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『そこに あなたが 君が いる 』
笹山平介aa0342)&柳京香aa0342hero001)&賢木 守凪aa2548)&カミユaa2548hero001

●祭り会場はひしめいて
「結構沢山の人が出ているのね」
「近隣では最大らしいですから、逸れないように注意しましょう♪」
 柳京香(aa0342hero001)が目を瞬かせる隣で笹山平介(aa0342)が笑いながらも注意を促すように皆を見た。

 宿泊2日目、明日は帰るのみであることを考えれば今日はとことん楽しまないと。
 そうした提案で、今日は花火大会までの時間、各所観光名所を回っていた。
 寝る前に話した水族館や少し見晴らしのいい場所まで景色を見に行ったり、昼は市場でお食事──そうして楽しんだ後、皆浴衣に着替えて、花火大会に出陣したという訳だ。

「いざという時はライヴス通信機で連絡を取るのが1番確実かもしれないわね」
 京香は平介に応じながら、平介の隣を歩く賢木 守凪(aa2548)の姿を見た。
 濃紺の矢絣柄の浴衣に同色の帯といった平介に対し、蒼に縦絣柄の浴衣、濃紺の帯といった守凪は歩き易さ重視で平介に雪駄を選んで貰っていたが、浴衣自体に慣れていないので平介に遅れないよう必死で、けれど、最初から気づいている平介は守凪が遅れないよう、また、それとなく歩調を合わせている。
 その目は読めないようでいて──
「いざとならないのが大事、でしょぉ?」
 カミユ(aa2548hero001)が、こちらを見る。
 京香は何だか気恥ずかしさを感じた。
 今日は京香も白地に蒼と赤が万華鏡のように彩る雪花絞りの浴衣を身に纏っており、簪で髪も纏めるといった、普段とは違う姿だ。カミユがじっと見つめてくるのは、平介や守凪に見られるのとは違う気がする。
 彼が女性扱いをしてくれるから、だろうか。
「そうね。それが1番よね」
 京香はそんな動揺は見せたりせず、カミユへ微笑を向けた。
 カミユは京香をじっと見つけた後、守凪へ顔を向ける。
「1番気をつけるのは、カミナだけどねぇ? 浴衣に気を取られないでねぇ」
「貴様も浴衣着たことないだろう」
「さぁ?」
 守凪がカミユを見ると、カミユは大げさに肩を竦めた。
 今日は白に淡い縦縞の浴衣に藍色の帯といった装いのカミユは、相変わらず腹の内を見せない。
「それより、お腹空きませんか? 私お腹ぺっこぺこです♪」
「そうだな。……ん?」
 祭りだからその辺りで、と平介が声を掛けると、守凪は彼に応じつつ、1つの屋台に気づく。
 丸いあれは何だ?
 エーブレスキーバより小さいし、見たことないものが入っている。
「あれは、たこ焼きですね。他にも沢山食べたいですから、半分こして貰っていいでしょうか♪」
「仕方ないな。平介が言うなら、仕方ない」
 平介の説明と申し出に守凪が如何にもそう言うが、頬の色が少し変わっていて、彼が喜んでいるというのがよく判る。
 それを見る平介の目が優しく……京香は思うのだ。
(平介は、守凪で変わっていることに気づいているのかしら)
 大切なのだろう、と思う。
 胡散臭く笑っている理由は知っているが、もっと泣いたり怒ったりしていいと願っていた京香はそれを見せる相手が自分ではない、いや、誓約を交わすが故に絶対に自分へ見せないであろうことに気づいている。
(壊れないといいのだけど)
 京香は、平介の優し過ぎる性質を案じるばかりだ。
 平介もそうだが、守凪もカミユも───やっぱり、男というか男の子というか、本当にもうという心境になる時もある。
 京香がそう思っていると──
「なら、ボクは京香さんと半分こにするねぇ」
 カミユの声が京香を思考の海から引っ張り上げた。
 ちょっと待った、今何て。
「流石に3等分だと取り分がないしぃ」
「当たり前だ。貴様も入れたら俺と平介の分が減ると言うより貴様がメインで食べそうだから断る」
 守凪がカミユにふんっと答えるのを平介が隣で面白そうに笑っている。
 その笑みがいつもの作り物ではなく、生き生きとした守凪の姿が微笑ましくて漏れたものに見え、京香は彼が自分で決めて抱え込むもので壊れてしまわないことを願う。
 が、目下の問題は──
「爪楊枝2つ貰ったから大丈夫だよ。浴衣に気をつけてね」
 カミユとたこ焼きを半分こするということだ。
(何か不思議……)
 十分離れたから、さっきとは口調が違うこともそうだけど。
 彼が持つたこ焼きからたこ焼きを爪楊枝で刺して食べるのが、何だかいつもと違う非日常感があった。
(別に、食べさせ合ったりとかそういうことしてる訳じゃないのだけど)
 単純に2人で1パックのたこ焼きを半分こしているだけ。
 そのたこ焼きのパックをカミユが持っているだけ。
 それだけなのに、私が私じゃないみたいだ。

