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『砂は思い出の量、速度は思いの強さ 』
シルヴィア・エインズワースja4157)&天谷悠里ja0115

 愛を語り合った2人が店内に戻ると、黒い少女が待っていた。

「契りを交わしたお2人さんに私達からもお祝いをあげるわ」

 不思議そうに顔を見合わせる2人。そんな2人を少女が店の奥へと誘う。

「こんなに広かったんですね……」

「まあ、ね」


 シルヴィア・エインズワース(ja4157)の呟くような声に少女が微笑んだ。

「私も小さなお菓子屋さんだと思ってた……」

 天谷 悠里(ja0115)も驚きを隠せない。外から見る限り、薔薇園があるとも思えない程小さな店に見えていた2人はきっと見えない所ににあったんだろうという納得の仕方をしていた。

 しかし、それよりも奥は考えたことがなかったのだ。店が消えた跡地を考えてもこんなに奥があるとも思えない。

「この奥よ」

 目の前には1枚の扉。何があるのかとどきどきしながら2人は手を重ねノブをひねる。

 ***

 そこは寝室だった。
 天蓋付きの2人で寝てもまだ広そうなベッド。毛足の長い絨毯。豪奢でありながらも嫌味のないインテリア。そして淡く漂う薔薇の香り。その全てが童話にでも出てくるお姫様の部屋を思わせた。

「えっと……」

「これがお祝い?」

「ええ。結婚初夜はロマンチックな方がいいかと思って用意させてもらったわ」

 状況が飲み込めない2人に少女がウィンクして答えた。

「この砂時計の砂が落ちきるまでこの店は消えないわ。思う存分初夜を堪能なさい?」

 実際にはどの位の時間なのか?と訊くと少女は口元に指を当て少し考える仕草を見せた後

「そんなのは野暮なことよ。大丈夫。貴方達が満足するまでの時間はあるわ」

 ごゆっくり。と後手を振りながら少女が去った後、顔を見合わせて穏やかに微笑んだ2人は、どちらからともなく手を取りあい、寝室へと足を踏み入れた。

 ***

 ふかふかしているが適度な弾力のあるベッドに2人は腰掛ける。

「ユウリ……」

 先程の熱が冷めやらぬシルヴィアが潤んだ瞳で紅いドレスの愛しい人を見つめる。瞳に映る悠里もまた熱を帯びた瞳で見つめ返してくる。2人の思いは同じだった。相手の姿を閉じ込めるように瞳を自然に閉じると甘く濃厚な口付け。水音を立てながら甘い吐息を、声を交換し互いを感じ合う


「んっ……シル……ヴィ……スキ……愛し……る」

「ユウ……リ……嬉し……私、も……ス、キ……」

 上ずり途切れながらも紡がれる言葉も、キスの間に漏れる熱い吐息も、愛しい人の全てを誰にも渡さなぬように、言葉を重ね、口付けを重ねる。しかし、気持ちの昂りはそれだけでは収まらない。
 片腕で腰を抱きよせ、空いた手で肌に触れる。薄く色付いた吸い付くような肌もまた花の様な甘い香りを放ち口付けたくなる程魅力的だ。

「かわいい……」

 シルヴィアが胸元に口付ければ、悠里は彼女の耳を食む。

「シルヴィアこそ……」

 甘ったるい声と肌にかかる吐息が無意識に煽っていく。耳から首筋へと滑る吐息に白い姫は、上がりそうになる声を殺しながら目尻や額へキスを落とす。
 キスの音と、衣擦れの音、そして甘やかな睦言が途切れることはなかった。

 ***

 鳥の声と陽の光で2人は目覚めた。レースのカーテンから差し込んでくる光が白いシーツの中にいる2人のシルエットをくっきりと浮かび上がらせる。
 寝ぼけ眼で辺りを見回す2人だが、天蓋も柔らかいベッドも、そのままだ。砂時計の砂もまだ半分程残っている。少女の言ったことは本当だった様だ。

「あのまま眠ってしまったのね」

 ドレスを脱ぎ捨て、生まれたままの姿で愛し合った夜を思い出すと顔が熱くなる。
 サイドボードにいつの間にか置かれていた水さしからグラスに水を注ぎ一口飲みながらそっと寄り添い合う。トルソーにかけられた数着のドレスを見る。

「ここに来て初めてキスした時のこと覚えてる?」

「はい」

 あの時、シルヴィアは宵闇を思わせる様な群青から黒のスレンダーなドレス。悠里は青空の様な青いプリンセスラインのドレスだった。
 思えば全てはあそこから始まったのかもしれない。あの時この愛おしい人が告白をしてくれなかったらこうやって幸せを分かち合うこともなかったんだろうと悠里は思う。

「ウェディングドレスで写真も撮りましたよね」

「ええ、今でも毎日の様に見ているわ」

 男性禁制のフォトスタジオで撮った写真は写真集となってお互いが持っている。蘇る思い出とともに愛おしさがこみ上げたのか甘い口付けを交わし、話は続く。
 この店で渡された左手の薬指で輝く2つの指輪。騎士と姫としての甘い時間。薔薇達に見守られて迎えた結婚式。

「本当に奇跡の様ね」

「はい。本当に……あ、ありがとう。シルヴィア」

「私の方こそ。これからもよろしくね。ユウリ」

 出会えたことに。一緒に寄り添っていられることに感謝を。

「スキです。これからもずっと」

 はにかむ様に微笑む悠里の姿は刹那、そっと触れ合う唇と唇。ほんの少しだけ唇が触れるほど近い位置でシルヴィアも微笑む。

「私も愛しているわ。永遠に、ね」

「ずっと一緒にいてください」

「えぇ。離してなんてあげない」

 愛おしそうな眼差しで微笑む2人。
 砂時計はまだ落ちきらない。初夜はまだ続くのだ。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 騎士は愛される喜びを 】

【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / 姫君は愛する幸せを 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 何度もご縁をいただきありがとうございます。
 これまで何度もお2人の仲睦まじい様子を書かせていただいておりますが、その一つ一つがお二人の中でも積もっていっていたということに大きな幸せを感じております。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回もご縁を頂き本当にありがとうございました。 またご縁があることを心よりお待ちしております。
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2016年07月07日

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