0281)は、この呟きを当然だが知らない。

 さて、その頃の落児。
「……」
 彼は、珍しく迷っていた。
 普段スーツであることが多いが、他の服を持っていない訳ではない。改めて買う必要もなく持っている。
 しかし、着ていくとなれば、別問題で、どうしたものかと服を前に沈黙。
「ロロ……」
 普段とは違う、タイのないカジュアルなスーツを選び、袖を通す。
 部屋を出ると、先に準備を整えていた構築の魔女が待っていた。
「今日はカジュアルなんですね」
 構築の魔女が満足そうに言うが、落児は何だか嫌な予感がした。
 魔女殿の機嫌がいい。何事もなければいいが。
 落児は明確な言葉にするとこのように考えたが、構築の魔女の予想外の行動までは予想しきれない。特に最近は自分が言うことを『意訳』するし。
 構築の魔女が紫陽花が咲き乱れる傘を広げる。
 落児は読めない彼女の横顔をちらと見ながら、深紺の傘を広げた。

●合流し──
 待ち合わせ場所に選んだ駅の改札口近くには、既に高音と十架が立っていた。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、1本早かっただけですよ」
 構築の魔女が声を掛けると、高音がそう微笑み、隣の十架がこくこく頷いた。
 待ち合わせは基本時間通りか少し遅れる程度が常であるが、高音と十架は早めで行動しそうだと考え、5分前には到着出来るようにしていたが、電車1本分彼女達に軍配が上がったらしい。
「あら、今日の装いも素敵ですね」
 ここへ到着までの間、構築の魔女は落児へ彼女達がどのような装いで来るかどうかについて話をしていた。
 予想通りと言うべきか、高音はシンプルな白シャツとダークブラウンのスラックスだが、十架は白を基調にした紫陽花咲き乱れる着物ドレスであった。
 言うまでもなく、高音がご機嫌に着付けたらしく十架も嬉しそうにはにかんでいる。
「――ロロ」
「落児も十架ちゃんがその服を着てはにかむと、紫陽花が恥らうくらいに愛らしいと言っています」
「!?」
 落児が十架を見ると、即座に構築の魔女が『意訳』した。
 当然、『意訳』なので、落児が伝えたいことの大半が飛躍している為、落児が隣で弁明し出すが、構築の魔女は「照れているんですよ」と2人へ微笑を向ける。
「あら、今日の落児さんもいつもと雰囲気が違いますよ。十架ちゃん、今日の落児さん、素敵よね?」
「……落児も、……おめかしさん、なのね……」
 高音が笑みをそう向けると、十架がこくこく頷いた。
 褒められたのはいいが、魔女殿の言っていることは真に受けないでくれ。
 そう言いたい落児、構築の魔女に意訳されるといけないので、空気で訴えた。
「全員揃いましたし、行きましょうか」
 構築の魔女が移動を提案したので、その訴えがどこまで通じたか、落児はちょっと自信がない。