●1つ1つに思い出が刻まれて
(図った訳じゃなかったけど、上手くいったのかな)
「平介、たこ焼きとは美味しいものなんだな」
 平介がカミユとたこ焼きを半分こで食べている京香を見て思っていると、平介の手にあるたこ焼きを爪楊枝で刺して食べる守凪が口をもぐもぐさせていた。
 最初の1個、興味津々で一口で食べて熱さに驚いていたが、「まぁまぁだな」と気に入ってくれた2個目からはふーふーして少しずつ食べたらしく、舌の火傷はない。
「ラムネも買いましょうか♪」
 舌が火傷しているし、と平介がラムネを買い、手馴れた仕草で開けてやってから守凪へ渡す。
 受け取った守凪はラムネ瓶の中にあるコロコロとした存在にすぐに気づいた。
「中に何か入っているぞ」
「それはラムネ玉です♪」
「何だそれは」
「蓋代わりみたいなものですよ♪」
 平介の説明を聞きながら、守凪はラムネを飲んでみる。
 流石に炭酸は飲んだことがあるのでそちらで驚きはしなかったが、ラムネ玉はやっぱり珍しいらしく飲み終わって屋台へ返却するまで、時折瓶の中で転がしていた。
 この間にカミユと京香もたこ焼きを食べ終わってラムネを購入していたが、カミユはラムネ玉を面白そうに見はしたが、守凪のような反応ではない。
「他にはどういうのがあるんだ? ん、あれは何だ」
「型抜き、ですね♪ あれは食べられるものでもあるんですよ♪」
 守凪の視線の先にある屋台に気づいた平介がそう言うと、守凪は「食べられるようには見えんな」と言いつつも、屋台から視線を外さない。
「説明したら、私やりたくなっちゃいました♪」
「それなら、皆でやってみましょうか」
 同じように見守っていた京香が助け舟とばかりに口を出す。
「子供に混じってやるのか?」
「じゃぁ、カミナは仲間外れぇ〜?」
「! や、やらんとは言っていないっ!」
 畳み掛けてきたカミユに守凪はぷいっと顔を背ける。
 平介が「決まりですね」と屋台へ歩いていくのを守凪はついていく。
 雪駄のお陰か、それとも運がいいのか、ちょうど人が途切れていたからすぐに平介には追いついて歩いていけた。
「気づかせないのが上手だね」
 やれやれ、と言いたげのカミユ。
 カミユは、平介が守凪を見失わないようにしていることには気づいているし、彼が歩き易いように配慮して雑踏を歩いていることにも気づいている。
 あまりに不自然なくそうしているから守凪は気づいていないが、守凪をよく見ていなければこれらは出来ない。
「否定しないわ」
 それに関しては同意すると京香が軽く肩を竦める。
 守凪が平介を庇って怪我をした時とは同じにならないとは言え──
 彼らの会話を知らない守凪は、平介の隣で興味などない素振りで興味津々に周囲を見回している。

