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『輝く夏の空 』
笹山平介aa0342)&柳京香aa0342hero001)&賢木 守凪aa2548)&カミユaa2548hero001

●空が青くて
「流石に柳は待っていないな」
「当たり前でしょぉ、カミナ」
 待ち合わせ場所にはまだ柳京香(aa0342hero001)の姿はなく、賢木 守凪(aa2548)が無理もないかと漏らせば、カミユ(aa2548hero001)がくふくふ笑いながらそう返す。
「判っている! だから、流石に、と言っただろうが!」
「どうだかねぇ」
「貴様……」
「あ、来たみたいですよ?」
 守凪がカミユに反論しようとしたその時、真っ先に着替え終わって場所確保に動いていた笹山平介(aa0342)が合流し、やってきた京香に気づいて手を挙げた。
「普段より、ちょっと目立つわね」
 京香は周囲を見回し、そんな感想を漏らした。

 無理もない。
 ここは、海水浴場。
 お盆前で混雑はピークではないとは言え、今日は天気も良く、それなりに人はいる。
 男性3人、女性1人のグループは普段より目立ったとしても無理はない。
 それが、京香の意見だ。

「水着ですしね、普段より目立つかもしれませんから、移動しましょうか♪ パラソルで場所は確保してありますから、行きましょう♪」
「準備がいいのね」
 平介の笑みに京香は苦笑で応じた。
 この分だと日焼け対策だけでなく、水分補給や食事面の考慮もしっかり行っているだろう。
(完璧過ぎて、逆に不安になるわ)
 平介は微笑の奥に何を隠しているのか。
 守凪と共に先を歩く平介を見ながら、京香はそう思う。
「それにしても、いつもより視線が多いわね」
「いつも?」
「今日程じゃないわよ?」
 京香の呟きを拾ったカミユが京香へ問いを向けると、京香は軽く肩を竦めた。
「男の中に女が混じってるからかしらね。今日は特に水着だし」
「綺麗だしね」
 京香はカミユの言葉に思わず足を止めた。
 正に不意打ちの一言、嬉しいけど恥ずかしい褒め言葉だ。
 しかも、平介と守凪が少し先を歩いて会話の場にいないからか、カミユは本来の口調……つまり、揶揄する意図もなく、本心で言われているものなら尚更のこと。
 思わず、自分の水着を見た。
 浅瀬の青と白波を思わせるデザインのビキニに深海を思わせる蒼を重ね合わせたようなパレオは海水浴だし、と購入したものであったのだが、自身の身体には隠すつもりもないが傷が走っていて周囲の女性とはやはり違うので、褒め言葉の予想はしていなかったのに。
「? どうかした?」
「……いえ。そう言ってくれて、ありがとう」
 聞き返され、純粋にそう思って言ってくれていると気づいた京香は上手い返しも思いつかず、言葉少なく感謝だけ伝えた。
 平介が自分達を呼ぶ声に気づいた2人は、パラソルの下へと歩いていく。

