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『夏の川辺で相棒たちと 』
ガルフ・ガルグウォード(ia5417)&慄罹(ia3634)

「まったく。出るかどうかも分からないのに頼まれごとに巻き込まれるとはなぁ」
 がさり、と慄罹(ia3634)が山道に覆いかぶさる枝を払いぼやく。一歩踏み出し見回す額に、きらりと汗。今年の天儀の夏はギラギラ暑く、炎天下の仕事となっている。
「まあ、俺と慄罹だけとはいえ、これだけの大所帯。思い出作りに遊びに行こうと思っても土地の人が慣れてないと何事かと思われるし、逆に何事かあって歓迎されたんだからいいんじゃねーか?」
 慄罹に続いて歩くガルフ・ガルグウォード(ia5417)が頭の後ろで両手を組んで気楽に返す。
 そのガルフの横で、緑色の長い髪がさらりと揺れた。
「本当に……申し訳ない……ですよね」
 ガルフの相棒の羽妖精「杜鵑花」である。青い瞳を陰らせて、白いサマードレスを着た肩を落とす。
「その分、出るらしい『餓鬼憑き』を何とかすればいいでごじゃる」
 前を行く慄罹の横に浮く提灯南瓜「かぼすけ」が振り返ってぶんぶん腕を振り回す。むやみやたらに元気よく振り回したため、風になびいた慄罹の髪に腕が引っかかってしまうドジっぷり。が、その様子に杜鵑花も顔を上げてくすりと微笑した。
 そんな一幕の横で、慄罹の相棒の人妖「才維」が空を指差した。
「りーしー、興覇が止まったよ」
 そちらの空に鋼龍「興覇」が浮かんでいた。慄罹の相棒だ。大きな翼を広げ、太陽光を浴びて金色に見える。
「お、淨黒もだな。いい感じの河原を見つけたか。白雪、出番だ! ……白雪?」
 ガルフも自らの相棒、駿龍「淨黒」が高度を下げたことを確認し、迅鷹「白雪椰」を呼んだ。
 が、近くにいたはずの相棒の声がない。
 しばらくして、ようやく飛んで来た。
「……ピィ!」
「何だこれ、梨か? ま、ありがとよ。それより淨黒たちのところを確認して道案内をしてくれ」
 その辺で見つけたのだろう。梨の小さな実を主人に預けた白雪椰。ガルフ、今はそれどころじゃないと感じたがこのじゃじゃ馬はちゃんと相手しないと機嫌を損ねるからなぁとか思い出しありがたく受け取って懐にしまう。満足そうに胸を反らせる白雪椰。そうすると胸部の青宝玉がより一層鮮烈に映える。
「ピィッ」
 ひと時の優越感に浸った白雪椰は主人の言う通り淨黒の下りた場所へ直行し、戻ってきた。距離は近く道も一本道のようだ。