「くふふ、カミナ、時間掛かり過ぎぃ」
「話し掛けるな! あっ」
 守凪はカミユが覗き込むのをくわっとした瞬間、見事失敗した。
 がぁん、という擬音が似合うような空気を漂わせているのに、守凪は体裁を装って立ち上がる。
「お、俺には子供向きの遊びだったな!」
「失敗したくせにぃ」
 ぽそっとツッコミしたカミユをスルーした守凪は周囲を見回すと、銃で景品を当てている屋台を見つけた。
「あれは射的の屋台よ」
「射的?」
「コルクが入っている玩具の銃で景品を落とすの」
 京香は指で銃を撃つ仕草をして見せ、ちょうど男性が小さな娘の為にキャラメルを落とした。
 なるほど、と守凪は射的の屋台を見る。
 見たことがないものが沢山ある……あんなものは知ることすら許されなかった。
「ここは皆さんには私のダイエットに協力して貰いたいですね♪」
「協力って、何をだ」
「勝負です♪」
 平介が射的の屋台を指し示す。
 まだ花火の打ち上げ開始時間には余裕がある。
 平介の提案は受け入れられ、4人は射的の屋台へと歩いていく。

「最低でもカミナには勝ちたいよねぇ」
「うるさい。俺は貴様には絶対負けん」

 そんな会話を交わしているのに。
「何か欲しいのある?」
「えっ」
「カミナと勝負するにしても、狙うなら京香さんが欲しいものがいいかな」
 自然に聞かれているのは、目と声の響きで判る。
 何だか見つめていられなくて、京香は目を伏せた。
「……あれ、かしら」
 京香が指し示したのは、フォトフレームだ。
 アンティーク調だが、可愛らしさも感じさせるデザイン。
 そう高価なものではないが、場所的に難易度は高い部類だろう。
「任せて」
 普通に話せるけど目は見れない、そんな今なのに、京香は今そう言ってくれたカミユの顔が見たいと思っていて、そんな自分が不思議だと思った。

●勝利よりも欲しいもの
 平介がコルク銃の引き金を引くと、狙い定めていたオペラグラスは後ろへコトリと倒れた。
「凄いな、平介。最初の1回以外全部倒してる」
「ありがとうございます♪」
 守凪の感心に平介はにこにこ笑う。
 射的は実戦の銃とは違うだろうが、それでも最初の1回で誤差を修正して狙えるのは射的経験と実戦経験によるのだろうか、と守凪は思ってみたり。
「次はカミナだよぉ?」
「解っている! 俺は何を狙おうか」
 カミユに急かされた守凪は実戦の銃と違って軽いコルク銃を手に思案する。
 4人全員で勝負もしている……それに、平介が見ているのだから、順位はカミユだけに負けたくはない。
(あ)
 守凪は射的に屋台にあった『それ』に気づいた。
 あれが、いいな。あれにしよう。
 何故なら、あの時───
「ふぅん」
「どうかされました?」
 カミユが守凪の視線に気づいて漏らした声が聞こえたかどうかは知らないが、表情に気づいた平介がその横顔を見る。
 守凪が欲しいと思ったもの、それは。
「くふふ、カミナが当ててのお楽しみぃ」
 自分で当てて、証明すればいい。
 ボクはフォローしてあげない。
 カミユは守凪への思い全てを笑みの下に隠し、銃を構える彼を見やった。

