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『○結婚をするまでに、二人がやるべき事 』
八雲 奏ka4074)&久延毘 大二郎ka1771

「はあ〜……」
 八雲 奏は暗い表情で、重いため息を吐く。
 数日前にはとある依頼で愛おしい恋人と模擬だが結婚式を挙げたばかりで、正式な求婚はその時にされたのだが……。
 あの時の奏は一人の女性として、美しく明るい笑顔を浮かべていた。
 だが今や、依頼としてお手伝いをしに来た神社の社務所の中で巫女衣装を着ているものの、暗雲を背負いながら『恋愛成就』のお守りを補充すべく数を数えている。
 そこへ奏とは別のハンターとしての依頼を終えた恋人であり婚約者の久延毘 大二郎が襖を開けても、全く気付かない。
「あっあの、奏? 依頼を終えて来たんだが……」
 恐る恐る声をかけると、奏は顔だけ振り返った。そして大二郎の姿を目に映すと、ウルウルと涙を浮かべながら突如立ち上がり、走り寄って行く。
「うぇ〜ん! 毘古ちゃーんっ!」
「えっ! ちょっ、まっ、ぐふっ!?」
 突進してくる愛おしい女性を避けることはできず、大二郎は正面から受け止めて背中から廊下に倒れた。
「アラ、すみません。ちょっと力を抑えることができなくて……」
 奏は背中の痛みに顔をしかめる大二郎を見て、ようやく冷静に戻る。
 そして二人は社務所の中にある丸い木のテーブルを間にはさみ、向かい合いながら座布団に座った。
「イテテ……。いきなりどうしたんだ?」
「実は結婚のことについて、リアルブルーにいた頃に実家から言われたことを思い出しまして……。ですが毘古ちゃんには、あまり関係無いのかもしれませんが……」
 頬に片手を添えて思案する奏を見て、大二郎はやや拗ねた表情を浮かべる。
「おいおい。婚約者の私が奏の結婚のことについて、部外者ということはないだろう?」
「いえ、そういうことではなくてですね……。説明するのはちょっと難しいのですが……、毘古ちゃん、私達が結婚をする時は『お互いに自分の成長を認めた時』と決めましたよね?」
「ああ。私は奏に相応しい夫になる為に、俗っぽいかもしれないが考古学者として大成したいと思っている。私の持論が正しいことを世の中に認めてもらい、考古学者として、そしてハンターとして名を残すことが目標なんだ。そしたら誰にも何にも遠慮することなく、奏を娶れると思っているからな。今はそれが私の一番の夢だ」
 奏は真面目に語る大二郎を、眩しく見ていた。しかし次の瞬間、何故か暗い顔でため息を吐いて立ち上がる。
「私ったら、依頼を終えて疲れている毘古ちゃんに、何も出していませんでしたね。少々お待ちください」
「あっああ……」
 どこか余所余所しい奏は、いったん部屋を出た。
「奏はどうしたんだ? マリッジブルー……は流石に早すぎるな。……あっ、まさか『結婚をするなら嫁に行くのではなく、婿を取れ』と身内から言われているんだろうか? コレはあり得るな。まあ私は八雲家に婿入りするのは別に構わないが……。もし二人でリアルブルーに戻れたら、神社の跡を継ぐことになれば一から勉強することになるだろうが、面白そうだからそれでも構わないな。考古学者としてやるべきことをやり遂げたら、神社の勉強をはじめ……」
「毘古ちゃん、何をブツブツ言ってるんですか?」
「うをっ!? 奏、いつの間にっ……!」
 冷たい麦茶入りのグラスを二つと、切ったようかんをのせた皿を二つ、木のお盆にのせて奏は大二郎の向かいに戻っていた。
「少し前からです。私が戻ってきても、毘古ちゃんったら俯いたままでずーっと何かを小声で言っていたんですよ。何かお悩みでもあるんですか?」
「いや、ホラ、私も神社の習わしを知っておいた方が良いのではないか、と思ってな」
 グラスをテーブルの上に置いていた奏の手が、ピタリと止まる。
「……毘古ちゃん、それ、本気で言ってます?」
「もっもちろんだ! 奏に関することなら、私にとって無関係ではないのだからな!」
 力強く大二郎が言うと、奏はグラスと皿を全てテーブルに置き終えると、改めて正座をして向き合う。
「――実は毘古ちゃんに言ってなかったことがあります。それは我が八雲家の巫女……、特に私のような戦巫女のことについてです」
「ああ……」
 怖いほど真剣な表情を浮かべる奏を前に、大二郎もかしこまる。
「現在、世界には歪虚と呼ばれる命あるモノの天敵が存在しております。そして我が八雲家の戦巫女には【神越えの儀】という儀式が存在するのです。内容は戦巫女が八雲家の神に自ら倒した悪神を捧げて、自分の役目を全うしたことを証明します。そうすることによって、はじめて結婚することを許されるのです。……はあ」
「……つまり奏は自分だけの力で少なくとも一体は歪虚を倒さなくてはならない――という儀式なのか?」
「仰る通りです」
 一通り説明を終えた奏は肩の荷が下りたらしく、表情を和らげて、麦茶を飲んで大きく息を吐く。
