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『水辺でキャンプをしたら何事もなく無事に終わるはずもなく、やっぱり予想通りだった件 』
猫野・宮子ja0024)&ALjb4583


 夏はやっぱり白い砂と青い海!
 太陽の光がさんさんと降り注ぐビーチでこんがり日焼けが定番だよね!

 ……と思ったけれど。

「でもそれじゃ定番過ぎるし、海ってなんか暑そうだよね……」
「そうですね、砂浜なんかきっと裸足で歩くと火傷しそうなくらい熱くなっているでしょうし……」
 図書館で夏休みのレジャープランを練っていた猫野・宮子(ja0024)とAL(jb4583)は、旅行ガイドから顔を上げて互いを見つめる。
「もっと涼しいとこがいいな」
「そうしますと、避暑ということですね」
 ALは机に山積みになっていた海水浴に関する情報誌を片付けると、今度は高原のリゾート地に関する本を持って来た。
「避暑地と言えば山や高原です、標高の高いところに行けば真夏でもエアコンがいらないくらい涼しいと聞きますし……」
 しかし宮子は今ひとつ気乗りしない様子。
「宮子様? どうなさいました?」
 ALは自分に何か落ち度でもあっただろうかと、心配そうに白い猫耳を伏せる。
 だが、そういうわけではないようだ。
「山とか高原も良いけど……水着、着れないよね」
「あっ」
 そうだ、宮子はつい先日、新しい水着を買ったばかりだった。
 買ってから初めてのお出かけともなれば当然、目的はそのお披露目……!
「宮子様、申し訳ありません。僕としたことが大切なことを失念していました」
「え、どうしてALくんが謝るの? 山に水がないのはALくんのせいじゃないよ?」
 それはそうだけれど……いや、待てよ。
 山には水がない?
「ありますよ宮子様、山には川が流れてるじゃありませんか!」
「あっ」
「川遊びにしましょう、川なら木陰もたくさんありますから、きっと涼しいですよ!」
「そうだね! ALくんあったまいい!」
 おっと、図書館ではお静かに。
 周囲から寄せられる無言の抗議に首を縮め、二人は互いに「しーっ」と人差し指を立てる。
「これで決まったんだよ♪」
「ええ、今度のお出かけは川でキャンプにしましょう」
 ALとしては、ただのお出かけではなくデートと言いたいところだけれど。
 そう言えるようになるには、もう少し時間が必要だろうか。
「えーと、川遊びの本はどれかな?」
 席を立った宮子が書架から一冊の本を抜き出そうとする。
 が、ぎっちり詰まっていて、なかなか、抜け、な……、えいっ!
 力任せに引っ張れば、周りの本も一緒に抜けて宮子の頭上に降って来る。
「宮子様、危ない!」
 どざーーーっ!
 宮子を助けようとしたALは本の雪崩に呑み込まれた。
「ALくん、大丈夫?」
 なお宮子は咄嗟に飛び退いて無事である。
 自らハプニングに巻き込まれに行くALの体質は、相変わらずのようだ。


 そして、やって来たのは人里離れた山の中。
「うわぁ、良いところ見付けたね!」
 車も滅多に通らない林道から逸れて獣道を進んだ先に、絶好のロケーションが広がっていた。
 広い河原には丸く削られた石が敷き詰められ、その向こうに流れる川にはそのまま飲めそうなほどに透き通った水が流れている。
 水深は深いところでも腰の高さほどだろうか、流れもそれほど速くはない。
 青々と葉を茂らせた木々が夏の日差しを適度に遮り、木漏れ日が水面に照り映えてキラキラと輝いていた。
 なにより、他に人の姿がないところが良い。
「こんなところまで来るのは野生動物くらいかもしれませんね」
 ALは大きな荷物を肩から下ろして、ほっと一息。
(「どうやら気に入っていただけたようですね」)
 一足先に下見に来て、ここなら良いだろうと準備万端整えた甲斐があったというものだ。
「まずは泳ぐよ、ALくん!」
「はい、宮子様」
 宮子は荷物から水着を引っ張り出して、近くの木陰に姿を消す。
「せっかく買った水着だしやっと着れるねー♪ ALくん、着替えてるとこ覗いちゃだめなんだよ!」
「そんなことはしませんから、ご安心ください」
 本音としては何かハプニングが起きて、いわゆる「らきすけ」状態になることを期待しないこともなかったけれど。
 いや、ハプニングは起きる、起きるに決まっている。
 ただそれがラッキーに繋がるかどうかは……まあ、恋愛成就のお守りにでも祈っておこう。

