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『異界探索 』
カグヤ・アトラクアaa0535)&狒村 緋十郎aa3678)&レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001

プロローグ

 大海原、海は青くしかしどこか冷たい色をしている。リゾート地のような透明度が高いエメラルドグリーンの海であれば可愛らしくはしゃぐこともできたのだろうが、こんな世界から隔絶されたような無人島の海ではむしろ不安になる。
「おお、日本と違い風がからっとしておる。よきかなよきかな」
  『カグヤ・アトラクア(aa0535) 』がダイバースーツに身を包んで言った。
「ねぇ、カグヤ。本当にここでよかったの?」
 『西大寺遙華 (az0026) 』はパーカーの紐をもてあそびながらぼんやりと言う。
「何がじゃ?」
「バカンスの行先が」
「…………わらわはバカンスなどと一言も言うておらんぞ」
「え!」
 はじかれたように遙華は立ち上がる。
「私聞いてない」
「いや、最近伝達ミスが目立って申し訳ないのじゃが、バカンスに来たわけでもなければ、遙華を誘った覚えもないのじゃ」
「え!」
「うぬ?」
 遙華がなぜ驚いたか分からないという表情でカグヤは首をひねった。
「私と、海での一枚を撮影するって話じゃ」
「…………すまんのう、あれはロクトとの話じゃ、しかもロクトとはその話を前々からしておった」
「…………っ!」
 顔から火が出るほど恥ずかしい遙華。穴があれば入りたいが、この無人島に穴などない。
 いっそ自分で掘るか。そうスコップを握りしめる。
「で、なんで私たちが最初に来なきゃいけなかったの? 緋十郎たちは遅れてくるんでしょ?」
「うぬ、潮の流れを見ておきたかったのじゃ」
「……?」
「まぁ。あとで説明してやるから待っておれ」
 そう言うとカグヤは遠く、海の向こうめがけて手を振った。遙華もつられて顔を上げる、すると。そこには一艘の船が、その手すりによりかかって紫色の髪をなびかせるのは『ロクト(az0026hero001)』彼女は楽しそうに手を振っていた。
「おお、きたのう」
「準備に時間がかかるってなんだったの?」
「潜水艇じゃ」
「え? 何に使うの?」
 三日に及ぶキャンプ生活が始まる。

第一章 バカンスオンザビーチ

「わたし、あんまり文明の利器から遠ざかりたくないんだけど」
 『西大寺遙華 (az0026) 』はぶつくさ文句を言いながら、船から降りるための板を受け取って立てかける。板の据え付けが終わると、『レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001) 』がゆっくり降りてくきた。
 黒いハイヒール、夏の暑さを感じさせない黒いワンピース、日焼けしないための防止、腕まで覆う手袋。
 まるで高級都市の貴婦人のようないでたちだ。
「あれ? バカンスじゃ……」
「そうよレミア、あなたは騙されたのよ。私もだけど」
「人聞きの悪い……」
「でも逆に言うと貸し切り何でしょ、すてき。不便は全部緋十郎が何とかしてくれるわ。ね、緋十郎?」 そうレミアが振り返ると 『狒村 緋十郎(aa3678) 』がBBQセットを肩の上。テントの骨組みが入った袋を背にのせて、みしみしと板を軋ませて降りてくる。
 その視線が無人島の輪郭を撫でて最後にカグヤに注がれた、たっぷり十秒カグヤのボディを眺め観ると。残念そうにため息を一つついた。
「ダイバースーツか……」
「なにがっかりしてるのよ」
 レミアがヒールで緋十郎の足を踏む。ちなみにピンヒール。ちなみに緋十郎はサンダル。
「とりあえず食料、テント。潜水艇、簡易的な研究室ごと動かしてきたわ」
「アンタたちなにするつもりなの!」
 悶える緋十郎を尻目にレミアは言った。
「そもそもここはどこなの?」
 カグヤがすかさず答える。
「この海域はバミューダトライなんたらと言われていて」
「それってめちゃくちゃ危ないところじゃないの!!」
 遙華は思わず叫んでしまった。目に見えて取り乱している。しかしその焦りの正体を緋十郎は知らない。
「何が危ないんだ?」
 無理もない、英雄はこの世界の知識に疎い上、緋十郎は山籠もりが長かったこともあり海のことなど知る由もない。
 カグヤはカグヤでオカルトの類では怖がらないし、ロクトはそもそも信じない。
 終わった、まともな感性を持つのは遙華だけ。このキャンプいろんな意味で終わった。
 そう遙華は両手を砂についた。
「この海域では沢山の船が消えているのよ!」
「消えてないじゃないか」
 緋十郎が船を指さす。
「いや、そうだけど、そうだけど! それはまだ消えてないだけでそのうち消えるのよ。今は消えてないだけ、ここら辺では船は消えるのよ!!」
「遙華、それは人はいつか死ぬって言ってるのと同じじゃないかしら」
「ああああ、わかってて煙に巻かないでロクト!!」
「遙華よさっきから精神が不安定じゃぞ、あれの日か」
「男性がいる前で言わないで!!」
 そんなこんなで遙華いじりに飽きた一行はテントをたてはじめた。