「まあ悪神と言ってもいろいろなモノが存在していますし、歪虚だけとは限らないんですけどね。故郷のリアルブルーに比べたら、こちらのクリムゾンウェストは悪神と呼ばれる存在は多いですし。ですがこちらの世界に条件を合わせたら、やはりそこそこ位の高い歪虚を倒すことが望ましいでしょうね」
 奏はううっ……と涙ぐみながらも、しっかりとようかんは口へ運ぶ。
「雑魔レベルでは……流石に無理、か?」
「いくら何でも雑魔程度を一人で倒したとしても、一人前とは言いづらいです。私はハンターでもありますからね。せめて賞金首あたり――でしょうねぇ」
「そっそうか……。奏は今までたくさんの戦を経験してきたからな。功績は決して少なくはないし、名声も低くはない。条件が上がってしまうのも、ある意味しょうがないな」
 憂いの表情を浮かべる奏だが、大二郎はいろんな意味で顔色を失う。
「ええ、なので気が重くなっていたのですよ。責任感が重くなってしまいまして……。だから『毘古ちゃんにはあまり関係ない』と言ったのです」
「なるほど。そういう意味だったのか」
 結婚は二人でするものだが、そこへ至るまでは自分一人の努力が必要となる。
「でも私は奏の婚約者なのだし、その儀式を一緒にやってもおかしくはないと思うんだが……」
「いえ、この儀式はあくまでも戦巫女が一人前になったことをお披露目することが目的です。残念ですが、例え家族だろうと恋人だろうと手助けは無用となります。……まあ戦うのは私一人として、準備ぐらいは他の方が手伝っても良い事になっていますけどね」
「そうか! それなら喜んで手伝おう」
「それは嬉しいのですが……。毘古ちゃんの方も、頑張らなくてはならない事がありますよね?」
 大二郎も、考古学者として成功しなければならない。
 下手をすると、奏よりも大二郎の方が結婚する条件をクリアするのに時間がかかってしまうだろう。
「うぐっ! ……まっまあそれはそれとしてだな、奏の方は一人でやるには危険過ぎる。ゆえに私が手伝って、早く結婚できるようにしておきたい。安心したまえ。私が必ず奏を支えつつ護り、娶ってみせよう!」
「毘古ちゃん!」
 感動した奏は、再び大二郎に飛びついた。
 大二郎はしかし今度は両手を畳につけて、後ろに倒れるのを我慢する。
「例え私の【神越えの儀】の方が早く終わってしまっても、ずっと毘古ちゃんを待っていますから!」
「そっそんなに時間がかからないように、私も頑張る……」
 と大二郎は言ったものの、計画を前倒しにした方が良いのかもしれないと内心思う。
 大二郎に優しく抱き締められながらも頭を撫でられている奏はふと、顔を上げてニッコリ笑った。
「ところで毘古ちゃん、私の儀式をお手伝いしてくださるのならば、一緒に暮らして計画を立てた方が良いと思うんですけど」
「えっ!? 確かに奏とは一緒に暮らしたいと思うが……、やはり結婚前の男女が同棲するのは、な?」
 控え目な大二郎とは反対に、奏の表情は一変して険しくなる。
「……毘古ちゃんって古い神社の生まれである私よりも、古い考え方をしますね。でもお互い多忙の身ですれ違うことも多いんですし、一緒に暮らす事ぐらい良いじゃありませんか!」
 奏は絶対に引かぬという気迫で、大二郎の肩を掴んで前後にグラグラッと揺らす。
「わっ……分かった! せめて私か奏のどちらかが、結婚の条件をクリアしたら同棲しよう!」
「ホントですかっ!」
 突然奏がパッと手を放したので、大二郎は畳にドサッと倒れる。
「私、ヤル気が溢れてきましたわ! もっと多く戦いの経験を積んで、賞金首を一人でも倒せるように頑張ります!」
 興奮した奏は、倒れている大二郎に再び抱き着く。
「そっそうか……。私も早く一人前の考古学者になる為に、頑張らなければな。……だがその前に、奏」
「はい?」
「今の依頼を、ちゃんとこなそうな」
 大二郎が指さしたところには、補充する予定のお守りがあった。
「ああ、すっかり忘れていました。……でもここのお守り、良く効くみたいですね。後で一つ……いえ、二つ買っておきましょう。もちろん、私と毘古ちゃんの分です♪」
 
 ――大二郎の目標が達成されるのが先か、奏の目標が達成されるのが先か、今はまだ分からぬ未来の事――


<終わり>


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka4074/八雲 奏/女性/16歳/闘狩人】
【ka1771/久延毘 大二郎/男性/22歳/魔術師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こちらの方でも参加していただき、ありがとうございました(ぺこり)。
 求婚後の後日談ということで、ラブコメ風のノベルとなりました。
 楽しんで読んでいただければ、幸いです。
白銀のパーティノベル -
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ファナティックブラッド
2016年07月11日

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