 道を進むとやがてせせらぎの音が聞こえ、視界が開けた。
「……すごい」
 思わず瞳を大きくする杜鵑花。
 目の前に、緩やかに流れる川と河原が眩しかった。この場所を見つけて先の下り主人たちを待っていた興覇と淨黒が得意そうに羽をパタパタやっている。
「川の青と……河原の白。……そして森の緑、太陽の輝き……」
 杜鵑花、美しい光景に感心しきりである。
 が、すぐにびくっと身を縮めた。
「ついたでごじゃる、ついたでごじゃる〜」
 いきなりくるくる回ってかぼすけが龍たちに近寄って行った。その動きの何と元気の良いことか。
「りーしー、あれ大丈夫? この間読んだ本に、『野生動物の中には素早く動くものを狙う野生動物もいる』って書いてあった」
「そうか? サイは物知りだな。よし、食事の準備でもするか」
 慄罹は才維の頭を撫でてやり龍たちの元に向かった。
「よし、まずはバーベキューの準備だな!」
 ガルフも続く。
「……本当?」
 杜鵑花は才維の話に少し興味を引かれていた。おずおずと聞いてみる。
「うん。だって、ほら」
 才維が指差したのは、迅鷹の白雪椰。
 すい〜っ、と二人の間をすり抜けて川辺まで飛んでいくと、ぱしゃん!
 目にもとまらぬ一撃離脱で、川魚を足につかんで上昇していた。
「…わっ……」
 隣を一気に飛んでいったことでびっくりする杜鵑花。才維は先ほどからびくびくしっぱなしに見える彼女を心配するが、「サイ、手伝ってくれ」と慄罹に呼ばれたので「ほらね。魚も流れの中を泳いでいるから目立つんだよ」と説明してから主人の元に浮かんでいく。
 その時だった!
『もふーーーーーっ!』
「……きゃっ…」
 突然、杜鵑花の横をすり抜けてものすごい勢いで何かが駆け抜けていった。杜鵑花、驚いてばかり。
 そしてかぼすけの悲鳴。
「も、もふらさまが物凄い形相で拙者を狙ってるでごじゃる〜」
 はっと振り返るガルフと慄罹。
「もふらさまが? あののんびりしたのがまさか……」
「餓鬼憑きって……もふらさまにか?」
 ガルフ、白雪椰がバーベキュー用にと取って来た川魚を受け取る姿勢で固まる。
「りーしー。餓鬼憑きって、小さな霧状のアヤカシで生き物なんかに憑りついて腹を減らせて鬼のような形相で誰かを襲わせるんだったよね?」
「まさかもふらさまに憑りつくとはな」
 調理道具の準備をしていた慄罹は才維が、すべての状況から適切な判断を下していた。
 そう。
 釣り上がった目に尖った牙をむく、物凄い形相のもふらさまがかぼすけをロックオンしていたのだ。
「どうしてかぼすけ?」
「さあな。見た目が食いもんだしな」
 首をひねる才維にあっさり答える慄罹。その間にもよだれを垂らして食い付いてきた餓鬼憑きもふらさまをかぼすけが間一髪かわしていた。かぼすけ、よだれまみれ。
 そして振り返る。
 狂気に満ち満ちてぐるんぐるんしているもふらさまの目を目の当たりにし、その本気度に背筋を凍らせたッ!
「せ、拙者、美味しくないでごじゃるぞー!!」
 かぽすけ、パニック。
 怯えて泣きながら森の中に逃げ出した。
「何か食えばアヤカシは離れるんだったよな……仕方ねぇ。これでも食らえっ!」
 ガルフ、魚を魚籠に入れて代わりに白雪椰から受け取っていた梨を投げつけた。もちろんもふらさまの口のなかを目掛けて!
『逃がさないもふーーーーーっ!』
 が、外れ。もふらさま、もふらさまとは思えない俊敏な動きで森の中を追っていく。
「畜生、おしい。……追うぞ!」
「よし」
 ガルフ、駆け出す。慄罹も続いた!

「速さじゃガルフにかなわねぇ」
 追う慄罹、右に開いた。左のガルフからやや遅れている。
「……なら、こうだ」
 右手の長十手、一閃。瞬風波が左前方に伸び枝をばっさばっさやって……。
「あ、あぶないでごじゃる〜」
 先頭を逃げるかぼすけの左の枝も払った。途端に右に逃げ出すかぼすけ。ききき、ともふらさまも右に。
「やるな、慄罹!」
 ガルフも右に。邪魔な枝は先の攻撃で払っているので遠回りになる彼もスムーズ。もちろん慄罹は最短で追うことになる。
 これで距離が詰まった。
 そして気付くガルフ。
 一番森に近い位置にいた杜鵑花が、ちゃんとかぼすけについていたのだ。
「杜鵑花、まずはかぼすけを止めろ。頼む!」
 ガルフの叫びに気付いた杜鵑花、瞳を大きく見開き戸惑ったが意を決した。
 すうっと息を大きく吸い込み口元に手を当てると、ちょこんとお尻を上げた。
「当、って…!」
 投げキッス!
 誘惑の唇だ!
 が、一瞬の戸惑いはかぼすけとの距離を空けた。
『そこの南瓜、待つもふ〜っ!』
「きゃ……」
 どどどど、と追ってきたもふらさまに追い抜かれる。誘惑の唇、射程外だった。
「……ご、ごめんなさ……」
「気にするな」
「おい、ガルフ。あれ」
 さらにガルフが抜いて行く。そして慄罹が先を指差した!