●雨に濡れゆく
 傘に雨の雫が落ちると、心地良い音が耳に届く。
 都内でも有数の紫陽花の名所であるこの神社と公園には、雨でも多くの人が足を運んでいるが、それぞれ紫陽花を楽しんでおり、ゆったりとした時間が流れている。
(こういう風にゆったり過ごすのも悪くありませんね)
 構築の魔女は傘から響く雨音と雨に濡れる紫陽花を楽しみながらそう思う。
 落児は小柄な十架のフォローが出来るよう近くを歩いているが、自分の傘から流れる雨の雫が十架を濡らさないよう、また、自分だけではなく皆が水溜りを踏み抜いたりしないよう気を払っているようだ。
(最初に比べれば、少し印象変わったでしょうか)
 構築の魔女は落児を見ながらそう思う。
 付き合いは短くないが、印象が変わったと思うのはつい最近だ。
 正確に言えば、ベトナムの任務で、後に『リートゥオンモー』という識別名が与えられた愚神と対した後ちょっとからかってからだろうか。
 落児からすればたまったものではないだろうが、その反応が見たい。研究者の性だ。(落児の意見がどのようなものかは知らないので、聞いてみたくはある)
「紫陽花、どの色も素敵ですね。3000株植えられているのだとか」
「種類も豊富ですよね。こんなに種類があるとは思いませんでした」
 高音が紫陽花を見ながら微笑むと、構築の魔女も高音が見ている紫陽花を見、それから紫陽花を愛でる高音を1枚デジカメ撮影。
「え!? ズルイですよ、不意打ちなんて」
「こういうのは不意打ちの方がいい表情なんですよ」
 頬を染める高音に、してやったりの構築の魔女。
 更に十架が落児相手に別の紫陽花を指し示し、何やら一生懸命に説明し、それを丁寧に聞いている姿も不意打ち撮影した。
「ロロ……!?」
「あら、落児、自分で高音さんと十架ちゃん撮影したかったんです? むっつりさんですね」
「ロロロ!? ロ――――!?」
「むっつりさんの落児が寂しがっている為、高音さんと十架ちゃん、落児に撮影されてもらっていいでしょうか」
 落児に必死の表情(緩やかな反応が常の彼にしては珍しく引き出されている)を見れば絶対違うと判るが、高音は十架と少し考えた後、落児へ微笑みを向けた。
「それなら、魔女さんも一緒に撮っていただけますか」
「その後……落児も、一緒に……」
 ちょうどいい機会だと思ったらしく、彼女達は乗った。
 構築の魔女の言っていることを本心だと思っている訳ではなさそうなので、落児はほっとする思いで構築の魔女からデジカメを受け取る。
「そんなに必死にならなくてもいいのに」
 手渡す間際、構築の魔女がそう言ったが、落児は沈黙のまま紫陽花の前で微笑む3人を撮影した。
 続けて、構築の魔女が落児と交替し、3人のものを撮ることに。
「ハーレムですよね」
 聞こえるように言った一言に動揺した落児が写真に収められた。
 その後も撮影者を交替して、大切な時間を収めていく。

「今日は1日ずっと雨みたいですけど、大降りではなくて良かったですよね」
「ロロ……」
 高音に声を掛けられ、落児も緩やかに肯定する。
 構築の魔女も十架もこの世界に馴染んでいる類の英雄であるだろうが、この世界の住人ではなく、日本人でもない。
 この為、高音は落児へ話を振った訳だ。
「台風だと流石に紫陽花を見に行く所ではないですしね」
「――……」
 高音の話に落児はやはり緩やかに肯定。
 落児は自分の言葉が高音に通じているとは思っていないし、実際通じていないが、表情や空気、仕草である程度は察して貰える為、伝わり易いようには努力している。
 こういう時に文明の利器をしようするというのも味気ない為、あくまで自分の力だけで。
 そこへ、十架と歩いていた構築の魔女から横槍が入った。
「あら、落児、高音さんと紫陽花の対比の詩的表現に迷っているんです? そうですね、凛とした高音さんが雨に濡れる紫陽花を愛でる……それは正に日本の静と動、鮮やかなりし日本の美でしょう。うん、ロマンチックですね」
「高音は、綺麗で……ろまんちっく、なの……」
「――ロロ、ロロロロ!!」
 何やら納得している構築の魔女と真に受けた高音大好きの十架を遮る勢いで落児が高音に弁明しだす。
「あの、言い難いのですが……」
 笑いを噛み殺している様子の高音がこう言った。
「魔女さんは、その必死の落児さんが見たいんだと思いますよ」
 落児がぎぎぎと擬音がしそうな動きで首を構築の魔女へ向ける。
 当の本人は事も無げにこう言った。
「高音さん、それ言ったら面白くないですよ」
 落児がその言葉にどう思ったかは定かではない。

 しとしと。
 しとしと。

 雨は静かに降り、紫陽花は濡れゆく。
 けれど、ゆっくり愛でても、楽しいひと時に変わりはなく。
 構築の魔女は、改めて視線を巡らし呟く。
「四季に人……変化があるのはやはり良いですね」
 歩調合わせ巡り、共有すること。
 それも楽しい。
 あとは、誰かに頼んで4人一緒の写真を撮って貰おう。
 彼女の頭には楽しい計画を遂行する為の方策が錬られ始めていた。

 計画成功したかどうかは、彼らだけの秘密である。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【構築の魔女(aa0281hero001)/女/22/追求者】
【辺是 落児(aa0281)/男/20/太陽の待ち人】
【剣崎高音(az0014)/女/19/勇往邁進】
【夜神十架(az0014hero001)/女/17/高音大好き】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
真名木です。
この度はご指名ありがとうございます。
紫陽花の名所での楽しいひと時になればと描写させていただきました。
WTツインノベル この商品を注文する
真名木風由 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年07月04日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.