第二章 藍色の海

 ロクトとカグヤは船の上にいた。水深の深い沖へ船を進ませ停泊する、その状態で二人は装備の確認を始めた。
「ほう、軽くてよいものじゃ」
 そうカグヤは酸素の詰まったボンベを叩く。甲高い良い音がする。
「まぁ、英雄は酸素不足じゃ死なないけど、苦しいのは嫌だし私も背負うわ」
 そうロクトはレギュレーター口に入れきちんと機能することを確認した。
「わらわも共鳴済み故、死にはせぬが。まぁ苦しいのはいやだしのう」
 そうながい髪の毛を結い上げ首を降ると、ゴーグルを手に取り首にかける。
「形とか雰囲気って大事よね」
「そうじゃな」
 そう言うと二人は背中から海に飛び込んだ。
(ほう……)
 透明度が高い海とは煌いて見えるものだ。太陽光が水底まで届き揺らめいて、沢山の小魚が寄り集まりダンスを踊っている。潮の満ち引きで海藻が揺らめき、目にも賑やかな楽しみがあるものだったが。
 蒼い海というものも趣がある。
 灯りがあまり届かなくて薄暗い、岩場のすべらかな灰色な様子は、見た目にも硬質な印象を与える。
 そしてあまり魚がいない、深い深い孤独が包む、まるで宝石に封じ込まれたような静謐な世界がそこに広がっていた。
 その光景に目を奪われるロクト、その肩を叩いてカグヤは先へと促す。何やら気になるものを見つけたらしく二人は岩場を奥へ奥へと潜っていった。
 一方陸上では。
「水が温かい……」
 緋十郎がサンダルで海に入り感動したようにつぶやいた。
 ロシアのバイカル湖を思い出しているのだろう、あの冷たさは尋常ではなかった、もう二度と潜りたくない。
 とまぁ当然そんな風に思う緋十郎ではなかったが。
 温かければ温かいで嬉しいので、ため息をついていたのだ。
 冷たくてもうれしい、温かくてもうれしい、それが緋十郎である、なんという心の広さだろうか。
「どう、緋十郎。海は」
「ああ、悪くない……れみ、あ」
 そうレミアの声に振り返る緋十郎、その視線に映ったのは。黒の上下の水着、適度に肉のついたおへそ。伸ばした腕は触れただけで折れそうで、砂糖菓子のような儚さ。
 最高の芸術がそこにあった。
 言葉を失う緋十郎。
「どう……かしら、黙られてると困るんだけど」
「いや、レミア、似合っている、綺麗だ……」
「ありがとう、緋十郎、あなたも素敵よ」
「あー。はははは」
 困って笑いあう二人、その間に入ったのは遙華である。 
「あー。わたしお邪魔かしらね」
「そんなことない、そんなことないわ西大寺」
「そう? そう?」
 そう笑う遙華はもともと水着だったようだ。パーカーの下には紫色のビキニである。意外と大胆、他の女子よりちょっと肉付きが良いのには触れないでいてあげて欲しい。胸だけならよかったのだがお腹にも……
「ぶつくさ言ってても仕方ないから私泳いでくるわ。あなた達しか共鳴できないんだからいざというときお願いね」
「あ、まって、西大寺!」
 そう砂浜を駆けていく遙華、そしてパーカーを脱ぎ捨て海へ、それを追いかけるレミア。
