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『陽花のマジカルお料理教室 』
彩咲・陽花jb1871


 お菓子と料理の違いって何だろう。お菓子は甘くて、料理はしょっぱい?
 でも塩味の効いたお菓子だってあるし、カボチャや豆の煮付けみたいに甘い料理もある。

 作り方が違うのかな?
 でも、どっちも材料を用意して、分量を量って、切ったり捏ねたり焼いたり色々するのは同じだよね。

 なのに、どうして片方だけ上手くいかないんだろう?


「うーん、お菓子なら凄く得意なんだけどね」
 彩咲・陽花(jb1871)は「料理はちょっと苦手なんだよね」と苦笑いを浮かべる。
 でも、あくまで「ちょっと」の範囲内だ――と、自分では思う。
 試しに出来上がった料理を食べてみたけれど、そんなにヒドい出来映えとは思えなかった。
「皆、何で逃げて行くのかな? せっかくタダでご飯食べられるのに?」
 タダなのだから、多少の不具合は大目に見てもらわなければ困る。
 それに、いくらなんでも口を押さえて逃げ出したり、その場に青くなって蹲るようなものではないと思うのだ。
 ましてや「殺人料理」だなんて、そんな。
 なのに、料理を振る舞ったほぼ全ての知り合いが、必ずそのどちらかの反応を示す。

 しかし残念なことに、その評価はどうやらそれほど的外れなものではないらしいのだ。
 おかげで今は試食してくれる人を探すのにも苦労していた。

「んー、なんか悔しい……」
 それに、おかしい。
 自慢ではないけれど、いや、自慢しても許されるくらい、お菓子作りは得意なのだ。
 可愛くデコったケーキやクッキー、パイにタルトにマカロンなどなど、見た目も可愛く味もプロのパティシエに迫るほど。
 おかげでハロウィンやクリスマス、バレンタインや誰かの誕生日には必ずと言って良いほど、その腕前を披露していた。
 もちろん皆も喜んで食べてくれる。
 なのに、こと料理となると逃亡者が続出するのは何故?

「同じように作ってるはずなんだけどなー」
 レシピの通りに分量もきちんと量って、砂糖と塩も間違えず、手順だって寸分の狂いもなく。
「だったらレシピが間違ってるんじゃない?」
 そう思って、料理が得意だという知り合いに同じレシピで作ってもらった。
「……普通に美味しい……」
 もぐもぐもぐ。
「じゃあレシピに問題があるわけでもない、と」
 他に考えられることは?

 ぽく、ぽく、ぽく、ちーん!

「まさか、無意識に何か未知のスキルを使ってるとか!?」
 例えば料理を作る時だけ効果を発揮する、材料の味を勝手に変えてしまうようなスキルとか。
 もしそうなら、知らないうちに新たなスキルを開発していたことになる。
「え、私って実はすごい高スペック?」
 女優で撃退士というだけでも結構な多才ぶりなのに、この上にまた新たな才能が開花するなんて――と、膨らむ妄想。
 ただし、そのスキルが実在したとしても、使い道は非常に限定されたものになるだろう。
 スキルと言うより一発芸かもしれない。
「ううん、私には使い道が思いつかなくても、誰か他の人が意外なところで便利に使ってくれるかもしれない!」
 ほら、よくあるじゃない、最初はこんなもの何の役に立つんだってバカにされた発明が、後になってすごい大ヒットしたっていう話。
 具体的に何のことかって訊かれても思い出せないけど、そんな話はよく聞くでしょ?
「そうなったら、私の名前が歴史に残るね!」
 そのためにも、まずはこれが本当にスキルなのかどうか、それを確かめなくては。
「誰かシールゾーン使える人いないかな?」
 それでスキルを封印したまま料理をして、それでもいつもと同じように何かおかしなことになったら、それはスキルのせいではないということ。
 でも、もしも上手く出来たら――

