『＊GIRL'S TALK＊ 』

エステル・クレティエ（ka3783）＆アルカ・ブラックウェル（ka0790）＆ルナ・レンフィールド（ka1565）

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　偶には友達と美味しいケーキでお茶してお話したい！
　そんなエステルの希望が切欠で、乙女達は麗らかな休日に集まった。


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「ここがギアンの店かぁ……とっても素敵！」
　アルカ・ブラックウェル（ka0790）がきらきらした瑠璃色の瞳を輝かせ、パステルカラーの薔薇の庭園をテラス越しに見渡しながらうっとりする。
　此処は、最近洋菓子作りに嵌り始めたというギアン・アナスタージ（kz0165）の小さな洋菓子店。華やかで麗しく、そして美しい眺めの景観に――エステル・クレティエ（ka3783）もこくりと頷いた。
「ええ、とても。かわいらしいお庭ですね」
「……言っておくが我輩の趣味ではないぞ」
「あ、ギアンさん」
　エステルが視線を遣ると、オーダーを伺いに来たギアンが少々拗ねたような顔をしていた。元々いつも仏頂面な人物なので、その表情は普段とあまり変化がないように見えるかもしれないが、ロザリーナ・アナスタージ（kz0138）曰く、彼は中性的な童顔がコンプレックスであるらしく……たとえ褒め言葉だったとしても（身の回りを含め）可愛いと言われると十中八九拗ねちゃうようになってしまったのだとか。
「庭はロザリーナの趣味だ。だから決して我輩の趣味が可愛いという訳では……、」「ふふふ。ギアンったら拗ねちゃって〜」「拗ねてなどない」
　そう言いながらもギアンは明らかに拗ねているが、ある意味仲良さげな姉弟のやりとりに、ルナ・レンフィールド（ka1565）は、あははと笑う。
　するとその控えめな微笑みに気が付いたギアンは少々恥ずかしそうにしながら、この場を仕切り直した。
「……見苦しいところをお見せしたな。さて、何を注文する？」
「えっと、ギアンさんのオススメや新作のケーキを是非」
「私もエステルちゃんと同じで、ギアンさんのお任せにします」
「ボクは、果物や食用花使ったケーキが良いな！」
「私はローズケーキ！」
「――承知した。少し待っていてくれ」
　ギアンは料理界の彗星という異名を同盟で轟かせる程にはそこそこ有名な料理人だ。そんな彼が意欲的に製作するケーキとはどんなものだろうか。楽しみだなぁと思いつつ。
「女子会、嬉しいなー♪」
　と、アルカが笑顔の花を咲かせ、エステルとルナは互いの顔を見合わせて微笑みを浮かべた。
　歳の近い友達同士である三人は、とても仲良しだ。
　だが今迄はこうしてお茶をする機会がなかなか得られず――今日の女子会を皆、楽しみにしていた。
　そしてロザリーナにとっても、彼女達からの招待は心から嬉しくて。
「私のことも誘ってくれてありがとね♪　本当に嬉しいのよ♪」
　３人の可愛い友人達に親愛を込めて、感謝の気持ちを伝えた。
　想えば、ロザリーナが彼女達と初めて出会ったのは去年の秋頃にジェオルジで催されたフェリチタ村の収穫祭の日。
　あの日からずっと彼女達が紡ぐ音楽に、惚れ込んでいる。
「あの時、お昼の演奏もしようってルナちゃんが発案してくれたのよね。エステルちゃんとルナちゃんの演奏も、アルカちゃんの歌も……。本当に素敵だったわ」
　収穫祭での音色に想いを馳せながら、また、彼女達の音楽が聴きたいなぁと思っていると――。
「待たせたな」
　皆が注文したケーキをギアンはテーブルに並べていく。
　美味しそうで甘く淡い色の、それぞれの花をモチーフにしたケーキ。その数々は、見るだけでも十分楽しめる。
「わぁ、美味しそう！　可愛――」「・・・」「――……じゃなくて！　すっごく綺麗だね！　うん！」
　そして思わず可愛いと言いかけそうになったが、何とか誤魔化すアルカ。
　ギアンは半目のまま手が止まっていたが、彼女が言い直して『綺麗』という言葉を使うと、何事も無かったかのように再開する。
（（ケーキも駄目なんだ……））
　その光景を見てエステルとルナは、そんなに可愛いって言われたくないんだなぁというギアンの性質の一面を想い知っていただろう。
「このチョコレートソースの音符や音楽記号も、もしかしてギアンさんが？」
　そしてルナが皆それぞれのプレートに、華やかな装飾のように描かれている色とりどりのチョコレートソースを見て首を傾げた。