 ぎこちないクロールの遙華を追い抜いて、レミアはまるで魚のように水中を泳ぎ遙華を通せんぼする。
「あなた、いつの間に……」
「友達に教えてもらったのよ」
「同じ旅館のな」
 そう言うと緋十郎は遙華にビーチボールを投げつける。
「一緒に遊びましょう」
「え? いいの」
 そして唐突に始まるビーチバレー。
 三人はまず取りやすいようにボールを回していく。
「三回落としたら罰ゲームって言うのはどう?」
 遙華が唐突に言う。そしてレミアから遙華にパス。
「罰ゲームってたとえばどんな?」
 遙華から緋十郎にパス。
「では、負けた者が皆に踏まれることにしよう」
 緋十郎からレミアにパス。
「それって、自分がやってほしいだけでしょう!」
 レミアは跳んできたビーチボールを強く叩くと、緋十郎の顔面に激突した。
「緋十郎なら、自分から落していきかねないわね」
 遙華も同意する。水の上に仰向けで漂いながら緋十郎は言った。
「むしろ棒立ちでボールが来ても反応しないくらいの勢いだな」
「「ゲームにならないじゃない」」
 二人がそうつっこんだ瞬間である。ざばーと水から何かが上がる音が聞こえた。
 最初はカグヤかと思って安心しきっていた遙華だったが、振り返ってみると違った。
「なによこれ」
 それはうねうねと、天高く立ち上る、太陽を覆うような柱、しかし軟体で吸盤がついていて。そして。
「こ。これは」
「デビルフィッシュね!」
 レミアが言った瞬間、緋十郎とレミアの体に絡みつくタコの足。
「レミア!」
「緋十郎!」
 二人が手を伸ばすも触れることもできない距離、これでは共鳴もできない。
「何よこれ!」
 遙華もとっ捕まってしまった。乳児に捕まったおもちゃの車のように左右に振られてしまう。
「た、助けて! カグヤ」
 呼ばれて飛び出てジャンジャジャン。カグヤが水底からプカリと浮かんだ。
「おお。言い忘れておった」
 カグヤはうねる触手を見つめ、さしてあわてることもなく言った。
「このあたりには巨大タコの従魔がいたんだ」
 おもわず遙華が言った。
「船が沈む原因ってこれなんじゃ」
「レミアあああああああ」
「緋十郎!」
 そうロミオとジュリエットのように引きはがされる二人。あまりに哀れなのでカグヤはついに手を打つことを決意した。
「ロクトよ何かないかの?」
「霊化ナトリウムがあるわよ」
 そうロクトは髪留めのアメジストを叩く、実はこれが幻想蝶だ。そこからロクトは金属質の玉を取り出す。
 カグヤは幻想蝶から手袋を取り出し霊化ナトリウムの玉を手に取った。それは鉄球のように重く大きさは野球ボール大。
「おお、ナトリウムが反応して水素が生まれて、熱された酸素と結合して。急激に燃焼して」
「いいから早く助けて!」
「わりとどうなっても知らんぞ」
 そしてロクトは水の中に潜るとカグヤの足場となる、踵に手を挙げ、押し上げるとカグヤはイルカのようにジャンプ、そしてその金属球を蹴った。
 それは水をえぐるように飛来しそして。
 水の中で大爆発を引き起こした。