 ことり。

「あ」
 平介の声が漏れたのを京香は聞き逃さなかった。
 守凪が狙った先にあったのは、四葉のクローバーとシロツメクサを模したかのような光る指輪。
 が、位置的な問題で1回目外し、2回目で守凪は得た。
「……平介がいなかったら今日来られなかったからな。だから、自分の力で得たものがいいと思ってだな」
「ありがとうございます」
 守凪が得たそれを自分に差し出してきたので、平介は礼と共に受け取った。
 今自分がいつものように笑えているかどうか、平介にはよく判らない。
 けれど、指輪が好きだと話したその言葉を憶えてくれて、お礼にと選んで得てくれたことが嬉しかった。
 3回目と4回目に駄菓子と光るブレスレットを得た守凪は平介には及ばない3回の命中で終了。
「次は私ね」
 コルク銃を受け取った京香が3人を見、それから屋台の景品を見る。
 目に入ったのは──
「……あれに、するわね」
 京香は、自分の声が上擦っていると思った。
 自分ではないみたいなその心が含まれていたのを、気づかれてしまうだろうか。
 だって、その猫は──赤い瞳の白猫のヌイグルミ。
(見てる……)
 コルク銃を構える京香は、カミユの視線を感じた。
 射的の行方ではなく、私を。
 どんな風に見ているのか、気になるけど、見られない。
 だから、京香は何も言わずにコルク銃の引き金を引いた。
 1回でぬいぐるみを落とすことが出来たが、それで気が抜けてしまったのかそこまでして欲しいと思うものがなかった所為か、粉末のスポーツドリンクの箱を1つ倒しただけで後は失敗してしまった。
「最後はボクだねぇ」
 カミユがコルク銃を手にくふくふ笑う。
 通り過ぎ様、京香の耳元で彼女にしか聞こえない声で彼は言った。
「ちゃんと取ってくるよ」
 京香が振り返った時には、銃をしっかり構えている。
 平介と同じように独り何かを抱えているかのようなその背中は、平介とは違う。
 目的を果たそうとする方法が違うからに感じるが、京香は何も言わない。
(話してくれるのを待つわよ。私は守る選択が出来るから。守ってあげたいから)
 唯一の女性扱いをしてくれる彼は、今夜も変わることはなく。
 京香が希望したフォトフレームを落とすと、金平糖、簪、石鹸、猫が昼寝をしている柄の懐紙を落としていった。
「ボクの勝ち、だねぇ」
 くふふ、と笑うカミユは悔しがる守凪を他所に京香へそれらを渡す。
 フォトフレーム以降希望を出していた訳ではないのに、京香があんなのもあるのかと見ていたものを全て落としたカミユに射的勝負の軍配が上がった。

 射的も終わり、そろそろ花火開始の時間が迫ってきた。
 人通りも多くなり──
「京香さん、大丈夫?」
「あ、ありがとう」
 カミユがさり気なく手を引いてくれ、京香は上擦った声でお礼を言った。
 今日はずっとエスコートしてくれていたけど、こんな風に自然に手を繋ぐとは思ってなくて、心構えとかしていなくて。
(人が多いもの、逸れたら旅館まで再会出来ないかも知れないし)
「ボクも京香さんがぶつかったりしないよう見てるけど、危ないから気をつけてね」
 逸れるなんてことはさせるつもりもないような口調。
 体温が低いカミユの手が祭りの雑踏とは切り離されたかのように特別に感じる。
 そう思っていたら、カミユが自然な調子でこう言った。
「折角綺麗な浴衣姿見られたのに、着崩れるなんて嫌だし」
「……!」
 昨日もそうだったけど、ごく普通に言われることには慣れていなくて。
 ……いや、きっとそうじゃない。
 きっと、カミユだからだろう。
(だって、『そう』なっていく心を、自覚してない訳じゃないから)
 混雑で平介と守凪と逸れてしまったことに2人が気づくのは、もう少し後の話だが、これはこれで良かったのかもしれない。

●ここに、いる
 一方、守凪は平介の景品を貰った直後の2人の目を気にした分、彼らより先に逸れたことに気づいていた。
 周囲を見回すが、花火開始の時間に合わせて移動する人々が多くて彼ららしい姿を見つけることが出来ない。
「逸れた、な」
「連絡は取れるでしょうが、今合流は難しいでしょうし、花火見終わった後にしましょう♪」
 平介がライヴス通信機で京香に連絡を取ると、京香からも同意が得られ、終了してからの合流となった。
「カミユと一緒なら問題ないか」
 そう言いながらも、先程までの様子を頭に過ぎらせ、彼女と仲がいいのだろうか、と守凪は思う。
 くふふ、と笑うカミユの表情からは察することは出来ない、が。
「どうかされましたか?」
 視線に気づいた平介がこちらへ顔を向ける。
「いや、柳と逸れたなと思って」
「この混雑ですからね♪ カミユさんも一緒なら大丈夫ですよ♪」
 平介が京香の心配への感謝を口にすると、守凪は自分が口にしたことの意味に気づき、周囲を見回してから、うんと頷いた。
「確かにこの混雑では仕方……わっ」
「守凪さん、大丈夫ですか?」
 周囲を見ようとしない学生らしき団体が押し寄せて来たので、平介がその空間から助けるかのように安全な空間へ手招きし、守凪を案じる。
「俺は大丈夫……大丈夫か」
「大丈夫ですよ。───お怪我はありませんか」
 守凪は話している最中に平介が女性とぶつかって逆に彼を案じるが、平介は守凪へ微笑を向けた後、ぶつかった女性を案じる。
(……?)
 守凪は何だかもやっとしていることに気づく。
 平介が女性へ微笑みかけているのを見ると、何だかもやもやする。
 何故だろう。判らない。でも、判るのは──
「大丈夫じゃないのは、平介の方だな」
「そうみたいです♪」
 いつも通りに、そして、さっきと同じように笑って、このもやもやを隠さなくてはいけないということ。
 その意味が判らないけど、せめて今は───
「あ、始まりますよ」
 平介に倣って空を見上げると、最初の花火が夜空を彩った。