「ああ。エステル殿が君達に書いて欲しいと言うのでな」
「ぎ、ギアンさん……っ」
「確か音楽は君達を繋ぐ共通の趣味なのだろう？　だからこそ、そうリクエストをしたのだろうな。あくまで我輩の推測だが」
「そうだったんだね。ありがとうっ、エステルちゃん」
「嬉しいよ、エステル！」
　ルナとアルカがエステルに、満面の微笑みを向けた。
　それはとても嬉しい事だけれど――。エステルは少々恥ずかしくなってきつつ、頬を染めてやや俯いた。
「ギアン、サプライズなのにそこまで話しちゃうのは良くないんじゃないかしら……？」
　折角のエステルのサプライズを筒抜けに話してしまった弟に、ロザリーナが小声でこっそり注意する。
「…？　よくわからないのだが、アルカ殿もルナ殿も喜んでいるようだし、良いのではないか？」
「良くないわよぉっ」
「ほう…そういうものなのか…？　我輩にはさっぱりだが、まあ、ともわれゆっくりしていってくれ。また何かあれば呼ぶといい」
　そうして結局あっけらかんとしながら立ち去っていくギアンの背中を見つめ、ロザリーナは溜息を漏らす。
　ギアンくんはあまり空気が読めない子である。
「それじゃあえっと、ケーキも運ばれてきたことですし、頂きましょうか」
　ルナが両手を重ね合わせ、微笑みながら提案した。
　それにアルカもこくこくと頷く。
「そうだね♪　いただきまーす！」
　フォークで刺して、しっとりと柔らかいクリームとスポンジを乗せ、口まで運ぶ。斯くしてそのケーキのお味は――。
「「「美味しい……！」」」
　エステル、アルカ、ルナが声を揃えて絶賛するほど美味しかっただろう。
「ほっぺたがとろけそう」
　さっきは思いがけずギアンのサプライズばらしで照れさせらていたエステルも、繊細な甘い味わいに至福を感じている。
　料理界の彗星と呼ばれているだけあって、スイーツ作りも腕は確かだったようだ。
　――そんな時。
　お店に、とあるお客様が来店した。
　エステル、アルカ、ルナの角度からは、そのお客様の顔を見る事は出来なかっただろう。けれど実はそのお客様は、ギアンにとって大切な人物だったようで。
　ただ一人、顔を覗くことができたロザリーナは、ぽつりと零す。
「恋、かぁ」
　なんとも意味深なフレーズを吐くロザリーナ。３人はきょと、と不思議そうな顔をしていると、突然、彼女は問い掛ける。
「ねぇ、恋バナしない？」
　その言葉はあまりにも唐突で。
「恋バナ……ですか？」
　ルナは首を傾げた。
「そうそう。ほら、恋バナしてると女子会って感じもするしっ」
「そう言われてみればそう……かも？」
　なんていう反応をルナが示せば、ロザリーナは決まりね、と微笑んだ。
　そしてエステルは恋バナで定番の話題と言ったら……と考え、
「ルナさんは、好きな人って居ますか……？（とかかな？）」
　と、話を振ってみる。
「え、私？　うーん」
　ルナはそう尋ねられても、初めはパッとしていなかった。けれどふと頭に浮かんできた顔は――。
「あ。ルナ、顔が赤くなってる！」
「この反応……さては好きな人がいるわね？」
「えっ…！？」
　アルカとロザリーナに指摘されたルナは焦りを覚え、エステルと目が合うと余計に心臓がばくばくした。
（私いま、親友のお兄さんの顔を……）
　ルナは新緑色の風のように穏やかな微笑みを浮かべる青年――エステルの兄を意識している様子だが、
（って！　べ、別に好きとかそういうんじゃなくて！　素敵だなって思うけど……）
　――どうやらまだ、自分の気持ちに分からないところもあるようで。
「わ、私はそういうのは無いかな〜」
　ルナは、あは、と笑う。
　けれどみんなの注目を浴びているうちに段々縮こまっていって……。
「気になる人はいる、けど」
　ぽつりと紡いだ言葉に、エステル、アルカ、ロザリーナは互いの顔を見合わせて微笑んだ。
　ゆえにルナは頬を染めたままだ。
「それよりも！　この前楽器屋さんで素敵な楽器を見掛けたんですよ！」
「うふふ。話を逸らしたいのねっ、可愛い♪」
「う……っ。で、でも、素敵な楽器を見付けたというのは本当で――」
　ロザリーナにきゅんきゅんされるルナ。
　そんな彼女を見て、ふふ、とエステルは微笑んだ。
「ルナさんは楽器が本当に大好きですからね」
　紡ぐ音は世界に融けてゆく――ルナの音楽への愛はとても深く、とても温かい。
「だからルナさんにとっては楽器は音楽かなって、想うんです。私はこの子が相棒だから、よく分かります」
　そしてエステルは、フルートを撫でた。
　フルートは彼女にとって色んな思い出を共にしてきた、大切な存在。

