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『―― 奪われた美、気づいた時には既に遅し ―― 』
アリスjc2226

「ふふ、これが『美しくなる宝』なのね」
 アリスはとある遺跡で入手した装飾物を見ながら微笑む。
 今回、これを入手するに至った経緯としては、噂で『美しくなる宝』のことを聞いたからだ。
(美しくなる宝なんて、私のためだけに存在するものだわ)
 手に入れた宝はアリスが満足するほど美しいもので、この美しさが自分の一部になるのだと思うと更に嬉しさは増していた。
「さて、これはここにでもつけておこうかしら」
 アリスは呟いた後、自身の臍に装飾物をつける。
「……ふふっ、やっぱり私に似合うわ」
 自分の美しさを確かめるため、アリスは服を脱ぎ、鏡の前に立つ。
 縁にレースのついた黒の下着は彼女の美しさ、艶やかさを更に強調しており、臍につけた装飾物もアリスの美貌を更に際立たせている。
「……遺跡自体も子供だましみたいな罠しかなかったし、これはいい拾い物だったわ」
 シャワーを浴びながら、アリスは自分の美貌を堪能している。
「せっかくだから、プールで泳ごうかしら」
 自分の美貌を余すところなく見られるよう、鏡張りになったプールにアリスは下着姿のまま飛び込む。
 装飾物を探すためとはいえ、薄暗くかび臭い遺跡の中を歩き回っていたせいか、プールの冷たい水はアリスに程よい刺激を与えてくれた。
(あら……?)
 どれくらい泳いでいたのか、アリスがふと臍に視線を落とすと装飾物が臍から胎内に入り込み、取れなくなってしまっていることに気づいた。
(……どうしようかしら)
 無理に引っ張れば、この手入れに手入れを重ねた肌を傷つける可能性もある。
 それならばいっそ取れないままでいい、というのがアリスの考えだった。
(まあ、後で考えればいいでしょ)q
 あまり気にすることなく、アリスは再び泳ぎ始める。
 しかし、異変が起こったのはその時だった。
「……ぐ、ぅっ……!」
 突然、激痛が腹部を襲い、アリスは泳ぐ余裕すらなくなり、くぐもった声を出す。
(なに、これ……)
 鏡張りになったプールが映し出したのは、アリスが一番見たくないもの――。
(な、何これ……! 私の、私の美貌が――……っ!)
 胎内に入り込んだ装飾物にアリスの美貌は奪われていき、自慢の爆乳も今では見る影もない。
「がっ、ぁ……は、ぅ……!」
 魔力、美しさ、すべてが奪われていき、そのたびにアリスを襲う激痛。
(何これ、私の中に……何か、いる……! いや、嫌よ、私の美しさを奪わないで!)
 装飾物の正体は、胎内に入り込み、若さを奪うことで膨張する呪いの品。
 綺麗な薔薇には棘がある、という言葉があるように、装飾物の美しさもそれを目当てにやってくる若い人間を釣るエサのようなものだ。
(と、とにかくプールから出て、何とかしないと……)
 アリスはプールからあがろうとするけれど、腹の重みで出ることが出来ない。
「う、産まれ……ぐ、げっ……!」
 その言葉を最後に、アリスはプールの中へと沈んでいった。

※※※

 そして、後日――。
 アリスが装飾物を手に入れたという噂を聞きつけた競争相手が、彼女の家に来ていた。
「ふふっ、まさか本当に手に入れに行くなんてね。美しさって言葉を出せば、アンタはどんな罠にも引っかかるのね」
 嘲笑しながら、すっかり美しさも若さも吸い取られてしまったアリスを見下ろし、競争相手は笑う。
「それはね、美しさと若さを奪う呪いの品。美しくなる宝なはずないじゃない。それなのに、アンタってばわざわざ呪いの品を取りに行って、そのザマ。ははっ、笑える」
 アリスを嘲るだけ嘲ると、競争相手は家から出ていった。
 後に残されたのは、鏡張りのプールの中で浮かぶアリス――……だったもの。
 そして、その隣にぷかぷかと浮かぶ美しさを増した装飾物。
 それはアリスの周りを漂った後、まるで水に溶けるように消えていった。
 また、アリスのように美しさを狙う若者を待つのだろう。
 ―――己がエサとするために。

―― 登場人物 ――

jc2226/アリス/女性/20歳/ダアト

―――――――――――

アリス様

こんにちは、いつもご発注頂き、ありがとうございます!
今回のシナリオはいかがだったでしょうか?
面白いと思って下さるものに仕上がっていますと幸いです。
それでは、また機会がありましたら宜しくお願いします!
今回も書かせて頂き、ありがとうございました!

2016/9/10
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水貴透子 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2016年09月12日

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