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『 たのしいようちえん〜夏休み編〜 』
十影夕aa0890)&桜寺りりあaa0092)&ベルベット・ボア・ジィaa0936hero001

 とある幼稚園では夏休みのお泊まり会が開催されていた。
 初めてのお泊まり会と言う事もあり園児達は大いにはしゃいでいた。そんな中、教室の中で十影夕(aa0890)、桜寺りりあ(aa0092)の二人は積木で遊んでいた。
 夕は少し高く積んだ積木の上に赤色の三角の積木を乗せ、そして達成感に満ちた顔をしながら言った。
「よし。出来た!」
「完成なの……です」
 パチパチと小さく手を叩きながらりりあは嬉しそうに笑う。それを見て夕も嬉しそうに、そしてどこか照れ臭そうに笑った。
 その時、ガラッと教室のドアが開かれ一人の穏やかで優しそうな女性が入って来た。
 それはこのクラスの担任の桜子先生だった。クラスの園児達は桜子の事が大好きで、またりりあ達も大好きな先生の一人だった。
 桜子は教卓の前に立つと元気よく園児達に声をかけた。
「は〜い、みんな今からスイカ割りをします。なので、お片付けをしてからお外に出てください!」
「先生スイカ!」
「スイカ割り出来るの!!」
 桜子の言葉に口々に園児達は嬉しそうな顔をし桜子に質問をする。それに対して桜子も「出来るよ」と笑顔で答えた。
 桜子達はこの日の為に張り切ってスイカを準備していた。
 それは子供達に喜んでもらう為に。
 そして園児達は散らばっていたオモチャを片付けるとスイカ割りをする為に外へと出たのだった。

 外に出ると真夏の太陽がギラギラと照らしており、先程まで冷房が効いた教室の中で遊んでいた夕は一気に気温の差を感じ取った。
 中庭へと視線を向けると、ある一ヶ所の場所に園児達と先生が集まっていた。おそらくスイカ割りの準備だろう……
 早く夕達も皆のところに行かなければならない。だけど夕は固まって動けなかった。
 何故ならばすぐ近くの大きな木にセミが止まっていたからだった。
 夕はセミが怖くて動けず、隣にいたりりあも一緒で手が震えていた。
「……むし……こわいの……です……」
 うるっと涙目になり、りりあはチャームポイントのかつぎをぎゆっと握り、俯いた。夕は「大丈夫だよ」とりりあに声をかけてあげたいのだが、自分もセミが怖い。それに加えて、

 早く行かないと始まっちゃう――

 恐怖感と一緒に焦りが一気に押し寄せ夕も泣きそうになった。
 だがその時、そっと誰かが二人の手を取り、握った。
 振り向くとそこには、可愛い狐耳に尻尾を付けた男の娘のベルベット・ボア・ジィ(aa0936hero001)がいた。ベルベットは夕達ににっこりと微笑みながら、
「大丈夫です。三人一緒なら怖くないです」
 と言った。
 夕はその言葉を聞き手の甲で涙をぐいっと拭った。
「うん……」
 そう呟くように言うと夕は勇気を出す。そして三人は皆のいる場所へと駆け出した。
 繋いだ手は暖かく、夕とりりあの二人はセミに対する恐怖心がほんの少しだけ和らいだ気がした。

●スイカ割り
 皆がいる場所にたどり着くとビニールシートの上に大きなスイカが一つあった。
 丸々のスイカにりりあは驚きながらも手でぺちぺちと叩いて興味津々でスイカを見ていた。
「すごくおおきいの……です」
「ほんとうですね。良い音がします」
 りりあに習いベルベットも先生のマネをして小さな拳でスイカを軽くコンコンと叩く。するとスイカ独特の音が聞こえてきた。
 これは実が沢山詰まっている……そう思えた。
「スイカ割り楽しみです」
「うん。ゆうも楽しみ……」
 わくわくした表情で言うベルベットに夕はスイカを見ながら短くそう答えた。

