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『 ワールドダイバー  』
Arcard Flawlessaa1024)&Iria Hunteraa1024hero001

第一章 物語の始まり

 ジェットパックの加速に耐えながら、燃料切れまでのカウントを胸の内でする。
 その間、白銀の機体はカタカタと小刻みにゆれながら、かかるGと空気圧に耐えた。
 5.4。
 スイッチをいくつか押しランプを確認、蒸発するように消えうせる燃料メーターを見つめていると、企業の金を湯水のように使っている、何とも落ち着かない気分になる。
 気持ちいいような、大丈夫なのか? 不安になるような感覚である。
 3.2。
「そろそろ目標を視認できる距離だ。見えるか? アルファ2」
 1。
 そして強くレバーを倒すと、わずかな衝撃と共に巨大なジェットパックブースターが根元から切断され。機体は空中に投げ捨てられる。
 投げ捨てられるように機体が自由落下を始める、その加速度を殺すために歯をくいしばって耐える。
 そしてある程度の加速度を消費したところで翼を展開。
 全力でエンジンをふかして、白銀の機体は空を舞う。
「ああ、ボクの目にもきちんとみえている。なんだいあれ」
 そう白銀の機体は旋回し、隊列に加わる。
 そして、問題のそれを見下ろした。
「大きいな……」
 超巨大人型ロボットが六機、砂漠の中心に着陸し、一定の距離を保ちながら疾走し、周辺の空間データを集めていく。
「そんなに急いで調査をする必要があった?」
「なんでも、渦の中心からよくわからないエネルギー反応があるらしい。もしかするともしかするぞ」
「ふーん」
 そう六機の人型兵器たちは、直径十キロに及ぶ巨大な黒い渦の周りを旋回する。
 まるでアリジゴクだな。そう『彼女』が思った時。
 異変は起こった。
 けたたましく鳴り響くアラート、そして渦の中心から紫色のイカヅチがほとばしり、砂漠に風穴を開けていく。
「何が起こってるんだ!」
 混乱する隊長機、直後聞こえたのは、隊長の悲鳴だった。
「うあああああああ!」
「アルファ1、どうした! 何が起こった」 
 見れば、彼の機体がなぜか黒い渦に吸い寄せられていく。
「アルファ1、応答してくれ! アルファ1」
 その時だ。
 突如、同じ異変がその機体にも起きた。
「コントロールが全く聞かない」
 その上、無線機から妙な雑音が聞こえてくる、まるで人の声のような、機械音のような何とも言えない音が響き、まるで操られるように渦の中へ。
「く、脱出もできない、何だこれ」
 レバーもスイッチもなにも反応がない。
 そして……
「くそ……」 
 その機体は、黒い渦にのみこまれてしまった