「川辺の水が気持ちいいですね、宮子様♪」
 ALもトランクスタイプの淡い水色の水着に着替え、川縁の岩に腰掛けて足先を流れに浸してみた。
「ほんとだね、とっても冷たいし底のほうまで透き通って見えるんだよ!」
 そう言いながら、宮子はバシャバシャと水を跳ね散らしながら川の中ほどまでどんどん進んで行く。
「あっ、見て見てALくん、魚がいるよ! 捕まえられるかな?」
 宮子は無邪気に手招きするが、ALは動こうとしなかった――いや、動けなかった。
 だってオレンジのビキニとか眩しすぎるじゃないですか、腰にはパレオが巻かれているけれど、それにしたって露出が……!
 その結果、ちらりちらりと眺めてはその眩しさに目を慣らす作業に忙しく、身体を動かすことまで気が回らないのだ。
「もう、ALくんってば……」
 動こうとしないALを見て、宮子はちょっと不満げに頬を膨らませる。
 動かないなら動かしてあげよう。
 チラ見の隙を突いて、宮子は遁甲の術で気配を消した。
 水の上を足音を忍ばせて歩き、こっそりとALの背後に回って――
「宮子様!?」
 そうとは知らないALは、宮子が消え失せたことに気付いて青くなる。
 まさか深みにでも嵌まったかと血相を変えて立ち上がろうとした、その瞬間。
「だーれだ!?」
 後ろから目隠しされた。
「……み、宮子様……!?」
「もう、ALくんてば何ぼんやりしてるの? それっ!」
「うわぁっ!?」
 どぼーん!
 背中を押されたALは盛大な水飛沫を上げて川にダイブし、起き上がったところに再び水飛沫が――今度は宮子の手からバシャバシャとかけられる。
「えーい!」
 暫く呆然と川の中で尻餅をついていたALは、ようやく状況を理解すると、猛然と反撃に出た。
「やりましたね! お返しです!」
 ふさふさ尻尾に水をたっぷり含ませて、ばしゃぁっ!
 細かい水滴が飛び散り、そこに太陽の光が反射して七色の虹が出来た。
「わぁ、綺麗なんだよ!」
 両手を広げてミストのように降り注ぐ水滴を受けながら、宮子は天を仰いでクルクルと回る。
(「虹の中で踊る宮子様、まるで虹色の羽を持った妖精のようです……!」)
 眼福眼福……などと目を細めていると、どばしゃーん!
 大きな水の塊が飛んできて、滝のようにALの全身を濡らした。
 何事かと見ると、宮子が腰から外したパレオを両手で広げて持っている。
 それで大量に水を掬ってかけてきたようだ。
「ふふーん、ボクの勝ちなんだよ!」
 いつの間にか勝負になっていた。
「それなら僕も負けませんよ、それ!」
 くるりと後ろを向いたALは尻尾をスクリューのようにグルグル回して盛大に水を巻き上げる。
 飛沫の中に、再び綺麗な虹が浮かび上がった。