第三章 夜空の下のBBQ

「なんで若干うれしそうなのよ」
 夜空、星が無数に瞬く浜辺でレミアは緋十郎のやけどを手当てしていた。
「カグヤはなかなかご褒美をくれないからな」
 ため息をついて見せるレミア、慌てふためく緋十郎、しかしこれは緋十郎の反応を見ているだけで実際に機嫌を損ねているわけではない。
「それにしても」
 そんな二人を眺めながら、遙華はひたすらボウルをかき交ぜていた。中には肌色の液体。たこ焼き粉が入っている。
 本日の夕食はBBQ+たこ焼きである。
「粉を用意しているあたり、故意犯だな……」
 緋十郎が言う。
「そうねぇ。まぁ楽しかったからいいじゃない」
「カグヤー、焼けたわよ!」
 そう三人は船内にこもってしまった二人に声を投げる、しかし一向に出てこないカグヤとロクト。
 そんな二人はというと、船内に申し訳程度に設置された研究室で何やら調べ事をしていた。
 片やカグヤは海域の地図とにらめっこ。片やロクトは海底から持ち帰った霊石を調べている。
 船内の明りは一昔のランプのみ、オレンジ色の弱弱しい光を気にせず二人は研究業に精を出す。
「ダイビングに飽きた矢先に面白いものが見つかってよかったわね」
「そうじゃの、まぁ何かしらは見つかると思っておったが、こんなに解りやすいものが見つかるとは思わなんだ……」
 そうカグヤは手の中の青い石を転がして眺めた。
「超高純度の霊石、かの……」
「カグヤ。ロクト、ご飯もってきたけど、大丈夫? もう十二時よ」
 遙華はもう寝てしまっていた、緋十郎は火の番をしている。
「ああ、もうそんな時間、普段の生活のくせが……」
「うむ、わらわは36時間ほどであれば寝ずとも」
「…………あ」
「冗談じゃよ」
「寝ましょう、結論は出たんでしょう?」
「うむ、明日の朝一に遙華を起こして……じゃな」

   *   *

 どうでもいいのだが、テントで目覚め、朝に朝もやに包まれながら食べるおにぎりは独特の味がする、そう眠気眼をこすりながら遙華は思った。
「あの、朝五時なんだけど」
「うむ、山で生活していた時以来だ」
 緋十郎は眠気眼をこするレミアの食事を用意しながら、起こしてきた張本人カグヤが意気揚々と海域の地図を広げながら言う。
「つまりじゃな、このあたりの潮の流れがこうで、ここに交じり別のながれとぶつかったのでここに霊石があったと思うのじゃ、じゃからこのあたりに霊石の鉱脈か、それに類する何かが……」
「ごめん、もうちょっとわかりやすく説明して」
 寝ぼけるレミア。
「つまりこのあたりに霊石の鉱脈があるか」
 わかってるんだかわかってないんだかわからない緋十郎。
「もしくは、大量の霊石をつんだ船があるわ」
 そうロクトがフォローしつつ全員に言う。
「今回は、この霊石調査も任務のうちよ」
「ダイバースーツに身を包み出陣じゃ」

