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『星は輝く 』
白虎丸aa0123hero001)&オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&伊邪那美aa0127hero001

●星への願い
 ────星は願いを叶えてくれるだろうか。
 涼しくなってきた夜風に吹かれながら、星空を見上げたオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は七夕に打ち上げた願いを思い出していた。
 はたして、それは星のはからいだったのか。それとも────。
 それは、夏の終わりに訪れた。

「……という訳で、この『さまーふぇすてばる』というモノに参加したいでござる!」
 白虎丸(aa0123hero001)の申し出に、女性研究員は困り顔になる。
 その日、白虎丸の住む駄菓子屋『がおぅ堂』へ一通の葉書が届いた。それは、彼らが以前参加したVRゲーム『リング・ブレイク』β版公開記念の夏祭りイベントへの招待状だった。
 しかし、届いたのは開催日として記載されている当日である。
 彼は連絡が取れた者だけを引きつれて、葉書に記載された紫峰翁センターへと慌ててやって来たのだが。
「困ったわねえ。その招待状は研究者にしか配られてないはずなのよ。今はマオー様もスライも居ないし」
「そこをなんとか!」
 熱心に頭を下げる白虎丸を見ながら女性研究員はもう一度、目の前の三人を見た。
 白虎の被り物を被った天然そうな男、不安を感じているのだろうか、黙ってじっとこちらを見ている少年と少女。
「仕方ない。あいつら、この間アタシの研究室の備品ぶっ壊して行ったから、それをネタに話をつけてあげる。誰だって子供には会いたいもんね」
 そして、奥の一室で『RB記憶のメモリー』を受け取ると、三人を機器に繋ぎながら彼女は言った。
「いい? このデータがあれば会うことはできるけど、昔と同じじゃないかもしれないから覚悟はしてね」
 その言葉に、今まで笑顔だった伊邪那美(aa0127hero001)が固まった。けれども、女性研究員はそんな伊邪那美の変化に気付くこともなく、そのままリング・ブレイク世界へと誘うスイッチを入れた。


●リング・ブレイクの夏祭り
「久しぶりでござるなあ」
「ずいぶん、変わったんだな」
 嬉しそうに辺りを見回す白虎丸と、少し戸惑ったようなオリヴィエ。そして、そわそわと落ち着かない様子の伊邪那美。
 彼ら三人が立っていたのは、育児中に見慣れたあの緑豊かな平野ではなかった。
「村────いや、街か」
 オリヴィエの言う通り、そこは街中の整備された石畳の上だった。祭りという設定もあってか、あちこちに色とりどりのテントを張った屋台が並んでいる。
「人が居るよ〜?」
 伊邪那美が驚く。
 以前は彼らの子供しか居なかった『リング・ブレイク』には街ができて、人々が生活していたのだ。
「……β版公開するって言うんだ。ある程度、世界としても成長したんだろう」
 ぶっきらぼうなオリヴィエの言葉。そこに自分と同じ不安を汲み取った伊邪那美がオリヴィエを見上げる。
「もしかして、ヨミちゃんたち────」
「父上―っ!」
「わっ、やめるでござる!!」
 突然、頭にかじりついて来た物体に思わず悲鳴を上げる白虎丸。その姿を確認した伊邪那美がその名を叫ぶ。
「千代ちゃん!?」
 白虎丸を強襲したその少年はトン、と身軽に着地すると即座に白虎丸の鳩尾に向かって突進した。
「う、うぐっ!」
 多少ダメージを受けつつも逞しい身体でそれを耐える白虎丸。少年はにまっと笑った顔を上げて嬉しそうに耳と尻尾を揺らした。
「お久しぶりでござる! 父上っ!」
「ち、千代!? なんだか最後に会った時より幾分か幼くなってないか……でござる!」
「ママー!」
「ま、ママ……って、ヨミちゃん!?」
「ママぁあ、お久しぶり!」
 ぎゅーっと伊邪那美に抱き着いて来たのは伊邪那美よりちょっと背の高い月詠だった。
「オリヴィエ、会えて嬉しいです」
「……──ああ」
 最後に現れたのはオリヴィエが育てた白銀だった。ほっそりとした四肢、白い肌以外はオリヴィエに似た少女は莞爾として笑う。
「お祭りに行きましょう。おとうさんたちが来るのを楽しみに待っていたんです」
 白銀の言葉にオリヴィエたちは気付いた。自分たちと彼らは皆、世界観に合わない浴衣を着ていた。
「お祭りと言ったら浴衣だって父上が言いそうだったから!」
 千代が笑う。そうでござるか! と嬉しそうに千代の頭を撫でる白虎丸の後ろで、オリヴィエと伊邪那美は視線を交わす。
 オリヴィエたちが彼らと別れた時、彼らはもう少しだけ大人だった。そして、この年の頃には月詠は伊邪那美を『ママ』とは呼んでいなかった。
 ────やっぱり、ヨミちゃんとは少し違うのかな。
 寂しい想いが伊邪那美の胸を過ぎ────ろうとした瞬間、月詠は伊邪那美を強制的に背負った。
「やっぱり、わたし、もうママを背負えるくらい大きくなってる!」
 灼眼を細めて笑う月詠の笑顔は、どう見ても伊邪那美が赤ん坊の頃から見て来た月詠のものだった。
「考えるのは────やめよう」
「どうしたでござるか」
 オリヴィエの言葉に伊邪那美は頷き、白虎丸は首を傾げた。
「ヨミちゃん!」
 月詠は背中からぎゅうううっと愛娘を抱きしめて、今度はバランスを崩した月詠が悲鳴を上げた。