 何と、目の前には川が横たわっていた。結構広い。そして色合いから深みもありそうだ。
「南瓜じゃないでごじゃる〜」
 ふわふわ浮いて逃げるかぼすけは問題ない。川の上を通過し渡る。
『もふーーーーーっ!』
 もふらさまは、もふ毛があるので浮く。
 そしてこれまで追っている速度で止まることはない。平たい小石を水平投げした時のようにぴちゃんぴちゃん跳ねながら川を越えて行った。
「ちょ……おい、俺たちはああは行きそうにないぞ」
 惑う慄罹が速度を落とす。
 が、親友は諦めていないッ!
「乗れ!」
 ガルフは物凄い形相で一言掛けると片膝をつき両手を左右の腰に。おぶってやる、とのゼスチャー。
「えっ、マジか……おわっ!」
 戸惑いつつもガルフの肩に手を掛けた慄罹は慌てた。
 何せ、その動きだけで下から立ち上がられ足を取られ一瞬でおんぶ状態にされたのだから。
「耐えろ、水蜘蛛。一瞬だけでいい」
 ばしゃばしゃ、と川に入ると深みの所だけ水蜘蛛を掛ける。二人一緒なので効果が怪しいのだ。
「……よし!」
 先のもふらさまのように勢いで何とか駆け抜けた。
 そして顔を上げて、見たッ!
「い、いきどまりでごじゃる……」
『もっふっふ……食っちゃ寝の時間もふ……』
 かぼすけ、崖に追いつめられていた。じりじりと距離を詰めるもふらさま。
「い、いやでごじゃる〜」
 涙目のかぼすけ、崖を上る。
 が、横に滝がありしぶきが目に入るのかやや動きが鈍い。
『いただきますもふ〜』
 対するもふらさま、かぼすけに対して大口を開けて一気にジャンプ。
 その跳躍の何と高く、速く、力強いことかッ!
 刹那、響く叫び。
「そうはさせねぇっ!」
 ガルフが助走をつけて滝壺に水蜘蛛で突っ込むと、そのまま滝を駆け上がった。
 その様、昇竜の如し。
「どりゃぁぁっ!」
 そして駆け上がった滝から出る岩を新たな足場に、跳躍!
「友達の友達は友達だ。食わせねえっ!」
 その様、岩にしぶく飛沫の如し。
 ガルフが脚を伸ばし、渾身の蹴り。
『もふっ……!』
 まさに食い付こうとしていたもふらさまの横頬にクリーンヒット。そのままどう、と大地に崩れ落ちるもふらさま。
 そこに慄罹がカットイン!
「あまり熱くなると熱中症になるぜ…?」
 起き上がったもふらさまの頬を鉄扇をハリセンのように使い横殴り。
『もふ……ぅ』
 だらしなく横を向いて開いた口に、すかさず梅干しを放り込んだ。
『もふ?』
 瞬間、我に返るもふらさま。代わりに何か霞のようなものが離れて行ったぞ?
「逃がすかよ。慄罹、いまだ!」
「これで一丁上がり、だな」
 着地したガルフが両手で印を結んで影縛り。逃げようとした霞――アヤカシ、餓鬼憑きの本体を慄罹が十手で叩きつぶすのだった。

 そして、川辺に戻ってバーベキュー。
「よし、肉が焼けたぞー!」
「魚もこんなもんだろう」
 肉の串を掲げて喜ぶガルフに、焼き加減の確認に熱心な慄罹。相棒たちも主人の様子に上機嫌だ。
「運動の後はお肉とお菓子でごじゃる♪」
 かぼすけは肉の焼き上がりを待ちつつ焼きマシュマロをパクパク。
 おっと。その動きが止まったぞ?
「そちも食べるでごじゃる」
 かぼすけ、焼きマシュマロを杜鵑花に差し出した。
「……え…?」
「友達の友達は拙者も友達。困っていればお互いさまでごじゃる」
 杜鵑花がマシュマロを焼くのに苦戦していると見たのだろう。そして、ガルフの言葉に感銘を受けたようで、あの時の言葉を使った。胸を張っている。
 もっとも、予想外の展開に杜鵑花はびくっと固まっていたが。
「ありが…とう」
 やがて素直に受け取る杜鵑花。自分の焼いていたマシュマロは、白雪椰に。
「ピィ?」
 白雪椰、首をひねって杜鵑花の表情を覗き込む。
「初めて、森の外で出来たお友達。驚かされて、目を回す事も多い、けど……」
 無言で問われてもじもじと返す杜鵑花だが……。
「それも、楽しい」
 ふんわり、笑顔。
 周りでは、「おい、このもふらさまついてきちゃったけど、食いまくってるな」とガルフ。慄罹は「にぎやかなのはいいもんだ」と、せっせと肉や魚を焼いているのだった。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ia5417/ガルフ・ガルグウォード/男/20/シノビ
ia3634/慄罹/男/31/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。

 親友二人と相棒たちとの夏の思い出のお話、お届けします。
 せっかくですので、できるだけ多くの相棒を描写しました。龍の二匹は少し描写少なめで申し訳ありませんでしたが。そしてお二人もラストのいいところは相棒に取られちゃいましたけど。

 せっかくの舵天照での物語。野生動物ではなく、野良もふらさまに登場していただきました。
 少しお仕事っぽいこともしてもらいました。村人もきっと満足してます。

 それでは、良い思い出となったことを願いつつ。
 ご発注、ありがとうございました。
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瀬川潮 クリエイターズルームへ
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2016年09月05日

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