 暫くして楽しみにしていたスイカ割りが始まった。
 喧嘩にならないように皆でじゃんけんで順番を決めスイカ割りをしていく。次々とスイカ割りが繰り広げられていくが、幾分子供の力でやっている為スイカは割れず軽くポコンと良い音が続いていた。だけど園児達は楽しそうにスイカ割りを堪能していた。
 そんな中ついに夕の出番になった。
 桜子は夕に近づきスイカを叩く棒を夕に渡しながら優しい声で言った。
「次は夕君の出番だね。夕君スイカ好き?」
「スイカ、すき……」
 桜子は夕の目線の高さに合わせにっこりと笑った。
「そっか。スイカ割り頑張らなきゃだね。頑張ってね夕君。先生も応援しているね」
「うん……」
 桜子に応援され夕は棒を握り、ぎゅーっと目を瞑った。
 本来ならば目隠しをしなければならないのだが、夕と同じく目隠しが怖い園児達もおり、そういう園児達は目隠しをせず、目を瞑ってスイカ割りをしていた。
 少しずつスイカの方へと歩く夕に向かって「みぎ!」「ひだりだよ!」と様々な声が飛び交ってきた。
 夕はその声に戸惑いながらも足を止め、そして棒を強くその場に振り落とした。
 棒から固い感触が伝わる。
 そっと目を開くと目の前にスイカがありスイカは残念ながら割れてはおらず、まん丸のままだった。スイカは割れなかったけれど夕の中に楽しいと言う感覚が生まれ、またそれが夕を嬉しそうな顔へとさせた。

「りりあちゃんたちー こっちにスイカありますよ一緒に食べましょうー」
 遊んでいたりりあ達はベルベットの声に気づき、振り向いた。ベルベットがいる場所の長いベンチの近くに、長テーブルが置かれており、そこにはトレーに乗った沢山のスイカが切り分けられていた。
 あの後、スイカ割りを一通り終えた園児達の後に割れなかったスイカを先生達が割ったのだった。
「ゆうくん……いこうです」
 そう言い、りりあはにこっと笑いかつぎを翻しながらベルベットがいる場所へと駆け出していく。
 その後ろ姿を夕は駆け出し、追った。

 ベルベットのところにたどり着いたりりあ達にベルベットはテーブルの上に置かれたトレーに乗っているスイカを二つ手に取ると、それを二人に渡した。
「はい」
「ありがとう……です」
「ありがとう」
 二人が受け取った後ベルベットは自分の分も取り、三人は仲良く木陰の近くのベンチの上に並んで座るとスイカを頬張った。
 水分を含んだ甘い味が口一杯に広がる。
 三人で食べるスイカは普段食べる時より余計に美味しく感じ、三人は顔を見合わせながら「美味しいね」と言い、笑顔を溢した。
 

●優しい時間
 夕方。
 皆と夕飯のカレーライスを食べた後、ベルベットは紙の皿を集めていた。
 後片付けをしている桜子を見てベルベットは自ら手伝いを率先してやっていたのだった。
 さすが優等生だ。
「先生、全部集めました」
 桜子の近くに行き、そうベルベットは言った。
「有り難う。じゃぁ、この中に入れてくれるかな?」
 桜子は手に持っていた大きなビニール袋を入れやすいように広げてやる。その中に使用済みの皿をポイッとベルベットは入れた。それを見、桜子は目を細めベルベットの頭を優しく撫でた。
「有り難うベルベット君。ベルベット君は良い子だね。先生助かったよ」
 撫でられた感触が気持ち良く、そして少しだけ照れ臭そうにしながらベルベットの耳がピョコと可愛らしく動く。
「先生のお役人立てて僕も嬉しいです」
 小さな声で言うベルベットに桜子は優しく微笑を浮かべ、ベルベットも嬉しそうに少しだけはにかみながら笑った。

 片付けも一通り終えベンチで休憩をしていた桜子にベルベット達は近づいた。
「先生」
「どうしたのみんな?」
「さくらこせんせ、どうぞなの……です」
 りりあは手に持っていたお茶を桜子へとズイッと差し出した。それを見、桜子は「有り難う」と述べ受け取った。
 おそらくベルベット達はベンチで休憩をしている桜子を見て疲れているかもしれないと思い、気遣ってお茶を持って来てくれたのだろう。
 その気遣いに桜子は心から嬉しくなる。本当に優しい子達だ。
 そう思い、受け取ったお茶を一口飲んだ。
「美味しいよ。有り難う」
 にっこりと微笑む桜子の顔を見三人は、ぱぁと嬉しそうな顔を浮かべた。
 桜子は紙コップを隣に置くと三人を優しく抱き締めた。抱き締められた三人は戸惑いながらも桜子の暖かさを感じ、りりあは突然の事にびっくりしたが目を細め嬉しそうにしていた。


