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『黒鱗 』
aa2518hero001

 
『禮(aa2518hero001) 』は天高くそびえる摩天楼。グロリア社ビルの前で立ち尽くしていた。
「これが…………」
 なぜかごくりと唾を飲み下す禮。
「天空の城……」
 いつもであれば相棒とここを訪れるため、一人で入るのに気を使う。プラス。今回は売店によるというわけではなく、グロリア社の令嬢に直接武器の改造を依頼するという緊張感が、禮にこのビルを魔窟に見せていた。
「行きましょう、ここで立ち尽くしているわけには行きません」
 そう禮はグロリア社の門扉をくぐる。

   *    *

「ああ、いらっしゃい禮。話は聞いているわ」
 そう禮を出迎えたのは白衣姿の『遙華』である。遙華は禮を導き悠々と奥の部屋に案内する。
「緑茶でいい?」
「え? はい、ありがとうございます」
「ケーキが好きなのよね? 用意しているわ」
「いいんですか? こんなに」
 目の前に三種類のケーキが並べられ、逆に緊張する禮である。
「いいのよ、知らない仲ではないんだし。二つ食べていいのよ」
「や、やった。では、これとこれを」 
 そうお茶を食べながらの軽い雑談で口を軽くして、さっそく仕事の話に取り掛かる二人。
「今回はトリアイナの改造をお願いしたいんです」
「ええ、良いわよどんなふうに?」
「まず、私は、元の世界では人魚でした」
 禮は断片的ながらも記憶をかき集め。ゆっくりとそれを伝えていった。
 自分は人魚であること、二十歳であること。
「と言っても人魚は長寿なので、二十歳と言ってもまだ子供で」
 しかし禮には優れた力があった、それが普通の子供でいることを許しはしなかった。
「沢山戦いました、その結果人間達から冠を送られたんですけど」
 そう言って禮は自分の肌に指を滑らせる。
「冠も黒い鱗もあちらの世界においてきてしまいました」
「英雄は元の世界に人間でない存在として、在っても。こちらに来るときに強制的に人型にされてしまうらしいわね」
 禮は頷く。
「冠はわたしの誇りなんですが、もう一つ、わたしを象徴する黒い鱗もそれと同じくらい大切でした。冠が指針なら、鱗は旗印のような」
「だからこれに?」
 そう遙華は槍に巻きつく布を払った。
「トリアイナ。魚の鱗のような柄を持った海神が振るうという槍」
 遙華は槍の逸話を読み上げる。
「手にしたときわたし達にぴったりだと思いました」
 遙華は無言で続きを促した。
「兄さんの名前にも被りますし、鱗のような柄は人魚だったわたしの鱗のよう、色を変えれば完璧です」
 まるで自分を象徴するかのような武装、それをすぐに二人は相棒と認めた。
「これからの戦い、さらに激しさを増すと思うんです、だから少しでも兄さんのために力を尽くしたい」
「象徴って大切よね」
 遙華の言葉に禮は頷いた。
「気持ちが違います、あの旗が折れていないのであれば自分たちは負けじゃない、そう最後の踏ん張りがききます」
「承知したわ、形状はどうする?」
「穂は切ることもできる形に、返しはもう少し大きいほうがいいですね」
 そしてこれが一番重要だと禮は付け加える。
「穂は藍色で柄は黒色がいいです」
「なるほど」
「あ、お魚も突ける様にできませんか?」
 しばらく悩んで遙華は最後に重要なことを尋ねた。
「この槍の名前は?」
「銘はもう決めてるんです。"黒鱗"と」

   *   *

 後日手元に届いた大槍は、自分の半身ともいえる黒い輝きを帯びていた。
「オーダー通りですね……」
 そう禮は目をとじる、遠い故郷の潮騒が聞こえるような気がした。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『禮(aa2518hero001) 』
『西大寺遙華(az0026)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度OMCご注文ありがとうございました鳴海です。
 いつもお世話になっております。
 この度、トリアイナのいわくノベル? を任せていただいてうれしいです。
 こうやって武器に関するノベルを頼まれる方もいらっしゃるんですね。
 この黒鱗がお二人の道を切り開いていくことを願って書かせていただきました。
 それでは、また本編で会いましょう、鳴海でした。
 ありがとうございました。

  


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2016年09月05日

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