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『―― 罠にはめられた美女 ―― 』
アリスjc2226

 それは突然の出来事だった。
 今日は仕事も休みで、アリスは自らの美を高めるために自宅のプールで泳ぐことにしていた。
「……修理が終わるまで、プールに入れないじゃない」
 ため息をつきながら、アリスは割れた鏡張りのプールを見ながら、それをした張本人を見た。
「……美しさの欠片も感じられないわね」
 アリスの前に立つのは生物ですらなく、不気味な機械人形だった。
 それがガラス張りのプールを破壊して侵入し、アリスの前へと立ったのだ。
「悪趣味ナ場所ヲ、破壊シテヤッタノダ。感謝シテ欲シイクライダ」
「……機械にこのプールの良さが分かるとは思えないけれど?」
 アリスが肩を竦めると、その動きに合わせて大きすぎる胸もたぷんと揺れる。
「悪趣味ナ水着デ身ヲ隠シ、救イヨウノ無イ【オバサン】ダ」
「……なんですって?」
 別にアリスは他人に自分の美しさ、自分が美しいと思うものを分かってもらおうなんて思っていない。けれど、今機械が発した言葉の中に、どうしても聞き逃せない言葉があった。
「誰が【おばさん】ですって?」
「オ前以外ニ、ココニ誰ガ居ルト言ウノカ」
「……ふふ、ちょっとばかりお仕置きが必要なようね」
 アリスがプールサイドに置いてあった武器を手に取ろうとしたのだけど――……!
「く、ぅっ!」
 機械人形から排出された触手のようなものに体の自由を奪われてしまう。
「一体、何が目的なの……!」
 キッと強い瞳で機械人形を睨みつけるが、相手は生きてさえいない無機物物体。
 アリスの強い眼差しにもひるまず、機械人形は触手でアリスのスーツのファスナーを下げた。
「な、何をするつもり! 放しなさい! 無機物の分際で私に触れようなんて――っ!」
 アリスが身を捩るけど、拘束が強くなるばかりで体の自由は更に利かなくなってしまう。
 そんなアリスには目もくれず、触手を拳銃のような形に変え、彼女の臍へと当てる。
「……っ、ひ、や、やめなさい、何をするつもり、やめ――……あ、ああああっ」
 拳銃のような形をした触手は、アリスの臍から胎内に結晶を射出する。
 それと同時に激痛がアリスを襲い、苦しそうな悲鳴がプール内に響き渡った。
 大きく揺れる胸、そして射出された結晶によって魔力を吸われ、捕えられた時には膨らんでいたお腹もすっかり元に戻っていた。
「はぁ、はぁ……何を、私に……何を――」
 したの、という言葉は最後まで紡ぐことができなかった。
 何故なら、身体中を激痛が走り、言葉も発せられないほどの痛みがアリスを襲ったから――。
「任務完了。コレヨリ帰還シマス」
 機械人形はそれだけ言うと、触手をスーツから引き抜き、そのままアリスをプールへと落とす。
「がっ、がはっ……は、ま、待ちなさい……! わ、私に、は、ぅ……っ」
 アリスの中に渦巻くのは怒りなのか、助けてほしいという気持ちなのか、恐らく彼女自身にも分かっていない感情なのだろう。
(いやよ、どうして私が……! 美しい私が、どうしてこんな干からびた老婆みたいに……!)
 アリスの胎内にある結晶のせいか、胸の揺れも次第になくなり、身体もまるで木の枝のようにどんどん干からびていく。
(誰か……! 誰か、わた、しを――……)
 助けを求めるように手をばたつかせるけど、それから数分後、アリスは何の力も入れられなくなり、とぷん、とプールへと沈んでいった――……。

※※※

 アリスが謎の機械人形に襲撃されてから数日後。
「あらあら、見る影もないわねぇ」
 アリスの家を訪ねてきたのはジャーナリストでもある女性の同業者、
「ふふふ、水面に広がる髪がまるで妖怪のようじゃない。安心しなさい。あなたのことはちゃーんと私が【変死体】として、皆に報道してあげるから」
 言いながら同業者の女性は何枚も写真を撮り始める。
「そうね、タイトルは……【ばくぬー、セクシー臍の胎魔休業中の美女、美を失う】はどう? 美を失い、胸は萎み、醜い姿に! なんてのもいいかもしれないわね」
 高らかに笑いながら、同業者の女性はくるりと向きを変える。
「そうそう、あの機械人形。私があなたのところに行かせたのよ。スクープが欲しくてね。でも気づいたの、スクープは探すよりも作る方が簡単だってことに」
 あははは、と笑いながら彼女はプールを出る。
 誰もいなくなったプールの中で、アリスはミイラ化してぷかぷかと浮かぶことしか出来なかった――……。


―― 登場人物 ――

jc2226/アリス/女性/20歳/ダアト

―――――――――――

アリス 様

こんにちは、いつもご発注頂きありがとうございます。
今回のシナリオはいかがだったでしょうか?
面白かったと思って頂けるものでしたら幸いです。
それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました!
また機会がありましたら、宜しくお願い致します!

2016/9/15
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水貴透子 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2016年09月16日

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