第二章 異世界

 『Arcard Flawless(aa1024) 』が目覚めると、そこは森だった。
「ここは、天国かな? なんて……」
 お決まりのセリフをぽつりとつぶやく、しかし実際は天国に来たとしか思えないほどに環境が一変している。
 先ほどまでArcardは砂漠のど真ん中で人型兵器に乗っていたはずだ。
 それだけではない。
 スーツにメットに最新の装備でかためたはずなのに今ではほとんど私服で外に放り出されている。
「久しぶりによく寝たな」
 そう言いつつ髪に張り付いた葉を手のひらにのせる。あまり大きくなく薄い。
「あとは日差しの感じからして熱帯地域ではないけど、草木はげんき、水は豊富な地域なのかな。もしくは人によって整備されている区画……」
 さらにArcardは地面をなめるように調べる。背の低い植物に、土は腐葉土。足跡などは特になく。地面に耳を当てても何も聞こえない。
「近くに生命体の気配はないね……」
 とりあえず、ひとまずの安心は得たわけだが、状況は何も好転していない。
「とりあえず、セオリー通りに行くなら水源を探すことだけど」
 そう物思いにふけりながらArcardは歩き始めた。
「傾斜にもなっていないから、川を探すのも難しいし……」
 風に乗って草木の青臭い匂いが香る。
「大体、この草木や鳥の鳴き声、元の世界であんまり見覚え聞き覚えがないんだけど、どういうこと?『黒い渦に立ち入ったら一面緑が生い茂ってました』ってか?」
 そう一人心地につぶやいてみても誰も答えてはくれない。
「……やれやれ、とにかく調査を続けるしかないか」
 そう歩いている間にArcardは黒い渦について考察を巡らせる。
 突如ジャックされた愛機、そして無線越しに聞こえた声。紫の雷。
 そして、あの渦の先がここに繋がっていたとしたら、ほかのメンバーは、そして日の高さからして、すでに一日以上が経過している。
 そうなると、救出するためのチームは?
「傭兵程度には派遣できない……かな? まぁ、上の言いそうなことだけど」
 そうArcardは歩きざまに木の枝を引っ張って、その枝についた小さな赤い実を見る。
「木の実や食べられる植物が豊富だね。小動物が多そうだけど」
 そう言いつつ地面に視線を下ろすと。
 そこに新しい発見をした。
 見たこともないヒトデのような足跡。それがまっすぐ森の奥に続いている。
 Arcardは息をひそめた。草木の陰に隠れて、ホルスターから拳銃を抜いた。
 薬室を確認。安全装置をはずし、サイトなどに歪みがないか確認する。
 そしてナイフの在り処を確認する。
 そして、足跡の続く先をじっと凝視する。
 するとやがて向こう側からがさがさと草木をかき分けて進んでくる影がある。
 敵を視認できたらすぐさま飛びかかろう、そう茂みの向こうを凝視すると
 そこから現れたのは、異形の化け物。
(なんだあれ……)
 まるで太古に生きていた恐竜のようだったが、体長は1.5メートル程度。
 目はあまりよくないのか、正面に立っても気づかない。
 であれば、黙ってやり過ごすべきだ、そうArcardは息をひそめる。
 しかし。一陣の風がふいた。
 それもArcardの背中から、化け物に向けて。
 その瞬間、異形の生物はArcardへと視線を向ける。そして、猛烈なスピードで駆けはじめた。
 まずい。そうArcardは直感的に判断
 飛んで、直情の木の枝につかまり、敵の攻撃を回避。それは弾丸のようなスピードで木々に激突すると、樹が一本折れた。
「うそだろ……」
 絶句するArcard。反射的に銃弾をお見舞いするが。
 三発ともはじかれた。
「特殊加工して貫通力を高めた銃弾だぞ!」
 次いでその化け物は二メートルほど跳躍、その鋭いかぎづめを振るうが。
 Arcardはそれをナイフでそらす。
 重たい一撃に腕がしびれる。
 これは敵うわけがないと即時判断したArcardはバックパックから手探りでスモークグレネードを取り出す。
「頼む。効いてくれ」
 そう、ピンを抜いてグレネードを投げると。あたりは真っ白な白煙に包まれた。

第三章 邂逅

 命からがら逃げだしたArcardは木の後ろに隠れてナイフを見やる、すると物の見事に刃がかけていた。
「あんな化け物観たことも聞いたこともないんだけど……」
 これも黒い渦の影響だろうか、それとも。
「本当に天国? もしくは」
 馬鹿らしい話だが別の世界ということも考えられる。
 そうArcardは冷や汗をぬぐって、バックパックの中身を漁る、そこには三日分の食事と水。そして弾倉の予備とスモークグレネードがもう一本あった。
「最低限か……。ボクの相棒はどこに行ってしまったのかな……」
 あの頼もしいメタリックな肌が恋しい。あの機体に装備されている武装であれば、あんなに小さい化け物一ひねりのはずなのだ。
「対物兵器を弾く生物ってなんなのさ」
 そう途方に暮れるArcard、しかしここでずっと怯えて隠れているわけにはいかない。
 そう立ってみると、木に小さな赤い実がなっている。ナイフで切ってみると断面が白く食べられそうだった。
 あまり得体のしれないものは食べたくなかったが。食料節約のためには仕方ないだろう。
 そうとりあえず持てるだけ木の実を持っていこうと唐突なフルーツ狩りがはじまる。
 しかしその時である。
「なんだ!!」
 樹を揺らす音でArcardは振り返る。
 しかしその反応でさえ遅かった。
 後ろから駆けてきた何者かはArcardの手に食らいつき。はじかれるように茂みの中へ。
「追っ手か!」
 Arcardは無駄だとわかっていながら銃を構える。そのせいで両腕に抱えられていた木の実は地面に転がることになる。
「えう!」
 しかしその追っ手はArcardに攻撃を仕掛けてくることはなかった。
 代わりに地面に落ちた果物に反応し、それをかき集めはじめる。
「な、何だおまえ……」
 そのちいさな背中をつまみあげると。
 それは猫耳を生やした幼女だった。
「あう!」
 そう、猫耳娘はArcardの額をぺチンと叩くと木の実をかじり始める。
「えう?」
「君はボクを襲わないのか?」
「うなう?」
「それは、耳かな?」
「えうえう」
「君は人間なのか?」
「がうがう」
「うーん、よくわからない」
 言葉が通じない、いや、そもそもこの生物は人間なのだろうか。
 その後しばらくArcardは猫娘と会話を試みたが、全く通じず、それどころかなぜか好かれてしまったようで、猫耳娘はArcardの首に絡みついたまま離れなくなってしまった。
「よく甘えるもんだ。君みたく、人生《好きに楽しむ》ことができればなー」
 そう言いつつ抵抗を続けるArcardだったが、彼女が指をさす方向に漠然と歩くと水源を発見できたので、連れて行く価値はあると踏んだのだ。
 しかし問題だったのは。その水源の周りに、あのヒトデ型の足跡があったこと。
「げ……」
 そして水を補充している間に、茂みの向こうから敵の気配を感じたこと。
「君は下がってて…………って。いない!」
 Arcardの手は空を切る。
 Arcardは猫娘を適当なところで下して、時間を稼ごうと思ったが猫娘が消えている。それこそ煙のように。
 一瞬混乱する頭、そして、その出来事に意識をとられるあまり、敵化け物の突撃をゆるしてしまう。
 ぶもおおおおおおおおお。
 低い声を響かせて突撃してくる謎生命体。
 その直撃は免れたが、避けるために地面を転がったArcardの上にその化け物がのしかかる。
 化物の涎がダパダパと顔にかかった
「息が臭いっての」
 そう膝で敵をおしあげてなんとか振りほどくことに成功。
 代わりに馬乗りになって動きを封じることができた。 
 そのあとは無我夢中だった、体に染みついた暴力の方程式に従って、体が的確なストレートを放っていた。
 何度も、何度も、それこそ、その生物が絶命するまで。
 そしてArcardは頬についた血をぬぐう。こと切れたそれを見下ろして自分に言った。
「とりあえずここから離れよう」
 血の匂いで別の化け物が集まってくるかもしれない。そうArcardが取り落したナイフを拾うと、服の袖を引っ張る感触が。
 それに従って視線をずらすと、そこに猫娘がいた。
「あうあう」
「どこに行ってたんだよ、戦闘だけ任せてとんずらって、いい度胸……は? 共鳴」
 そこでArcardは気が付く。
(あれ? この子の言葉が理解できるようになってる)