 結果:いつも通り

 陽花は頭を抱えた。
 これ以上はもう何をどうすればいいのか、まるっきり思いつかない。
 諦めるしかないのだろうか。
「うん、そうだよね。料理は誰か出来る人にやってもらえばいいじゃない」
 人間誰しも得手不得手があるのだから、上手く出来ないからといって恥じることはないのだ。
 世の中にはお菓子と料理のどちらも壊滅的な人だっているのだから、それに比べれば……あれ、ちょっと待って、今なにか閃いた気がする。
「そうだ! お菓子は得意なんだし、同じイメージで料理も作ればきっと美味しいものが出来るよね♪ うん、きっと♪」
 料理だと思うから上手くいかないのだ。
 きっとそうだ。

 これはお菓子。
 これはお菓子。
 これはお菓子。

 肉じゃがに見えるけど、これはお菓子。
 ハンバーグにに見えるけど、これはお菓子。
 カレーライスにに見えるけど、これはお菓子。

 味噌汁も焼き魚も麻婆豆腐もグラタンも、あれもこれも、みんなお菓子。

「出来た!」
 見よ、テーブルにずらりと並んだ定番料理の数々。
 形よく、彩りもよく、とても素人が作ったものとは思えない出来映えだ。
 どこかの料理屋で出されたとしても、文句を付ける客はいないだろう――見た目だけは。
「うん、いつもここまでは順調なんだよね」
 問題は、この後だ。
 口に入れてみて初めて、その全貌が明らかになる。

 まずは犠牲者、いやいや実験台、じゃなくて生け贄、でもなくて!
「ねえ、ちょっと食べてみてくれないかな?」
 え、前にそれでヒドイ目に遭った?
「今度は大丈夫だから、騙されたと思って、お願い!」
 通りすがりの学生達を捕まえて、半ば無理やりに食べさせてみる。
「どう、美味しい?」
 ドキドキしながら尋ねた、その結果は。

「なにこれヤバイ! 騙されたと思って食ったらマジ騙された!」

 ヤバイ? 騙された?
 いやいや騙してないし何か危ないものが入ってるわけでも……あれ?
 逃げない?
 顔を青くして蹲ったりもしてない?
 それどころか他の料理にも手を出してる!?

「美味いよこれ! こんなの初めて食べた!」
「え、美味しい?」
「うん、すっげー甘くてちょーうめー!」
「やった、成功なんだよ……って、あれ?」
 今、甘いって言った?
 甘いものなんて、作ったっけ?

 これは一体どうしたことかと、自分でも一口食べてみる。
「……甘い」
 肉じゃがが甘い。
 塩分が足りないという意味の「甘い」ではなく、文字通りに甘い。
 例えるならキャラメル味のポップコーン。
 ハンバーグはしっとりフルーツケーキの味がする。
 カレーライスはチョコムース味だ。
「……これ、料理じゃなくてお菓子になってるよ!?」
 見た目も香りも正真正銘、疑う余地もなく料理なのに。

 確かにこれは「騙された」と言われても仕方がない。
 精巧に作られた食品サンプルを食べてしまった時の驚き――いや、サンプルだとわかって吐き出そうとしたものが、その瞬間に砂糖菓子に変わった、みたいな?

「これは、喜んでいいのかな?」
 見た目は料理で味はお菓子のハイブリッド。
 余人をもって代えがたき才能、紛うかたなきオンリーワン。

 どこからともなく電子音のファンファーレが鳴り響いた。

 おめでとうございます!
 陽花さんの料理がレベルアップしました!!


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb1871/彩咲・陽花/女性/外見年齢20歳/お菓子の魔法使い】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、STANZAです。
ご依頼ありがとうございました。

レベルアップと言うよりも、新たな才能の開花と言ったほうが適切でしょうか。
いや、上がったのは芸人レベルかも……?

口調等の齟齬やイメージの違いなどありましたら、ご遠慮なくリテイクをお願いします。
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エリュシオン
2016年07月08日

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