●思い出の線香花火
 夕方の茜色の空から夜へと変わり、先生達が用意してくれた花火を園児達は楽しんでいた。
 夕は暗いところが怖い為最初は渋っていたが花火を手にし、他の園児達と同じく楽しんでいた。
 また周囲の園児達も花火をしながら大いに騒ぎ、盛り上がっていた。「花火は人に向けてはいけませんよ!」との桜子が他の園児に注意をする中、夕は線香花火をする。
 勿論りりあも一緒だ。
 パチパチと音を立てて、まるで花のような形を作りながら弾ける花火を見て、りりあはうっとりとした様子で呟いた。
「んむ、ぱちぱちきれいなの……」
 花火の中でもりりあは線香花火が好きだった。その為キラキラした瞳で線香花火を眺めていた。暫くしてポトリとりりあの線香花火が地面に落ちてしまった。
「終わっちゃったの……です」
 悲しそうにしょんぼりするりりあ。
 それを見、夕はりりあに声をかけようとした。だがりりあの視線はすぐに夕の線香花火へと注がれていた。
「ゆうくんの、ぱちぱちきれいなの……」
 先程までしょんぼりとしていたりりあは、ふわりと笑い、笑顔で言った。それを見て夕もまた呟くように言った。
「きれい、だね……」
 特別弾んだ会話はなかった。だけどこうやって花火を眺めているだけで二人は楽しかった。
 

●おやすみなさい
 花火も終わり、教室の中にお布団が並べられていた。
 スイカ割りを終え、沢山遊び、美味しい夕食を食べた後、花火をしてもう残されたのは寝るだけだ。
 だけどまだまだ遊び足りない子、もう眠たい子、さまざまな園児がいた。
 りりあはと言うと布団を並べる前にはしゃぎ疲れてうとうとし、
「ふわぁ……ねむい、です」
 と言って先にリタイアし、先程敷かれた布団へと桜子が運んで寝かせていた。そんな最中、教室の隅の方でしくしく泣いている一人の男の子がいた。
「うわぁ〜ん、ママぁ〜」
 涙で顔をぐちゃぐちゃにし何度も母親の名を呼んでいた。
 お泊まり会でよくあるうちの一つホームシックだった。
 そんな男の子を見、ベルベットは男の子に近づくと優しく声をかけ、頭を撫でた。
「ママがいなくて寂しいのですね」
 ベルベットの言葉に男の子はコクリと小さく頷く。
「大丈夫です。僕がついてますから」
 にこっとしながらベルベットは言葉を続けた。
 ベルベットは男の子を慰め、手を取り布団がある場所へといくと並べられた布団に二人はそれぞれ潜り込んだ。
「みんな、電気消すね」
 園児達が全員布団の中に入ったのを確認し、桜子は園児達にそう優しく声をかけると天井の灯りを消した。だが真っ暗だと園児達が怖がるため薄暗い微かな灯りだけを付けていた。遊び疲れた為かベルベットは、うつらうつらと舟を漕ぎ始めそして深い眠りに落ちていった。


 射し込む朝の光に気づきベルベットは目を覚ました。
 そしてムクリと布団の中から身を起こす。そして口の端を僅かに緩めると、頬に手を添えながら、
「なんだか懐かしい夢を見たわ〜あたしがまだピチピチで可愛いボーイの頃の! ああ! あんなに可愛いなんて! あたしったら罪なお・と・め」
 瞳にハートマークを浮かべ、うっとりとしながら言い、周囲には大量のハートマークが飛んでいた。
 そして窓の外からセミの声が聞こえ、ベルベットはふっと視線を外へと向けた。
 そこにはあの頃の夏の日と同じように青く晴れ渡った青空があった。




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━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0890 / 十影夕/ 男  年齢  17/アイアンパンク / 命中適性】
【aa0092 / 桜寺りりあ / 女 / 17/ 人間 / 生命適性 】
【aa0936hero001/ベルベット・ボア・ジィ/?/外見年齢26 】




ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、せあらです。
この度はご指名の方を頂き、本当に有り難うございました。
可愛い感じでとの事で、スイカ割り花火、お布団で寝るシーンをそれぞれ書かせて頂きました。
楽しい夏休み楽しんで頂けましたら幸いです。


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2016年08月26日

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