第四章 物語の始まり

「えう!」
 カンペには、よくわかるリンブレ講座と書かれている
「は? リンブレ?」
 まったく状況が読み込めていないArcardだが、移動しながらであれば彼女のよくわからない話に耳を傾けてもいいかなと思った。
「あうあう」
「ああ、なるほど。霊力……」
「えう! がうがう!」
「え! じゃあ僕のいた世界とは全く別の世界?」
 共鳴をしたおかげだろうか、言葉が通じるようになった猫耳娘の話をまとめるとこうだ。
 ここは世界蝕が起こった世界で様々な世界から英雄、愚神が流入してくる世界。
 だとすれば。ここはそもそもArcardの元いた世界ではないようだ。
「まいったな、元の世界に帰らないといけないんだけど」
「えうえう」
「帰るための方法? わからない……。探さないといけないな」
「あうがう」
「だったら、とりあえず麓に降りろって?」
 麓って言われても、そうArcardが目の前の樹の葉を叩き落とすと。
 切り立った崖に行きあたった見晴のいい風景が広がっていた。
 町だ、町が見える。
 その町の中心に巨大な建物が見えた、H.O.P.E.と掲げられている。
「あうあう」
「あそこなら、傭兵もできるって? リンカーは足りてないんだね」
 そう少女の言葉を受けてフムと考え込むArcard。
「仕方ない情報も物資も足りてないんだ、ひとまずあそこにお世話になるか……」
 コクコクとうなづく猫耳少女
「ところで君はなんていうの?」
 そこでやっとArcardは彼女に名乗っていないことに気が付いた。
「ボクは」
「あうあう」
『Iria Hunter(aa1024hero001) 』とArcardはその日から契約を結んだ。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『Arcard Flawless(aa1024) 』
『Iria Hunter(aa1024hero001) 』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度はOMCノベル、ご注文いただきありがとうございます。
 鳴海です。いつもお世話になっております。
 今回はArcardさんが異世界からこちらにやってきたときのお話。そして契約を結ぶ話ということで気合を入れて書かせていただきました。
 そして、Arcardさんのもといた世界の描写を、とてもロボットな感じにしてしまったのですが、これでよかったのだろうかという不安がちょっとあります。
 あまりにまんま、ストレートすぎるのではないかなぁと。
 さて、今回は本編が長くなっているので、このあたりで。
 次は遙華の依頼ですね。彼女のことをよろしくお願いします。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
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リンクブレイブ
2016年07月20日

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