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『●彼と彼女の出会い 』
紫 征四郎aa0076

「ふおおお……! すごいです……すごく、おおきい……」

 食い入るように見つめるのは、黒光りする巨大なアレ。と、背中に声がかかる。

「はしゃぎすぎだ。んな近くで見てたら、目ェ悪くなんぞ」
「だって、これは、征四郎のえきしょうてれびなんですよ……!」

 せんじつ、征四郎と相棒がエージェントになって、二度目の給料がでました。
 それで購入したのが、この液晶テレビなのです!

「全く、ニュース如きで……」
「たのしいのです! 征四郎のえきしょうてれび!」
「一体何がそんな夢中に――うおっ! テレサさん! テレサさんじゃないですか!」

 コメンテーターとして出演していた会長のビジンな娘さんを見るや、彼も眼の色をかえて。

「あうっ?! み、見えないのです……征四郎にも見せてください!」
「ダメですぅ〜〜子供は寝る時間ですぅ〜〜。もう寝ないと、明日の朝起きられなくなるぞ」

 ……征四郎はリビングから追い払われてしまいました。ひどいのです!

「うう……征四郎も、もっとてれびを見ていたいのです……」

 しぶしぶジブンの部屋へ入りましたが、征四郎はまだ諦められません。

「かくなる上は……」

 征四郎は、彼が寝静まるまで待つことにしました。
 でも、ああ言っていた割に、リビングから漏れる音はなかなか止まりません。
 番組はバラエティーに移り替わったようで、笑い声も聞こえてきます。時計の針が12時を指すころ、漸く彼の寝る気配がしました。

「もう。なんだかんだ言って、結構たのしんでいるじゃないですか……でも、征四郎も!」

 深夜、いつものリビングは酷く静かです。今までは、これが日常でした。
 同居人と入れ替わりにテレビの前に座り、リモコンのスイッチを入れてみます。――途端に話し声が静寂に響き渡ったので、征四郎は慌てて音量をぐっと下げました。寝室に聞こえてしまったら、怒られてしまいます。

「あわわ……すこし、ちいさくしすぎてしまったのです」

 ぽちぽちとボタンを押して、音量を上げてゆき、そして……征四郎は、少しずつ耳に捉えられてゆく歌声に、そのまま聞き惚れてしまいました。
 画面の中では、歌番組で、とあるアイドルのミニコンサートの中継が行われていました。煌びやかな光、高らかな声、ライブで踊る様はとても格好良くって――

「すごい……のです」

 何より、こちらまで心が温かくなるような、その笑顔に心惹かれました。

「て……ん……か……の……てん、かの」

 液晶の端に書かれている、覚えたばかりのアルファベットを指先でなぞります。……そのアイドルは、TENKANOというらしいです。

『♪ 貴方との日々を守る為なら 私は悪魔にもなれる』
『♪ 犠牲なんて悲しい事を言わないで
 だから頷いて それだけが My wish』
「……」

 征四郎は、そうして外が白むまで、テレビに釘付けになっていました。
 ――かくして『天宮すみよし』のファンになったのは、去年の秋の事です。

「あ゛っ! 征四郎〜〜……また勝手にカゴん中にテレビ誌を入れたな?」
「フフ。すきありー、なのですよ♪」

 ふー。今週も、無事に雑誌をゲットしました。いまはテンちゃんの主演ドラマも佳境ですし、連載もあるので、毎週チェックしているのです。

「ええと、今週は……『テン×ナツ』最終回ですね!
 今回の夏の思い出は、コンサートですか! 今年の夏のコンサートも近いですからね!」

 ――Q.初めての国立コンサートは夏でしたが、そこで印象に残った事は?
 ――A.俺は今、神に近い存在だなって思ったよ。(笑)
  だって何万人もの人が、同じ場所、同じ時間、同じモノを見て、同じ表情――笑顔ね? を、浮かべているんだから。
  その中心に俺がいるって事が、なんだろう……スゴク客観的に俯瞰できちゃってさ。
  俺はぜんぜん特別な存在じゃないけど、それでも、みんなを笑顔にする事ができるんだなって思った。ていうか、あの空間では、普通の人間にできない事ができるようになる。
  あれ、神の御業だと思うよ、多分。俺は無神論者だけどね!(笑)

「うーん……ショウジキ、テンちゃんの言うことはムズカシくてよくわからないのです」

 ――笑顔ってさ、幸福だから自然と出るかっていうと、そうじゃないんだ。
  あれはホント、スイッチみたいなものだから。連勤明けに疲れ切って泥のように眠って、起きてテレビ付けてアハハって笑って、その瞬間にああ、今日休みだなぁって実感したりするでしょ? ああいうコトなのよ。
  俺はね、アイドルっていう仕事は、誰かが幸福を感じるスイッチを押す仕事だと思ってる。
  だから、どういう理由でもいいから、みんな俺を見て笑って?(笑)

 ……テンちゃんのこと、まだまだぜんぶはリカイできない気がしています。それでも征四郎は、テンちゃんの笑顔を見ると、自然と顔がほころぶのです。
 インタビュー生地の見開き、大きな写真にはどれも、にこっと笑った彼の姿があります。征四郎はハサミを出してきて、写真のフチに刃を沿わせました。
 おとなのお姉さんはでまち? とか、もっと近くでテンちゃんを見る方法もあるそうですが、小学生の征四郎には雑誌の切り抜きをスクラップするのが精いっぱいです。

「そうだ! テンちゃんの新曲、練習しないと……じょうずに弾けるようになったら、みんなに見せるのですっ♪」

 クリスマスにサンタさんに貰ったキーボードで、今はテンちゃんの曲を練習しています。後ろでそれを見ていた英雄が、征四郎の背中に言いました。

「……慎ましいファンライフだこと」
「いつか、本物にも会ってみたいですよ!
 ……アイドルは無理だけれど、征四郎も……こんな風に人を元気にできたら、ステキなのです」

 ふふ、と笑うと、彼もつられたようにフッと吐息で笑いました。
 やっぱりきっと、わらうかどにはふくきたる、のです!

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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・紫 征四郎(aa0076)
  紫家の第四子。幸せな日常を守る為に戦うちびっ子エージェント。

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております。長い時間お待たせしてしまい、申し訳ございません。
紫さんの日常に天宮がこのように関わっていけるなんて、感激の極みです。アイドル的側面を見たいとありましたので、蛇足かとも思いましたが、少しバックボーンも盛り込んでおります。実力の限りを尽くして、あとは少しでも期待に近い成果物である事を祈るばかりです。
なにかございましたらリテイク等お申し付け下さい。この度は清水澄良にご縁を賜り、誠にありがとうございました。
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2016年07月12日

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