●慣れぬ海
 平介が確保した場所は海からも海の家からも遠過ぎない絶好の場所だった。
「まず、何をしましょうか」
「海に少し入ってみたい」
 平介が笑みを向けると、守凪は逡巡の後そう返した。
 守凪は、海の中に入ったことはない。
 船に乗ることはあったとしても、海水浴はあの父親が許す筈もなく。
「私は荷物番してるわ」
「ボクもいいかなぁ。日焼けしたくないしぃ」
 京香に続いてカミユもそう言って、行ってらっしゃい、と手を振る。
 カミユのパーカーは平介、守凪のパーカーと同じで、濡れても問題ないものだ。サーフパンツを着用しているが、それはこの場所を考慮しているだけに過ぎず、肌を極力見せるつもりもなさそうだ。この辺りは守凪も同じなのだが。
 言った所で動くとも思えず、守凪は平介と共にまず海の中に入って見ることにした。
「意外に冷たくないんだな」
 太腿辺りまでの深さまで入ってみて、守凪は不思議そうに呟く。
 機械の足ではなく、自分の肌で海を実感しようと思って歩いて、こういうものかとちゃぷちゃぷしてみる。
「あまり冷たいと身体が冷えちゃいますし。足は……」
 平介が海の中に立つ足に目を落とす。
 『あの時』とは『違う足』……『大人』を信じなければ、違っていただろうか。
 言っても仕方ないことではあるのだけど、思わずにはいられない。
「海水でも問題ない。……が、海の中はこの辺でいい。それより──やりたいことがある」
「やりたいこと、ですか?」
 平介の沈黙を別の意味に受け取った守凪の言葉に平介は何だろうと首を傾げた。
 守凪は砂浜へ視線を向ける。
「サンドアートをやってみたい」
「あぁ、砂浜でお城作りですね♪」
「……そうとも言う」
 守凪はぷいっと顔を背けて、砂浜に向かって歩いていく。
 後ろを歩く平介は守凪の耳が赤いことに気づいて、それが微笑ましく、そして、在りし日を思い出して彼の背後でそっと笑みを零した。
 もし、あの時、信じないで探したら、どんな未来だっただろう?
「平介」
 守凪が足を止め、くるっと振り返った。
「大きいお城を作るぞ」
「……ええ。この砂浜で1番大きいお城を作りましょう♪」
 楽しそうな守凪に平介は笑った。
 彼には楽しいと思う時間を過ごしてほしい。
 それが、約束を守ることが出来なかった自分の償いであり、繰り返さない為の戒めだ。

「お城作り、ねぇ……」
 カミユは少し席を外した京香もいないパラソルの下で独り呟いた。
 あの食えない能力者と守凪の間に何かがあったのだろうと思う。
 守凪が平介と仲良くしている姿を見ると、自分のこと位自分で片をつけろと思うが、正直今日の所は彼らにそこまでの興味はない。
「悪いけど、1人で十分よ」
 京香の声が後ろの方から聞こえ、カミユは振り返った。
 両手に海の家で購入したらしいジュースを手にした京香が、彼女よりも少し背の高い男達に声を掛けられているのが見える。
 それでも尚も食い下がろうとする男達へ京香が反論の口を開く前に、カミユは立ち上がった。
「1人で持たせてごめんねぇ」
「あら、悪いわね。って言っても、1つはあんたのなんだけど」
 カミユが声を掛けると、京香はジュースの1つをカミユへ差し出す。
 受け取るカミユは京香を促し、パラソルへ戻るその直前、展開に取り残されている男達に顔を向けた。
「この女性(ひと)、ボク達の連れなんだよねぇ。勝手なことをされたら困っちゃうなぁ」
 京香の角度からは見えなかったが、男達は「楽しい海水浴を過ごしてね」と愛想笑いと共に足早に去っていった所を見ると、カミユはその笑みで退けたようだ。
 ナンパ程度追い払えない京香ではないが、しつこいのはうんざりするので、ごく普通に助かった。
「しつこかったのよね」
「綺麗だからって言ったでしょ」
 礼を言った京香へカミユが軽く肩を竦めた。
 視界の端で照れたような様子の京香を見つつ、買ってきてくれたトロピカルジュースを口につけ──
「あ、このジュース美味しい」
「トロピカルフルーツのミックスジュースらしいわね」
「へー」
 京香も同じジュースを飲みながら、砂の城作りに精を出す彼らを見つめている。
 風が駆け抜け、京香の髪を攫っていく。
 姿勢がすっと伸びている京香は女を捨ててはいないが男勝りで、豪快な気質……その身体には傷も走っており、彼女が元の世界で平穏に過ごしていた人物ではないと判る。
 だが、肉体的にも精神的にも傷ついてほしいとは思わない。
 傷つけることも、傷つけさせることも……望んではいない。
 だから、ああいう言い寄ってくる輩などには近寄ってほしくないと思うのだろう。
 と、視線に気づいたらしい京香がこちらを見たので、カミユは逆に2人を見た。
「あんな波の際に城作っても割とすぐに崩れると思うんだけど」
「言ってあげれば良かったんじゃない?」
 カミユの視線の先を追った京香がくすりと笑う。
 京香がどんな表情をしているか、視線を向けなくとも判るような気がする。
「自分で作る城くらい、自分で考えないと駄目だと思うけど」
「手厳しいわね」
「普通でしょ」
 隣で京香が静かに笑う気配がする。
 それは嫌な感じもなく……だから、偽らないでいられるのだろう。
「ほら、やっぱり崩れた」
 彼の視線の先には、砂の城が崩れて、しょんもりした守凪の姿がある。