「でも恋人なら一番を決めないとですよね」
　――いつかルナにも、恋人が出来る日が来るだろう。
　そんなふうに思いながら、
「う、うん……」
　照れている親友を微笑ましく見守っていた。

「アルカちゃんは好きな人はいるの？」
　と、ルナが訊ねると……。
「今は居ないよ」
　アルカはあっけらかんに即答した。
　……と言うのも。
「結婚も家が決めた人のところに嫁ぐんじゃないかな」
　アルカはブラックウェル家を大事にし、そして己の立場をよく自覚していたからだ。
　ゆえに彼女は恋愛に対して、自由や、同じ年頃の女の子が抱くような甘い夢を期待してはいない。
　……それに。
「ボクの初恋は実らなかった。いや、そもそも許される恋じゃなかったんだ」
　アルカが兄の元へ嫁げないと知り失恋した日――もしかしたら――その日の棘が今も刺さったままなのかもしれないなぁ、と。
「うーんなんていうのかな。ボクは新しい恋とか、そういうのを今は考えられないなぁ。なんて」
「アルカちゃん……」
　――話を聞いていたロザリーナは想った。その真実はアルカ本人に聞かなければ、分からない事だけれど。
　そしてエステルは、そっとアルカに微笑む。
「恋ってね。流れ星の様に降って来ることがあるんですって」
　夜の大空に駆ける星はふとした瞬間に突然巡り逢えるもの――アルカの恋だって、きっと。
　ルナもエステルに同意して、頷いた。
「うん。ある日突然湧いてくる気がします。だから、自然でいいんじゃないかな？」
「そういうものなのかなぁ」
　考えるアルカに、エステルは言った。
「きっとそういうものだと思います。何時か、位の気持ちでいいんです。ロザリーナさんもそう想いますよね？」
「うん！　私もそう思うわ。それに、恋はとっても楽しいのよ。私も商家の娘だから、アルカちゃんの立場の気持ちもよく分かるんだけれど、ね……。でも私はアルカちゃんに、また恋の幸せを知ってほしいなぁ。だって、周りの人にとても愛されている子なんだもの」
　幸せになってほしいと願いを込めて、ロザリーナは微笑みを浮かべた。
「――あの、やっぱりロザリーナさんって恋愛経験は豊富なんですか？」
「えっ」
　ロザリーナはエステルに問い掛けられると、どきっとした。
　エステルの瞳がキラキラと期待の眼差しで輝いている――ロザリーナに大人の女性というイメージを抱き、アドバイスや体験談を期待している目だ。
「え、えーっと……」
　しかしエステルのイメージとは裏腹に、ロザリーナは動揺を始めた。
　そしてどうしようと迷った後、正直に観念して白状する。
「ごめんなさい……私、ミーハーだから恋は沢山するんだけどね。実は交際をしたことは無いの……」
「そうなんですか？」
　ロザリーナは恥ずかしそうに静かにこくりと頷く。
「言い訳のように聞こえるかもしれないけれど、私は皆の事が大好きなの。大好きな友達といっぱい遊びながら、人の為、そして仕事の為、同盟の為に身も心も捧げたいわ。恋愛よりも先に、やり遂げたい事がいっぱいあるの……」
　そうぽつりと話すと、アルカが首を傾げる。
「ボクのお兄ちゃんの事はどう想ってるのか聞いてもいい？」
「ええ、彼も大好きよ。まだ知らない所はお互い沢山あると思うから、これからももっと仲良くしていきたいわ。勿論、アルカちゃんともね♪」
　ロザリーナは心から願っていた。
　彼とアルカと、ずっと仲の良い間柄で在りたい、と。