 屋台を覗き、みんなでふわふわの綿あめを食べる。
「父上、お好きでないなら食べなくても大丈夫でござるよ」
 被り物を被る白虎丸をそれとなく気遣う千代に、まったく気づかない白虎丸は上機嫌で「大丈夫でござるよ!」と答えた。
「焼きそば、たこ焼き、それからキャラクター飴もあ────もっくん!」
 べっこう飴の屋台に並ぶ四角を組み合わせたモザイク柄の飴を見て、月詠は目をキラキラと輝かせた。
「買っていい?」
「……月詠は相変わらずもっくん大好きだね」
「う、うーん……」
 厳しい母としての気持ちと、久しぶりの貴重な時間をただ楽しみたい気持ちの間で揺れる伊邪那美。
「某、あれから練習して槍も上達したよ……でござるよ!」
 頭にお面を着けて風船と金魚とヨーヨーを抱えた千代が言うと、バウンシーボールと水笛とバルーンを抱えた白虎丸が嬉しそうに頷く。
「俺も久しぶりに槍の稽古をしようと考えていたでござるよ!」
 千代たちの楽しそうなやりとりを見ていたオリヴィエの手に温かい何かが触れた。ぎょっとして見ると白銀の指先だった。
「……オリヴィエ、そっちじゃない。迷う」
 ぼそりと話す白銀の姿を見て、オリヴィエは心を決めた。
 オリヴィエは、白銀に『自分を守れる力を』と厳しく育てたつもりだった。けれども────彼女に女の子らしいことは何一つ教えてやれなかったなと少し後悔をしていたのだ。
「白銀、今……、仲の良い異……」
 言葉が詰まった。
 ────何といえば良いのだろう。
 仲の良い異性? 好きな人? いや、待て、もしすでに『カレシ』などがいたらどうする。
 葛藤する父親を見て察したのだろう。白銀は頷いた。
「仲の良い異性? いる」
 雷撃に打たれた。今まで本来の意味で強敵から酷い攻撃を受けたことだってあるが、それ以上に、なんというか、心が痛いというか。とにかく、湧き上がる殺意。
 ────OHANASHIするか?
「話したいの?」
 こくこくと頷き、なんとなく屋台の裏の雑木林を指すオリヴィエ。白銀は呼んだ。
「千代、おとうさんが話があるって」
「なんでござるか」
「なんでもない」
 ほっと胸を撫でおろすオリヴィエだったが、直後に、『ちがう、このままでいいのか』と頭を抱える。そんなオリヴィエを見ながら、伊邪那美がにんまりと笑う。
「ヨミちゃんは今、好きな人とかいないのかな〜?」
「ん、千代?」
 ────これは。
 一瞬、オリヴィエと伊邪那美に緊張が走る。
「でも、ママとおにいちゃんの方がかっこいいよね」
「うちのおとうさんの方がいいと思う」
「みんな、家族が大好きでござるなあ」
 ニコニコ顔の白虎丸。そんな父上をホンワカ見守る千代はどれくらいわかっているのか。

 型抜き屋の屋台で、うむむ、と難しい顔で取り組む伊邪那美の隣で得意げにサクサクと進める月詠。
「……ん」
 白銀に袖を引かれるまま、オリヴィエは射的の屋台の前に連れて行かれた。
「これ、私が用意したの」
 コルクを詰める射的用の銃。それを一本、スッと構えると、白銀は見事な腕前で巨大なぬいぐるみや小さな的を次々撃ち抜いて行く。
「────おとうさん」
「…………」
 真っ直ぐオリヴィエを見て銃を差し出す白銀に、彼は黙って頷きそれを受け取る。
 その後ろの金魚すくいで大量の水飛沫が上がった。白虎丸と千代がそこに居るはずだが、他の面子はそちらを敢えて見ないことにして、それぞれ夏祭りを楽しんだ。
 数分後、大量の金魚を得意げに掲げた白虎丸親子を見かけたが、何も問わない。