●美味しいと感じるもの
 砂のお城が波で崩れてしまった平介と守凪はお昼を食べた後に作り直すことにし、一旦パラソルへと戻った。
「そろそろお昼にしましょ。混む前に席を取った方がいいわよ」
「そうですね♪」
 京香の提案もあり、皆で海の家に行くことにした。
 少し歩いた先にある海の家は守凪には馴染みがない建物で──
「……」
「カミナぁ、立ち止まらないでくれるぅ?」
「判っている。初めて見る建物を見ていただけだろう」
 カミナに揶揄された守凪がぷんぷんして中へ入っていった。

 そして、見慣れないメニューに首を傾げる守凪へ平介が色々教え、頼んだ結果──

「これは、どうやって食べるんだ?」
 守凪の目の前には、焼きとうもろこし。
「こうして、齧り付くんですよ♪」
「そ、そうなのか」
 平介がお手本とばかりに焼きとうもろこしに齧り付くと、守凪も倣って齧り付き、「美味しい」とぽつりと漏らす。
「海の家ではこういうのを食べるのか?」
「手軽なものを食べるのが多いかと思いますよ♪」
 守凪が平介から勧められるまま焼きそばを食べてみる。
 あの籠にいたままでは食べられない、籠の中の食事とは比べ物にならない程チープだけど、けれど、比べ物にならない程美味しいと思う。
 その様を見、平介は安心に似た気持ちを胸に起こす。
「食べ終わったら、かき氷も食べたいわね」
「かき氷……食べてみたい」
 京香が提案すると、守凪は乗った。
「少し混んできたみたいだからぁ、早めに頼んでもいいかもぉ」
「なら、私が頼んでくるわね」
 京香が声を掛けに腰を上げる。
(平介は……傍にいてあげなさい)
 京香は、守凪と過ごす内、平介に少し変化が出ていることに気づいていた。
 笑みの中に、喜怒哀楽の哀が僅かに滲んでいる。
 本人すら自覚していない変化であるが、京香には判るのだ。
 守凪は京香にとっても可愛い弟のようなもの──平介へ変化を与えられた彼も平介と共に在るのが良いように見える。
(全く……自覚ないと言うか)
 カミユが女性意識に乏しい京香へ呆れたように心の中で呟くが、今度は誰かが彼女へ声を掛けることはなかった。

「キーンとするぞ、キーンと!」
「冷たいですからね♪」
 守凪の様子に平介は笑いつつ、キーンとなっていない京香とカミユを見る。
 大事なパートナーである京香はもっと好きなことをしてほしいと思うし、カミユと交流をしているみたいに、徐々に自分以外の人間とも広げていってほしいと思う。
 カミユも今日はパーカーを羽織ってその傷が見えないが、京香のように傷だらけの身体であることは知っている。元の世界で沢山戦い、沢山傷ついたかもしれない、苦難の道を歩んでいたかもしれない、と思うと、自分に何か出来ることがあればと思うし、京香と言葉を交わしている姿が嬉しい。
「ところで、平介、舌が青いぞ」
「ブルーハワイのかき氷でしたからね♪ 守凪さんの舌だってレモンの黄色ですよ♪」
「本当か? カミユ、貴様は?」
「ボクはみぞれ食べたから関係ないねぇ」
 平介と会話していた守凪がカミユへ話を振ると、カミユはしれっと返す。
 守凪が京香を見たので、京香は舌を出して指し示す。
「私もイチゴを食べたから、そんなのでもないわね」
「俺と平介だけ、舌の色が変わったのか」
 守凪が真顔で言ったので、京香が思い切り横に顔を背ける。
 肩が凄い震えており、笑いを必死に堪えているのがよく判ったが、平介とカミユは沈黙を選んだ。
「食べ終わりましたし、砂のお城を今度は崩れない場所に作りましょう♪」
「ああ。今度はさっきのより大きなものを作る」
 平介はそう言って立ち上がる守凪を見る。
 もう崩さないように守るから、安心して作っておいで。
 その言葉は口に出さず、平介は微笑んで守凪の後を追った。

