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『―― 人の美を吸う魔物 ―― 』
アリスjc2226


(……どうして、こんなことになったのかしら)
 アリス(jc2226)は、今日の出来事をゆっくりと頭の中で整理し始める。
(まずはいつも通り起きて、朝ご飯を食べて……)
(そう、女性の失踪事件が急増していて、その調査に向かうため、準備をしていたんだったわ)

※※※

「……失踪した女性の数だけ発見されるミイラ、か」
 アリスはため息をつきながら、資料として渡されたものを読んでいた。
「被害者は全員女性、今のところ男性の被害者は出ていない、か……」
 男性が何人か調査に向かったけど、特に何も情報を得ることが出来なかったらしい。
 つまり、情報を得られるのは『何かに襲われる可能性のある女性のみ』ということになる。
 そのため、今回アリスに調査依頼が来たわけだけど……。
「そういえば、この遺跡って大きな宝石があるって言われている場所なのよね。もしかして、今回の事件と何か関係があるのかしら?」
 アリスは首を傾げながら、残りの資料にも目を通す。
「さて、行きますか。こういう面倒そうな調査はさっさと終わらせるに限るもの」
 大きく伸びをした後、アリスは準備をして、調査対象である遺跡へと向かい始めた。

※※※

「これは……」
 遺跡の奥に到着して、アリスの前に姿を現したのは巨大な宝石。
 広間のような場所に飾られた宝石は、妙な魅力を放っていて、アリスは目が離せなかった。
「これ、女性の失踪事件と関係があるのかしら」
 アリスが首を傾げながら宝石に触れると――。
「……っ!? な、何、これ……!」
 突然、アリスの胸と腹が肥大化し始め、彼女は驚いたように宝石から離れようとする。
 ――けれど、宝石が淡く輝き、宝石の周りに飾られていた鎖がアリスを拘束した。
「ぐっ、ぁ……!」
 首を絞めるようにつるし上げられ、アリスは酸素を求めて口をパクパクとさせる。
(逃げなきゃ……! ここにいたら、私も……っ)
 必死に身を捩るけど、鎖が解かれることはなく、抵抗すればするほど、アリスの身体へと食い込んでいた。
「ひっ、な、何なの、これは……!」
 鎖が器用にアリスの着ている服のファスナーをおろしていく。
「やめて、何なの、誰かいるんでしょう!?」
 周りを見ながら叫ぶけれど、アリスの声が響くだけで広間には誰も出てこない。
(……失敗した、もっと警戒して調査に当たるべきだった)
 後悔しても後の祭り。
 アリスはガタガタと震えながら、されるがままになっている。
「……ぁっ」
 伸びてくる何かが、つぷり、とアリスの臍の中へと入る。
「ふっ、ぁ……あ、ああっ!」
 自分の魔力が中から吸収されていくような感覚に、アリスの震えは増していくばかり。
「何、これ……いや、私が、私の美貌が……っ!」
 力が抜けていくと同時にアリスが絶対の自信を持っている自身の美貌。豊満な胸、お尻――。
けれど、魔力が奪われていくせいか、みるみる皮膚からハリがなくなっていくのが分かる。
「いや、いや――――――ッ」
 目の前には鏡が現れ、ミイラになりながら美しさが失われていくのを見なければならない。
 絶望に絶望を重ねながら、アリスは叫ぶ声も出なくなった頃に視界に入って来たのは、最初に見た時よりもアリスの美を吸い取って更に輝きを増した宝石だった――……。

※※※

 数日後。
 アリスとは別で調査を受けた男性や女性が遺跡の前へと来ていた。
「うっ、これは……」
「何これ、酷いわね……」
 遺跡の前に放られていたのは、ひとつのミイラ。
 血も何もかも吸い取られ、服はぶかぶかの状態。女性だと判断出来たのは、服装などが若い女性の好むものだったからだ。
「きっと、美しい人だったんだろうけど、こうなったらもう見る影もないな……」
 男性もミイラ化したアリスから視線を逸らしながら言う。
「はっ、どんなに綺麗な人でもこうなったら終わりでしょ」
 女性は嘲笑しながら、ミイラ化したアリスを見下ろす。
「私、この調査はキャンセルするわ。だって、こんな姿にはなりたくないもの」
 そう言いながら、ミイラが放置されていたことだけを報告するため、遺跡調査に来ていた者達は背中を向けた。
(どうして、私が、こんな目に遭わなきゃいけないの……)
 ミイラとなったアリスは切実に願いながら、最後の涙を流すのだった――……。

―― 登場人物 ――

jc2226/アリス/女性/20歳/ダアト

―――――――――――

アリス様

こんにちは、今回もご発注頂き、ありがとうございます!
今回はミイラ化に関する内容でしたが、いかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容になっていましたら、幸いです。
今回も書かせて頂き、ありがとうございました。
また機会がありましたら、宜しくお願い致します!

2016/9/2
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水貴透子 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2016年09月07日

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