 そうして水を掛けあったり、泳いだり、素手で魚を捕まえてみようとしてみたり、岩の隙間に隠れたサワガニを捕まえてみたり――
 時間を忘れて水遊びに興じる二人だったが、お腹の虫はしっかり時計を見ていたようだ。
「お腹すいちゃったね、そろそろ何か食べようか」
「そうですね、では準備をしますので宮子様は上がってお待ちください」
 宮子にタオルを渡して、ALは荷物のところへ駆けていく。
 河原の石を積み上げて即席のかまどを作り、火の付いた炭をセットして、上に網を乗せて。
「ALくん、ボクも手伝うんだよ?」
「ありがとうございます、では二人で焼きましょうか」
 買って来た肉や野菜、それに家で作って来たおにぎりを焼いて。
「タレは醤油と塩、それにソースにマヨネーズとケチャップもありますよ。後でマシュマロも焼きましょうね」
 冷たいジュースやお茶もあるし、お湯を沸かせばインスタントのスープやレトルトのカレーも出来る。
「花火もありますから」
 手持ち花火に打ち上げ花火、それともちろん線香花火も。
 他にはゴロ寝用のマットや蚊取り線香、懐中電灯にラジオ、携帯トイレ……まるで災害用の持ち出し袋のようだ、しかも超特大の。
「ALくんの荷物すごく大きいと思ったら、こんなに色々持って来てたんだ!」
「ええ、宮子様にご不便をおかけするわけには参りませんから!」
 宮子様のためならば、自分より重くて大きな荷物だって羽が生えたように軽く感じますよ、感じるだけですけどね!
 そのうちに、網の上から香ばしい匂いが漂い始める。
「焼けたかな、もうちょっとかな?」
 宮子は肉を裏返して焼け具合を確かめてみたけれど、まだ少し赤いかな?
「牛肉ですから、もう食べられますよ」
 そう言いながら、ALがタレに漬けた肉を差し出してくる。
「はい、あーんです」
「えっ、それ今ボクがALくんにしようと思ったのに!」
 それに、するほうはいいけれど、されるほうはちょっと恥ずかしいし。
「大丈夫、誰も見てません」
 柔らかな微笑を浮かべつつ、お肉を差し出すAL。
 そういう問題でもない気がするんだけど……まあいいか!
「ん、美味しい!」
「宮子様のお気に召していただけたなら幸いです」
 なんたってお財布のレベルを度外視して奮発した最高級のお肉ですから!
「どんどん食べてくださいね、はい、あーん?」
「ALくんもちゃんと食べるんだよ? はい、あーん♪」

 宮子さんの認識によれば、これでもまだギリ恋人同志ではないそうですが。
 皆さんどう思いますか?

 水着のままで花火を楽しんで、お風呂の代わりに川の水で汗を流して。
「そろそろ着替えようか……って、あれ?」
 ない。荷物と一緒に置いてあったはずの――
「服がないよ!?」
「えっ?」
 風に飛ばされたのかと暫く周囲を探してみたが、影も形もない。
「靴だけは無事だったけど、これだけあっても困るんだよ?」
 いや、なくても困るからあったほうがいいけどね?
「僕としたことが……大失態です……」
 がっくりと肩を落とすAL。
 周囲に人の気配はなかったから、きっと悪戯好きなサルか何かが持って行ってしまったのだろう。
「どこか近くに落ちているかもしれませんが、もう暗いですし……」
「うん、朝になったら探せば……っくしゅん!」
 小さなくしゃみをした宮子の肩に、ALは慌てて持っていたタオルをかける。
「このままでは風邪を引いてしまいますから、とにかく濡れた水着を脱いでください」
「ええっ!?」
「宮子様、雪山で遭難した人の話をご存じですか?」
「う、うん、知ってるけど……」
 裸で温め合うっていう、あれだよね?
 まさかそれを今ここでやれと!?

