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『ファントムペイン 』
世良 霧人aa3803)&世良 杏奈aa3447


●プロローグ

 失った右目がうずく。
 熱く脈動するように痛みを発し、まるで暴れ出しそこから目玉が出ていきそうな、そんな痛みが時々彼を苛む。
 しかしそれは幻覚。失ってしまったはずの目玉が痛むことは本来、ありえないのだ。
 それなのに、時々この目は痛み、感覚を有し。いつか見た光景を脳裏に送りつけてくることがある。
「ああ、そうだ。あの時の記憶を僕はあと何度見るんだろう」
 そう霧人はベットから体を起こして右目に触れる。
 その目はかつてを映し続け。『世良 霧人(aa3803) 』の眼前にいつだって突きつけてくる。
 それは眠っている間は特に起こりやすい。あのころを特に強く、まるで焼き付いたネガのように、何度も何度も再生する。
 それは毎回、夕暮れから夜の闇が下りるまでの短い物語。
 今でもあの時の空気と、陽の眩しさは覚えている。
 その思い出はいつも、二人が出会ったその日から始まる。
 
● 遠い日

 遠く離れた小学校の鐘の音が高く響く。それは部活終了の合図であり、学生は本格的に学校から出なければならないという合図。
 その鐘の音がひびくといつも彼女が姿を見せる。
 赤いワンピースに、赤いランドセル。『世良 杏奈(aa3447) 』は赤が好きなようだ。
 何かしらの赤を身に着け。おかげで霧人は遠くからでも彼女が判別できる。
「杏奈ちゃん。今日も来たんだね」
 そう霧人が手を振ると元気に駆け寄ってくる彼女がうれしくて。
 思わず霧人の頬はほころんだ
「きりにい。こんにちわ。学校はどうだった?」
 そう二人でブランコに並んでは、たいてい話をした。
 学校で起きた他愛もないことを彼女は話してくれて、霧人はそれをずっと聞いている。
 そんな穏やかな時間がとても大切で。
「あ、そうだきりにい。前に借りた本だよ。とっても面白かった」
 そうランドセルから飛び出したのは重厚なカバーの分厚い本だった。
 それを霧人は若干引き気味に受け取る。
「本当に全部読んだの?」
「うん! すごく面白かった」
 これは、彼女が読みたいと言ったので、市内四つある図書館を全て練り歩いて探し出した本で。
 中身は、冒涜的な神々の伝承や考察についてがずらずらとかかれている物だった。
「次はどんな本を読もうかな?」
 この格闘少女杏奈だが、最初の肉弾戦の印象が強すぎて誰しも体育会系少女だと思っただろう。
 だがその予想に反して、頭の切れる子供だった。
 特にこの手の本に目がないらしく、大人が頭を抱えたくなるような文章の束もぺろりと平らげる、将来有望な少女である。
「次は普通の物語とか読んでみない?」
「うーん、きりにいがおすすめするのなら読みたいかも」
 そう言われると霧人は少し考え、鞄に入っている本を一冊手渡した。
「ありがとう、きりにい」
「ねえ、杏奈ちゃん」
 霧人ははしゃぐ杏奈を見ながら、少し声を落して言う。
「すこし、聞いてもいい?」
「うん、どうしたの?」
 そう霧人の目をまっすぐ見つめる杏奈。
 その杏奈の目から視線をそらして、霧人は唇に指を当てた。
 裏側が切れているのだ。
 杏奈のおかげでしばらくの間、いじめグループから距離を置かれていたが。
 学校内であれば報復の心配はないとわかったらしく、今日いじめは再開された。
 その結果口の中をきったというわけだ。
 だから、久しぶりに霧人の心の中には暗い感情が渦巻いていた。
「何で、僕に優しくしてくれるの?」
「え?」
 杏奈は首をかしげた。心底、彼がなぜそんなことを言うか分からない。
 そう言う顔で。
「他の人に優しくするのは当たり前だよ?」
「何で、僕に優しくしてくれるの?」
「虐められてるのを見て放っておけなかったから……。どうしたのきりにい。なんでそんなこときくの?」
 言えない。
 そう霧人は歯噛みする。
 自分が学校でいじめられているなんて言えない。
 言ったら彼女はどう思うだろうか。いや、どう思うかなんて関係ない。
 自分が、それを口にすることが耐えられない。
「杏奈ちゃんはいつもそうなのかって思って」
「うん! お母さんとお父さんにそうしなさいって言われているの」
「……そう、いいお父さんとお母さんだね」
 そう霧人は言う、しかし心にフワッと舞った感情を見逃しはしなかった。
 それを何と呼ぶのかはわからない。けれど。いても立ってもいられない、そんな気持ちになった。
「大丈夫? 調子悪いの?」
 そう杏奈は霧人の顔を覗き込む。
 けれど霧人は首をふった。
「違うよ」
 あわてて霧人は話題を変える。彼女に自分の心を気取られないように明るいもの。
 そう記憶の糸を手繰ると、ふっと霧人の脳裏によみがえる記憶。
 スカート翻しながら、男四人相手に立ち回る杏奈の姿。
「ねぇ……杏奈ちゃんて強すぎない?」
「お父さんに空手を習ってる。とっても強いんだよ! でもね、お母さんにはいつも負けちゃうんだよー」
 その時だった、頭上に一番星が輝いたことを確認した杏奈はブランコから降りる。
「もう時間だ……」
 そう残念そうに振り返って、杏奈は霧人に言った。
「うん、心配させない方がいいよ」
 そう霧人もいい。鞄を背負う。
「明日も会える?」
「うん、会えるよ」
 そう二人は指切りをして。公園を出た。
 霧人は左、杏奈は右。
 二人の道が、ここで別たれることを無念に思いながら、自分の家向けて二人は駆ける。
 
●エピローグ
 
 眠れない。
 霧人は体を起こす。
 失ったはずの場所が痛むその現象を、幻肢痛や幻想痛と呼ぶらしい。
 霧人の場合はまさにそれだった。
 『ここ』と心。
 まるで、欠けたパーツ自体が探してくれと自分を呼ぶように、時々訴えかけてくる。
「どうしたの?」
 そう、柔らかな手が背中にふれた。
 杏奈の手だ。
「痛むの?」
「うん、すこし」
 そう告げると杏奈は腰に手を回して、すり寄ってきた。
 そして、なぜだろう、彼女の体温を身近に感じると痛みは和らぐ。
「つらい時は言ってね」
「わかってる」
「本当よ? 約束ね」
「うん、約束」



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『世良 杏奈(aa3447) 』
『世良 霧人(aa3803) 』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。鳴海です。
 OMCご注文ありがとうございます!!
 今回は二人のお話第二弾ということで、日常の一こまを切り出すつもりで書かせていただきました。
 杏奈さんのキャラの濃さを少しでも前面に出せればなぁと思いながら書きました。
 霧人さんについては、イラストや設定など眺めながら、心の内をかいてみたのですがどうでしょう。
 お気に召しましたら幸いです。
 それでは、杏奈さんは次はビックボーナスステージか。邪英化シナリオか。
 どちらにせよ近いうちに、またお会いしましょう。
 それでは鳴海でした。
 ありがとうございました。
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2016年07月20日

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