  
  *   *


 そして朝霧に包まれた海の上をゆっくりと船は進む。
 さすがバミューダトライなんとかと呼ばれる海域、なんだか凄味がある。
 まるでいまにも、この先の白い闇から骸骨船があらわれそうな。
「なんだか、気持ち悪い……」
「風がなくなったわね」
 レミアが渋い顔をして緋十郎に寄り添った。
「不吉よ、共鳴した方がいいわ」
「なるほど一部の海域には全く水が流れて行かぬ場所があると聞いておったが。こういうことだったのかのう」
 カグヤは海に目を落していった。
 淀んだ海の水は小さな塵が無数に浮いている。プランクトンか、はたまたゴミか。
 どちらにせよ、綺麗な水とはいいがたいようだ。
「ソナーに反応があったわ」 
 船の奥からロクトの声が響く。
「うむ、それでは……」
 ダイバースーツに身を包んだ緋十郎、そして甲板に現れたロクトと共鳴する遙華。これで役者は整った。
「沈没船を探索使用かのう」
 そう、この海域に沈んでいるのは沈没船。大量の積み荷をつんでいたが。それが何らかの影響で霊力を纏って高純度の霊石になったものと考えられる。
 ただでさえ霊石は貴重、回収したいとはロクトの弁。
 カグヤは単純に泳ぎを楽しんでいるだけだが。
「何が起こってもおかしくないから注意してね」
 やがて沈没船にたどり着いた一行。
 かなり昔に作られた船らしく、板張りで腐っていた。緋十郎がその板を蹴って穴を開け、そこから全員が侵入する。
 目の前には分かれ道。カグヤは手分けをしようというジェスチャーを行った、しかし。
 遙華はそれに恐れをなして首を降る。
 だが、言葉を発することは水中では難しい。遙華が面白い動きをしている間に緋十郎とカグヤは悠々と先に進んでいってしまった。
――ねぇ、緋十郎
 レミアからの念話が飛ぶ、緋十郎はまず手前の部屋、乗組員の寝室なんだろう。そこを見て回っていた。生活の跡が色濃く残っている。おそらく海に沈んだのは一瞬のことだったのだろう。
 もの悲しさが緋十郎の胸を突いた。
――思いつめた顔をしているわ
(ああ、上質な霊石、新技術の手がかり、そう聞いてしまうと。彼等を救う手がかりになるかもしれないと思ってしまう)
――邪英達ね、きっと手がかりになるわ。カグヤがロクトが何とかしてくれるはずよ。
 その等のカグヤとロクトと言えば、一際頑丈な扉の前に立って唸っていた。
 カグヤの隣の遙華がジェスチャーで爆薬を使うか尋ねる。
 そこでカグヤは首を降り、幻想蝶から取り出したるわ。チェーンソウ。
 水の中ではその凶暴な唸り声も大人しいが威力は健在のようで、カグヤは無情に刃を突き刺すとゆっくり滑られ、扉をきり飛ばした。直後。
「空気があるわ」
 遙華は浮上しあたりを見渡す。遙華の言う通りこの部屋は半分ほどしか浸水しておらず空気が残っていたのだ。
「ガスだったらどうするつもりじゃったんじゃ?」
 そうカグヤも後に続く。
 ここは宝物庫だったようで金貨やら宝石やら、それだけで価値がつくものもたくさんあった。
 そして霊石も。床一面に転がっている。
「ふむ、海賊が霊石を集めていたとは考えにくいかの?」
――そうね…………
 ロクトが答える
――最初は何らかの宝石だった。けれど霊石に替わった、そのほうがしっくりくるわね。
「世界蝕のおりに替わってしまったと?」
――だってこの船、百年くらい前の船じゃない?
「建造方法から推察すると、もっと昔。息の長かったふねじゃったんじゃろ」
「ねぇ、私思うんだけど、問題は何が積まれていたとかじゃなくて……」
 遙華がおびえた表情で言った。無理もない。船が小刻みにゆれている上に、衝撃音が水を伝って聞こえてくるのだから。
――そうじゃな、この船を沈めた何者かを捌かぬ限り回収は難しいじゃろう。
 そうカグヤは豪快に船の壁チェーンソウで切り刻むと、流れ込んできた水をものともせずに海中へと躍り出た。
 そこには、全長十メートルほどの十本の足を持つ化け物。大王イカのような従魔がそこにいた。
 その化け物と相対しているのはレミア。しかし泳ぎを身に着けたからと言って水中で自由に動けるようになるわけではない。
 苦戦を強いられていた。
――影縫い!
 遙華は共鳴すると影が動くようになる。ロクトが動かしているのだが、そのロクトが苦無を何本か放った。
 しかしそれはイカの触手ではじかれる。
(やれやれ、タコの次はイカかのう)
 襲いくる触手をチェーンソウで切り飛ばしながらカグヤは考える。どうしたほうが効率よくこの従魔を倒せるだろうか。
 そう無表情で考えていたせいだろうか、ターゲットがあからさまに遙華になり、触手が殺到する。
 遙華は息を飲んだ。その目の前に躍り出たのはレミア