 一通り屋台を周り、祭りの雰囲気を楽しんだ後。
 広場の噴水の周りで、自然とそれぞれの親子が一緒に座った。
 祭りの終わりは花火が上がる────ちぐはぐな見た目の親子たちは互いに色々なことを話しながら、花火を待つ。
 ……花火が終わったら、祭りは終わる。
 急に、祭りで手に入れた玩具の棒を使って、白虎丸と千代が槍術の手合わせを始めた。
「うむ、千代は強くなったでござる」
「父上にはやはり敵いませんが────でござる!」
 ふたりとも、一心に打ち込み合う。
 棒のぶつかる音を聞いていると、オリヴィエの隣に座った白銀が小さく息を吐いた。そのため息を聞いて、だいぶ迷ってからオリヴィエは言った。
「…………白銀が楽しく過ごせるよう……七夕に祈った」
 屋台が並ぶ祭りの光景を見ながら口に出す。
 オリヴィエとしては自分が彼女を忘れず、いつも想っていたことを伝えたかったのだが。
「おとうさんは、少し変わったね。元から大好きだけど良い意味で変わった」
 ぽつりと白銀が漏らした呟きに、オリヴィエは隣の彼女へ視線を移し、ぎょっとした。
「……泣くのは、別れが怖いから。でも……愛着を持つのは良い事────”生きる”のに必要なモノね」
 ぽろぽろと涙をこぼしながら、白銀は『おとうさん』の手を掴み、そっと自分の頬に押し当てた。
 そんな周りの雰囲気に、伊邪那美は別れを感じて胸が苦しくなった。
 まだ、まだ話したいことはたくさんある。それに、今日は何も言えなかったけど、月詠が無事に生きていくために教えたいこともたくさんある。それに、それに……。
「ママ」
 泣き出すと思った月詠は笑顔で立ち上がった。
「わたし、一杯頑張ったんだよ。ママが居なくなってから、ママがどんなにわたしのことを想ってどんなに大変なことをしてくれたのかってすごくわかった。わたしも同じようなことをしようと思ったけど────とても、ママのようにはできなかった」
 くるり、伊邪那美へと顔を向けた月詠の顔はとても大人びて見えた。
「ママは思ったよりずっと小さくて可愛いね。でも、やっぱり一番大きくてかっこよくて素敵な人。わたし、ママと同じにはできなかったけど、ママの強い気持ちと生き方はずっと忘れないで生きて来たよ」
 屋台の灯りを背に伊邪那美が笑った。
 いつの間にか、棒の打ち合う音も止み、子供たちはそれぞれの『親』を見つめた。
「わたしたち、頑張ったんだ。どう? 素敵な街が出来たでしょう────」
 花火が打ち上がった。空気を揺らす破裂音とともに、一瞬、広場に昼のような明るさが訪れる。
 大きな音。闇夜に咲く鮮やかな光の花。
「千代」と白虎丸が呼ぶと、少年はにへらと笑ってサムズアップした。
「ヨミちゃん」名を呼んで伊邪那美が手を伸ばすと、少女はにこやかに顔のそばで手を振った。
「白銀────」オリヴィエが何かを言いかけると、白銀は頬を染めてそっと唇に指を当てた。
「ずっと、見て貰いたかった。また甘えたかった────ありがとう」
 子供たちが誰とはなしに言うのと同時に一際大きな花火が打ち上がり、夜の空気を大きく揺らした。

●さよならの代わりに
 アラーム音に三人は目を覚ました。まだ少し重いような頭で黙って互いに顔を見合わせる。
「立派になったでござるなあ……」
 誰に言うでもなく、白虎丸は呟いた。
「いつの間にか、追い抜かされちゃったね〜……」
「そうだな」
 伊邪那美、オリヴィエがそれぞれやはり独白のように呟いた。
 ────……またね。
 花火の向こうの彼らの子供たちは、もう泣き顔の少年少女ではなく────。
 三人の瞼の裏にはしっかりとした大人の姿で笑顔で彼らを見送る『子供たち』の姿が残った。

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0123hero001/白虎丸/男性/45歳/バトルメディック】
【aa0068hero001/オリヴィエ・オドラン/男性/10歳/ジャックポット】
【aa0127hero001/伊邪那美/女性/8歳/ドレッドノート】

依頼『マイ・フェア・Baby!』登場NPC 千代、白銀、月詠

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼、ありがとうございます!
また子供たちと一緒の皆様を描けてとても幸せでした。
子供たちが、親と慕う皆さまを追って成長した姿が伝わればと思います。
colorパーティノベル -
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リンクブレイブ
2016年09月16日

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