●不思議な気持ち
 食後の休憩をするらしい京香とカミユを置き、平介と守凪は今度は満潮でも波が来ない、かつ、他の利用客の迷惑にならない場所で城を作り始めた。
「さっきとはデザインが違うんですね?」
「ああ」
 先程も凝った印象が強い細かい城だったと平介が思い返しつつ尋ねると、守凪はやはり午前中同様凝ったデザインを作りつつ、平介にそう答えた。
「違うものにしようと思って」
 守凪が作るのは、少し大きめの、けれど、あまり高層ではない城で、先程のものとの大きな違いは、あの海の家だったり、回転寿司屋だったり、牧場だったり……敷地内に色々なものが加わっている所だ。
 きっと、楽しかったその場所を、自分の守る場所に入れているという意味なのだろう。
 平介がそう思って見ていると、足元にビーチボールが転がってきた。
「すみませーん」
 自分と同じ年くらいの女性が2人やってきた。
「いえ、どういたしまして」
 平介が微笑んで見せると、女性達が顔を見合わせ、それから平介にそそっと近寄る。
「良かったら、一緒に遊びませんか?」
「あっちで遊んでるんですー」
 平介が見た視線の先には、彼女の連れらしい女性達がいた。

(……)
 守凪は困ったように応対している平介の声を聞きながら、眉間に皺を寄る自分に気づいた。
(平介は、断っているだろうが)
 大切な友人が困っている。
 それだけでも十分腹が立つ。
 平介の優しさにつけ込み、食い下がっているのが気に入らない。
(気に入らない?)
 何だ、それは。
 守凪はその言葉に首を傾げた。
 平介は大切な友人だ。けれど、彼が誰と付き合おうとそれに口出しする権利が自分にあるのか?
(何だ?)
 守凪は、何でこんな気持ちになるのだろうと思う。
 平介の隣に、彼に1番近いであろう英雄で、本音を言えば少し羨ましいと思う京香以外の女性が隣にいるのを想像し、自分でもどう表現していいか解らない感情が起こっている。
(……何でこんな気分になっているんだろうか)
 守凪は自分が判らず、ふらっと歩き出す。
 それにまだ気づいていない平介は女性達を断り続けていた。
「お連れの男の子も一緒に遊べば大丈夫」
「だから、皆で遊び……あら?」
 平介が女性の声を不審に思って振り返った時には守凪の姿がそこにない。
 その瞬間、女性達への対応が綺麗さっぱり飛んでいた。
「守凪さん!?」
 『あの時』の恐怖を思い出し、平介は走り出した。

 どこに行ったんだろう。
 どこに行ってしまったんだろう。
 また、見失うのか。
 また──

 平介が周囲を見回し捜している最中、京香から連絡が入った。
『波際でちゃぷちゃぷしてるわ。迎えに行ってあげて』
「ありがとう」
 たまたま少し泳ごうかと京香とカミユが海へ向かって歩いていて守凪に気づいてくれた。
(いなくならなかった……)
 平介は息を整えながら海の方へ歩いていき、波際をちゃぷちゃぷしながら歩く守凪を見つけた。
「お城を飾る貝殻探しですか?」
「! あ、ああ。見つからない、な」
 守凪は驚いたように振り返る。
 平介は安堵の気配も出さず、微笑を向けた。
「一緒に探しましょうか」
「! いいのか?」
「ええ♪」
 すると、守凪は少し紅に頬を染めた。
「仕方ないな。そこまで言うなら、手伝わせてやる」

 砂浜に貝殻がないか平介と探しながら、守凪は先程の気持ちがなくなっていることに気づいた。
(俺は、平介が傍にいると安心している)
 籠にはない空気が、平介の傍にはある。
 つまりは一緒にいたいのだが、その言葉がどの程度守凪の中で象られているかは、守凪にすら判らない。
 やがて、少し見栄えのする貝殻を見つけ、2人は城作りに勤しむ。
 夕方、帰る頃には貝殻が象徴的な城が完成すると、平介が写真を撮ってくれた。
「……そうか。ここにいるか」
 守凪がデジカメに映る城を見て呟く、
 もうそろそろ旅館に移動しなければならず、楽しい時間の終わりを感じて物悲しくなっていたが、この瞬間はここに閉じ込められている。
 ……この時間に、帰ることが出来る。
 寂しい気持ちは消えないが、帰ることが出来ることが守凪には嬉しかった。