 夜空に色彩の華が光で描かれていく。
 描いた光の少し後に音が伝わり、空気が震え、光の華の余韻を残す。
 多くの人々がその華に魅入られ、空を見上げた。

(柳もカミユも見ているのだろうな)
 そうは思うが、今は平介と見ているのが嬉しい。
 守凪はそう思い、見上げていたから、聞こえた。
「ごめんね」
 隣にいる守凪ですら、花火の音で聞き取れるか聞き取れないかの声。
 きっと、花火だけに気を取られていたら聞こえなかった。
 昨日の海水浴のことを言っているのだろうか。
 守凪にはよく判らないが……違うような気がした。何が違うと聞かれてもそれを説明する術を持っていないが。
 ただ、どんな謝罪であれ、言うことはひとつだ。
「俺が、平介のことで許さないことなどある訳ないだろう」
 平介がこちらを見たのが判る。
 けど、守凪はどういう顔をすればいいのか判らなかったから、花火だけ見上げた。
 空気が少しだけ震えたような気がする。
 花火によって震えたものとは、別に平介が震わせている。
「───」
 平介が何かを呟いたような気がしたが、今度は花火の音に紛れて聞こえなかった。
 花火の逆光で平介の顔はよく見えなかったが、何故だろう、そんな顔をしないで欲しいと思った。

 一緒に星空を見ること。
 描かれる花火よりも高い場所に輝くその星を共に見られる嬉しさ。
 守凪も感じたであろうそれは、平介も同じ。
 けれど───いや、今は語る時ではない。

 だが、『時』は近い未来にやってくるだろう。
 その時、彼らがどうなっているか。
 それは彼ら次第であり、共に在る英雄の支え次第であるだろう。

●夏は輝いて
「こっちよ!」
 花火も終わり、皆が帰路へ着く中、連絡を取り合って合流場所へ行くと、京香とカミユは場所的に近かったらしく、既にいた。
「そろそろ旅館に帰りますか」
 平介が皆を促し、旅館への道を歩いていく。
 明日目覚め、家に帰ったら、この楽しい夏の休日は終わる。
 次の御伽噺を檻の中で待たねばならないのだ。
「……」
「カミナ、帰るよぉ」
 花火の余韻も消え去った夜空を見上げていた守凪へカミユが声を掛ける。
「……ああ」
 守凪は夜空から視線を外し、自分を呼ぶ平介の声に応じて歩調を速めていく。
 その背をカミユは見つめ、呟いた。
「そろそろかな……」
 カミユはその声を雑踏に消すと、自分も後へ続き、京香を旅館までエスコートするとばかりに隣を歩き出す。

 静けさを取り戻した夜は何も語ることなく。
 けれど、それぞれの時を繋ぐべく、そしてこの休みが終わろうとも隣の存在が離れないよう願っているかのように、そこに在るだけだった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【笹山平介(aa0342)/男/24/立ち尽くす『僕』は『今』にいる】
【柳京香(aa0342hero001)/女/23/私はそれごと護りたい】
【賢木 守凪(aa2548)/男/18/傍にいてほしいと願い】
【カミユ(aa2548hero001)/男/17/この手を取るよ】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木風由です。
この度はご指名ありがとうございます。
夏の休日、2日目の夏祭りをお届けいたします。
1日目から続く話となっています。
予告通り1つの文章、ですが。
平介さんの1日目から守凪さんの2日目、守凪さんの1日目から平介さんの2日目。
京香さんの1日目からカミユさんの2日目、カミユさんの1日目から京香さんの2日目。
こちらで1つの文章となります。
ちょっとした言葉遊びですが楽しんでいただければ幸いです。
colorパーティノベル -
真名木風由 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年09月08日

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