 そのまさかだった。

 濡れた水着を木の枝に掛けて干し、マットの上に身を寄せ合って座る。
 身体を隠すのは小さなタオルと数枚の木の葉のみ。
 互いの温もりと心臓の鼓動が、衣類を通すことなく直接肌から伝わってくる。
「はわわ、なんだかまた大変なことになっちゃったんだよ……」
「ええ、でも……こうしてアクシデントに遭うのも、貴女と一緒なら楽しい」
 むしろ歓迎だと、ALは宮子の顔を覗き込む。
 近い、近すぎる。
 宮子の全身が心臓になったように、身体中がどきんどきんと脈打っている。
 きっとALにもそれが伝わっているだろう。
「あ、ALくん、ほら見て流れ星なんだよ!」
 宮子は視線を外し、ついでに身を離し、話題を逸らそうとしてみた――が、無駄だった。
「……大好きです」
 ALの顔は身体ごと近付き、肩に回された腕が腰に滑り落ちる。
「え、ALくん!? え、ええと、はわわわ!?」
 今度は多分、顔が赤くなる「ぼんっ」という音が聞こえたに違いない。
 けれど、それ以上は抵抗しなかった。
「大丈夫、誰も見てません」
 そっと唇と重ね、ALは悪戯っぽく微笑む。
 見ているとすれば星と月、それに闇に潜む動物達くらいだろう。

「……そろそろ就寝しましょう」
 全然眠くはないし、むしろ体中の血が騒いでますます目が冴えてきそうだけれど。
 今はこのまま二人で寝転がり、そっと寄り添っていたい。
 そんな気分だった。


 翌朝。
 いつの間に眠ってしまったのか、ALは耳をくすぐる鳥の声に起こされて重い瞼を持ち上げた。
 辺りはまだほんのりと色づいた程度で、空にはまだ僅かに夜の色が残っている。
 そして、腕の中にはふにゃっと柔らかい感触。
「……っ!?」
 気が付けば、どうやら宮子を抱き枕にしていたらしい。
 しかも、身体に掛けていたはずのタオルがない。
 葉っぱもない。
「……これって、僕が疑われるんじゃ……」
 真っ赤になって目を逸らしながら、それでもついついチラ見したりして。
「どうしましょう、宮子様が目を覚ます前に何か隠すものを……っ」
 しかし、もう遅い。
「ん……」
 もぞもぞ、宮子が動き出した。
「はふ、ALくんおはようだよ。ん、赤い顔してどうしたの?」
 寝ぼけ眼の宮子が状況を把握するまで、三秒ほど。
「……あ、きゃっ!?」
 慌てて腕で隠そうとするけれど、隠しきれていないと言うか、もう今更と言うか。
「……み、見ちゃった……?」
「は、はい……申し訳ありません宮子様!」
 ここは隠し立てしても仕方がないと、ALは素直に自己申告。
「う、うん……でもALくんになら(ごにょごにょ」
 それに、見ちゃったのはお互い様だし……?


 その後、二人は乾いた水着を着込んで消えた服を探しに行った。
「よかった、水着までなくなっちゃってたら、どうしようかと思ったよー」
 さすがに裸では帰れない。
 かといって水着姿で帰るのも。かなりの度胸を要するだろうけれど。

 幸いなことに、二人の服は少し離れた道路沿いに、ぽつりぽつりと落ちていた。
 まるで酔っ払って帰宅したお父さんが玄関から風呂場まで、着ていたものをひとつずつ脱ぎ捨てていったように――
「なくなっているものは、ありませんね?」
「うん、全部ちゃんと揃ってるんだよ。これで無事に帰れるね」
 まったく、誰がこんな悪戯をしたのだろう。
「見付けたらお尻ペンペンなんだよ!」

 もっとも、ALとしてはその悪戯者に、少しばかり感謝したい気分だったりもするけれど――


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja0024/猫野・宮子/女性/外見年齢14歳/ハプニングを呼ぶお猫さま】
【jb4583/AL/男性/外見年齢13歳/巻き込まれるお狐さま】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、STANZAです。
ご依頼ありがとうございました。

今回のタイトルはラノベ風味にしてみました。
これで無事、お二人は恋人同士になられたのでしょうか、それともまだギリ手前……?

口調や設定等、齟齬がありましたらご遠慮なくリテイクをお申し付けください。
colorパーティノベル -
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エリュシオン
2016年09月21日

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