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『●とある平日 』
エミナ・トライアルフォーaa1379hero001)&小鉄aa0213

「トライアルフォー殿! お待たせしたでござる」

 しゅたっ。一体どこから飛んできたのか、駅前に舞い降りたのは時代錯誤も甚だしい覆面に忍装束、所謂忍者である。
 彼を待っていたのは、青い髪をナットのような髪飾りで結い上げて、お洒落な服装を身に纏った少女。

「いいえ、突然連絡したのは、こちらですから。すみません小鉄、付きあわせてしまって」

 振り返ったエミナは無表情でそう言って、手の甲を唇に当てた。ディスプレイに表れたのは、申し訳なさそうなヘの字。

「いやいや、気にしないで欲しいでござるよ! 拙者も暇――ごほん、修行の合間に時間があった故」
「ありがとうございます」

 エミナは流行のキャラメルカラーのガウチョパンツに、ドット柄の白いブラウス姿。如何にもデートといった装いながら、何だかこの二人にはそういう色っぽい雰囲気は無くて。(小鉄は何時も通りだし。)
 今日はエミナの頼みで、小鉄と二人で買い物に繰り出して来たのだ。

「何、トライアルフォー殿の為ならば、一肌でも二肌でも……」
「小鉄、小鉄。分かりましたから、本当に脱ぐのはやめてください」

 普段、修行と任務以外は暇してる忍者は嬉々として手伝いに参上した様子。
 テンションが高い。まったく忍んでない。すれ違う外国人は誰もが彼を写真に収めたが、小鉄は気にした様子も無い。

「うむ、うむ、確か、身体パーツの新作を買いに行くのでござったな」
「はい。九繰の馴染みのショップなのですが、新パーツが大量入荷するそうで」
「成程、唐沢殿は学校がある故、並べぬのでござるな」
「はい。それに、以前店主と一悶着あったので」
「なんと。……あの唐沢殿が?」

 癇癪とは無縁そうな天真爛漫な少女を思い浮かべ、小鉄を小首を傾げた。エミナは頷く。

「はい。新パーツが売切れてしまったとかで」
「ほ、本当に機械の事となると、目の色が変わるのでござるな」

 確かに、彼女の機械好きを鑑みればありえなくもない。エミナの抑揚の無い声が続ける。

「元々よく知った仲でしたから、まだ少々意地を張っているのでしょう。私はその際に同伴したので、場所が分かるという事で、代行を申し出たところ大変喜んだ様子で」
「なるほど、であれば、拙者の今日の任務は荷物持ちでござるな! ……ところで、お店はどの辺りでござろうか?」
「はい、もうすぐです」

 平日のH.O.P.E.東京海上支部は、他の都市同様に営業のサラリーマンや買い物の主婦達で溢れている。ずらりと軒を連ねる建物の中でも一際大きなゲートの前で、エミナははたと立ち止まった。

「着きました」
「おおお、此処はグロリアモール東京海上支部店……!」

 全世界に展開するグロリア社の運営するショッピングモールは、平日でも流石の賑わいを見せていた。小鉄は感心したようにゲートを見上げる――

「さすが唐沢殿、こんな立派な所で買い物をしていたのでござるな」
「いいえ、こちらです」

 ――が、エミナはそのすぐ横にある寂れた古商店を指さした。

「えええ、こっちでござるか?! 随分ボロ――い、いや、味のあるお店でござるな!」
「はい、非常にボロいお店です」
「言っちゃったでござる!」

 無理も無い、目の前には築50年近いであろう小さな木造戸建て。掲げる看板は『ブロリア電子』。

「すごいパチモン臭でござるな……」
「いいえ、グロリアモールより先にあったお店ですから」
「そうかなとは思ったでござる」

 どうでも良いけれど、奇跡的なニアピンである。
 一般的なアイアンパンク程度にはパーツ店に親しみのある小鉄でも、この店の存在は知らなかった。しかしであればこそ、ショーウインドーに並ぶ品がどれも見た事のない珍品である事はすぐに分かって。

「……うむ、良さげな店でござるな」
「九繰の、行きつけですから。……小鉄、外は暑いです。もう入りましょう」

 小鉄の言葉に、エミナは笑顔を表現する。陶器の肌は汗をかく事など忘れたように滑らかだが、彼女でも暑いと思うらしい。
 ドアを開けると、アンティークのチャイムがレトロなベル音を響かせた。奥のカウンターに座っていた店主は、エミナを見て会釈程度に済ませる。

「ライヴスコートスプリング5ピース……高親和ボルト20ピース……」
「うむ……うむ……おおっ、トライアルフォー殿。小鉄車というパーツがあるでござるよ!」

 メモを左手に、目当てのパーツを探し出しては床に積んでゆくエミナの後ろに雛鳥のように付いて歩きながら、小鉄も商品を興味深そうに見る。

「えーえるえる、せってぃんぐ、ほいーる……んん……?」
「――エーエルエル、アクアティック・ライヴス・ラインの略ですね。防水に優れた製品群でしょう。それは時計のリューズ機構に使われる歯車ですよ」
「な、なんとはいてくな……!」

 説明文を見ても、エミナの解説を受けても、小鉄にはさっぱり分からなさげな様子。
 その後も、エミナは次々とパーツを選んでゆく。

「合金プレート5枚、アルター社規格ナット20ピース、」

 どさ。どさ。
 小鉄は漸く、エミナの手にあるメモに視線を留めた。

「う、むむむ……?」
「座金100枚、歯車がこちらと、こちらと――」
「と、と、トライアルフォー殿……? そのメモは?」

 がしゃ。がしゃ。
 予想より遥かに高く積み上がる荷物の山に、小鉄の顔は段々と引きつり笑顔に。エミナが事も無げに振り返る。

「ああ、これは、九繰の希望のパーツリストです」

 そこには余白も無く、まるで呪いの札のようにびっしりと希望のパーツが書かれていた。

「よもや、それを全部買うのでござるか?」
「……いけませんか?」
「いや、流石にこれは……」
「以前、仰っていましたよね? 『力仕事は任せるでござるよ!』と」

 やはり、多すぎるのだろうか? エミナの表情は変わらないが、彼女がだんだんと不安そうになってゆくのが小鉄には手に取るようで。
 しかも、言った。確かに、言った。『力仕事は任せるでござるよ!』と、一字一句違わず。

「だ、大丈夫、任せるでござる!」
「……本当ですか、小鉄。ありがとうございます」

 エミナはくるりと踵を返し、買い物に戻ったが、その足取りはどこか嬉しそうに見えて。……後戻りは出来ない。

「さて、さて……うむ。どうやって持って帰るでござるか……」

 忍者はこの後も増えてゆくであろうパーツの山に、途方に暮れて息を吐いた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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・エミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)
  中学生くらいに見えるが、実は異世界の医療器械が英雄として顕現した存在。
・小鉄(aa0213)
  いい歳したノンスニーキング脳味噌筋肉系忍者。ときどき降ってくるらしい。

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております。
とある平日、仲の良い二人の日常譚に携わらせて頂き光栄でした。
お待たせしてしまい、申し訳ございませんです。期待に沿える仕上がりである事を祈るばかりです。
この度は清水澄良にご縁を賜り、誠にありがとうございました!
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2016年07月06日

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