(西大寺は下がって)

 そう遙華の盾になるレミア。目を見開く遙華。
 イカの触手は思いのほか硬くレミアの肌を割き、足に突き刺さり、目をえぐる。
 ごぼっと背後で泡立つ音がした。叫んだのだろう。遙華が。大量の流血をみてレミアの身を案じたのだ。
 しかし、レミアにとってこれは普通のことだったし、何より痛みは全くない。
――ぐぅ。おぉぉ
(緋十郎、これくらい耐えられるわよね)
――耐える必要すらない、レミアを守っているのという快感に打ち震えている。
(そうでないと……)
 そしてレミアはウロボロスを構えた、刺突の構え。よく目を凝らし、そして。
 イカの口が開いた瞬間その刃を伸ばし突き立てた。
 その刃は貫通、あたりに墨をまき散らす。

(そこじゃ)

 そしてイカが一瞬ひるんだその隙に、カグヤは突貫する、唸りを上げ血に飢えたチェーンソウを腹部に突き立て。そして一閃。
 臓物をまき散らして断末魔を上げるイカ大王。その触手から力が奪われ。
 そしてこの海域に平和が訪れた。


エピローグ

 左目を抑えて水からあがる緋十郎。その姿を見てカグヤは言った。
「お主、共鳴を解けば治っているはずではなかったのかの?」
「ダメージが体に残るわけではないが、痛覚がなぜか刺激されたままになるんだ」
「痛覚を消すお薬でも処方しようかの?」
「いや、人生半分損するからいい」
 そんな一行は無事に浜辺まで帰ってこれた、これからH.O.P.E.の支部に行き位置情報を教えて幽霊船を回収してもらう予定だが……。
 その前にだ、ただいまの時間は正午お昼ご飯が必要である。
「さぁ、ご飯ができたわよ」
 意気揚々と響くロクトの声、彼女は水着にエプロン姿で鉄板の前に立っていた。並んでいるのは大量のイカ。
「また!」
「昨日はタコじゃ」
「今日はイカよ」
「全ての食べ物には感謝せんといかんぞ」
 そうカグヤは気にせずイカ串を口に運んでいく。
「にしてもロクトよ、倒すと消える従魔と、消えない従魔がいるのじゃがこの違いは難じゃと思う?」
「媒介があるかどうかだと思っているわ」
「なるほど、であればいまわらわ達の胃袋に入っているこれはタンパク質なのか」
「一度解析してみる必要が……」

 こうしてカグヤのひと夏のバカンスは終わりを告げたのであった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『カグヤ・アトラクア(aa0535) 』
『狒村 緋十郎(aa3678) 』
『レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001) 』
『ロクト(az0026hero001)』
『西大寺遙華 (az0026) 』



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度はOMCご注文ありがとうございます。鳴海です。
 いつもお世話になっております。
 パーティーノベル二度目ですね。内容があまりないのをいいことに好きにやらせていただきました。
 楽しかったです。
 前回とは違って明るめの、冒険要素と会話要素を多くしてみました。
 気に入っていただければ幸いです。
 では本編が長くなってしまったのでこの辺で。
 ありがとうございました、鳴海でした。 
colorパーティノベル -
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リンクブレイブ
2016年09月02日

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