●明日も楽しもうね
 旅館へ移動した4人は温泉を楽しみ、海の幸に舌鼓を打った後、並べられた布団に寝転んだ。
「こういうのは新鮮ね」
 京香が笑う真正面は、カミユだ。
 カミユはもう若干眠そうな気配だったが、一応まだ起きている。
 今日はパラソルの下でカミユとはよく話した。
 どこまで本当なのかは判らないが、真実でも嘘でも京香は最早カミユを放って置こうとは思っていない。ありのままを話してくれたカミユがカミユでいられるよう力を尽くすことを選べる。
「明日は花火大会だよねぇ。夜まで何するつもりぃ?」
「有料席を購入してますから、場所取りの必要はないですが、屋台が出るみたいですから、夕方には会場に着くにしても……それまでの間、近くの水族館に行ってもいいかもしれないですね」
「悪くないな」
 平介の提案に守凪がそう言うと、カミユは「じゃあ、ボク明日に備えて寝るねぇ」と横になった。
 悪くないな、と言うのは、守凪においては全面的な賛成のようなもの、それならほぼ確定事項だから、寝た方がいい。
 カミユが寝るのを守凪は見る。
 駒にしか過ぎないと思っていたカミユがこうして共に寝ると言うのは、かつては考えられなかった。切り捨てられないと感じる今だから、こうして共に寝られるのだろう。
「カミナぁ、寝返り打って、ボクの寝場所奪わないでねぇ」
「だ・れ・が、奪うか! それは俺の台詞だ!」
 頬をひくりとさせた守凪にカミユは手をひらひらと振るだけで、そのまま眠りに入った。
「私達も明日に備えて寝ましょうか♪」
「そうね。今日は沢山遊んだもの。おやすみなさい」
 平介が部屋の電気を落とすのに腰を上げると、京香も布団の中に入っていく。
 やがて、灯りが落ち、部屋の中は月明かりだけになり、潮騒が聞こえてくる程の沈黙が舞い降りた。
(……)
 並んだ布団、そこに眠る皆を見て平介は小さく微笑む。
 4人一緒の部屋を取る時、完全和室は平介の希望だ。
 布団を並べて寝たい、という希望は、旅行感が味わえるからという建前の理由で通った。
(本当は、家族みたいなことしたくて)
 施設育ちの平介に家族はいない。
 その先の未来もないだろう、と思う。
 『あの子』達の未来を奪い、『カミナリエ』からも『カミナリエ』の名と『母親から貰った足』を奪った自分にはそのような資格などない。
 でも、それでも、見守る父親のような気分を味わってみたかった。
 そんな自分の弱さに苦笑いを浮かべるしかない。
「平介、起きているか?」
 守凪の声が響いた。
「起きてますよ」
「平介、波の音は、いいな」
 平介が答えると、守凪は京香やカミユを起こさない声音で呟いた。
 部屋に響く波の音は、どこまでも優しい。
 その音に平介が耳を傾けていると──
「……今日は悪かったな。……おやすみ、平介」
「おやすみなさい、守凪さん」
 平介も横になり、瞼を閉じる。
 寄せては返す波の音が、心の奥まで響いていく。

 おやすみ、いい夢が見られますよう。
 そして。
 明日も楽しい日でありますよう───

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【笹山平介(aa0342)/男/24/胸の奥に言葉詰まれども】
【柳京香(aa0342hero001)/女/23/戸惑いがあろうとも】
【賢木 守凪(aa2548)/男性/18/御伽噺に足りない誰かは夢の向こう──】
【カミユ(aa2548hero001)/男性/17/誰にも触れさせぬ心なら】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木風由です。
この度はご指名ありがとうございます。
夏の休日、1日目の海水浴をお届けいたします。
2日目にも続くよう、そして、今日も楽しい日であるように。
今回はタイトルも、登場人物紹介の一文も1日目と2日目で繋がるようにしてあります。
それでは2日目のお届けまで少々お待ちくださいませ。
colorパーティノベル -
真名木風由 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年08月22日

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