「さっ、今度はエステルちゃんの番なんじゃない？」
「……！」
　ロザリーナがうふふとにやけながら訊ねると、エステルは頬を赤くした。そして俯きながら、言葉を紡ぐ――。
「……私、兄と同じ年の幼馴染がいるんですが、昔の様に普通にお話、出来なくて。きっと変な子に想われて……うう」
　真っ赤になりながら告白するエステルの様子に、（か……可愛いっっっ！）、とロザリーナはときめきが止まらない。
「好きな曲を演奏している時を想い浮かべながらお話しするとか？　そうするとリラックスしてお話できるかも」
「ボクは逆に無理に自然体にならなくても、心のまま、そのままでも全然良いと思うな！」
　ルナとアルカはアドバイスしながら、エステルにエールを送る。
　大切な友達の恋が叶いますように。
　――そんなふうにきゃっきゃとガールズトークで盛り上がっていたら……。
「女は恋の話が好きだなぁ」
「「ギアンさん？」」「ギアン？」
　エステル、アルカ、ルナが口を揃えた。空気の読めない子登場なのである。
「ちょっと……っ、今女子会中なのよっ。女子会は男子禁制なんだか――」「安心せよ、我輩は邪魔をしにきたのではない。差し入れを持ってきたのだ」「差し入れ？」
　ロザリーナが首を傾げる。そうしてギアンがテーブルに置いたのは……。
「「「！」」」
　――おしゃれなマカロンタワーだ！
「来店してくれたサービスだ。良ければ食べてくれ」
　パステルカラーのマカロンに、やわらかなホイップ。アラザンを散らし、薔薇とリボンを飾ったそのタワー。きっと見れば誰だって、おもわずあのワードを言いたくなってしまう筈だ。
「「「か……」」」
　しかし、三人はハッとして。
「――す、すごいです。とても芸術的で……。ね、アルカさん」
「――う、うん！　さすが料理界の彗星だね！　ルナもそう思うでしょ？」
「――ほ、本当っ。“綺麗”ですよ」
　そのワードをぐっと飲み込み、別の言葉で言い直す。
「・・・」
「うふふふ」
　ギアンはまた拗ねてしまったようだが、ロザリーナの笑い声が思わず漏れる。
　そしてつられるように、三人も楽しそうに微笑んでいた。



　***　乙女達の女子会はまだまだこれから　***



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3783／エステル・クレティエ／女性／16／恋する綺羅星】
【ka0790／アルカ・ブラックウェル／女性／16／愛される太陽】
【ka1565／ルナ・レンフィールド／女性／16／緑の風を想う音】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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　たいへんお待たせ致しました……！
　こんにちは、瑞木雫です。
　エステルちゃんとアルカちゃんとルナちゃんの女子会を描く機会をくださり、本当にありがとうございましたー！　とても楽しかったです！
　皆さんの恋心や恋愛観にきゅんとときめいておりましたが、イメージ通りに表現できているでしょうか。あとＮＰＣが少し絡みにいきすぎてないか等も気になりつつ、ドキドキしておりますが、もしイメージと違っていたりなどしましたら、遠慮なくおっしゃってください……っ。
　御発注ありがとうございました！！

■ＷＴアナザーストーリーノベル（特別編）■

瑞木雫

ファナティックブラッド

2016年07月14日